大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・175『大阪一の残念さんは木村重成やで』

2020-10-25 13:57:20 | ノベル

・175

『大阪一の残念さんは木村重成やで』さくら   

 

 

 大阪一の残念さんは木村重成やなあ( ^^) _U~~。

 

 お茶をすすりながらテイ兄ちゃんが言う。

 木村と言うとパンの木村屋しか知らんうちはポカンとしてるけど、他のみんなは「おお!」という顔をしてる。純粋のヤマセンブルグ人のソフィアさんまで「おお!」と言うのにはひけ目を感じる。

 こういう時に黙ってるとくすぶってしまうんで、陽気に手を挙げる。

「キムラシゲナリさんて、なに?」

 みんなは「え?」という顔をするけど、聞くは一時の恥やからヘッチャラな顔をしとく。

「木村重成いうのは、豊臣の家来でな、秀頼と同年齢の若者や。大坂夏の陣で大坂城がいよいよあかん言う時に出陣してな、若江いうとこで討ち死にしたんや。首は家康の前に運ばれて首実検したんやけどな、家康は『敵ながら惜しい若者を死なせてしまった』と涙ぐんだらしい。どうも、以前から重成を見込んで引き抜き工作をしとったらしい。それで、首を自分のそばまで持って来させると……」

「知ってます! です」

 ソフィアさんが手を挙げる。

「わたしに話させてください、です!」

「うん、そんならどうぞ……」

「シゲナリの首からは、とってもいい香りがしたんだそうデス。イエヤスが不思議に思って調べさせると、シゲナリのヘルメット……えと、カブトには香が焚きしめられていて、いい匂いがするようになっていました。大坂の陣は五月、いまの暦では七月だったので、打ち取られた首が腐った臭いさせないためにという気遣いだったそうです。それで、イエヤスは『サムライとはこうありたいものじゃ!』と感激したという話です!」

「うん、その通りや。ソフィアさん、よう知ってるなあ」

「領事館で習いました、ボスが大阪や日本のあれこれレクチャーしてくれますデス。でも、シゲナリがザンネンサンは知りませんでした。デス」

「そうか、それやったら、ちょうどええわ。重成さんのお墓見にいこか!」

 アホのテイ兄ちゃんは、さっそくポケットから車のキーを取り出す。

 鼻の下が伸びとおる。

「今からやと、戻ってきたら夜になるんちゃう?」

「あ、あかんかな?」

 留美ちゃんと銀之助が顔を見合わせて「ちょっと……」いう目をしてる。

 テイ兄ちゃんは、理屈をつけて頼子さんといっしょに居たいだけやから、あたしも反対する。

「ほんなら、日を改めて、みんなで行くことにしようよ」

 そう提案して、日取りはメールのやり取りで確認することにした。

 まあ、頼子さんもテイ兄ちゃんを嫌ってるわけやないさかい、ええねんけどね。

 なんか、やってこましたいあたしは、ちょっとイケズなんかもしれへん。

 

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まりあ戦記・020『突然の休暇』

2020-10-25 06:18:24 | ボクの妹

・020
『突然の休暇』    



 ここのところヨミの攻撃が無い。

 首都駅に着くなりヨミの攻撃に晒され、命からがらたどり着いたベースでは、いきなりウズメに乗せられ、命がけの戦闘をさせられた。
 もう、なんでもかかってこい!
 まりあは覚悟を決めていたが、こんなに平穏な日々が続くと、いっそこのまま穏やかに生きていければと思ってしまう。

 せめてお兄ちゃん(俺)の法事が済むまではこのままで……。

 そう願うのは、まりあの愛情……と言ってやりたいが、十六歳の少女らしい怯えからだろう。
「休暇は休暇、楽しまなくっちゃ!」
 みなみ大尉は、五分で準備した荷物を景気よく車のトランクにぶち込んだ。
「さ、行くよ!」
「うわーーーー!」
 まりあがドアを閉めきる前に車は急発進した。
「家の外で朝ごはんを食べるなんて新鮮だ!」
 まりあの横で男の子のナリをしたマリアが興奮している。

