大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・50『1+1=2』

2020-10-01 05:20:47 | 小説6

・50
『1+1=2』     
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名
  

 

「1+1はいくらだ、みなみ!?」

 みなみは、なんのことか分からかった。

「え、え……」
「もう一遍聞くから、よだれ拭いてから答えろ。1+1はいくらだ、みなみ!?」
 みなみは、ホッペのよだれを拳で拭って、答えた。
「あ、あの……2」
「ハア……1+1の答えは2か!?」
「は、はい……」
「落ち着いて、よーく考えろ。1+1はいくらだ、みなみ!?」
 クラスのみんながクスクス笑いだす。
「え、ええ……じゃ、3?」
「4じゃなかったかな」
「あ、4です」
 クラス中が大爆笑になった。みなみは顔を真っ赤にして俯いた。
「今のが世論操作の実験だ。1+1は2に決まってる。ところが、周りが笑ったりすると自信がなくなって、4なんてとんでもない答えでも、そうかなと思ってしまう。一昔前は拉致事件があるなんて、国民の99%が嘘だと思っていた。拉致被害者の家族は頭がおかしいと思われて、国会議員に陳情にいっても相手にもされなかった」

 社会科の講師らしく、みなみの居眠りをネタに世論操作の実態を体験的に生徒に理解させた。みなみは、シャッキリと目が覚め、みんなの関心は、ポナのチイニイである孝史の「地球温暖化のウソとホント」に移っていた。

「夕べ、夜更かしでもしてたのか、みなみ?」
 帰りの正門で一緒になったので、乃木坂を下りながら孝史は聞いてみた。
「あ、あしたヘブンリーアーティストの審査受けるんです」
「ああ、ポナもそんなこと言ってたな。練習のしすぎか?」
「いいえ、単に緊張して眠れなかっただけです」
「それは、想像力が豊かな証拠だ。ポナなんか爆睡だもんな。でも学校じゃ居眠り。あいつのは、単に授業に興味がないだけだけどな」
「そうなんですか……」
 安祐美が夢の中で特訓していることは想像がついたが、人には言えない。
「なんか、屈託ありげだな?」

 自分たちの前後に人が居ないことを確認して、みなみは聞いてみた。

「寺沢先生、ひょっとしたら、今学期限りで辞めるんじゃないんですか?」
 ドキリとしたが、顔に出るほどの駆け出しではない。
「よく分かったな?」
「あ、いえ、なんとなく。授業の熱が違うって感じ……かな」
 みなみは、ポチが亡くなる前に、偶然だが最後のいい写真を撮ってくれて、写メの賞をとっている。特別に勘のいい子なのかもしれない。
「……実は、オレは日本政府の秘密情報員なんだ。で、不定期に表の稼業を変えて人々の目をくらましている」
「アハハ、1+1は3だ!」
「アハハハ」
 駅に着くまで大笑いした。

 木を隠すのは森の中……ちょっと違うかな、と思う孝史であった。




※ ヘブンリーアーティストは、この作品の創作で、実在のヘブンアーティストではありません


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父が顧問をする演劇部の部長
蟹江大輔  ポナに好意を寄せる修学院高校の生徒

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かの世界この世界:88『ヒュルルルル……』

2020-10-01 05:05:26 | 小説5

かの世界この世界:88

『ヒュルルルル……』    

 

 

 

 往路が散々だったので山地に入ってからはみんなピリピリしっぱなしだ。

 峠を越えたりカーブを曲がるたびに緊張し、藪から小鳥が飛び出しては車載機銃を向け、夕陽の傾きで岩肌が照らされては「クリーチャー来襲!」と75ミリ砲を撃ちまくった。没する寸前の太陽が一瞬で雲を茜に染めた時など、メスシリンダーや融合体の出現と狼狽して、みんな有りっ丈の魔法攻撃を食らわしてしまった。おかげでみんなMPが乏しくなって、夜道を四号の前照灯を頼りに歩いてMPを回復させる始末だ。こんどペギーに会ったらエーテルを中心に補充しなければならないと思った。

 寝不足になりながら無辺街道にたどり着くと、人や車両の往来が乏しくなっていた。

 エーテルの補給をと財布を取り出していたのだが、ペギーの出店も取っ払われていた。

「あんたら……失礼しました大尉殿、どこの戦車隊ですか?」

 南下してきた軍用トラックに誰何された。ドライバーは輸送部隊の女軍曹で、面構えと体格に似合わない高い声でなければオッサンと間違うところだ。

「独立遊撃隊だ、ムヘン山地の警戒から戻ってきたところだ。あんたらは?」

「北で大規模な作戦行動が始まります、それで輸送車両は後方に戻しているんです。あと二三台来れば、それも終了です」

「作戦とは、クリーチャーの掃討戦か?」

「それもあります……それ以上は申せません」

「レジスタンスか」

「ノルデン鉄橋で装甲列車が擱座したことを受けてのことらしいです、北に向かわれるのでしたらお気を付けて」

「ああ、そうするよ」

「では、失礼します」

 軍曹は敬礼するとトラックを発進させた。助手席には工兵の操縦徽章を付けた一等兵が乗っているのが不思議だったが、尻を振りながら、かなりの高速でデコボコ道を遠ざかっていく。迅速かつ確実に戻るには一等兵の技量では心もとないのだろう。

 ヒュルルルル………かん高い音が降って来る!

「みんな車内へ! ハッチを閉めて!」

 叫ぶと、タングリスは四号を全速後退させた。

 

 ドッガーーーーーーーーーン!!

 

 つい今まで四号が居たところに大口径砲弾が着弾、車内の我々はもみくちゃになった!

「すまない町長、これから先は自力で戻ってくれ。我々はノルデンハーフェンを目指す、ローゼンシュタットに立ち寄る余裕もなし、同行してもらうには危険が大きすぎる」

「大丈夫さ、タングリス大尉。若いころはマラソンでならしたもんだし、エスナルの泉で十分回復したしな」

「ああ、じゃあ、水と二食分の食糧だけ持って行ってくれ」

「ありがとう、それじゃ、また平和になったら寄ってくれ。殿下、みなさん、ご無事で、失礼します!」

 町長は軽々と四号を下りると、西に向かって駆け出した。

「タングリス、くるぞ!」

 

 ヒュルルルル……

 

 着弾の前触れに、タングリスはアクセルを踏み込み四号をまっしぐらに北に向かって走らせた。

 

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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