大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・179『西郷家からのトランク』

2020-10-07 13:24:01 | 小説

魔法少女マヂカ・179

『西郷家からのトランク』語り手:マヂカ    

 

 

 あてがわれた蓮華の間に入るとトランクが二つずつ置かれていた。

 トランクには荷札が付いていて、送り主は西郷侯爵家になっている。

「開けてみようか!?」

 景品に当った子どものようにノンコが目を輝かせる。

「ああ、開けてみろ」

「よし……あれ、鍵がかかってる!」

「鍵なら、机の上じゃないか?」

 机の上には『鍵在中』と書かれた茶封筒が置かれている。中には二人の名札が付いた真鍮製の鍵が入っていて、ノンコはいそいそとわたしの分まで開けてくれた。

「わあ、着るものばっかりだ」

「そりゃそうだろう、今のところ身に着けているものしか衣類はないんだからな」

「セーラー服が入ってる」

「制服だ、女子学習院だな」

「え、え、学習院( ゚Д゚)!?」

「驚くことは無いだろう、この時代の華族の子弟は学習院と決まったものだ」

「だ、だって、ノンコはポリ高(日暮里高校)だよ! 偏差値違いすぎるって!」

「なんとかなるだろ、ポリ高だって50くらいはあるだろう」

「んなもんじゃないよ学習院は! 70くらいあるんじゃないかなあ(-_-;)」

「そうか、でも、我々は卒業しなくてもいいんだ。霧子お嬢様が無事に登校するようになれば、そこで役目は終わりだからな」

「あ、そっかそっか」

「それに、優等生でない方が霧子お嬢様も気が楽だろう。ノンコは霧子に甘えてやるといい。あの子は護られるよりも護ってやる者がいる方がしっかりするような気がする」

「そ、そうなの?」

「ああ、九割九部そうだ」

「……そっか……ね、制服以外はチョーダサいんですけどお」

「この時代じゃ最先端だ、すぐに慣れる」

 この時代はアールデコとかアールヌーボーの時代だ。それ以前の女性の体を締め付けるようなファッションは影を潜めて、ゆったりとかザックリといった服装が多い。制服のスカートも膝下五センチだ。

「このパンツとか信じられないですけど!」

「この時代はズロースだ、ああ、もう広げるな。片づけが大変だぞ」

「あ、ガーターベルト(n*´ω`*n)、ちょっとエロいんですけど! で、次は……」

 わたしの注意などに耳を貸さずに、四つのトランクの中身全てをベッドの上に陳列したノンコだった。

 衣類は全て二人のサイズにあっていた。JS西郷の仕業なんだろうが、これだけお膳立てされていると、ひょっとして仕組まれたかとも思うのだが、ま、今は考えないでおこう。

「ま、マヂカ……ちょっと大変だよ!」

 考え事をしている間にノンコは部屋を出ていて、それが、青い顔をして戻ってきた。

「なにかあったのか!?」

「あったんじゃなくて、無いんだよ!」

「なにが無くなったんだ?」

「ト、トイレにウォシュレットが無いんだよ(;'∀')!」

「当たり前だろ、大正時代だぞ」

「そ、そんな、ウォシュレットの無いトイレなんて、ノンコ無理!」

「ああ……」

 わたしのように何百年も魔法少女をやっていれば、どんな時代にも適応できるが、去年までは普通の女子高生だった駆け出し魔法少女には無理だろう。

「どうしよう、マヂカ!?」

「よし、一つ魔法を教えてやろう」

「え、どんな!?」

 この分なら、霧子以外の事でも手が焼けるかもしれないと思う魔法少女であった……。

 

 

 

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まりあ戦記・003『アクト地雷』

2020-10-07 06:47:52 | ボクの妹

(神々の妄想)
003『アクト地雷』語り手 晋三  




 高安みなみ大尉は親父の片腕だ。

 外見はお茶っぴーなオネエサンだけど、陸軍特任旅団のエリートだ。
 なにごとも明るく前向きに取り組み、この人と組んでいたらきっと上手くいくと思わせるオーラがある。
 一を聞けば十を知るというような聡明さが本性だと感じるのは俺が仏壇の住人だからだろうか。
 特任とは言え現役の陸軍大尉でありながら、ほとんど軍服を着ることも無く、いつも足腰の軽い女子大生のようなナリをしている。
 そんなみなみ大尉は呼吸をするようにお喋りだ……という触れ込み。

 でも、ハンドルを握るみなみ大尉は寡黙だ……。

 まりあが来ることは機密事項にはなるんだろうけど、ちょっと寡黙すぎやしないか?

 え……ちょ……みなみ大尉はまばたきをしてないんじゃないか?

 俺はみなみ大尉の鼓動に注目した。
 安定している……対向車線をはみ出した同型のセダンが衝突ギリギリですれ違っても毛ほどの変化もない。

 こいつはアクト地雷だ!

 気づいた瞬間、俺を胸ポケットに入れたまりあは車外にテレポートした。

 え!?

 まりあは歩道に尻餅をついて、たった今まで乗っていたセダンが走り去っていくのを見送っている。

 ドックゥアーーン!!

