大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・せやさかい・021『修学旅行のお土産』

2019-05-30 13:42:45 | ノベル
せやさかい・021
『修学旅行のお土産』  

 

 

 部活にお茶は欠かせません。

 

 いっつもダージリンとかなんちゃらの紅茶。

 味覚が子どもなんで、スティック一本の砂糖をいれます。それが、今日は入れませ~ん。

 なんちゅうても、目の前に因島の八朔ゼリーともみじ饅頭があるから。

「キーホルダーとかもあったんだけど、カバンとかにつけられないしね」

 校則で、カバンにチャラチャラ付けるのは禁止されてる。むろん厳しい禁止ではなくて、常識的に一つ二つ付けてるのは言われへんねんけど。

「美味しいもの食べて、お喋りしてるほうがいいもんね」

 というわけで、頼子さんの修学旅行のお土産を広げてお茶してるというわけ。

「文芸部でよかったですぅ」

 留美ちゃんが小さく喜ぶ。小さくいうのは感激が薄いわけやない。留美ちゃんは、こういう感情表現をする子なんです。

「せやね、教室でやったら、お茶まで出してはでけへんもんね」

「八朔ゼリー、おいしいです」

「ほんとは、夏蜜柑丸漬 (なつみかんまるづけ)を買いたかったんだけど、萩でしか売ってないんで、それは、また今度ね」

 修学旅行のコースに萩は入ってない。行ったことないけど、文芸部の三人で行けたらええなあと思う。

「デバガメ捕まえたってほんとうですか?」

「頼子さん、カメ捕まえたんですか?」

「あ、うん、お風呂場で」

 わたしは、風呂場に迷い込んできた亀を思い浮かべてる。

「その、亀じゃないよ」

「え?」

「覗きだよ。お風呂場覗いてた男子捕まえたって……」

「湯船に浸かってると、窓がカタカタいうのよ。直観でうちの男子。いっしょに入ってる子たちには先に出てもらってね、思いっきりよく窓を開けてやったの」

「あ、開けたんですか!?」

「こういうのは、明るく景気よくやらなきゃ後味悪いからね」

「開けて、どうなったんですか!?」

「いっしゅん目が合ってね。手にスマホ持ってたから、思わず手を掴まえた」

「『キャーーー』とか『痴漢っ!』とか?」

「叫んだよ」

 そうだろ、こういう時、女子は叫ぶ!

「相手がね。で、ものはずみで、そいつは湯船の中に落ちて来てね、もう大騒ぎ。私は、騒ぎにするつもりはなかったんだ。でも、そいつが叫んで、バッシャバシャ音立てるし。すぐに先生が飛んできて……」

「犯人は、だれだったんですか!?」

 女の敵許すまじ!

「アハハ、気が動転してて忘れちゃった」

 これは、嘘だ。バッチリ見たはずなのに庇ってるんや。

「スマホは湯船の中に落ちてオシャカになったしね。いやいや、咄嗟のことって、やっぱ、抜けちゃうんだね」

 いやはや、女豪傑や。

 

 そして、下校時間いっぱいまで喋って、校門を出る。

 ここのところ聞き慣れた、元気のいい廃品回収の車が一つ向こうの通りをいく。

「ああ、来週は市長選挙だねえ」「ですね」

 頼子さんが呟き、留美ちゃんが合わせる。

 選挙とかに関心のないわたしは、それが選挙カーやいうのに気ぃついてなかった(^_^;)。

 ポーカーフェイスしといたけど、頼子さんが、あたしのほう見てクスリと笑う。

 ほんま、頼子さんはかないません。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
  • 榊原留美        さくらの同級生
  • 夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
  • 瀬田と田中       クラスメート
  • 菅井先生        担任
  • 春日先生        学年主任
  • 米屋のお婆ちゃん
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高校ライトノベル・連載戯曲 すみれの花さくころ(宝塚に入りたい物語)・2

2019-05-30 07:05:57 | 戯曲
連載戯曲 すみれの花さくころ
(宝塚に入りたい物語)・2 

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。下段に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください

