大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・024『彫刻の森美術館』

2020-10-29 06:14:47 | ボクの妹

戦記・024
『彫刻の森美術館』     


 

 ま、まりあ!

 マリアの声でみなみ大尉は目が覚めた。
 よっぴき看病していたので、いつの間にか眠ってしまっていた大尉だった。

「大丈夫、まりあ!?」

 まりあの布団に這いよる大尉はすさまじかった。起き抜けのスッピン顔はむくれて、髪はボサボサ、右目は開いているが、左目は目ヤニでくっついて閉じたままだ。おまけに、慌てていたので、膝で浴衣の前身ごろを踏んづけてつんのめり、意識が戻ったばかりのまりあに覆いかぶさってしまった。
「フギュ~~~~」
 まりあは、意識が戻ったばかりなのに窒息するところだ。
「あ、あ、ごめん」
「ワ、ゾンビ!?」
 まりあに驚かれるので、大尉は顔をゴシゴシこすり、手櫛で髪を整えた。
「あたしよ、あたし。ペッ、ペッペ、髪の毛食べちゃった」
「みなみさん?」
「そうよ、あんたがお風呂でぶっ倒れるから、もう気が気じゃなくってさ。あんた、一時心肺停止になっちゃったのよ」
「わたしが人工呼吸したの」
 そう言いながらマリアはまりあの首元に手を伸ばした。
「え、なに?」
「コネクトスーツを脱がなきゃ、圧迫されたままだから」
「ちょ、ちょ、痛い、痛いってば!」
 まりあはコネクトスーツを着たままで、脱がせようとすると、まるで皮膚をはがされるような痛みが走る。
「バージョンアップしてるから脱がせられないんだ……脱ごうって、念じてみな」
「あ、えと……」
 まりあは念じてみた。すると、スーツのあちこちに切れ目が走り、まりあが体をよじるとハラリとスーツが脱げた。

「司令のタクラミだったのね……」

 落ち着いたまりあから話を聞いて、みなみ大尉は腕を組んだ。
 保養所地下の浴場は秘密基地に繋がっていて、まりあだけが移動できる仕組みになっているようだ。まりあは、そこで舵司令一人のオペでヨミの原始体と戦わされていたということが分かった。
「なんだか重力を感じない異世界というか異次元というか、とにかくヨミが、この世界に現れる前の世界らしくて、数は多いけど、ヨミはあたしが出現したことに狼狽えていて、とてもひ弱だった」
「それで、ヨミはやっつけられたの?」
「相当やっつけた……でも、まだ居る……というか、あそこはヨミを生み出す母体のようなところで、反復して攻撃しないといけないような気がしたわ」
「そう……でも、まりあがこんなになっちゃね……」
 みなみ大尉は口をつぐんだ、未整理のまま口に出してはいけないと感じたのだ。

 保養所を出ると、芦ノ湖を遊覧し、強羅で箱根山の迫力を感じながら温泉卵を三人で食べて彫刻の森美術館に向かった。

「彫刻ってアナログだけど、静かに訴えかけてくるものがあるわね……」
 ハイテクの固まりと言っていいマリアがため息をついた。
「あたしはチンプンカンプンだよ」
 抽象彫刻が多いエリアでみなみ大尉は音を上げる。
「大いなる疑問……これが?」
 まりあが立ち止まったところには、直径一メートルほどの丸い石があった。
「う~ん、なんだか訳わかんなくって縮こまっちゃった感じ?」
 乏しい想像力を駆使して感想を述べる。
「あー、球ってのは、一番体積が小さいものね」
 まりあも納得しかける。
「これって、修理中みたい……ほら、ここに本来の写真がある」
 マリアが示した案内板には、でっかい『?』マークの写真があった。
「ん……クェスチョンマークの下なんだ?」
「パッと見で分かるものがいいなあ」
 三人は具象彫刻のエリアにさしかかった。
「んーーヌードの彫刻って女のひとばっか」
「みんな劣等感感じさせるプロポーションだわね」
「あ、あそこ」
 マリアが指し示したところには、仁王像のような男のブロンズ像があった。

 三人は、そのブロンズのたくましいフォルムにしばし目を奪われた。

 ブロンズの銘板には『TADIKARA』と刻まれていた。
 

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ポナの季節・78『T駅下車 東へ500メートル』

2020-10-29 06:01:40 | 小説6

・78
『T駅下車 東へ500メートル』
       


 T駅を降りて北に向かうと天下のT大学。

 涼しげな林の中に見え隠れ、そっちに行きたい衝動にかられるが、今日の用事は駅の南側。
「うわあ、陽に焼かれるうう(^_^;)」
 そうボヤイたのは吉岡先生。先生は二の腕までの腕カバーを装備して、白い日傘をパシュっと開いた。