 徹夜で仕事をしていたみなみ大尉に突然休暇の許可が下りたのは、ほんの十分まえだ。

 頭の片隅で「なんで!?」という疑問が無いわけではなかったっが、詮索したら仕事が増えそうな気がしたので、瞬間で頭を切り替えた。
 箱根にある軍の保養施設の空きを確認し、二秒で予約を入れると、八分でマンションに帰り、まりあとマリアを急き立てて車に乗せたのである。
 まりあは戸惑ったが、マリアの反応は早かった。
「まりあ&マリアじゃまずいわよね」
 マリアはまりあの影武者だ。いっしょに出かけるのははばかられる。
「エイ!」
 小さく掛け声をかけると、髪の毛が縮んで肌の色が変わった。
「え、そんな技があったの?」
「あたしも初めて知った」
 自分でも驚いたマリアの声は、一オクターブ低い少年の声だった。

「マリア……じゃまずいわよね」

 高速に入ったところで、まりあが呟いた。男のナリでマリアはまずい。
「じゃ、マリオって呼んで」
「それじゃ任天堂のゲームだ」
「よし、晋太郎だ!」
「ウプ!」
 まりあが吹き出しかける。晋太郎は親父の名前だ。
「えと、泊まりになるのよね、みなみさん?」
「学校なら、明日の朝一番で連絡入れる。軍務は最優先事項になってるから、ドントマインよ」
「え、これって仕事なの?」
「休暇も大事な任務よ。しっかりホグシておかなきゃ、いざって時に力を発揮できないでしょ! ガハハハ!」

 高笑いしながら宣言するみなみ大尉の圧に呑み込まれていくマリアであった。 

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ポナの季節・74『てっきり……だと思った』

2020-10-25 06:08:09 | 小説6

・74
『てっきり……だと思っていた』
        


 てっきり屋外で撮るのかと思っていた。

「このカンカン照りにロケなんかできないよ、さあ、こっち」
 田中ディレクターに促されて入ったスタジオは壁も床もライトグリーンだった。
「入浴剤入れたお風呂の中みたい」
「あ、この段差って、歩道と車道なんじゃない?」
「ほんと、学校の前のと同じだ」
「どれどれ」
「ちょっと、挨拶!」
 由紀に言われ、五人揃って「よろしくお願いしまーす!」

 今日はCM撮影の最後、歩道でふざけていたポナたちが車道にはみ出し、T自動車の新型車に危うく撥ねられそうになるくだり。

 五人バージョンから始まって、三人、二人、一人のバージョンを撮る。
 車は別撮りで、撮影にはスクリーンに車が迫ってくるところを写し、ポナたちは、それに合わせてリアクションをとる。
 演技は素人なので、三回もやると慣れて新鮮なリアクションができない。
「じゃ、出てくるもの変えるから」
 迫ってくるものはトラックになったり戦車になったり、いきなり進撃の巨人が飛び出したときはリアルにビックリした。
「今度は轢かちゃうとこ撮りまーす」
「え、轢かれるんですか?」
「仕上げは見てのお楽しみ。じゃ、ぶっつけ本番!」
「え、いきなりですか!?」
 もう何が写されても新鮮なリアクションがとれそうになかったが、スタッフはポナたちの予想を超えていた。なんとプテラノドンがスクリーンを破って飛び出し、ポナたちの頭をかすめ後ろに飛びさっていった。
「ジュラシックパークだ……」

 てっきり、女子高生の姿だと思っていた。

「……ここよ、新子ちゃん」
「え……」
 真奈美は品のいいシフォンのワンピを着て銀座の風景の中に溶け込んでいた。
「よかった、来てくれて!」
「今日は意表を突かれることばっかし」
「え?」
「ハハ、いろいろあって。真奈美さんのお店見てみたいです!」
「……どうしても」
「はい、そのために銀座で待ち合わせにしたんです」

「おはようございます」
 店に入ると早出のホステスさんたちが品よく挨拶してくれ、ポナは、ちょっと気後れした。
「きれいな人ばっかり……」
「あたしは?」
「真奈美さんは……化け物です」
「ありがとう、誉め言葉ね」
「あの……」
「うん?」
「やっぱ、お母さんて呼んじゃだめですか?」
「うれしいけど、それじゃ寺沢先生にも奥様にも申し訳ないわ。こうして会ってくれるだけで十分。もう変装しなくてもいいだけで十分」
「あら、もう女子高生姿見られないんですか?」

 女子高生姿という言葉にホステスのお姉さんたちが暖かく笑う。とりあえず一山乗り越えた真奈美とポナだった……。
 

ポナと周辺の人々 

父     寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界この世界:112『ヤコブの家まで』

2020-10-25 05:56:03 | 小説5

かの世界この世界:112

『ヤコブの家まで』語り手:テル           

 

