大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・004『ドーン!!』

2020-10-08 13:43:07 | ボクの妹

(神々の妄想)
004『ドーン!!』語り手 晋三  

 

 みなみ大尉は車を路肩に停めると、まりあを引きずるようにして路地に跳び込んだ。

「どこへ行くんですか!?」
「シェルターよ! 万全じゃないけど地上にいるよりはまし!」

 ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ビルの谷底から見える四角い空を巨大な何かがよぎった。
「みなみさん、あれは!?」
「ヨミよ」
「あれが……」

 まりあの全身に鳥肌が立った。

「さ、急ぐわよ!」

 俺もぶったまげた。二十年前に東京とその周辺を壊滅させたヨミのことは知識としては知っていたが現物を見るのは初めてだ。

 瞬間見えたそれは、巨大なクジラを連想させて、圧倒的ではあったけど、かっこいいと感動してしまった。
 流行りのレトロ表現でいうところの仮想現実、今風に言えばVRに慣れた俺たちは、瞬間圧倒されても、我が身に直接危害が及ばないゲームのラスボスに出会ったようにしか感じない。

 しかし、二つの角を曲がって目に飛び込んできた光景は、凶暴なリアルだった。

「う、なんてこと……」

 それまで敏捷にまりあをリードしてきたみなみ大尉は立ちつくしてしまった。
 まりあは大尉に手を繋がれたまま青ざめてしまい、俺は胸ポケットの中でマリアの止まらない震えを感じていた。
 仮想現実は視覚的にはリアルと区別がつかないが、目の前のリアルには熱と臭いがある。

 そこは、大地に骨格があったとしたら大きく陥没骨折をしたような感じだ。

「シェルターが壊滅している……」

 陥没骨折の亀裂からはホコリとも煙ともつかないものが噴きあがり、それは見る見るうちに炎に取って代わらた。
 数百メートル離れたここには圧を持った熱と臭いとして届いてくる。
「ウッ、この臭い」
 まりあは制服の襟を引き寄せて鼻と口を覆った。
「崩れた鉄筋とコンクリートが焼ける臭い…………人が焼ける臭いも混ざってるわ」
「中の人たちは?」
「過去にこうむったどんなヨミの攻撃からも耐えられるように作られている……」
「あ、あれは?」

 その時、西の方角から大量のミサイルが飛んでくる音がした。

「軍の攻撃が始まったの?」
「ええ、でも時間稼ぎにしかならないでしょうね……」
 やがてミサイル群が飛んで行った彼方に太陽のような光のドームが膨らんだ。

 ドーーーーーーーーーーーーン!!

「伏せて!」

「は、はい!」

 ウグ!

 地面とまりあの胸に挟まれて過去帳の俺も息が詰まりそうになる。

 遅れて衝撃がやってきた。大量のミサイルが同時に命中した衝撃だ。これなら最新作のゴジラであってもやっつけられたと思った。

 もうひとつ遅れてハリケーンのような暴風がありとあらゆる破片やゴミやホコリを巻き起こしながら吹き荒れ、あたりは真夜中のようになった。

 五分……ひょっとして一時間かもしれない時間が過ぎて、ようやく曇り空ぐらいに回復してみなみ大尉は顔を上げた。
「さ、その交差点で救援を待つわよ」
 そして、やがてやってきたオスプレイに救助されて現場を離れる。
 数キロ離れた海上にヨミの上半分が突き出ている。なんだかオデンの出汁の中に一つ残った玉子のように見える。
「球体に近い姿が一番衝撃に強いの。ダメージを受けてはいるけど、ヨミはすぐに復活する……」
 そう言われると、玉子に似たヨミは僅かに鼓動しているようにまりあには見える。
「怖い?」
「えと……オスプレイの振動です」
「頼もしいわ、まりあ」
 大尉はマリア頭をワシャワシャと撫でた。

 ふだんこういう子供にするようなことをされると嫌がるまりあだったが、ベースに着くまで大人しくしていた。
  

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ポナの季節・57『専務の頼みとSEN4・8』

2020-10-08 06:28:09 | 小説6

・57
『専務の頼みとSEN4・8    


 

 専務の頼みは二つだった。

 一つは、投げ銭の中から必要経費を除いた分の使い道だ。
「半分は将来に備えて貯金。あとの半分は福祉事業に寄付してもらいたい」というもので、全員文句なし。

 もう一つは「明日の日曜も頼む」というものだった。

 正直嬉しかった。が、土曜一日のことと思っていたので、走り切ったマラソンをもう一度という感じだ。

 安祐美は元来が幽霊なので、実体化の持続がむつかしく、ボーカルを交代することを条件にせざるを得なかった。
「なんで、幽霊なのにマッサージしなきゃいけないのよさ!」
 そう文句をいいながら、控室で安祐美の体をマッサージした。
「実体化って、とてもくたびれるの。例えて言えば、イルカが二日続けて陸上にいるようなものなの。無理してんのよ」
「安祐美マッサージしてると、なんだか……眠くなってくるね」
「あ、そういう時は交代して。このマッサージって、あんたたちの生気を少しいただいてるってことだから」
「えー! そいじゃ、あたし早く歳とっちゃうとか!?」
「ないない。ただぐったりして眠くなる。やりすぎると起きれなくなるから」
 で、由紀、みなみ、奈菜と交代しながら本番直前まで続けた。

「みなさーん、こんにちは! SEN4・8です! 今日も、こんなステージで初公演二日目が行えるなんて思ってもみませんでした!」

 MCまで引き受けたポナは、MCの喋り方まで安祐美に似ているので、自分でもびっくりした。どうもマッサージで、安祐美の癖まで移ってしまったようだ。
 昨日のステージは多くの人が動画サイトに投稿してくれたので、評判を呼び、今日は立ち見が出るほどの盛況ぶりだ。
 蟹江が、恥ずかしげも無く『SEN4・8 ポナ命!』と横断幕を張っているのは恥ずかしかった。
 前列には、みんなの家族が陣取っている。