 セダンは百メートルほど走ったところで大爆発した。一秒でも遅れたらまりあの命は無かっただろう。
 呆けていると、さっきすれ違ったセダンが戻ってきて、まりあの目の前でドリフトしながら停車した。

「早く乗って!」

 車から飛び出してきたのは本物の高安みなみ大尉。やっぱりさっきのは特殊戦闘用のアクト地雷だ!
 

 そんな事情の分からないまりあは目を丸くして金魚みたいに口をパクパクさせている。

「まだローンも終わってないダンディーが、ダンディーってのはこの車の名前ね。ダンディーが調子悪くって、やっと調子がもどってカットビで来たら、ダンディーと同じのとすれ違うじゃない。運転してるのはあたしソックリだし、助手席にはあなたが乗ってるし、あ、挨拶まだね、陸軍特任大尉の高安みなみ(懐からIDを出した)どう、制服姿のあたしもイケてるでしょ? ハハ、自分で言ってりゃ世話ないか。本当だったら首都のあれこれ案内しながらと思ってたんだけどね、あたしソックリなアクト地雷が現れるようじゃウカウカしてらんないわ。しかし決心してくれてありがとう、舵司令は何にも言わないけど、あなたのことを頼りにしていたのはビンビン伝わってきてたから。あたし以心伝心てのは苦手でさあ、まりあの決心がもう一日遅れてたら司令とケンカしてたところよ。あ、まりあって呼んでいいわよね? あたしのことは『みなみ』でいいから。あ、ごめんね、あたしばっか喋っちゃって。なんか聞きたい事あったら、別になくってもいいんだけどね……」
「あ、いろいろあり過ぎて……えと、みなみ大尉?」
「ハハ、ただのみなみでいいわよ」
「いきなりは、その……」
「あ、そだよね。あたしってば一方的に距離縮めちゃって。じゃ、みなみさんだ」
「みなみさん。あたし、さっきまであの車に乗っていたと思ったら、いきなり歩道にいて、で、乗ってた車が大爆発で……なんか訳わからないんですけど」
「あれはアクト地雷って言って、人型の地雷。一見人間そっくりだけど、AIじゃないからまばたきとか心拍とかが微妙に違うし、プログラムされた言葉しか喋らないし、なんたって基本は地雷だからね。えと、車から歩道に移動したのはまりあの能力でしょうね、ベースに着いたらテストしてみましょ。しかし、いちばん驚いたのは、危機に直面したらとっさの判断で能力が使えることでしょうね。司令も……お父さんもお喜びになると思うわ」
「いろいろ覚悟はしてきたんですけど、えと、あたしは首都でなにをするのかしら?」
「いろいろ!」
「いろいろ?」
「う~ん、あんまし予備知識はね……直接お父さんから聞くことになるわ、そのほうがいい」
「そうなんだ」
「ハハ、その方がワクワクしていいじゃないの」

 ズズーン!! 
そのとき直下型地震のようなショックがきた。

「わ、地震!?」
「ちがうわ、いまのは……クソ! こんなに早く来るなんて反則よ!」

 キーーーーーーーー!!

 ふたたびショックがあって、ダンディーは急停車した。

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ポナの季節・56『SEN 4・8デビュー!』        

2020-10-07 06:22:37 | 小説6

・56
『SEN 4・8デビュー!』    


 

 ものには裏表があるように、運にも裏表があるのかもしれない。

 ファイブスターは、みなみの父の会社の社員バンドで、古手のヘブンリーアーティスト。
プロになろうなどという色気など無いオッサンバンドだ。下は係長から上は部長までいたが、鳥取の境港に急きょ来航が決まった中国の豪華客船の爆買いに対応するためにメンバーの半分が動員され、あらかわ遊園で予定していた公演が出来なくなったのである。
 そもそも、この中国船は境港への来航予定は無かったが、マーズのため釜山寄港を取りやめて、山陰の中規模都市への寄港となった。韓国の不幸が日本に恩恵をもたらした格好で、会社にも目出度いことだが、ファイブスターにとっては不幸な公演中止になった。機材の搬送も終わっていたので、もったいないということになる。そこにSEN4・8が初デビューの機会を探していたので、みなみの父を通して場所も機材も全て譲ってもらうことができることになったのである。

 ゆりかもめの一群が、さっと川面を撫でるようにして、空へ躍り出た。

 それがきっかけのように、揃いの新品ステージ衣装に身を包んだSEN4・8がアリスの広場のステージに駆けのぼった。

「みなさーん、こんにちは! SEN4・8です! 昨日までは、こんなステージで初公演が行えるなんて思ってもみませんでした……」

 MCを兼ねたボーカルの安祐美が、元気よく挨拶し、この幸不幸のでんぐり返しの話を面白く説明。観に来ていたファイブスターの残留組にご陽気に挨拶。そしてコスを提供してくれたバンドの遺族の人たちには、心からのお礼をこめて全員で頭を下げた。