 
すみれ: 気味が悪い。新手のキャッチセールスかオタクか、変質者か……それで、夢中で土手を駆け下りて。
 三つほど角を曲がった自販機の横で、やっと息をついて(ぜーぜー言う)思わずジュースを買って……振り返ったら……また!
かおる: (首から下げた自販機のダミーを外して)アハハ、ごめんね。あたし慣れないもんだから、やっぱり驚かしちゃったよね。
すみれ: あ、あなた、いったいなんなのよ!?
かおる: だから、幽霊。
すみれ: うそよ。こんなまっ昼間に出る幽霊なんか……。
かおる: あたし、暗いとこ嫌いなの。
すみれ: そんなズッコケ言ったって信じらんないよ。
かおる: ほんとうだってば……そうだ、ちょっと見ててね。

 自販機をソデに放り込み、交差点の真ん中に出て、大きく手をひろげる。

すみれ: あ、赤信号……あ、あぶない。ダンプが……キャー!!

 ブレーキもかけず、クラクションも鳴らさず、ダンプはかおるの体をすりぬけ何事もなかったように走り去る。

かおる: 分かった?
すみれ: な、なんなの、今の?
かおる: だから幽霊。一度死んじゃってるから死なないの。実体がないから、すり抜けちゃうし、運転手の人からも見えないの。
すみれ: うそ……。
かおる: なんなら、今度は電車にでも飛び込んでみせようか?
すみれ: だって……。
かおる: あなとは霊波動があう適うから見えるの……分かった?
すみれ: ……い、いちおう。
かおる: よしよし。
すみれ: で、でもさ……あたし、小さいころからあの土手道は通っているけど。会ったことないよ……あなたって、浮遊霊?
かおる: んー……地縛霊かな、どっちかっていうと……その本のおかげなのよ、こうやってお話できるの。
すみれ: この本?
かおる: うん。本とか物体にも霊波動があるの。人とは違うけどね。それが鍵になって、二人をこうして結びつけてくれるの。
 それも、もともと二人の霊波動が適うからだけどね。
 ほら、占いとかで、ラッキーアイテムってあるでしょ。何月生まれの人は何々を持っていると幸運がやってくるとか。

 すみれ、まが禍々しそうに、本を投げ捨てる。

かおる: それはないでしょ! 本には罪はないのよ。それに、今さらこれを捨ててもわたしは消えたりしないわよ。
 もう鍵は開けられたんだから(本を、すみれに返す)
すみれ: その幽霊さんが何の用?
かおる: かおるって呼んでくれない。あたし、あなたのこと、すみれちゃんて呼ぶから。
すみれ: どうしてあたしの名前?
かおる: アハハ、小さい時から知ってるもの、すみれちゃんのこと。あなたも言ってたでしょ。
 あの土手道は、しょっちゅう通っていたって。ほら、五年生の夏。あの春川の土手で昆虫採集やったでしょ。
 若い担任の先生がはりきっちゃって、昆虫採集しろって。こんな都会の真ん中で……。
すみれ: うん。でも、たくさんとれたよ。カブトやチョウチョ。あの夏だけは鼻が高かった……あ!?
かおる: 分かった?
すみれ: あれって……。
かおる: そう、あたしが手伝ったの。ひょっとしたら通じるんじゃないかと思って。
すみれ: ありがとう……。
かおる: いいのよ。あれって、あたしのあせりみたいなもんだったんだから、
 アハハ、タラララッタラー(思わずタップを踏んだりする)
すみれ: 明るいのね、かおるちゃんて。
かおる: 幽霊が暗いなんていうのは、生きてる人たちの偏見です! 
 ちゃんと二本の足もあるし、昼日中でも出てくるし……そうだ、スマホだって持ってるんだよ。ほら!
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・047『しばらく留守にしていました』

2019-05-30 06:46:25 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・047
『しばらく留守にしていました』




 プロキシマbは最も太陽系に近い天体である。

 地球からは4.2光年離れている。

 突如、そのプロキシマbから強力なトラクタービームで牽引されてしまった。
 トラクタービームは非常に強力で、アンカーを打ったタイタンの公転速度を落とすぐらいである。
 あれから二日がたった。
 トラクタービームを断ち切るために色々試してみたが無駄であった。

