大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ステルスドラゴンとグリムの森・9

2019-05-26 06:32:25 | 戯曲
連載戯曲
ステルスドラゴンとグリムの森・9


 時   ある日ある時
 所   グリムの森とお城
 人物  赤ずきん
 白雪姫
 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)
 家来(ヨンチョ・パンサ)

 
※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください

赤ずきん: そんなもんじゃないよ、ちょっとくせがあるけどね(苦しそうに飲む)
王子: なあにハナクソでさえなければ……(飲む。とりつくろってはいるが気持ち悪そう)なあに大したことは……ない。
ヨンチョ: おつな味だねえ……で、本当は何なんだい?
赤ずきん: 聞かない方がいい……。
ヨンチョ: そう言われると余計知りたくなる。
赤ずきん: 青い狼のミミクソ!
二人: ゲッ?!
赤ずきん: 吐いちゃだめ! あーもどしちゃった。(王子はかろうじてこらえる)
ヨンチョ: おまえが言うから……。
赤ずきん: ヨンチョのおじさんが聞くから……
王子: シッ! 来るぞ……。
赤ずきん: ほんとだ……。
ヨンチョ: え、どこに……?
王子: 来た!
ヨンチョ: え?……ワッ!

 ドラゴンの降下音。一瞬目玉を思わせる光が走る、王子と赤ずきんは左右の藪に、素早く身を隠す。
 ヨンチョだけボンヤリ立っていてふっとばされる。脱げ落ちたヘルメットを拾いつつ……。


ヨンチョ: すまん、あのミミクソまだあるか?
赤ずきん: 今度は吐いちゃだめだよ……。
ヨンチョ: ありがとう(あわてて飲む)
王子: 今のはほんの小手調べ、上空を旋回しながら様子を見ている……。
ヨンチョ: 今度は儂にもわかる……。
赤ずきん: 王子さま。
王子 :心配しなくても、貴重な弾を無駄に使ったりはしない。
 降りてきたところを二三度ぶちのめしてから、とどめに……。
赤ずきん: 違うの。王子さまには、もう一つ薬を飲んでもらいたいんです。
王子: 今度は何のクソだ?
赤ずきん: 違いますよ。お婆ちゃんからもらってきた幸福の薬、敵の打撃を弱める力があります。はい、このポーション!
王子: ヨーグルトみたいな味だなあ……。
赤ずきん: 天使たちが世界中の母親の愛情を一万人分集めて作ったエッセンスだそうです。
王子: そうか、一万人分の母性愛に守られるわけだなあ。
赤ずきん: 王子さまは、この国でただ一人の王位継承者、大事にしていただかねば。
ヨンチョ: 来るぞ!

 戦闘のBGMカットイン、飛翔音、降下音、光が走る。
 三人それぞれに剣をふるい、ドラゴンに当たるたびに金属音がする。
 二三合渡りあうと、ドラゴンは再び上空へ、藪へころがりこむ三人(戦闘を歌とダンスで表現してもいい)
 赤ずきんは頬を、ヨンチョは腕に打撃を受ける。


王子: 大丈夫か?!
赤ずきん: ホッペを少し(頬横一線に出血)
ヨンチョ: 右腕を少し、大丈夫でさあ……かえって燃えてきましたぜ!
王子: 気をつけろ、今度は奴も気がたっている……来たぞ!

 再び前に増す飛翔音、降下音、光が走る。
 激闘。ヨンチョ、赤ずきんは何度かころび、ヘルメットはとび、王子の服にも血しぶきが飛ぶ。
 前回にも増して激しい打撃の金属音。
 赤ずきんなど、藪までふき飛び、袖もちぎれ、胸から腕にかけて血しぶきをあび「大丈夫か!?」と王子の声。
 瞬間の気絶のあと、渾身の力をこめて、ドラゴンに斬りかかる(前の台詞を間奏にして、歌とダンスの処理でもよい)


赤ずきん: オリャー!

 ザクッと金属に切り込む音がして、王子が鉄砲を放つ。意外に重々しい「ドキューン」という腹に響く音。
 「キュー」っという悲鳴を残し、また上空へ逃げ去るドラゴン


赤ずきん: やった?!
ヨンチョ: ……いいや、傷は負わせたが急所は外したようだ……。
王子: そのようだなあ……二人とも大丈夫か?
ヨンチョ: まだまだ。
赤ずきん: 大丈夫よ。

 と言いながら二人とも、あちこち服は破れ、血しぶきをあび、あまり大丈夫そうではない
 (これらの傷、血しぶきは藪に忍ばせた黒子による。歌とダンスの処理なら省略)


ヨンチョ: 弾はあと二発です。
王子: わかっている。今度こそしとめてやる!(銃を、目標にあわせつつかまえる)
赤ずきん: 来る……!
ヨンチョ: 来るぞ……!
王子: わたしにまかせろ!!

