大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・002『新埼玉から首都へはノンストップ』

2020-10-06 08:12:45 | ボクの妹

(神々の妄想)
002『新埼玉から首都へはノンストップ』  



 俺は、この二年間仏壇の中にいる。

 つまり、二年前に死んじまって仏さんになっちまった。死んでからの名前は釋善実(しゃくぜんじつ)という。
 仏さんなのだからお線香をあげてもらわなきゃならないんだけど、妹のまりあは水しかあげてくれない。
「だって、家がお線香くさくなるんだもん」ということらしい。こないだまでは「火の用心」とか「水は命の根源」とか言ってたがな。

 そのまりあがお線香をたててくれた。

「ナマンダブ、ナマンダブ……じゃ、行こっか」
 そう言うと過去帳の形をした俺を制服の胸ポケットに捻じ込んだ。

 ちょ、ちょ、まりあ…………!

 俺はドギマギした。ガキの頃は別として、妹にこんなに密着したことはない。
 いま、俺は三枚ほどの布きれを隔てて妹の胸に密着している。生きていたころは、ちょっと指が触れただけでも「痴漢!変態!変質者!」と糾弾され、機嫌によっては遠慮なく張り倒された。
 それが胸ポケットの中に収められるとは、やっと兄妹愛に目覚めたか? 俺を単なる過去帳という物体としてしか見ていないか?

 思い出した。

 妹は大事なものをポケットに入れる習慣があった。

 もう何年も妹と行動を共にすることなどなかったので忘れていたんだ。
 しかし、あのまな板のようだった胸が(〃▽〃)こんなに……妹の発育に感無量になっているうちに、お向かいの寺田さんに挨拶したことも、大家さんに荷物のことを頼んだのも、駅まで小走りに走ったことも上の空だった。

 ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン……

 いまは新埼玉行きの電車の中だ。

 車窓から見える風景が荒れていく。

 新埼玉が近くなると、先の大戦のツメ跡が生々しくなる。
 かつて山であったところがクレーターになったり、低地であったところがささくれ立って不毛な丘になったり、かつて街であったところが焼け焦げた地獄のようになっているのは、ホトケになっても胸が痛む。
 圧を感じると思ったら、まりあがポケットの上から胸に手を当てている。

 ギギギギ……

 マリアの奴、歯を食いしばっている。

 そうか、まりあも、この風景には耐えられないんだ。まだ十七歳の女子高生だもんな。
 住み慣れた家を出て、学校も辞めて新しい人生に踏み出す妹に哀れをもよおす。

 辞めた割には制服姿だ。

 それも、いつものようにルーズに着崩すことも無く、ブラウスの第一ボタンまでキッチリ留めてリボンも第一ボタンに重ねるという規定通り。校章だって規定通りの襟元で光っている。実は、この校章、辞めると決めた日に購買部で買ったものだ。まりあのことをよく知っている購買のおばちゃんは怪訝に思った。「記念よ記念(#^―^#)」と痛々しい笑顔を向ける、目をへの字にしたもんだから、両方の目尻から涙が垂れておばちゃんももらい泣き。

 そんな制服姿なんだけど、あいかわらずスカートは膝上20センチというよりは股下10センチと短い。

 まあ、これがまりあの正装(フォーマル)なんだ……よな。


 ああ、腹減ったあ……

 ポツリと呟いた一言は、やっぱたくましいんだろうけど、なんだかカックンだ。
 新埼玉に着くと、乗り継ぎの時間を一睨みしたまりあ。
「よし、余裕だ!」
 ホームの階段を二段飛ばしで降りると、駅構内のファストフードに駆け込んだ。
「特盛一つ! つゆだくで! お茶じゃなくてお水!」
 出てきた牛丼に紅ショウガと七味をドッチャリかけると、100人いたら一番の可愛さをかなぐり捨ててかっ込み始めた。
「ゲフ……お代置いときますね!」
 グラスの水をグビグビ飲み干すと、まりあは首都方面行きのホームに駆けあがっていった。

