大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・140「九回の裏!」

2020-10-15 14:10:29 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)140

『九回の裏!』小山内啓介 

 

 

 大阪都構想の投票を二週間後に控えた日曜日のグラウンド。

 台風が有りっ丈の雨を降らせたあとは、どこにしまい込んでたんやと思うくらいの真っ青な青空が広がって、上空にはなにかの取材のためにヘリコプターがのんびりと飛んでいる。その秋空の下、空堀と京橋二校の練習試合が行われている。

 そして……八回の裏になろうと言うのに双方一点も得点が無い。

 

 甲子園やったら、実力伯仲、双方攻守ともに優れたプレーが続き互いに得点を許さない……てな感じで、選手も応援団も熱が入るんやろうが、この試合はあかん。

 書くことも憚られる凡ミスばっかりで、互いにランナーを出して得点につなげることができない。

 力んでないと言えば多少マシなんかもしれへんけど、とにかく覇気が無い。

 よし とか おお とか かっとばせえ とか どんまい とかの掛け声が散発的に起こるんやけど続かへん。

 かっとばせえ! と、ちょっと厳しい目の声が掛かってなんとかヒット。

 バッターは一塁ベースを踏むんやけど、どうせ得点には結びつかへんいう気持ちがアリアリとしてて、川島さんが手をメガホンにして「よし!」と発声しても――まあまあ――ちゅう感じで手を挙げるだけ。

 次のバッターは易々と三振に取られて――残念!――という感じと違って――やっぱりなあ――になる。

「くっそお!」

 そんな中で、田淵一人が熱い。

 さすがはエース……と思うんやけど、頭だけカッカして、余計にミスが増えるばっかし。

 マネージャーの川島さんはスコアをつけるほかは、さっき「かっとばせえ!」とげきを飛ばした以外はベルリンでもめてる少女像みたいな穏やかさで座ってる。

 しかし、腹の中は煮えくり返ってるのが、ついさっき分かった。

 田淵がツーアウト一二塁の、ひょっとしてという局面であっさり三振に終わった時。

 ボキッ!!

 穏やかなまま、鉛筆を握りつぶしてしもた(^_^;)

 え? 鉛筆の折れを握った手ぇから血が滴り落ちてる……。

――ごめんね、小山内君――

 口の形だけで謝る川島さん。

 俺を代打に使ってたらという思いやねんやろなあ。笑顔を返すんやけど、ちょっと引きつってたかもしれへん。

 ちなみに、空堀に監督は居てない。

 顧問兼監督が春に転勤して以来、顧問は茶道部の女先生。実質的に野球部を引っ張ってるんは川島さんと田淵や。

 ネット脇には演劇部の三人が見に来てくれてる。

 積極的に知らせたわけやないけど、食堂でのイザコザはけっこう話題になってて三人の知るとこになってしまったみたいや。

 ビジュアル的には三人とも目立つ。

 須磨先輩は六回目の三年生で、もう大人の魅力。千歳は車いすにチンマリと収まって可愛らしく、ミリーは掛け値なしの金髪碧眼の美少女。

 三人を見慣れた空堀の生徒はともかく、京橋の生徒はアニメの中から出てきたヒロインみたく眩しいオーディエンス。

 三人は野球部の応援ではない。

 グータラ部長の俺が昔取った杵柄っちゅうか、川島マネージャーの色香に迷って中学以来のバッターボックスに立ついうので、ただただ珍しいもの見たさで来てる。

 せやから、俺がバッターボックスに立つ以外には興味がないんやと思う。

 この三人がキャーキャー言うてくれたら、京橋の連中、気をとられて隙ができるかも。

 

 言うてるうちに九回の裏。気持ちが抜けた空堀は九回の表で京橋に二点を許した。

 

 そして九回の裏、空堀は再びツーアウトランナー一二塁。

 と、川島さんの手が上がった。

「バッター交代、小山内君!」

 ゲ、ここでか!?

