大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・011『アシスタント兼ガード兼影武者』

2020-10-16 07:42:51 | ボクの妹

・011
『アシスタント兼ガード兼影武者』  



 

 どこから見ても同一人物だ。

 間近に見ると瞳の光彩まで同じだ。
「てことは、指紋も……?」
 みなみ大尉は二人の手を取って比べてみた。
「あら、指紋は違うのね」
「あ、右手と左手ですよ」
「あ、そか」
 改めて右手同士で比べてみる。
「う~~~同じだ!」

 二人のマリアはコンビニ袋を持っていることを除けば同一人物だ。

「あたし、アシスタント兼ガード兼影武者のVR10201(ブイアールヒトマルフタマルヒト)です」
 コンビニ袋が言った。
「アシスタント兼ガード兼影武者?」
「VR10201?」
「はい!」
 元気に答えるコンビニ袋。
「ひょっとして……アンドロイド?」
「所属区分はアクト地雷です」

 ヒエーーーーーー!!

 マリアも大尉もリビングの端までぶっ飛んだ! アクト地雷には先日お世話になったばかりだからだ。
「あ、爆薬は入っていません。この任務のために五段階バージョンアップしています。えと、旅団防護隊から派遣されてきました、お二人のサポートとセキュリティーが任務です。まりあと同じ外形なのは、万一の場合身代わりになるためです。外形的な特徴はウズメに搭乗したときに記録したデータで出来ていますのでそっくりだと思います。ご承知かとは思うのですが、ここで寝食を共にさせていただきます。また、必要に応じてまりあの替え玉になって行動させてもらいます、場合によっては、お二人の了解を得ずにすることもありますのでご承知おきください」
「あの、服とかが二揃えあるのは……そういうこと?」
「はい、影武者ですから」
「ベッドが大きいのは、ひょっとしていっしょに寝たりする?」
「おっしゃる通りです、大尉」
「え~~~そんなあ!」
「そういうことなのでよろしくお願いします。じゃ、せっかくなので共同生活開始のパーティーをやりましょう、コンビニでいろいろ買ってきました!」
 10201は、コンビニ袋から色々取り出し手際よくテーブルに並べた。
「大尉、乾杯の音頭をとってください」
「あ、うん。では、あたしたちと10201との良き共同生活の……」
「そこ、三人と言ってもらえると嬉しいです」
「えーー。三人の出発を祝して……」

「「「かんぱーーい!」」」

 三度ばかり電子レンジのチンが鳴った時、大尉が切り出した。
「えと、10201じゃ長ったらしいから、なんて呼べばいいかなあ?」
「まりあと呼んでください」
「それじゃ、いっしょじゃん」
「マリアです。まりあとはちがうでしょ? まりあとマリア」
「えーー分かんないよ」
「分かるようになりますよ、まりあとマリア」
「ていうか、慣れてくると微妙に声違うように感じる」
「若干変えてます……カンコピしたら『ほら、あたしってまりあでしょ?』」
「アハハ、ほんとだ」
 まりあは、自分ソックリなマリアに違和感が無くなってきたようだ。

 パーティーがお開きになると、三人でジャンケンをして風呂の順番を決める。

「あんたたち、いつまでアイコデショやってるの?」
 マリアとまりあは勝負がつかない。
「「じゃ、いっしょに入ろうか」」
 なかよく声が揃って、二人で浴室に向かった。
「はてさて、どういうことになりますやら……あ、ビールないぞ」
 するとビールのストッカーがモーター音をさせながら大尉の足元までやってきた。
「おー、これは気が利いている!」

『飲み過ぎには気を付けよう!』大尉そっくりな声がした。

 ビックリして向き直ると、大尉ソックリなインタフェイスがテーブルの上でニコニコしていた。
 

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ポナの季節・65『始まり それぞれの夏』

2020-10-16 06:36:07 | 小説6

・65
『始まり それぞれの夏』
        


 

 朝起きると気配が無かった。

 一つはポチ。

 一昨日大輔と気まずく別れ、まといつく湿気とともに洗い流そうと思って、家に帰ると直ぐにシャワーを浴びた。シャワーの前に強にしておいたエアコンの下で髪を乾かしていたら、足許にポチがいた。
「ポチ……」
「ワン!」
「だめ、シー……」
 黙らせるために抱っこしてやったが、どうも家族には聞こえていない……いや、ポチの存在が分からないようだった。
「新子、今夜は焼肉ね」
 キッチンから顔を出した母は、ポナの腕から飛び出し、足にじゃれつくポチに気づきもしない。
「あー、蒸し暑い」
 孝史は帰ってくるなり、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、エアコンの下でポナと並んだ。
「チイニイもシャワーしてきたら。汗臭いよ」
「一杯やってからな」
 孝史は、一息で缶ビールを空けると、そのまま浴室に向かった。その時足でポチを引っかけたが、ゲームのバグのようにポチは孝史の足と重なってしまった。
「ポチ、あたしにしか見えないんだ……」
 ポナは、寂しいような嬉しいような気持ちになった。そうやってポチは夕べまでは、まといつくようにして一緒に居てくれた。
 それが、今朝は気配がしなかった。
――ポチは安祐美ほどの霊力はないんだ――
 そうベッドの中で納得した。

 そして、もう一つは孝史の気配。

「お母さん、チイニイは?」
「朝起きたらいなかった。しばらく帰らないってメールが入ってた。ほんとうにお尻の落ち着かない子……」
「乃木坂は?」
「昨日で辞めたって」