 戦闘のBGM、カットアウト。
 腰を据え、今や水平からの攻撃の体制に入ったドラゴンにピタリと照準をあわせる王子。
 剣を構えながらも、動物的勘で身をよじり、王子にその瞬間を譲る二人。
 ドラゴンは王子一人を目指し渾身の力でいどみかかってくる。二発連続で発砲する王子。断末魔のドラゴンの叫び。
 この一連の運動はスローモーションでおこなわれる。
 わずかに間を置いて通常のモーションにもどると、ドラゴンの突撃してきた、ほとんど水平に近い方向から、
 大量のマンガ、マンガ雑誌、CD、ゲームソフトなどが、空中分解したミサイルの部品のようにとびこんでくる
 (CD等は実物を使うと危険なので、銀紙を貼ったボール紙などの代用品が良いと思われる。
 または、音と演技だけで表現してもいい)
 
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・043『サーバーがパンクした!』

2019-05-26 06:19:46 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・043
『サーバーがパンクした!』




 えーうっそー! なによこれ! バグったー!

 乗組員の憩いの場、兵員食堂で!マーク付きの声が上がった。

「わたしのミナミがへんてこ!」
「なんで、あんたのサワチンになってるわけー!」
「ちょ、わたしのトモチン、アフロになってる!」
「アリコが演歌唄ってるよー!」

 カワチ艦内で流行っているカスタムアイドルが変なことになっているのだ。

「ね、あそこにいる……」
「そだね」
 ひとりが目配せすると、みんなパーテーションの向こうにいる砲雷長のところに殺到した。
 兵員食堂では遠慮してパーテーションの陰で食事をする幹部が多いのだ。
「説明するから、席に着きなさい!」
 砲雷長は手のひらをハタハタさせて、みんなを落ち着かせた。

「あのね、遊んでくれるのは嬉しいんだけども、みんなカスタムに盛り過ぎなんだよ」

「えー、だって個性化個性化って言ってるのは艦長とか砲雷長じゃないですかー」
「元々個性化の応援ツールだったじゃありませんか『カスタムアイドル』はー」
「そうだ!」
「そうです!」
「デフォです!」
「鉄板どぅえーす!」
「だからって、アイドルの五代前までのご先祖設定したり、日にち単位の生活とか友だちの設定とか、マージャンゲーとか野球チームとか、住んでる街をシムシティーやA列車なみにカスタムしたんじゃサーバーが持たないよ。本来は声とか姿かたちしかいじれないゲームなんだからさ」
「でも、ここまでやったんだから、もっと発展させたいですしー」
「このゲームやめたら、あたしたち元の画一化されたアンドロイドにもどっちゃいますよー」
「とにかく、他の子のカスタム被ったりしないようにできませんかー」
「いっそ、アマテラス(カワチのメインCP)に繋げないんですかー」

 個性化が進んだとはいえ語尾にカーカー付けるのが流行っているのはいただけない。

「わかったわかった、善処するから明日まで待ってくれえー!」
 カワチの乗員は全てガイノイド(女性型アンドロイド)だ、没個性的なアンドロイドであったころは平気だったが、個性化が進んで人間ぽくなってくると、砲雷長の神経はリアル女性を相手にしているように落ち着かなくなる。這う這うの体で食堂を後にした。

「ハハ、このカワチが置かれている状況と同じだな」

 艦長は腹を抱えて笑った。
「あの子らの作っているのは、もうパラレルワールドです。アマテラスに介入してもらわないとサーバーがダウンしてしまいます」
「よかろう、ぼくは承知したよ。アマテラスと相談してくれたまえ」
「了解しました」
 敬礼ひとつして、砲雷長は艦長室を出て行った。
「でも、驚きました」
 テーブルを片付けながらサクラが続ける。
「このごろ仮想乗員を作って、ゲームをやらせてるんですよ、本来300人の乗員が『カスタムアイドル』の中じゃ数千人に膨らんでるんですよ」
「まあ、それも乗員のみんなが活性化している表れだと思うんだけどね」
「でも艦長」
 来月のメニューを考えていた航海長が顔を上げた。
「カワチを取り巻く宇宙はパラレルワールドが絡み始めてます、急いだほうがいいですね」