「小山内君、お願い、ホームラン打って!」

 バッター交代を宣言した足で俺の前に立って手を合わせた。

 啓介! がんばれええええええええええええええええ!

 演劇部の三人娘も黄色い声をあげて敵味方の注目を集める。

 ち、気楽に言ってくれるぜえ!

 俺は、バットを二回スィングさせて、闘志をフルチャージ!

 バッターボックスに向かうと、絶好のシャッターチャンスと思ったのか、上空で取材中のヘリコプターの爆音が大きくなってきた。

 バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ!!

 え、ちょっと近過ぎひんか!?

 え? え!? 

 グラウンドに居る者みんながビックリしていると、すごいボリュームで校内放送が流れた。

『ヘリコプターが緊急着陸します! 緊急着陸します! グラウンドに居る人は、ただちに校舎内に避難、ただちに避難! 避難してくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』

 俺は、バットを持ったまま呆然とする。

 二秒ほど間があって、京橋も空堀も、一目散に校舎に駆けだす。

 俺も逃げよう……と思ったら、演劇部の三人に目がとまった。

 え!?

 千歳の車いすがトラブって、三人とも身動きが取れなくなっている。

 俺は、バットを振り捨てて、三人の所へ駆けだした!

 

 

 

 

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まりあ戦記・010『……そして驚いた』

2020-10-15 07:56:58 | ボクの妹

・010
『……そして驚いた』   



 えーーーーなんで!?

 玄関ドアを開けるなり、みなみ大尉は叫んだ。
「ウップ!」
 大きなマンションであることに素直に喜んでいたマリアは大尉の背中にぶつかりそうになってつんのめった。

「あたしの家って2LDKなのよ! それが、なんで壁ぶち破って4LDKになってんのよ!?」

 確かにリビングは16畳ほどもあり、リビングの天井はど真ん中に梁が走っていて、元々は別の部屋であることが偲ばれる。
 徳川曹長は「手を加えた」と言っていたけど、それが、この壁をぶち抜いたことであるならスゴイことだ。
「でも、きれいに片付いていますね……」
 まりあは実質一人暮らしであったこともあり、整理整頓はきちんとする性格なので感心している。
「あたしの趣味じゃないわよ! あたしは散らかって……機能的になってないと落ち着かないのよ!」
「機能的なんじゃないですか?」
「どこがよ!?」
「えと……キッチンは対面式のアイランドだし、リビングとの動線もスムーズになって……家の中は完璧なバリアフリーですよ!」
「バリアフリーにしなきゃならない? あたし、まだ二十五歳なんよ?」
「リモコンが一つもない……て、もしかしたら?」
 マリアは目ざとくテーブルの上の人形に目をやった。人形は二頭身半ほどで、なんだか大尉に似ている。
「リビング、電気」
 マリアが言うと、人形は顔を上げて『ラジャー』と応え、同時にリビングの照明が点いた。
「窓開けて」
『ラジャー』
 ベランダに向いたサッシが静かに開いた。
「すごい、これって、家じゅうの家電とかを操作するインタフェイスになってる!」
「それがどーして、二等身半のあたしになってるのよ!」
 それから家じゅうのあれこれを点検し「すごい!」と「なんで!?」を連発する二人だった。

 あれ?

 自分の部屋をチェックして、まりあは驚いた。
「あたしのベッド、大きすぎないかなあ?」
「ん……ほんとだ、ダブルベッドじゃん」
「なんでだろう?」
「まりあ、寝相悪いんじゃないの?」
「そっかなあ……え、なんで!?」
 クローゼットを開いて、いっそう驚いた。
「あたしの服、同じものが……みんな二着づつある?」
 俺でも見覚えのある衣類がみんな二人分になっている。
「あたしのは自分の分だけだよ、片づけられすぎてるけど」