 そこまで書いて、艦長は航海日誌を閉じた。

 丸二日寝ていないが頭は冴えている。
 冴えてはいるが、あと二三時間が限度だろう。いま飲んだお茶が妙に渋い、サクラが淹れてくれるお茶の味は安定している、渋く感じるのは味覚が変になってきたからだろう。このままでは艦長としてまともな判断が出来なくなる。

――もう休んだ方がいいわよ――

 誰の声かと振り返ると、いつの間に交代したのかメグミ一曹が不安を隠しきれない笑顔で立っているのが目に入った。
「なにか言ったかい?」
「いいえ……お茶淹れ直しましょうか」
「いや、ブリッジに戻るよ」

 そう言ってテーブルに手を着いて立ち上がる。体が軽い、いや軽すぎる。やはり疲れから来る異常な感覚なのだろう。ランナーズハイに近いなと思った。

――副長と交代した方がいいわ――

 今度は分かった。
 これはカワチのメインCPのアマテラスだ。緊急の時には直接艦長の頭に呼びかけるようになっている。
 仕組みとしては理解していたが、じっさい声を聴いてみるとお節介な女性上司という感じだ。
――あら、もっと萌え~っちゅう感じが良かった?――
「いや、それで……」
――アマテラス心配だよ~、おにいちゃ~ん――
「勘弁してくれ、わたしに妹属性は無い」
――だったらブリッジに行く前にデッキで頭冷やしたら。五番の自販機、まだ当たりは出てないから――
「そうなんだ……」

 五番の自販機にコインを投入……ピコピコピッピピー🎵と当たりの電子音。

 疲れていても当たりは嬉しい、もう一本微糖を獲得してラッタルを上がる。
「ウヮオッチ💦」
 不覚にもラッタル最後の段を踏み外しそうになる。

 ガシ

 虚空を掻いた手が、細くもしっかりした力で掴まえられた。
「や、すまん」
 掴まえてくれた手を掴み返して見上げると、そこには純白の第二種軍装をまとった千早姫副長が立っていた。

――すみません、しばらく留守にしていました――

 副長の声はアマテラス同様、直接心に響いてきた……。

  
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・13《アナスタシア・9》

2019-05-30 06:36:53 | 時かける少女
 時かける少女BETA・13
《アナスタシア・9》               
 
 
 
 歓声とともに一発の銃声がした……!
 
 アリサは身をもってアナを庇った。庇いきれずに、弾はアナの袖をかすめていった。アナは一瞬顔をしかめたが、直ぐに亡命ロシア人たちに向かって、こう叫んだ。
 
「だめ! その人を殺してはいけません!」
 
 犯人を袋叩きにしかけていた群衆は、その言葉に動きを止めた。かつて自分を暗殺しかけた人間の命を助けた皇族がいたであろうか。
 
「殺してしまえば、モスクワやペトログラードで、革命を叫んで破壊の限りを尽くしている人たちと同じになります。日本のお巡りさん、その人を、わたくしの前に」
 
 ボルシェビキの暗殺者と思われるロシア人の青年は、憲兵と警察官に拘束されて、アナの前に引き据えられた。

「ここはロシアではありません。あなたは日本の法律で裁かれます。もう会えないかもしれないけど、一度ゆっくり話がしたいものです」

 右の袖には血が滲んでいたが、アナは構わずに話し続けた。
 
「まず話し合いましょう。そして新しいロシアを作るのです。革命を起こした人たちとは戦いになるかもしれません。でも、話し合い、法によって前に進んでいきましょう。かつて大津事件で父ニコライは負傷いたしました。でも日本の方々はロシアをむやみに恐れず、犯人を裁判にかけました。日本は小さな国ですが、法と正義の実現では、わたしたちロシアよりもはるかに大国です。その日本や世界の国々から学んで、知恵を出し合って……知恵ですよ、けして拳ではありません。わたしは、みなさんがバラバラにならないように文鎮になれれば、それで本望です。今わたしの右腕から流れているロマノフ家……いいえ、ロシア人の血にかけて、わたしは誓います。そして温かくわたしたちロシア人を受け入れてくださった天皇陛下、日本国民の皆さんには心よりお礼を申し上げます」
 
 皇居前広場に集まった日露の人たちから、鳴りやまぬ歓声と拍手がおこった。
 
 日本政府は、東京に臨時ロシア政府を置いてはと勧めたが、アナは南樺太を希望した。アナは少しでもロシアに近いところに臨時政府を置き、ロシアの再興をはかりたかったのだ。
 