 パラレルワールドの宇宙戦艦が現れたりパルスミサイルが越境してきたりしている。放置していては手遅れになってしまう。

 艦長の眉間にしわが寄っているのに気付いて、航海長はパッと笑顔に切り替えた。

「ちょっと外の空気吸いにいきませんか」

 航海長の気配りに笑顔を取り戻して、艦長は小さく頷いた。
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・9《アナスタシア・5》

2019-05-26 06:10:44 | 時かける少女
時かける少女BETA・9
《アナスタシア・5》                  


 
 日本大使館の炊き出し……カップラーメンの配布は好評だった。

 アリサの部屋は二十一世紀初めのN食品の倉庫と時空を超えて繋がっている。一日に100箱かすめてくる。一日と言っても、向こうの世界の話で、一日で一年分持ってきても、日に100箱に変わりはない。これくらいなら毎日工場見学にくる小中学生にふるまっている数の中に紛れて分からない。三日で三年分をペトログラードの市民に配った。10万箱330万食ほどになる。おかげで、史実では三日間しかもたなかったペトログラードは、まだ平穏を保っている。
 三日目にアナは心配になった。
「あの身代わりのお人形じゃ、わたしが居なくなっていることに気づかれているんじゃないかしら?」
「ご心配なく。日に二度はあたしがアナに化けて宮殿に戻っています。あのベラでさえ気づいていません。それより、日本の伝統料理のお稽古いたしましょうか?」
「そうね、あのカップ麺は伝統料理ではないでしょうから」
 そう、毎日がカップ麺では人間は一か月ほどで飽きてしまう。そうのんびりもしていられないがアナの気持ちも引きつけておかなければならない。
「ご飯の炊き方から伝授しましょう」

 大使館のキッチンで、ご飯を炊き始めた。

「お米は、このようにとぎます……洗うんじゃありません。水を少し入れて……こう手をまわしながら、最後はギュッと抑え込むように……それを三回やったら手の甲まで水を入れます。はい、そうしたら火にかけて、始めチョロチョロ中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るなです」

 ご飯を炊くと、おにぎりの作り方、さらに焼きおにぎりの作り方へと進んでいった。味噌を塗って焼くと長持ちすることも教えた。最初はご飯の炊きあがる臭いが鼻に着いたアナだったが、醤油や味噌を塗った焼きおにぎりは気に入ったようだ。
 続いて、アリサはかす汁と肉じゃがの作り方を教えた。これもアナのお気に入りになった。

「この肉じゃがは、元々はイギリスのビーフシチューなんです。東郷提督がイギリスに留学したときにレシピを持ち帰り、日本風にアレンジしたものなんです」
「え、あのバルチック艦隊を打ち負かした!?」
「嫌かしら?」
「いいえ、あの方は広瀬中佐とセットで尊敬してます。かす汁もなかなかいけるわね」
「これは、日本酒の搾りかすでできています。後日日本酒の作り方も教えるわ。これ日本酒、ちょっと試してみて」
「……うん、白ワインに似てる。こっちのミルクみたいなのは?」
「それは……」
 いう暇も無くアナは飲み干してしまった。
「こっちの方が刺激的!」
「それは濁酒(どぶろく)です。ちょっとアルコール度が高いの、でもウォッカほどじゃないから、これを飲めばロシア人の酒癖も違ったものになるわ」
「アリサ……あなた、ひょっとしてロシア人の食文化を変えるつもり?」
「少しはね。ロシアは、これから試練の時代に入っていく。それに少しでも役に立ちたいの……」
「いつになく真顔ね……」

「アリサさん、もうカップラーメンじゃ支えきれん。大使館を締めてパリに避難する。そのアーニャ君はどうする?」
「大使、宮殿はどうなっています!?」
「民衆が取り囲んでいる。兵も逃亡しはじめて、早晩軍は機能しなくなる」
「あわたし、宮殿に戻る!」
 そう言ってキッチンのドアから出ようとして、アナは意識を失った。

 気づいた時は列車の中だった。

「ここは?……アリサ。どうして宮殿に戻してくれなかったの!」
「アナ……アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ、あなた一人を助けるのが精一杯だったの。ごめんなさい」
「お母様や家族のみんなは!?」
「幽閉されておいでです。もうあたしの力でも及ばないところで……お命に別状はありません」

 アリサは知っている。来年の7月17日、皇帝一家は皆殺しになる。いや、ならねばならない。そしてアナスタシアを中心にボルシェビキを打ち倒し、新しいロシア……世界を作るために。
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・16』

