大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・013『すごいジト目で』

2020-10-18 05:37:04 | ボクの妹

・013
『すごいジト目で』    


 

 まともに当たって外してしまいました(^_^;)

 この説明に、瀬戸内先生は「え?」という顔をした。
「だから、あたしの裏拳がまともに当たって、矢治君の顎を外してしまいました」
「あ、あーー、なーるほど…………え!?」
 瀬戸内先生は他人事みたいに気の抜けた返事をしてからビックリした。

 階段下の盗撮三人組をやっつけてしまった直後に瀬戸内先生がやってきたのだ。

 異常を感知し、教師の使命感でやってきたのではない。化学準備室でお昼をした直後に、たまたま出くわしただけである。
 たいていのことは見て見ぬふりをする瀬戸内先生だが、あの立ち廻りを目撃してしまっては、そうもいかない。
 事務室の人たちも出てきているので、どうしても教師らしく振る舞わざるを得ないのだ。
「えと、病院とか行かなきゃだめかな?」
 めんどうは御免だが、怪我をしているのなら放ってはおけない。いちおうアリバイ的に聞いてみる。
「あ、こんなの一発で治ります」
 そう言うと、まりあは矢治の顎を掴んだ。

 ウギッ! グチャ!

 くぐもった悲鳴と顎の骨が正しく収まる音がした。
「はい、もう大丈夫です。でしょ?」
「あ、うん、ぜんぜん大丈夫……」
 矢治は目に涙を浮かべながらの泣き笑いで応えた。
「あ、そう。喜田君も矢治君もオーケーね」
「「ハ、ハイ」」
「じゃ、みんな仲良くね。あ、もう大丈夫ですから!」
 事務室の人たちも強引に納得させると、瀬戸内先生は、そそくさと行ってしまった。

「ちょっと、スマホ出しなさいよ」

「あ、うん」
 迫力負けした矢治は、素直にスマホを出した。
「……なんだ、あたしのだけなんだ」
「あ、あの、悪気はないんだ。安倍さんて可愛いってかコケティッシュてか、その、魅力的だから、ちょっと悪ノリしちゃって」
「常習だったら、このまま生活指導室に引っ張っていくところ。あたしの写メだけでも立派に犯罪なんだけど……行っとく?」
 男三人はブンブンと首を横に振りまくった。
「あたしのパンツって、ここにアミダラ女王のプリントがあるの」
 マリアは自分のお尻を指さした。瞬間視線を向ける三人だが、すぐに逸らした。
「アミダラ女王が写っていたらブチ殺す!……とこだけどね、ほんのチラッとだから、消去するだけで許してあげ……ごめん、他のデータも全部消しちゃった(^_^;)」
「あ、ああーーーー!」
「なんか文句ある?」
「い、いえ、ありまっせーーーん!」
「じゃ、先生も、ああおっしゃったことだし、これからは仲良くしようね」
「え、あ……」
「いやなの?」
 まりあは、すごいジト目で三人を睨んだ。

「「「よ、喜んで!」」」

 ドヤ顔で腕を組んではいるが、内心は「しまった!」のまりあであった。
 

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ポナの季節・67『PV5000から』

2020-10-18 05:17:34 | 小説6

・67
『PV5000から』
       



 天気図の台風12号を見て、奈菜は自分のことのように思えた。

 ハワイの沖で小さなハリケーンとして生まれ、日付変更線を超えて台風12号になり、弱って熱帯低気圧になったかと思うと再び台風に昇格。今朝の天気予報では955hPaで立派な強い台風になっていた。

 世田女には入ったけども、授業にも付いていけず友だちもできずで、連休のころには家出して横浜のガールズバーで働いた。運よくポナのお姉さんに補導されて、ズルズル転落せずに済んだ。
 働いていたガールズバーは、奈菜が補導された三日後に摘発されている。そのまま居たら、ただの補導ではすまず学校を辞めさせられるところだった。

「あ、PVが5000を超えた……」

 鳥肌がたち、思わず椅子の上で正座してしまった。
 自分の体の火照りをお尻と太ももとふくらはぎで感じた。いまあがったばかりの風呂の余熱ではない。
 なんの主体性もなくSEN48のメンバーになったが、いつの間にかキーボードの奈菜で通るようになり、安祐美やポナほどではないけどもファンが付いてきた。アマチュアだけど、ちょっとしたアイドルだ。

「更新しなくちゃ……」

 そう思ったが、5000という数字の重さでなかなか奈菜はキーボードが押せなかった。

「ハハハ、それで、ブログがこうなったわけか」

 ポナと由紀が笑う。

「だって、あたしにしたら大進歩なんだよ!」
「そうだね、あたしに抱き付いておパンツのサイズが適ってないって発見したんだものね」
「あ、そんなつもりじゃ……わ!」
 由紀の反撃に思わずチガウチガウをする奈菜は勢いで歩道からはみ出してしまった。

 パウーーーン!

