はるか 真田山学院高校演劇部物語・1
『第一章 ホンワカはるかの再出発』
環状線Y駅を降りて、見上げた空にはホンワカと雲ひとつ。絵に描いたような五月晴れ!
「おーし、この調子でホンワカと!」
……と思っていたら唐突に校門が目の前に立ちふさがった。むろん開いてはいたけど印象はまさに通せんぼ。
言っとくけど、学校が駅前にあるわけじゃない。駅から三つ角を曲がるんだけど、緊張のあまりボンヤリしてた。で、ついでに言っとくけど、いつもボンヤリしてるわけじゃない。
今日は特別よ、ト!ク!ベ!ツ!!
転入試験で一度は来たんだけど、やっぱ緊張してたんだ。校舎のこととか全然おぼえていない。
環状線Y駅を降りて、見上げた空にはホンワカと雲ひとつ。絵に描いたような五月晴れ!
「おーし、この調子でホンワカと!」
……と思っていたら唐突に校門が目の前に立ちふさがった。むろん開いてはいたけど印象はまさに通せんぼ。
言っとくけど、学校が駅前にあるわけじゃない。駅から三つ角を曲がるんだけど、緊張のあまりボンヤリしてた。で、ついでに言っとくけど、いつもボンヤリしてるわけじゃない。
今日は特別よ、ト!ク!ベ!ツ!!
転入試験で一度は来たんだけど、やっぱ緊張してたんだ。校舎のこととか全然おぼえていない。
わたし、坂東はるかは、東京の荒川って下町から訳あって、この大阪の真田山学院高校に転校してきた。
この学校は、府立高校の中で、ただ一つ「学院」の名前が付く。元々は大正時代にできた私学なんだけど、第二次ベビーブームのころに府が買収。有力国会議員が数人いる同窓会の強い意向で元の校名が残った。わたしの偏差値なら、他にも受けられる学校はあったんだけど、この「学院」という私学的な校名に惹かれて、ここを選んだ。
そして今日がはじめての真田山学院高校の生徒としての登校。
登校たって、今日は中間テストの最終日の放課後。いろいろ説明うけて、校内案内してもらったりするだけなんだけど……校舎を見上げただけで、わたしのホンワカはふっとんでしまった。
校門から校舎につづくネコのオデコほどのアプロ-チ。五階建ての古ぼけて、あちこちに浮き出た血管のようにはい回っている配管。渡り廊下ってか、渡り校舎の下が薄暗いピロティー。そのピロティーの中から、あきらかにわたしをモノメズラシく見つめる生徒サンたちの視線……。
そりゃそうだろう、わたしはまだ東京の高校の制服のまんま、それがウサンクサゲというか怒ったような顔(わたしはビビると怒ったような顔になる)で校舎見上げてんだもん。
あ、校門の脇にマサカドクン!
こいつについては、後ほどくわしく述べます。ひとまず不思議な存在と思っていてください……。
「電話してくれたら校門まで迎えに行ったげたのに」
「いえ、こんなに校舎の中が複雑だとは思ってなかったもんですから……」
この学校は、府立高校の中で、ただ一つ「学院」の名前が付く。元々は大正時代にできた私学なんだけど、第二次ベビーブームのころに府が買収。有力国会議員が数人いる同窓会の強い意向で元の校名が残った。わたしの偏差値なら、他にも受けられる学校はあったんだけど、この「学院」という私学的な校名に惹かれて、ここを選んだ。
そして今日がはじめての真田山学院高校の生徒としての登校。
登校たって、今日は中間テストの最終日の放課後。いろいろ説明うけて、校内案内してもらったりするだけなんだけど……校舎を見上げただけで、わたしのホンワカはふっとんでしまった。
校門から校舎につづくネコのオデコほどのアプロ-チ。五階建ての古ぼけて、あちこちに浮き出た血管のようにはい回っている配管。渡り廊下ってか、渡り校舎の下が薄暗いピロティー。そのピロティーの中から、あきらかにわたしをモノメズラシく見つめる生徒サンたちの視線……。
そりゃそうだろう、わたしはまだ東京の高校の制服のまんま、それがウサンクサゲというか怒ったような顔(わたしはビビると怒ったような顔になる)で校舎見上げてんだもん。
あ、校門の脇にマサカドクン!
こいつについては、後ほどくわしく述べます。ひとまず不思議な存在と思っていてください……。
「電話してくれたら校門まで迎えに行ったげたのに」
「いえ、こんなに校舎の中が複雑だとは思ってなかったもんですから……」
一通りの説明を受けたあとの、わたしの担任竹内先生との会話。
竹内秀哉先生。黒目がちの目の上に太筆で「一」を書いたような眉。終始わたしの目を見ながら笑顔を絶やさない。先生というより、商売人のオジサンのエビス顔だと思ちゃった……その瞬間。
「アメチャン食べる?」
さすが大阪、絶妙な呼吸!
竹内秀哉先生。黒目がちの目の上に太筆で「一」を書いたような眉。終始わたしの目を見ながら笑顔を絶やさない。先生というより、商売人のオジサンのエビス顔だと思ちゃった……その瞬間。
「アメチャン食べる?」
さすが大阪、絶妙な呼吸!
でも、男の人でもアメチャン出すんだ。
「失礼します」
ちょうどタイミングよく入って来たポニーテールに、先生はもとのエビス顔。
「あ、ちょうどよかった、由香。この子、東京から転校してきた坂東はるか君や、学校の中案内したってくれるか」
「はい、よろこんで、ころこんで!」
と、調子よくポニーテール。
これがわが親友鈴木由香との出会いであった。