「アナ、日本政府の力だけ借りていてはいけないわ」
 
「分かっているわ、とりあえずサハリンに集まったロシア人の力で北サハリンを取り戻すわ」
 
「むろん先頭に立つのは、ロシア人。でも、この戦いは長くなりそうだし、資金も、まだまだ要るわ」
 
「でも、少しでも早くロシアを解放したいの。そして、お父様たちを助けたい」
 
「いま各国が、ロシアの革命政府を倒そうとシベリアに出兵している。名目はチェコ軍の救出だけど、本心はロシアでの自分たちの権益を勝ち取るため。日本も例外じゃない」
 
「じゃあ、どうすれば?」
 
「ハバロフスクを目指しましょう」
 
「ええ、あんな東の外れ!?」
 
「シベリアでは戦争はできません。冬は極寒、夏は沼地と蚊の群れ。損失が大きくなるわ。小さくともハバロフスクを中心に豊かなロシアを再建するの。革命ロシアよりも豊かで立派なロシアを。そうすれば人もお金も集まる。家族を思う気持ちは分かるけど、ロシアを再建できなければ元も子もなくなるわ」
 
「……分かったわ」
 
「それから、ポーランドの人たちがシベリアに二万人抑留されている。シベリア鉄道で孤児たちを少しずつウラジオストクに集めている、日本政府がね。これはアナを助けたのと同じ純粋な気持ちから。でも、その後ろにはどす黒い欲望がある。日本を悪魔にしないためにも東シベリアは臨時政府が取るべき」
 
 アリサの指摘はさらに続いた。ポーランド独立の承認、ユダヤ資本の導入(それは実質的にはアメリカの援助と資本流入を示す。アリサは、これで長期的には日米の衝突を回避しようという狙いがある)によるハバロフスク周辺の工業化、ウラジオストクの中継貿易……それらの実行で、樺太を合わせても日本ほどの面積の国にしかならなかった。しかし、小さくても豊かな小ロシアにロシア人たちは集まり始めた。
 
 そうして、季節は夏から秋に替わり、ロシアのウラル山脈の西で史実通り10月革命がおこり、革命政府はボルシェビキが掌握。本格的な共産国家ソヴィエトが生まれた……。
 
  ただ史実と違うのはシベリアの東端にアナスタシアを女帝と仰ぐロシアが急成長していることだった。
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・20』

2019-05-30 06:19:21 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
真田山学院高校演劇部物語・20  


『第三章 はるかは、やなやつ!2』

 
 演劇部は……まだペンディングです。
 
 おもしろいからペンディング。
 なんだか矛盾……わたしって臆病だから。
 バスルームに映った自分の体は、思いの外、大人びていた。でも、体に乗っかっている顔は、荒川に越してきたばかりのガキンチョの頃のように怒っているように見えた。

 吉川裕也、こないだのメールでアカラサマ。
――デートしようぜ!――
 思い返すと、わたしの彼に対するホンワカには、そう言わせる「媚び」があったのかもしれない。
 ま、いいか、悪い人じゃなさそうだし、一回ぐらい大阪の名所案内してもらうのも。
 
 湯おけを逆さにして湯船に沈める。湯船に沈めるときの抵抗感がおもしろい。湯船の底に着いたところで、ホワーンとひっくり返す。
 ポッカーン! と大きな泡が、目の前で爆発。快感!
「アハハハ……」
 笑ってみる。ガキンチョのころよくやった。
 もっとも、そのころは、泡の向こうにお父さんか、お母さんがいたんだけどね。
 成城のころはお風呂も大きかった。荒川に越してからは、両親ともども忙しかったことや、お風呂が狭くなったこともあって、お風呂では、お母さんに髪を洗ってもらうくらい。
 このポッカーンは、あまりやる機会がなかった。

 寝る前に、広辞苑の蓋をとってみる。
 マサカドクンが、例のポッカーンをやっていた……。
 これ以上真似されてはたまらないので、あらためてドスンと広辞苑で蓋をした。
 
 のっぺらぼうのマサカドクンと目が合ったような気がした。
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