 

 ヤコブが心配していた子どもの飛び出しは無かった。

 

 確かに、四号の姿に目を輝かせる子どもは多かった。子どもどころか大人まで立ち止まって「オオ」とか「ホオオ」とか感心してスマホで撮影する者も多い。子どもたちは反射的に車道に飛び出しそうになるが、親や年長の子どもが引き留めて、我々を煩わせることが無い。親子関係や子どもたち同士の関係がうまくいっている証拠だろう。

「行儀の悪いのは、お前ひとりだったな」

「仕方ないよ、衣装脱いで着替えるのに手間取ったんだから。おしとやかにしてたら置いてかれる」

「家の準備はできてるのか?」

「うん、歓迎式典に出かける前にやっといた」

「まさか、おまえが料理とかしてないだろーな?」

「アハハ、そんな無謀なことはしないよ。お母さんがやってくれてる」

「それより、みなさんのこと紹介してよ、お兄ちゃん。式典じゃ口もきけなかったし。まずは、わたしの胸元ばっか見てる坊やから」

 指名されたロキがひっくり返りそうになる。

「通信手のロキ、子どもだが、なかなかの苦労人だ」

「よろしく、わたしのスリーサイズなんか通信しちゃダメよ。国家機密なんだから」

「し、しないよ(;'∀')。あ、あんたほんとに、さっきのクイーンなのか?」

「そうよ、島の人たちはいい人ばかりだから、オフの時は自由を尊重してくれるのよ」

 微妙に問題点をズラされたようだが、さすがに追及はしない。

「ロキの肩に停まってる妖精さんは?」

「ヒック!」

 しゃっくりを一つしてロキの服に中に隠れるポチ。

「こ、こら、くすぐったいポチ!」

「へー、ポチって言うんだ!」

「い、犬じゃないからね!」

「分かってるわよ、点という意味だよね。点がどこにあるかで全然意味がちがっちゃうものね。大の字の肩に掛かれば犬だし、又の所にくれば太いだし、丸まって肩に戻ったら、ポチのポだよね」

「ハハ、ポはカタカナだよ。足の付け根に隙間があるし」

「そっか、オーディンの文字は難しいからね」

「おまえが不勉強なんだ」

「テヘ。いいじゃん人柄はとってもいいからさ!」

「自分で言うかあ」

「いいのいいの、わたしって可愛いからね!」

「砲塔の右っかわから身を乗り出しているのがケイト。装填手。歳はユーリアと同じくらいだ」

「光栄です、お目にかかれて」

「あ、敬語禁止。私服の時はただのユーリア。ヤコブ兄ちゃんにはもったいない美人の妹」

「は、はい」

 不思議だ、ユーリアは自然に振る舞っているようで、威厳……気品……口にすると違うのだが、人に一目置かせる何かがある。ベイクイーンの称号は伊達じゃないようだ。

「わたしに何かあるみたいに思ってるオネエサンは?」

「テル、砲手をやってる。世話になるけどよろしくね」

「よろしく、ケイトとテルは……二人で一組なのね」

「え……ああ、砲手と装填手だからね」

「そうね」

 なにか本質的なことを言われたような気がしたが、自分でも分からない、気のせいだろう。

「運転中だから顔は見えないけど、操縦手のタングリス」

 そこまで聞くと、ユーリアは器用に車内に潜り込みタングリスに挨拶する。

「本当は、この中でタングリスさんが一番綺麗な人なんだと思う……」

 ポツリというユーリアに苦笑で応えるタングリス。

「えと、これでいいかなあ?」

「よくない!」砲塔のキューポラから声がする。

「失礼だよ、お兄ちゃん」

「あ、車長のブリュンヒルデ」

「見知りおけ、主神オーディン娘にして堕天使の宿命を負いし漆黒の姫騎士ブリュンヒルデである」

「冗談みたいに長いお名乗りだけど……いいえ、お目にかかれて光栄です殿下」

「畏まるのはこれきりでいい。これからはブリュンヒルデあるいはヒルデでいい。ブリという呼び方はNGだぞ」

「心得ました殿……ブリュンヒルデ」

 

 自己やら他己やらの紹介をやっているうちにヤコブとユーリア兄妹の家に着いてしまった……。

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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