「それでは、SEN4・8初の曲を聞いてください。プリンセスプリンセスの『ダイアモンズ』です!」

 三曲が終わってトークになったころには、すり鉢状の観客席は満員に近くなった。中年以上には懐かしく、若者には新鮮なサウンドだった。

「SENのSEは世田谷女学院を、Nは乃木坂学院を、で、4・8がミソでーす! みんなの五段階評定の平均(笑)といいたいんですが、4は世田女の、8は乃木坂の所番地ですね。その何丁目かを入れました。なんでかってゆーと、SENだけじゃ寂しいから(笑) センと読んでもらってもSENと読んでもらっても結構でーす。4・8も自由に読んでください。ではメンバー紹介……」

 一人一人紹介するたびに拍手が起こる。五人のメンバーは、もう最高の気分。観客との一体感も高まって来た。

「では、後半三曲がんばりまーす!」

 けっきょく、アンコール込みで五曲歌ってデビューを終えた。

「これ、今日の投げ銭だよ」
 ファイブスターの残留組というか、元メンバーの専務が段ボール箱を差し出した。
「え、いつの間に?」
「わ、こんなにたくさん!」
「みんなヘブンリーはやってるよ。で、お願いなんだけど」
「なんですか?」

 専務はニッコリ笑って、後を続けた。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:94『ベルゲパンター』

2020-10-07 06:08:11 | 小説5

かの世界この世界:94

『ベルゲパンター』テル      

 

 ポチは鞍部の向こうを指さしている。      「ベルゲパンター」の画像検索結果

 キュロキュロと履帯の音がしてくる、四号よりも重厚な音……五号戦車パンター。

 しかし、鞍部を超えて姿を現したのは、ポチの言う通り変なのである。

 車体こそは精悍なパンターだが、その上にあるはずの砲塔は無く、木の箱のようなものとクレーンが載っていて、傾斜した前面装甲の上には二号戦車の主砲である20ミリ機関砲だけが付いている。

「ちょうどいいところに」

 タングリスがホッとした表情で道の真ん中に出て手を振った。変なパンターは鞍部に乗り上げたところでため息をつくような音をさせて停車した。

「……どうかしましたか?」

 ハッチも開けずに操縦手席から眼鏡の兵隊が顔を出した。

「すまん、プラグがヘタって動けなくなったんだ、予備があったら分けてくれないか。なんなら、ノルデンハーフェンの整備隊まで牽引してくれてもいいんだが」

「ハ……はい、喜んで!」

 一瞬の間があって、眼鏡は変なパンターを四号の近くまで寄せると、状況確認のために下りてきた。眼鏡は小柄な奴で襟には伍長の階級章が付いている。

「わたしは遊撃偵察隊のタングリスだ、船の時間に間に合わせたいので急いでくれるとありがたい。ん? そっちは貴様一人か?」

「はい、西部戦線の戦闘が終了したので、急いでベルゲパンターで向かうところであります。回収作業には現場の戦車兵が協力してくれますので、急いで車だけでもと先行しておるのです」

 どうやら変な奴は、ベルゲパンターという戦車回収車のようだ。

「伍長、おまえの名前は?」

 ブリュンヒルデが偉そうに聞く。多彩な乗員にたじろいだようだが、姿勢を正して答えてくれる。

「第七機甲師団、第一戦車回収隊のヤコブ伍長であります」

「ごくろう、なんとかなるか?」

「はい、路上の作業では時間もかかりますし、プラグの予備も数が揃いません。修理隊まで牽引させていただきます」

「そうか、では、みんなで手伝おう」

 タングリスが目配せするとブリュンヒルデが下りてきて偉そうに指図する。

 戦車の牽引と言うのは自動車のように簡単にはいかない。車載のワイヤーロープを下ろすだけでも四人がかり、そいつをベルゲパンターのお尻と四号の前方にあるフックに掛けるのだが、車体のフックとワイヤーロープを繋げるS型金具一個だけでも12キロの重量がある。フックに掛け終ると二本のワイヤーロープのテンションを均一にするために回収車の方を動かして微調整。無事に終わるのに三十分近くかかってしまった。

「ベルゲパンターの方が空いているので、何人か向こうに乗らないか」

 タングリスが提案すると――仕方がないなあ――という顔。で……なんと、タングリスを除く全員が移動した。

 みんな子どものようにベルゲパンターが珍しいのだ。

 四号をけん引しながら鞍部を超えると、前方から護衛のパンターに引き連れられたベルゲパンターとトラックがやってきた。

「ラッキーだなヤコブ!」「オー、早々と」などと言いながらヤコブの仲間たちが追い越していく。

 元来が真面目な照れ屋なのか、少年のように頬を染めるヤコブが可愛く思える。

「やっぱ、オープントップは気持ちいいなあ!」

「空気おいしい!」

「なんか、いろいろ積んでるねえ!?」

「あんまりはしゃぐな」

 ケイトやロキに注意しながらも、いちばん面白がっているのはブリュンヒルデだ。

「お、プラグの予備が四ダースもあるぞ」

 目ざとく発見したのもブリュンヒルデだ。

「あー、そんなところにありましたか!」

 ヤコブの顔がいっそう赤くなった……。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

 

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