 今日は来週に迫った「アゴダ劇場演劇祭」の下見と打ち合わせだ。

 劇場までの道は東西に延びているので日陰が無い。ポナたち生徒は日焼けは気にしないが、滴る汗に往生した。
「あー、ブラウス洗濯したてなのに」
「あぢい~」
「ちょっと、道の真ん中で腋の下拭くか~(;^_^A」
「そう言うミホこそ胸拭いてんじゃん」
「見えないようにやってっから」
「あんたら、女捨ててるなあ……」
「そう言うレイ、なにモソモソやってんの?」
「……おパンツ食い込んだ」
「ちょっと、世田女の看板しょってるんだから、品よくしなさい」
 先生の一言で口はつぐむが、名門世田女の面影はない。それほど劇場までの五百メートルは暑かった。

 汗みずくで劇場まで来ると、M高校の一団が出てきた。

「おさきです」
「こんにちは……あら」
 M高校はポナたちとすれ違うと、横丁から出てきたスクールバスに乗り込んだ。
「……いいなあ、ドアツードアだよ」
「……汗かく暇も無いね」
「あんたらも部に昇格したらバスに乗せてあげるから」
「うちの学校、バスないですよ」
「そっか……じゃ、修行と思いなさい」
「…………」

 打ち合わせは簡単だった『クララ ハイジを待ちながら』という芝居は手間がかからない。照明は地明りの点けっぱなし、道具は箱馬三つですむ。

「じゃ、時間いっぱい稽古させていただきます」
 ポナと友子が舞台に上がった。
 途中ポナが演ずるシャルロッテが袖にはけ、ドンガラガッシャーンと派手な音がして階段を転げ落ちる場面がある。もちろん袖にはけてからなので、落ちるところは音だけである。
 袖にはけて、ポナは効果音がステレオになっているのに気づいた。
「なにやってんの、ノリちゃん?」
 ポナのアンダスタディー(いざという時の代役)の中村典代が箱馬の山を崩してひっくり返っていた。
「エヘヘ……ちょっと熱が入りすぎちゃった」
 どうやら、袖でポナの演技をコピーしようと張り切っていたようだ。
 反対側の袖をすかして見ると、ミホが同じように照れ笑い。ミホは友子のクララをコピーしていたようだ。

 暑がりがそろっている演劇同好会だけど、来年は部に昇格できそうな気がしてきた。

 予定が終わって劇場を出ると、みんなの制服は塩を噴いていた。駅までの五百メートルを戻る。塩分濃度は、さらに高くなりそうだった。 


☆ 主な登場人物

父     寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:116『やっぱり間違ってる……』

2020-10-29 05:51:04 | 小説5

かの世界この世界:116

『やっぱり間違ってる……』語り手:ブリュンヒルデ       

 

 

 ゲフ ゲップ

 

「ああ、カルトとエッケハルト」

「あいかわらずの大食いなんだな」

「話を続けて」

 

 続いてオッサン二人が寝ながらゲップをしたので、三人は会話を続けた。

「むかし、エッケハルトのお祖父さんが市長をやっていてね、ヤコブと同じことを言ったんだよ。予定された犠牲は受け入れがたい、ヤマタのご加護はありがたいが、島の平和は島のみんなで勝ち取って守っていくって。すると、島の他の市長や町長からも賛同者が出て、お母さんは生贄を免れたんだよ。エッケハルトのお祖父さんは島の若者を募って討伐隊を組織してね、半年の間は蘇ったクリーチャーと懸命に戦った」

「負けたの?」

「十三人の犠牲者が出てね……みんなよく戦ったから、犠牲者は全員討伐隊の若者たち……たまらなかったわ」

「それで?」

「申し出たの『やっぱり、わたしを生贄にして』って……」

「じゃ、じゃあ……」

「ヤマタは拒絶したわ『おまえは、もう歳を取っている』って。実は、その半年の間にヘルムの暦がグレゴリウス暦に変わったの。ヘルムの指導者たちはオーディンの国との交易を盛んにするために、暦をオーディンに合わせたのよ。ヤマタに言われて気づいた、わたしは、もう十八歳になっていた」

「じゃ、どうしたの?」

「今年は十三人の血をもって了としよう、若い男の血もなかなかであったぞ。どうだ、今後は十三人の若者であってもかまわぬぞ」

「十三人かよ……」

「むろん、受け入れられるはずもなく、十七歳の女の子が選ばれるようになった」

「でも、母さん、その話は初めて聞くよ」

「記録から抹殺されたもの……十年もたてば社会は忘れる」

「そうなんだ……だから、お兄ちゃん。やっぱ、わたし行くよ」

「分かっておくれ、ね、ヤコブ……」

 

 母のアグネスは優しくヤコブの手に自分の手を重ねた。 

 そして、ヤコブの溜息がして、それが合図であったかのように、わたしは眠りに落ちてしまった。

 眠りに墜ちながらも思った、自分の事のように思った……やっぱり間違ってる……。

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

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