大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・61『ちょっとクリックしてみた』

2020-10-12 06:38:51 | 小説6

・61
『ちょっとクリックしてみた』谷口真奈美
        


 一週遅れの収支計算が、やっと一息。

 ちょっとためらったあと、SEN4.8と打ち込んでクリックしてみた。

 昨日まではユーチューブとニコ動だけだったが、いきなりトップに『SEN4.8オフィシャルサイト』が出てきた。
 女子高生だったころに、あいつに会うときのように胸がときめいた。

 まるでアイドル……!

 そう感じると、指は自然にマウスをスクロールし、寺沢新子でピタリと止まった。クリックすると、歌・おしゃべり・プロフィールに分かれている。おしゃべりをクリック……。

「みなさーん、こんにちは! SEN4.8です! 一昨日までは、こんなステージで初公演が行えるなんて思ってもみませんでした……って似たようなことは、昨日安祐美が言ってましたけど。ほんと二日続きなんて夢みたいです。アイタ! なにすんのよ由紀!?」
「ポナのお尻はプニプニでつねり甲斐がありまーす!」
「あ、あはは、夢じゃないってことですよね(#^.^#)」
「メンバー紹介!」
「あ、うん、じゃ、いまあたしのお尻つねったのが、ベースの橋本由紀でーす!」
 四人の紹介はとばして新子にする。
「一応ドラムなんですけど、今日は安祐美と替わってボーカルやりますポナこと寺沢新子でーす!」

 ここの部分を三回もリピートしてしまった。

 ほんの赤ちゃんのときに分かれたので、いまの新子は別人のようだ。

 でも、知らず知らず面影を探ってしまう。お尻のとこでは、病院で、ほんの一週間だけど、オムツを替えてやった時の感触が手に蘇る。照れ笑いして目の間にしわが入る。思った以上に似ていることに戸惑いながら愛おしさがこみ上げてくる。

 スケジュールをクリック。

 明後日のライブが目に飛び込んできた、なんと福島県のS市だ。東京のデビューライブが終わったので、ステージトレーラーを繰り出しての慰問ライブ。時間を確認。朝八時ごろの新幹線に乗れば間に合いそう。
 画面を切り替えて、東北新幹線を直ぐにネット予約しようとした。

 そこで、スマホがメール着信のシグナル。

――明後日、十時八重洲口で待ってる――
――ごめんなさい、先約が入っちゃった――

 よりにもよって、あいつから。スッパリとお断りのメールを打つ谷口真奈美だった。


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界この世界:99『外洋へ』

2020-10-12 06:30:51 | 小説5

かの世界この世界:99

『外洋へ』語り手・タングリス       

 

 

 ロキもケイトも症状が出る前に船酔いを克服した。

 

 ヤコブのお手柄だ。知恵の輪やルービックキューブに飽きる前にバージョンアップした四号の調整に付き合わせたのだ。

 シュタインドルフ以来慣れ親しんできた四号なので、ロキやケイトならずとも自分の分身のように愛着がある。

「ほう、変速機を換装しているんだ」

「ローが二段になって、泥濘や雪上での粘りが出て、シフトチェンジもスムーズになったんだ。前面装甲を叩いてごらん」

 コンコン コンコン

「微妙に音が違う」

「80ミリの一枚装甲になってる、75ミリを500メートルで喰らっても耐えられるぞ」

「そうなんだ」

「フェンダーの上に見慣れない物があるよ」

「エアーフィルターだ、空気のろ過効果があるからエンジン性能が僅かに上がっている」

「これはなに?」 

 ひとり退屈していたポチが、付属して積載された木箱に気づいた。

「あ、ああ、それはブィンターケッテンだ」

「「「ブィンターケッテン?」」」

「見せてあげよう」

 ゲペックカステンからバールを取り出すと、ズングリの体に似合わぬ敏捷さで下りて、木箱の蓋を一部開けた。

 鉄製の瓦のようなものがいっぱい入っている。わたしもグラズヘイム以来のそれを見て懐かしくなった。

「四号は履帯の幅が狭いので、雪中戦や泥濘戦では埋まってしまって動けないことがある。それを防ぐために一枚一枚の履帯にこいつをかますんだ。履帯の幅が1.5倍になって立ち往生しなくなるんだ」

「でも……これを着けたらせっかくのシュルツェンの邪魔にはならないか?」

 姫も、見るべきところを見るようになってこられた。

「グラズヘイムは北方です、万一必要になったときの用心に持ち込みました。いずれラグナロクが起こるやもしれませんし」

 ラグナロク……最終戦争のことだ。姫の顔が一瞬曇る……お分かりになっているのだ、ご自分の役割が。しかし、そのことは臣下であるわたしごときが斟酌することではない、急いで意識の外にやると、目配せしてテルを誘った。

 

 輸送船シュネーヴィットヘンに乗っているのは所属もまちまちの歩兵ばかりだ。統一した部隊行動などできるはずもなく、乗船中の指揮権は船長が握っている。これからの航行計画とヤコブの処遇確認のためブリッジを目指した。

 おっと……。

 ラッタルを上がると、グイッと左に体を持っていかれそうになる。

 岬を迂回するために船が面舵を切ったのだ。

 岬を周ると、いよいよ外洋だ。

 希望と絶望が同居する鈍色の神の海、レーゲ海が視界いっぱいに広がり始めていた。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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