『廃棄たこ焼きの画期的再生』
これを試してみて!
航海長はテーブルの上に大きめのタッパを置いた。
中身はたこ焼きなのだが、置いた時にカサコソと乾いた音がした。
「たこ焼だよね?」
「ま、御覧じろ」
蓋を開けると、衝撃で再びカサコソ。
見た目も匂いもたこ焼きなのだが、コロコロしていて、なんだかプラスチック製のサンプルのようだ。
たこ焼きというのは多量の水分を含んでいるもので、カサコソとかコロコロとかの乾燥した音はしないものだ。
「サンプルとかじゃないんだよね?」
「……食べれるんですか?」
航海長の馬力と、たこ焼の意外なたたずまいに、ちょっと興味を持ってしまう清美船務長。
つまんだたこ焼きはビックリするほどに軽い。
矯めつ眇めつしてみるが、佇まいはまごうことなきたこ焼きだ。
「さ、食べてみてよ!」
「う、うん」「はい……」
サク……サクサクサク!?
たこ焼きにあるまじき食感にビックリする。
「「フフフフ、ハハハハハハ」」
たこ焼きごときにシテヤラレタという感じ。
小気味よく裏切られた感じ。
ふつう裏切りというのは腹立たしいものなのだが、なんとも愉快になる。
「思い出した……」
記憶の底から相似形の驚きが浮かび上がってきた。
「オランダにたこ焼きソックリのAebleskiverというのがあって、子どものころに食べた衝撃に似てる……」
清美の父親は民自党の議員であるが、その父親に同行したオランダでの体験が蘇った。
「わたしも知ってる。候補生の遠洋航海でアムステルダムに寄ってさ、屋台でたこ焼きソックリなのよね」
「ああ、ボクも防衛駐在官をしていた時に食ったことがある。でも、Aebleskiverはパンケーキみたいに甘い匂いがするから、なんとなく予想はつくんじゃないかい?」
「その時は風邪ひいて、鼻が全然利かなかったんです」
「ハハ、そりゃ衝撃だったろうね」
「でも、これは、それ以上、雪見大福初体験を超えますね!」
艦長は微笑ましくなった。
「でも、艦内のたこ焼は過剰気味なんじゃないのかい?」
同時に艦長らしい心配もする。
「これ、余ったたこ焼きを再生したもんです」
「「え!?」」
「調子に乗って焼きすぎるんで悩んでいたんです。さすがに一昨日あたりから残っちゃいましたからね。そしたら松本君(機関長)が真空フライヤーを作ってくれましてね、水分を飛ばしてスナックに変身させることができたんですよ。これだと二か月はもつし、冷めきったたこ焼きの臭いって、あんまり食欲わかないでしょ。アイデアは砲雷長です、なんでもミナミのたこ焼き屋さんが売れ残りを廃棄するのがもったいないということで始めたんだそうですよ」
「いやあ、コロンブスの卵だね」
清美船務長が立ち直るきっかけになると艦長は思ったが、自分が言いだしてはいかにもという気がする。
今日のところは、廃棄たこ焼きの画期的再生を面白がれたことで良しとした。
これを試してみて!
航海長はテーブルの上に大きめのタッパを置いた。
中身はたこ焼きなのだが、置いた時にカサコソと乾いた音がした。
「たこ焼だよね?」
「ま、御覧じろ」
蓋を開けると、衝撃で再びカサコソ。
見た目も匂いもたこ焼きなのだが、コロコロしていて、なんだかプラスチック製のサンプルのようだ。
たこ焼きというのは多量の水分を含んでいるもので、カサコソとかコロコロとかの乾燥した音はしないものだ。
「サンプルとかじゃないんだよね?」
「……食べれるんですか?」
航海長の馬力と、たこ焼の意外なたたずまいに、ちょっと興味を持ってしまう清美船務長。
つまんだたこ焼きはビックリするほどに軽い。
矯めつ眇めつしてみるが、佇まいはまごうことなきたこ焼きだ。
「さ、食べてみてよ!」
「う、うん」「はい……」
サク……サクサクサク!?
たこ焼きにあるまじき食感にビックリする。
「「フフフフ、ハハハハハハ」」
たこ焼きごときにシテヤラレタという感じ。
小気味よく裏切られた感じ。
ふつう裏切りというのは腹立たしいものなのだが、なんとも愉快になる。
「思い出した……」
記憶の底から相似形の驚きが浮かび上がってきた。
「オランダにたこ焼きソックリのAebleskiverというのがあって、子どものころに食べた衝撃に似てる……」
清美の父親は民自党の議員であるが、その父親に同行したオランダでの体験が蘇った。
「わたしも知ってる。候補生の遠洋航海でアムステルダムに寄ってさ、屋台でたこ焼きソックリなのよね」
「ああ、ボクも防衛駐在官をしていた時に食ったことがある。でも、Aebleskiverはパンケーキみたいに甘い匂いがするから、なんとなく予想はつくんじゃないかい?」
「その時は風邪ひいて、鼻が全然利かなかったんです」
「ハハ、そりゃ衝撃だったろうね」
「でも、これは、それ以上、雪見大福初体験を超えますね!」
艦長は微笑ましくなった。
「でも、艦内のたこ焼は過剰気味なんじゃないのかい?」
同時に艦長らしい心配もする。
「これ、余ったたこ焼きを再生したもんです」
「「え!?」」
「調子に乗って焼きすぎるんで悩んでいたんです。さすがに一昨日あたりから残っちゃいましたからね。そしたら松本君(機関長)が真空フライヤーを作ってくれましてね、水分を飛ばしてスナックに変身させることができたんですよ。これだと二か月はもつし、冷めきったたこ焼きの臭いって、あんまり食欲わかないでしょ。アイデアは砲雷長です、なんでもミナミのたこ焼き屋さんが売れ残りを廃棄するのがもったいないということで始めたんだそうですよ」
「いやあ、コロンブスの卵だね」
清美船務長が立ち直るきっかけになると艦長は思ったが、自分が言いだしてはいかにもという気がする。
今日のところは、廃棄たこ焼きの画期的再生を面白がれたことで良しとした。