 その時、玄関でガチャリと音がして、聞き覚えのある声で「ただいまー」が聞こえた。

「え、今のって?」

 不思議に思った二人はリビングに戻った……そして驚いた。

 リビングにはコンビニの袋をぶら下げた、もう一人のまりあが立っていたのだ。

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ポナの季節・64『たかがBFされどBF』

2020-10-15 06:46:07 | 小説6

・64
『たかがBFされどBF』
           



 

 今朝の電車に蟹江大輔の姿がなかった。
 
 友だち承認をして以来、こんなことは初めてだ。
 いつも一方的に喋りまくるので、持て余し気味のポナだったが、いないと少し気にかかる。

 駅を出るとモワーっとした湿気交じりの暑気、今日も暑いなあ……そう思った時点で大輔のことは忘れかけた。
「オハ、暑いねえ……」
 由紀が声を掛けてきて、完全に忘れた。
「なにモソモソしてんの?」
「汗で、おパンツ食い込んだ……」
 ハツラツ美人の由紀がこんなことを言うと、ギャップが大きいので、思わず笑ってしまう。そのギャップで、また大輔のことを思い出す。大輔は客観的にはタッパもあってイケメンの部類に入るが、ポナの前では、お喋りの三枚目だ。素早くメールを打った。
「あ、オトコ?」
 モソモソの原因をなんとか処理した由紀が、元のハツラツ顔で聞いてくる。
「勝手に食い込んでくるおパンツみたいなやつ」と答えておいた。

 休み時間にトイレでメールの着信を確認、なんと大輔は国会前に行っていた。

「バカなやつ!」
 
 と吐き捨てながら、時間がたつに従って気がかりは大きくなっていく。
 大輔のメールには写真が添付されていた。大輔は安保法案反対のデモ隊の中にいたのだ。

――バカは止めて、家に帰れ!――

 と二秒で勧告のメールを打つ。
 今日の午後、衆議院で安保法案が可決される。午後にかけてデモ隊は膨らんで過激になっていくだろう。昨日の委員会の裁決だけで、反対のデモ隊から二人の逮捕者が出ている。

 演劇同好会の稽古が終わると、ポナは国会前まで行ってみた。バカが忠告を無視して、まだ国会前にいるからだ。

 地下鉄に乗って国会前に行ってみると、ちょうど衆議院で与党の賛成多数で可決された直後、遠くから見てもデモ隊の興奮は頂点に達しようとしている。

――思ったより少ないな――

 安保反対闘争のことは父や兄から聞いていたし、ネットで調べたりしてポナなりに知っていた。60年安保では批准の日には三十万人のデモ隊が出て、国会の構内になだれ込み、一人の死者と多数の怪我人を出している。それに比べれば目の前のデモ隊はショボイ。
 ショボイけども、それだけプロ市民と言われる活動家の数も多く、警察の取り締まりも集中している。
「何をしているんだい?」
 気づくと三人の警官に取り囲まれていた。制服姿でスマホを打っていたからだ。
「バカな友だちが、あの中に居るんで、家に帰れって伝えに来たんです」
 ポナは、年かさの警官にスマホの画面を見せた。
「そうか、高校生は早く帰ったほうがいいな。君も危険だから向こう側には行かないように」
 それだけで解放された。でも監視対象にはなったかな……大ネエが現職、チイニイが元職の警察なので、警察が甘くないことはよく分かっている。

「あ、あの人……」

 遠目に大輔の隣にいる女性が目に入った。ネットで見たプロ市民、三革派のオネーサンだった。あいつは知らないうちにデモ隊の中枢の中に入り込んでいる、危険だ!
――これが最後。直ぐにデモ隊から離れなさい、離れなかったら絶交だから!――
 そう打ったが、やつは、もうスマホを見ようともしない。

