大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・023『親父一人の企て・2』

2020-10-28 07:19:09 | ボクの妹

戦記・023
『親父一人の企て・2』    



 深い海の中を落ちていく感じだ。

 海であるわけはなんだが、コクピットの外は密度の高い液体という感触なのだ。
 ウズメは高度な水密構造になっていて、関節や接合部から水が入ることはない。たとえ入って来たとしても、コアであるコクピットが浸水することはあり得ない。もし深さ千キロの海があったとして、そこにウズメが潜ったとしても、その水圧に耐えられるように造られている。千キロと言うのもコンピューターの設定限度であり、実際は、それ以上である。
 だが、ウズメのあちこちが水圧に耐えかねてギシギシきしむ音がする。今にも圧潰しそうで、とっくに死んでいる俺が言うのもなんだけど、生きた心地がしない。

 ブラフね。

 まりあは平然としている。こいつの腹の座り方はハンパじゃない。
 こういうところを見込んで、親父は、まりあをウズメのパイロットに選んだんだろうか。
 まりあのコネクトスーツはウズメと同期していて、ウズメを自分の身体のように動かせるし、デカブツのウズメが感じたことは皮膚感覚としてまりあが感じられる仕組みになっている。
 そのコネクトスーツを通して感じる水圧を、まりあはブラフと読み取ったのだ。

 抜ける!

 とたんに水圧が消えて、鈍色の無重力空間に放り出される。
 奇妙な感じだ……空間そのものが狼狽えてくたびれている。
 例えて言うと、ビッグバンによって生まれた宇宙が広がるだけ広がって、膨張の頂点に達し、今まさに収縮して滅んでしまう寸前のような戦きだ。

 まりあは皮膚感覚のままウズメを旋回させた。

 このあたり……!

 まりあがトリガーをひくと、ウズメの胸元からギガパルスが発射される。
 パルスの軌道は虹色に輝き、輝きの彼方で星屑が舞い散った。

 ザワーー!

 何かが動く気配がした。

 ザワ ザワワーーー!

 気配が動くにつれて、まりあは身じろぎし、それに合わせてウズメが動く。

 そこだ!

 まりあの指が動き、胸元の他、ウズメのあちこちからギガパルスが発射される。
 なんだか、ウズメは虹色の光を放ちながら舞い踊っているように見える。

 そこ! そこ! そこ!

 ウズメの攻撃は的確で、ギガパルスの到達点では、花火大会のクライマックスのように光に満ちた。

 来る!

 閃いた時には、ウズメは組み敷かれていた。
 生き残りのヨミが半実体化して組みついてきたのだ。
 ウズメの反応も早かったので、バックをとられることはなかったが、身動きがとれない。
 やがて、ヨミの体からは十本以上の触手が現れウズメの体を締めあげ始めた。
 コクピットの中では、まりあがウズメと同じ姿勢で喘いでいる。受け身になるとシンクロしていることが裏目に出る。
 まりあの顔に冷たい汗が流れる。

 まりあ、あの技だ!

 仏さんの身でありながら、俺は叫んだ!

 通じたのか、まりあはヨミを巴投げにした。小学校のころ俺が初めて負けた時のまりあの技だ。
 巴投げそのものは不発だが、一瞬ヨミの締め付けが弛んだ。
 ウズメは胸元と股間からテラパルスを発射し、ヨミを粉砕した。

 勝った…………

 勝利を確信して、まりあは気を失ってしまった。
 

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ポナの季節・77『ライブの途中海辺にて』

2020-10-28 07:09:12 | 小説6

・77
『ライブの途中海辺にて』
         


 内陸のA町での慰問ライブが終わるとクタクタだった。

 午後からはS市でのライブが待っているので、ポナたちSEN48のメンバーは、走るマイクロバスの中、思い思いに休息をとっていた。

 ポナは眠ってしまうとテンションが下がってしまうので、なんとか眠らないようにブログに寄せられたコメントを読み、そのいくつかに返事を打っていた。
「まめねえ、ポナ」
「起きてたんだ、安祐美」
「いま目が覚めたとこ……あ、もう海沿いを走ってる」
「ほんとだ、なんだか時間がとんだみたいな……」
「ハハ、ポナ起きてたんでしょ」
「ずっとコメント読んでたから…………きれい……この海が津波になったなんて信じられない……ねえ、安祐美……あら、もう寝てる」

                  

 そのときスマホが振動した。
「え…………」
 スマホの画面には目の前と同じ海岸の景色が写っていて、それがまばたきをするたびに大きくなってポナの視界いっぱいに広がって目の前の景色と重なって、十秒もすると車窓から見える景色と区別がつかなくなってきた。

「え、なにこれ……」

 瞬間目をつぶる、ごく間近で波音がした。

「え、いつの間に着替えたの?」

 砂浜に立つSEN48のメンバーは水着姿になってポナを見ている。
「なに言ってんの、ポナだって水着じゃん」
「ビーチボール持ってるくせに」
「え……ほんと」
「いくよ、渚まで駆けっこ!」
「あ、待って!」