 前から来たプリウスがクラクションを鳴らして通り過ぎる。思わず三人揃って頭を下げてしまう。あまりきれいに揃ったので、プリウスが角を曲がると同時に三人爆笑してしまった。
「福島のホテルで、玉子かけごはんに醤油かけすぎたことなんか忘れてたわよ。奈菜、こういう細かいとこに目を付けて書くのっていいんじゃない?」
「そ、そかな(^_^;)」
「「そうだよ!」」

 学校に着くと、由紀は生徒会に、ポナと奈菜は演劇同好会の稽古場に向かった。

「あんたたち、さっきの呼吸の合い方よかったわよ」
 稽古場に着くと吉岡先生がいきなり誉めてくれた。
「思わず写メっちゃった!」
 主役の鈴木友子がスマホの画面を見せた。
「この稽古場から、通りが丸見えなんだ!」
 スマホには、三人娘がきれいに揃って頭を下げているのが動画で撮られていた。
 稽古の合間に奈菜は、その十秒ほどの動画をもらって、その日のブログに使った。

――はみ出す青春――

 このタイトル動画が、意外な展開をポナたちにもたらすとは、だれも気づいてはいなかった。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界の片隅へ:105『25トン対5000トン・2』

2020-10-18 05:04:19 | 小説5

かの世界この世界:105

『25トン対5000トン・2』語り手:ブリュンヒルデ   

 

 

 ケイトが遅れた。

 

「届くと思ったんだもん!」

 プリプリしながら装填手のシートに着く。

「海の上では魔法は使えないんだ」

 ケイトは、ブロンズアローを巡洋艦に射掛けたのだ。陸ならばケイトの弓には魔力が籠っていて、数キロ先に迫った巡洋艦にでも届く。威力は無いが、それでも運よく射撃管制機にでも当たれば手りゅう弾を投げたほどの効果はあっただろう。ケイトの矢は、五十メートルほど先の海面に水しぶきをあげることもなくロストした。

 もっとも、四号の徹甲弾でも巡洋艦の装甲はぶち抜けない。レーダーや射撃管制機を破壊して命中精度を落としてやるか、ブリッジの戦闘指揮所を破壊するくらいしか手が無い。

 もっとも敵も同様で、クリーチャーを使うわけにはいかない。シリンダーもプレパラートも潮風と海水の海の上では存在できない。要はアナログな射撃戦をやるしか手が無いのだ。

「榴弾でいきましょう」

 タングリスが予想外の意見具申。

「機銃の装甲も貫けないぞ」

「見かけは派手ですから」

「ケイト、榴弾だ!」

「ラジャー!」

 弓の無念さを晴らすようないきおいで榴弾を装填するケイト。

「距離7000 方位角60 時差を5シュトリヒとして……照準完了!」

「テーーー!」

 ズシンと振動があって、初弾が撃ち出された。

 距離7000と言えば、戦車の有効射程距離を大きく超えている。的が巨大な巡洋艦であるとはいえ命中は期しがたい……数発撃って命中弾が出ればいいと思っている。

「敵艦の煙突基部に命中!」

 初弾で命中というのは運以外の何物でもないが、味方には励みになる。シュネーヴィットヘンの艦内から歓声が巻き起こった。

 二撃目で敵の艦載艇を破壊、木造船なので良く燃える。なによりの効果は、武装していないとタカをくくっていた輸送船から砲撃を食らったことで、敵が狼狽えたことだ。Mの字の谷に当たる貨物デッキから発砲しているので我が四号の位置を掴めないでいる。

 船長は、この混乱を利用して巧みに射撃を躱していく。

 しかし優位に立てたのは、ほんの五分ほどだ。

 船足が倍ほどに違う敵艦は距離五千まで詰めてきて、左舷の船腹を中心に命中弾が出始めた。

「徹甲弾に切り替え、ブリッジを狙え!」

 我ながら的確な指示を出し、我が方の射撃制度はいやましに高まったが、いかんせん75ミリの威力は知れている。

 

 ドッガーーーーン!!

 

 貨物デッキに命中弾を食らった。25トンの四号が一瞬宙に浮いた。

 敵弾は150ミリだ、超重戦車マウスの主砲並みだ。当たればひとたまりもない……。

 

☆ ステータス

 HP:7500 MP:44 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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