 ポナは大きく迂回して、十分かけて道路の向こう側に行った。警察の車から見られているような気がした。
――なんで、あたし、ここまでやってるんだろう!?――
 そう思いながら、体は止まらない。デモ隊の中をかき分けかき分けしながら、バカの後ろに立った。
「いい加減にしろ、バカ!!」
 そう言いながら、鞄をぶん回し、硬い角の方でバカの後頭部を連打した。

 帰りの地下鉄では口も利かなかった。大輔も出会ったころのように無口。無口なまま別れた。

「なんで、ここまで食い込むんだろう……あたしもバカだ」

 大輔とは、これで切れてしまうだろう。せいせいしていいはずなのに、ポナは、自分が食い込みおパンツになったようで不愉快この上なかった。ポチが実体化して家まで付いてきてくれたことにも気づかなかった……。


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界のこの世界:102『我が名はブリュンヒルデなるぞ!』

2020-10-15 06:31:28 | 小説5

かの世界この世界:102    

『我が名はブリュンヒルデなるぞ!』語り手:ブリュンヒルデ

 

 

 パープリンの電波女と思われているであろう。

 

 主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士、我が名はブリュンヒルデなるぞ!

 されど剥き出しではならない、この現世(うつしよ)には現世の定めがあるのだ。

 闇の世界の理(ことわり)に比すれば取るに足らない戯言同然の愚か極まるローカルルールではあるが、それが、カタストロフィに至る我が使命を果たすまでは従わねばならぬであろう。それこそが、父であり世界の主神であるオーディンの戒めさえ破って、このレーゲ海に船を進める我が闇のデスティニーであるのだから。

「ず~る~い~! そっちの方が二十グラム多いぞ!」

「そんなことはない、目測でも五ミリはブリュンヒルデの方が大きいじゃん!」

「見た目ではない、質量が違うのだ! 立法センチあたり八以上のものでなければ我が霊性は保てぬのだ、四の五の言わずに、そっちをよこせ!」

「もーーーー仕方ないなあ、仮にも隊長なんだからさ、そういうデレ方しないでくれる」

「デレてなどおらぬわ!」

「それに、王女様なんだから、威厳とか慎みとか感じさせてくれなきゃガックリよ」

「バカかケイトは! わたしが、あるがままに振る舞えば、おまえたちは息も出来ぬであろーが! それゆえ精神年齢を、おまえたちに相応しくして付き合ってやっておるのではないか! それをデレとかガックリとかは心外じゃ! 我が意をくみ取り、さっさと我が霊性に相応しき方をよこせ!」

「かわいくな~い」

「うっさい、シリンダーの変異体ごときが、高貴なる身に文句を言う出ないぞ!」

「あ、殿下。こちらの方が製造日が新しいですよ」

「そ、そうか、新しい方が霊性は高く保てるであろうからな……」

「ようは、美味しそうで大きいのを食べたいんだ」

「なんか言ったか?」

「いえいえ……」

 ようは、船内配食で配られたばかりのパンの取り合いをやっているのだ。

 

 タングリスはテルといっしょにブリッジに調べものに行っている。

 口うるさいタングリスが居ないのだ、こんな時くらいはハッチャけてやらねば息が詰まる。ロキは幼いし、ケイトは大人しすぎるし、わたしがやらねばどーしようもない。な、そうであろうが!

「ヤコブ、ちょっと顔を貸せ、糧食の霊的配給方法について言って聞かせよう」

「え、自分がでありますかあ!?」

 

 もうワンクッション置いてからと思ったが、ラッタルを貨物デッキに下りてくるタングリスが視界に入ってきた。タングリスにやらせれば、事が必要以上にこじれてしまう。トール元帥の有能な副官であるが、委員長タイプで、こういう裏ワザには向いていないのだ。

 手摺の所まで呼んで、核心を突いてやった。

「ヤコブ、おまえは脱走兵であろう……」

 実直が軍服を着たような四角い顔の丸い口が酸素不足の金魚のようにパクパクしはじめた……。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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