 それからポナたちはスタッフもいっしょに浅瀬で泳いだりビーチボールで遊んだりした。

「もうちょっと沖まで泳いでみたいな」
「そうだね、沖の方までクリアーだもんね」
「ポナ、ダメかな?」
「あたしに聞かれても……」

「大丈夫ですよ、岬のとこまでは背が立ちますから!」

 クラブ帰りだろう、女子高生が道路の方から明るくアドバイスしてくれた。仲間が四五人いるようで、みんなお日様の子供のようにニコニコしている。
「ありがとう。じゃ、みんな、あの岬まで行くよ!」
「オーシ!」
 ポナを先頭にみんなで岬まで泳いだ。

「ああ、爽快だ!」

 叫んだときはマイクロバスの中にいた。
「騒がしいなあ、ポナは」
 となりの由紀が不服そうに言う。
「え、いま岬まで……みんないっしょに泳いで……」
「アハハ、ポナ寝ぼけてる」
「あそこでスイカ売ってるから、車とめて井上さんが買いにいってる」

 首を捻ると、道路を挟んで直売店があり、アシスタントの井上さんが戻ってくるところだった。

「キャー、スイカ、スイカ!」
「うーん、たまらん!」
「ホッペが落ちる!」
「体重増える!」
 スイカを食べながら海の方を見ると『遊泳禁止』の札が立っている。
「あれえ……でもさ……」
 振り返って気がついた。さっきまでクタクタだったみんなが元気になっている。
「じゃ、午後のライブに出発しまーす」
「オー!」
 井上さんの張りきった声に、みんなが答えた。

 それから四時間……

 S市のライブが終わって同じ道をもどった、あの海辺を通過、スイカの直売店は影も形もなかった。

 グーグルマップで確認すると、周辺には高校や中学も存在しなかった。
 



ポナと周辺の人々

父     寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:115『ヤコブとユーリアの母』

2020-10-28 06:52:44 | 小説5

かの世界この世界:115

『ヤコブとユーリアの母』語り手:ブリュンヒルデ      

 

 

 

 ヘルムの平和のためには必要なのよ

 

 みんなが寝静まっているので、囁くような声でもよく聞こえた。

 ユーリアを真ん中にして親子三人が語り合っているのだ。

 内容もさることながら、その密やかさは立ち入ってはいけない雰囲気だ。呼吸を乱さないように気を付けて目を閉じた。

「それは分かっている、でもユーリアの兄として納得できない。親子兄妹は骨肉だ、その骨肉を引き剥がされようという時に他人やヘルムがどうのこうのって関係ないよ」

「でも、お兄ちゃん。ヘルムが平和でなきゃ、我が家の平和も無いのよ。でしょ、ヤマタの力が衰えれば島の外ばかりじゃない、大昔にヤマタが封印したクリーチャーたちも蘇って災いをもたらすのよ」

「それでもいやだ、間違ってるよこんなこと!」

「聞いて。ヘルムにもオーディンの国にも車が走って飛行機が空を飛んでるわ。車や飛行機を使うことによって昔では考えられない便利な生活を送っている。でも、車や飛行機の事故で、毎年数千人の人が命を落としている。その人たちは、みんなが便利さや快適さを享受するための生贄と同じだよ。ううん、ヤマタは四年に一回しか生贄を要求してこない。四年に一人犠牲になるだけで四年間の平和が約束されるのよ。生贄に捧げられる日まで、ヘルムの人たちは女王のように扱ってくれる。わたしが居なくなった後のお母さんの生活も保障してくれる。そのことでわたしが命を長らえることは無いけど、それがヘルムの人たちの優しさだと思うのよ。お兄ちゃん、間違えないでね、わたしは、ユーリアは喜んで生贄になるんだからね」

「それでも、間違ってるよ。予定される犠牲と言うのは間違ってる! そんなの人の生き方として間違ってる! 間違った犠牲の上に築かれる平和とか繁栄は偽物だ!」

「お兄ちゃん……」

「ヤコブ、聞いておくれ」

 ほとんど口を挟まなかったお母さんが語り始めた。

 自然な寝息をたてるのに苦労する。傍らの四号の乗員たちは気持ちよさそうに眠っている、こんな大事な話をされて、よく寝ていられるもんだ。やはり、わたしは主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士、我が名はブリュンヒルデなるぞ! この親子の相克を見過ごしにはできない!

「わたしも、十七の歳でヤマタの生贄に選ばれたんだよ」

「「お母さんが!?」」

「不思議だろ、こうして生き延びて、あんたたちを産んで育てたんだからね」

「生贄になって生きているなんてあり得ない……」

「どういうことなんだ、母さん?」

 わたしの耳も研ぎ澄まされた。しっかり聞こうと寝返りを打ったら、同時にロキが寝返って、わたしの口と鼻を塞いでしまう。

 ウ……ウグググ

 息が出来ない。

 一分近く辛抱したが、限界だ。

 プハーーー!!

「「「なに?」」」

 しまった、親子三人がこっちを見ている!

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

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