 みなみは、明日からの東北慰問ライブの段取りについて父と話し合っていた。

「大丈夫か二日続きになるけど」
「大丈夫、あの感動があれば若さで乗り切れる。それより、お天気大丈夫かな……」
「屋内でもやれるように手配はしてある」
「よかった」
 安心したところでポナから電話があった。
――チイニイが乃木坂辞めたの知ってた!?――
「うん、てか、ポナ知らなかったの?」
――家族のだーれも!――
「そうなんだ。やっぱ秘密諜報員になったかな?」
――なに、それ?――

 由紀は文化祭の企画書づくりのために、夏休みの初日から学校に向かっていた。

「くそ、我慢ならねえ暑さ!」
 大きな独り言を言うと、モソモソしだした。
「なに変なモーションしてんの?」
 後ろからやってきた奈菜が呆れたような顔で聞いてきた。
「おパンツが食い込むの!」
「ハハ、ひょっとして由紀発育したんじゃない?」
「はあ?」
「だからあ……」
「ちょ、ちょっと、どこ触んのよ!?」
「やっぱ、胸もおケツも大きくなってるよ!」
 通りかかったOLは、世田女の生徒二人のじゃれ合いを微笑ましく見ていた。まさか、こんなダイレクトな会話をしているとは思わない。
 帰りに下着を買おうと由紀は心に決めた。

 安祐美は根が幽霊なので、この暑さはヘッチャラで。旧講堂で明日からのライブの振り付けの最終確認をしていた。今夜はメンバーの夢の中に入り込み、猛特訓だと意気込んだ。

 大輔は、あれからネットで安保関連法案について調べまくった。委員会での有識者参考人の発言から、O教授の意見に惹かれる。
「これは安倍総理の方が正しい……」
 そう思うと、どうやってポナの機嫌を取り戻そうかと、そればかりを考える大輔であった。

 そのころ孝史は、程よく汗ばんで、防衛省を目指していた。

 ポナの生みの親である谷口真奈美の行動が気がかりだったが、正門のセキュリティーを通過するころには頭は切り替わっていた。

 それぞれの夏が本番を迎えた。
 


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界この世界:103『ヤコブの秘密』

2020-10-16 06:19:57 | 小説5

かの世界この世界:103

『ヤコブの秘密』語り手:ブリュンヒルデ      

 

 

 自分はヘルム島の出身であります……

 

 船の進行方向に向けた左頬が潮でベッチャリするようになって、ようやく沈黙を破るヤコブ伍長だ。

「ヘルム島……」

 ヘルム島と言えばレーゲ海の宝石と言われるほどに美しい島で、昔から観光で栄えた豊かな島だ。

 観光以外にも海産物やレアメタル、真珠の養殖などが有名で、安心安全の島だ。今次の大戦においても戦場になったことは一度もなく、父オーディンの知ろしめす地上において最優秀の土地と言われている。その優秀さは、父オーディンの兵が一人も居ないことでも知れる。兵を駐留させないしヘルムから徴兵することもない。だからヘルム島出身の兵というのは技術畑の軍属か少数の志願兵に限られている。ヘルムの志願兵は軍属と共に高い技量を誇っており、実直で軍の内外から重宝がられる……のだが。

 そのヘルム軍人の有りようからはズレている。

「ヘルムの平和と繁栄には秘密があるのです、この秘密を知るのは島民以外には、主神オーディンのほかは、ごく少数の神々だけなのです」

「オーディンの姫たるわたしでも知らぬことなのだな……」

「意外ですが……」

 なんだ、こやつの目に一瞬浮かんだ憐れむような光は? 問いただすかどうか逡巡している間にヤコブが語り始めた。

「島にはヤマタという主とも神ともつかぬものがおるのです……そのヤマタが四年に一度生贄を要求してくるのです」

「生贄?」

「はい、十七歳の処女を要求してきます。三年に一度奥つ城の神殿に供えるのです」

「食べられてしまうのか、生贄は?」

「分かりません、あくる日に行ってみると生贄の姿は無く、戻ってきた生贄もおりませんから……今年、その生贄に妹が選ばれてしまったのです。両親は早くに亡くなっておりますので……」

 あとは言葉にならなかった。

 ヤコブは手摺に載せた手を祈るように握りしめた。

「それで島に戻ろうと……」

「はい、ゲペックカステンの中にゴムボートを忍ばせてあります。島に一番近くなったところで抜け出るつもりです」

「推進力のないゴムボートでか?」

「四号のエアークリーナーの一つがマイクロ船外機になっています」

「なるほど、そういうわけで四号を強化したのか」

「いいえ、整備に掛けては手抜きは有りません、北辺のグラズヘイムに耐えられる改装に手抜きはありません」

「キッパリ言うなあ」

「はい、戦車の整備は我が天職でありますから」

「そうか……この件は、わたし一人の胸に収めておくぞ」

「は、はあ……」

「ガッカリするな、わたしは、この部隊の隊長だぞ。決定権はわたしにある」

「はい」

「目を見ろ、わたしはブリュンヒルデなんだぞ」

 おずおずとヤコブが目を向ける、小さく頷こうとしたとき、異変が起こった。

 船を挟んで水柱が二本立ったのだ!

 ズズッボーーーーーン!!

 

 な、なんだ!?

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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