 首都は、あの大戦のあとに新東京としてつくられたが、あくまで日本の首都は東京であるという日本人の誇りから、あくまで便宜上の仮のものであるという気持ちで、普通名詞の首都と呼ばれている。

 新埼玉から首都へはノンストップである。

 首都は再びの攻撃にさらされるリスクを冒しながら廃都東京の近くに作られている。東京は江戸の昔からの霊力が宿っていることから、その霊力を少しでも受信できるところに作られたのである。
 ただ、その霊力は大戦の元凶であるヨミとの戦いにおいてのみ有効であるので、首都のみが突出していて、それ以外の街は発展していない。

 首都駅の改札を出ると、スッと寄り添ってくる人がいた。

「舵まりあさんね……こちらを見なくてもいいわ、このままロータリーの車に乗って」

 まりあはホッとした。迎えの人間についてはパルスIDのパターンしか教えられていなかったので、きちんと分かるかどうか不安だったのだ。間違いない、この女性は特任旅団の高安みなみ大尉の正規のパルスIDを明瞭に発している。

 二人は、ロータリーの端に停めてあった新型セダンに乗り込んだ。
   

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ポナの季節・55『SEN 4・8』

2020-10-06 06:31:05 | 小説6

・55
『SEN 4・8』    



「SEN 4・8」と書いて「セン フォー・エイト」と読む。「SEN」は、そのまま「エスイーエヌ」と読んでもいい。

 という安祐美の説明で、あっさり決まった。景気づけの質問が出た。
「4・8ってのはフォーティーエイトって読む人もいるんじゃない?」
「いいじゃん、覚えやすくて。多少パクリっぽいけど、ちゃんと意味があるんだから」
 安祐美が幽霊らしからぬ陽気さで答えた。

 なるほどなあ……。

 家に帰ってからも、安祐美のネーミングの感覚の良さに感心した。
 SENのSEは世田谷女学院の頭文字、Nは乃木坂学院で、構成メンバーの所属校を現している。これは直ぐに分かった。
 4・8が分からないので、安祐美が説明してくれた。
「それぞれの学校が4丁目と8丁目にあるからよ」
 と涼しい顔でいうので「あ、そうか」と納得した。

 お風呂に入っても、SEN4・8が頭から離れない。で、考えすぎてポナは気が付いた。

――4・8って……人数じゃないかな――

 メンバーは五人だけど、安祐美は実体化しているとは言え幽霊だ。がんばりすぎると実体化もしていられずに姿が現せなくなる。それから、想像するのも嫌だったけど、このSEN4・8が上手くいったら……。
 そこまで考えた時、大ネエの声がした。
――ねえ、浴槽の中に指輪落っことしたみたいなんだけど、ポナ、探してくれない?――
「うん……」
 入浴剤で浴槽の底が見えないので、ポナは手探りした。手応えがあったので、持ち上げた。意外に重いという感触はあったが、安祐美のこっとで頭がいっぱいだった。
――ごめん、洗面台にあった――
 大ネエの声。

 ゴボゴボゴボ……ズーーーー

 気が付くと浴槽のお湯が、ほとんど無くなっていた。
「あれ……?」
「あんた、なにやってんの?」
 大ネエに言われて気が付くと、指には浴槽のゴム栓のリングがハマっていた。

「ねえ、4・8の0・8は、安祐美、あんた自身のことじゃないの?」
 ララランチを食べながら、隣に座っている安祐美に聞いた。
「分かった……?」
 ラーメンを食べている安祐美の手が止まった。
「まさか、今のユニットが上手くいったら……」
「ハハ、考えすぎ。あたし幽霊だから、存在としては八掛けぐらいかなって、それで0・8よ」
 と、勢いよくラーメンをすすって、食器のトレーを返却口に持っていった。

 六時間目のチャイムが鳴って、直ぐにみなみが教室に入ってきた。
「なんで乃木坂が、こんな時間にここにいるのよ?」
「うち、三者懇談で昼から休み。それより、いいニュース!!」