 これでマスコミが取材にでも来てくれれば言うことないんだけど……と思ったけど、世の中、そこまでは甘くない。東京には、この程度の面白いことは、毎日掃いて捨てるほど起きている。

 今日は前半から客のノリがよく、ポナは、ついMCにも力が入りすぎた。ボーカルも、こんなにキツイとは思わなかった。

 コスも汗みずく。終わったらすぐにクリーニングだと思った。で、クリーニング代って必要経費になるのかなあ……などと冷静に考えている自分がいるから不思議だ。

 観客のコールは「エス!イー!エヌ! フォーティーーーーーエイト!」というのが多く、これで定着するんだと思った。

 アンコール込みで昨日より多い九曲を歌い終えてお開きになった。
「君たち、握手会だよ、握手会!」
 控室に戻ろうとしたら、専務に言われた。もう観客はAKBのノリである。
「ありがとうございます!」
「はい、元気です!」
「今度もよろしく!」
「ブログやりますんで、よろしく!」
「すみません冷え性なもんで(笑)」
 最後のは幽霊の安祐美。
 1/4程の観客が、ポナとの握手を求めた。やっぱ、MCとボーカルをやったことが大きい。

「新子、がんばってね!」

 新子と呼ぶ人も何人かいたが、一人の女性だけニュアンスが違った。思わず気を入れて見たが、もう後姿だった。
「おい、ポナ!」
 ムッとして振り返るとチイニイが手を出して突っ立っている。
「もう、みなみのとこに行くべきでしょ!」
「もう、行った。がんばってぇポナ!!」
 チイニイがオネエっぽく言うので、怒りながらもおかしくてならない。

 さっきの女の人、何だろう……頭から離れないポナだった。


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界この世界:95『うちの四号はトップナンバー』

2020-10-08 06:17:28 | 小説5

かの世界この世界:95

『うちの四号はトップナンバー』   

 

 

 整備隊のヤードは故障車両で一杯だ。

 砲身が膅中爆発(とうちゅうばくはつ)したもの、転輪の欠損したもの、ハッチが吹き飛んでエンジンが剥き出しのもの、不発の命中弾を食い込ませたままのもの、装甲に大きなヒビを走らせたもの、トーションバーがいかれて傾いたもの……いろいろあるが、一応は自力走行が可能な故障車両だ。

 戦車や自走砲は頑丈に見えて、案外脆い。部品点数が自動車より桁違いに多いことや、要求性能が高すぎて、無理な設計になっていることに由来している。

 それにしても多い、あと二十両も来れば満杯になるだろう。

 無理もない、西部戦線での戦いをピークとして、ようやく小康状態を取り戻したのだ、修理を要する戦車や戦闘車両が大量に戻ってきくる。明日になれば、ベルゲパンターに曳かれて自走不能な車両も戻ってきて、これの倍ほどの混雑になるだろう。

 ブリュンヒルデはオーディンの姫だし、タングリスはトール元帥の副官だ。少し無理を言えば健康な戦車に交換してもらえるだろう。整備隊エリアに着くまでにも、撤退してきた戦車がいくらでも並んでいた。しかし、クルーのだれからも車両交換の声は上がらなかった。シュタインドルフからここまで乗ってきて、みんな、この四号に愛着があるのだ。

「仕方がない、便船を一本遅らせますか?」

 タングリスは、一番不満を言いそうなブリュンヒルデに振った。

「この四号を交換するのも便船を遅らせるのも嫌だ」

 お姫さまは無理を言う。

「この状況なのです。嫌ならば四号を交換するか便船を遅らせるかしか手がありません」

「だって!」

 大尉の軍服のまま口を尖らせると、コスプレの中坊が我儘を言っているようにしか見えない。

「船便を遅らせます」

 口調は丁寧だが、子どもの我儘を断ち切るように言って回れ右をするタングリス。

 

「ま、待ってください!」

 

 引き留めたのは整備隊のテントから飛び出してきたヤコブだ。

「あと一時間ほどで整備に掛かってもらえるように手配しました。便船には間に合いますから!」

「そんなことができるのか?」

「はい、履帯の交換をやって、主砲を75ミリの長砲身に換装、あらたにシュルツェン(車体と砲塔の周りに付ける衝立のような補助装甲)を付けます」

「そこまでやって間に合うのか?」

「はい、あの四号はD型のトップナンバーであります」

「トップナンバー?」

 タングリスが不審な顔になる。

「書類をちょいといじったのです、ご承知おきを……出発までの宿も確保しておきました、地図をどうぞ。自分は作業に立ち会いますので、これで」

 それだけ言うと、ヤコブはウィンクして行ってしまった。

「なかなか気の利くやつだなあ、働きによっては我がリトルデーモンにしてやってもよいぞ」

 ブリュンヒルデは中二病丸出しの喜びようだが、我々には、いささか怪しげに見えないでもないヤコブだ。

「では、宿に向かいますか」

「宿は、どんなところなのだ?」

「ノルデングランドホテルとあります」

「お、なんか豪華そう!」「久々にベッドで休める!」「お風呂に入りたい!」「ご飯も食べたい!」「ご飯会しよー!」

 四号は良い戦車だが、きちんとしたホテルに泊まれるのは嬉しい限りだ、堅物のタングリスでさえ足どりが軽くなっている。

 

 ボーーーーーーーーーーーーーー

 

 港の汽船も、いっしょに喜んでいるように汽笛を鳴らす港町には夕闇が訪れようとしていた。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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