2019-05-26 06:03:06 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
真田山学院高校演劇部物語・16


『第二章 高安山の目玉オヤジと青いバラ6』


「で、今日からほんまのクラブとして扱いたい」

 じゃ、今までのは……。

「ま、クーリングオフ効きのお試し期間」
「ほな、わたし介護休暇とってるさかい。オオハッサン、このプリント見とって。あとはよろしゅう……みんなもな」
 乙女先生はテレビで見た神沼恵美子そっくりの後ろ姿でプレゼンを出て行った。
「ほんなら、クラブのルールを決めよか」
 で、以下のル-ルってかオキテが決まった。

①部活は週四日とする。変にポコポコ休まれるより、いっそ共通の休みを取った方がいい。そのかわり日頃の部活は休まないよう。土日は、公演前を除いてはやらない。くどいようだけど日頃の部活は休んじゃいけない。

②部活は四時から六時。これ、四時に来るんじゃなくて、四時には部活にかかれる体制でいること。われらが真田山学院は、なんと七時間目まであって、クラスの終礼やら、掃除当番なんか当たっちゃうと、この四時ってのが妥当なセン。その代わりってか、六時ってのは部活を終わる時間じゃなくて、校門を出る時間。

③やむを得なく休んだり、遅刻する時は、部長か、顧問の乙女先生に言っておくこと(メール可)

④基礎練習はもちろん、本編の稽古に入ったら、基本的な練習は各自自分の時間でやること。部活の時間はその成果をぶつけ合い切磋琢磨(せっさたくま、って読むんだよ)する場である。

⑤したがって、シャバ(部活以外)の空気を部活に持ち込まないこと。モチベーション八で前日の稽古が終わったら、次の稽古は、そのモチベーション八から始まらなくてはならない。むろん部活の最中に教科の課題やら、宿題をやってはいけません。

⑥これは、一年限りのオキテ。今の演劇部は再建団体なので、顧問とコーチの指示を第一にすること。

 ほかにも大橋先生は、こう言った。

「今年はオレの本だけ演るけど、来年度以後は自分らで本決められるように、暇があったら、戯曲(お芝居の本)読みなさい」
 で、戯曲のリストを配ってくれた。
 ヌヌヌ……五十本ほどの戯曲が書かれていたが、さすがのわたしも読んだことがあるのは四本しかなかった。
「それから、これ『大阪スプリング・ドラマフェスタ』の通し券や、二十本ほどの芝居がタダで観られる。タロくんに渡しとくさかい、できるだけ観ときなさい」
 お、いいものメッケ!
「それから……」
 先生は乙女先生のプリントを広げて見せた。
「八月十八日にピノキオ演劇祭に出るさかいにそのつもりで。で、演る本はこれや」
 乙女先生が置いていった紙袋から台本を取り出してみんなに配った。テレビのバラエティー番組並に段取りがいい。

 台本の表紙には『ノラ バーチャルからの旅立ち』と書かれていた。

 家に帰ると、着替えもせずに部屋に籠もって、パソコンと睨めっこ。
 あの土曜の夜から、わたしはエッセーを書き始めた。
 パソコンだから、いくらでも書き直せる。倒置法を使ったり、やめたり。助詞や改行にこだわったり、あれこれ手を加えているうちに締め切りが迫ってきた。
 タイトルは「オレンジ色の自転車」 つまり、わが中古のオレンジチャリ。中味は、まだナイショ。
 やっと思い切り、プリントアウト。かねて用意の封筒に入れると、オレンジの愛車にうちまたがり街の本局を目指して、走り始めた!

「アッチャー……」

 オッサンか、わたしは。
 
 あと二三秒かってとこで、駅横の踏切の遮断機が下りてしまった。
 このラッシュ時、十分は踏切は開かない。しかたがないので跨道橋を兼ねた、駅の階段を自転車を担いで駆け上がる。「あんた、見かけより重いのね」愛車につぶやくと「はるかに言われたかないわよ」と言い返されたような気がした。

 速達の簡易書留で出し終わって、夕陽を背に受けて帰り道。踏切は皮肉なことに開いていた。タイミングの悪い女だよなあ、わたしって……。
 帰り道は山に向かっているので、いやでも目玉オヤジ大明神さまが目に入って、思わず手を合わせる。
 駅前の塾へ急ぐガキンチョたちが物珍しげに見ていく。心なし笑っていたような気がしたが、「あんたたちも、お受験の前にはやるんでしょうが」と、『アリとキリギリス』のアリさんの気持ち。
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