 なんと、急にデビュー公演が決まったのである……。


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:93『ノルデンハーフェンを目前に』

2020-10-06 06:15:43 | 小説5

かの世界この世界:93

『ノルデンハーフェンを目前に』テル    

 

 

 世界そのものが生き物なんじゃないかと思うようなニオイがしてきた。

 

 街道には街道の、草原には草原のニオイがした。

 でも、それは土のニオイであったり、草いきれや花の香という、世界の中に存在しているもののニオイにすぎない。

 しかし、海のニオイというのは圧倒的で、もう世界そのものの体臭のように迫って来る。

 かと言って目の前に海が広がっているわけではない。

 ムヘン最大の港町であるノルデンハーフェンは眼前の峠と言うのも気が引ける街道の鞍部を超えたところで見えてくるらしい。

 この世界に来て海を見るのは初めてだ。

 ムヘン川にもエスナルの泉にも水はあったが、こんなに圧倒されるようなものではなかった。

 

 ガクンガクン

 

 歯車の咬み合わせが悪くなったような音をさせたかと思うと、つんのめるような感じで四号は停まってしまった。

 ブルン ブルン……ブルン ブルン……

 タングリスがイグニッションを掛け直すが、一瞬身震いするだけで四号のエンジンはストップしてしまう。

「エンジンの具合が悪いのか?」

「どうも、この四号は海が嫌いなようです。潮の香りがしてきたとたんに故障のようです」

 そう言うと、タングリスは操縦手ハッチを開けて車外に飛び出した。車体をめぐる音で後ろのエンジンハッチに向かったことが分かる。

「ロキ、操縦席にまわれ、ケイトとテルは手伝ってくれ」

 ブリュンヒルデは車長らしく指示するとキューポラから飛び出した。

「ムー、わたしは?」

 指示のなかったポチが一人前にむくれる。

「ポチは上空で警戒に当たれ、それでいいよね、タングリス?」

 ロキが咽頭マイクを喉に押し付けて聞くと――ああ、それでいい――とレシーバーからタングリスの声。ポチは「わかった!」の一声を残して、四号の上空へ飛び上がっていった。

「キャブレターか点火プラグか……」

 タングリスはトラブルの原因を絞り込んで調べ始める。

「我が魔力をもってすれば一瞬で直せるであろうが、安直な解決は先々への禍根になるやもしれず、残念だが見守っておることにするぞ」

「残念がらなくてもけっこうです、二人一組になって足回りのチェックをお願いします。ゲペックカステンの中に点検用のハンマーが入っていますから」

「そ、そうか、しかたあるまい」

「ブリュンヒルデ、休む気満々だっただろ」

「うっさい!」

 ケイトに指摘されると、手にした野戦用レーションをハンマーに持ち替えて目配せする。

「はいはい」

 その成り行きで、わたしはブリュンヒルデと、ロキはケイトと組んで四号の左右に分かれて点検を始めた。

 

 戦車の点検はSLのそれに似ている。目視で異常がないかを見ながら柄の長いハンマーであちこちを叩いていくのだ。

 

 カンカン カンカン

 四号の左右で小気味いい音が響く。

 しかし、四号の足回りは音の割には良くなかった。

「履帯のピンがヘタって切れそうなのがあるなあ」「転輪のボルトが欠損してるのがある」「履帯も新旧取り混ぜ……限界のがある……」

 真剣に見ると、あちこち心もとない箇所が発見される。その間にタングリスは十二個のプラグを全部外し、半分以上が寿命であるとため息をついた。

「この路上では修理しきれないなあ……」

 タングリスを囲んで、みんなが腕を組む。タングリスというのは、こんな苦境にあっても美しい奴だ。眉間に刻まれた皴でさえチャームポイントに見えてしまう。

 むこうから、変なのが来るよーーーー!

 上空でポチが叫んだ。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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