大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・013『修学旅行・13・児玉元帥・2』

2020-10-11 13:41:15 | 小説4

・013

『修学旅行・13・児玉元帥・2』   

 

 

 ブラフ!

 

 俺たちにだけ聞こえるように叫んだのはテルだ。

 他の参列者が爆ぜた音がした地上三十メートルあたりに気をとられた中で、俺たち火星組は御料車の方に注目した。

 テロリストだ!

 ヒコと俺が気づいた。火星組に隣接する一般参列者の中から三人のジジイが飛び出した!

 手にはベルトにでも仕込んであったんだろう、針のように細いタガーを腰だめに構えて御料車に突進していく。

 させるかあ!

 ヒコと飛び出した。

 やっつけようなどとは思っていない。御料車への接近を防ぐ、いや、遅らせるのだ。

 遅らせれば、専門の護衛官が取り押さえるなり射殺するなりやってくれる。

 独立したとはいえ、火星はまだまだ無頼の星だ。比較的落ち着いている扶桑国でも、地球人なら目をむくような荒っぽい事件が起こっている。

 小学校のころから、こういう事件に遭遇した時の訓練はされている。

 小さな子供は自分の身を守ること。

 俺たちみたいな若者も、むろんわが身を守ることが第一なんだけど、人を引き付ける音や光や破壊が行われた時は、あえて違うところを注目するように訓練されている。

 人の気を引き付ける者はブラフであることが多く。実際に危害を加える者は、まるで逆の方向からやってくる。

 ほんとうに身を避けなければならない者は、危害を加える実行者だ。

 そういう実行者からこそ身を守らなければならない、場合によっては、可能な限り弱い者を守ったり、ターゲットに手が届くのを遅らせなければならない。

 視野に入った時の敏捷さで、敵はジジイに化けた戦闘員だと思った。

 こんな奴の正面に飛び出したら命が無い。敵の視野の端に出て、まっすぐターゲットに向かうのを遅らせるんだ。

 そうすれば……

 ビシ! ビシ!

 警護員のパルス銃が命中、テロリストは陛下の二メートル手前でくず折れた。

 もう一人は、瞬間で不利であることを理解して、横っ飛び……。

 グエ!

 テロリストはしゃがんだ未来とテルを飛び越したかと思ったら、そのまま道路に落下して動かなくなった。

 なにが起こったのか確認する間もなく、御料車の向こう側でくぐもった悶絶の声が起こった。

 御料車の窓越しに後姿の児玉元帥が軍刀を鞘に納めるのが見えた。

 なんだか、VRゲームで観た剣客のようだった。

 陛下はいったん御料車の中に戻られ、前後を走行警備車で固め、近衛師団の兵士たちがその周囲を固く警護、乗馬ズボンに赤線をひいた近衛騎兵は参道の人たちを落ち着かせながら周囲を警戒した。

 御参拝中止だと思った。

 しかし、警備各所から異常なしの報告があがると再び陛下はお出ましになった。

 そして、この事件があったにもかかわらず、五分遅れただけで陛下が予定通りに大鳥居を潜られ。

 陛下や児玉元帥をお迎えして、例大祭は三十分ほどで終わって、一般参列者のお参りが許される。

 参列者は数万人に及ぶので、二礼二拍手一礼の作法は略して二拍手と一礼で済ます。

「よし、お御籤ひいて、御守り買ってかえろうか!」

「「「おう!」」」

 清々して、お守りやらお札を売っている授与所に足を向けると、横合いから礼装の下士官に声をかけられた。

「自分は元帥府のヨイチ准尉であります、元帥が先ほどのご協力にお礼を申されたいとお待ちです。宜しければ元帥府まで御同道いただけませんでしょうか」

「え…………?」

「元帥が!?」

「「げ、げ……」」

 テルと未来が反応したが、俺とヒコは、とっさに声も出なかった。

 

 ※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

 ※ 事項

扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

まりあ戦記・007『突っ込みます!』

2020-10-11 05:54:33 | ボクの妹

(神々の妄想)
007『突っ込みます!』まりあ    


 

 

 あたしが生まれる三年前にヨミが現れた。

 2033年に突然現れたと一般には言われているけど、お父さんは予見していた。

 東京を中心に地磁気に異常が現れたのは、ヨミの出現の二年前。幕下大学の准教授だったお父さんは「近々とんでもないものが、東京の上空に出現する。それは、とてつみなく禍々しく暴力的な存在で地上に壊滅的な打撃を与えるだろう」と予言した。

 でも、誰も信じなかった。

 地磁気の異常は首都圏全域で見られたが、政府も学者も地磁気の乱れは南海トラフ北端部のプレートにストレスが溜まっているためで、心配すべきは津波を伴う巨大地震だと説明していた。
 しかし、過去の巨大地震に比べると地磁気の乱れが異なっている。お父さんは、そう説明したが三流大学の准教授の言うことなど誰も耳を貸さなかった。ただ東京オリンピックの年にゴジラの最新作を作った荻野目監督が「ゴジラの設定をした時の地磁気の乱れとソックリである」評論した。

 けっきょくは2040年、東京上空に現れた未確認攻撃体によって、東京と、その周辺は壊滅的な被害をこうむった。
 放射能被害こそは無かったが、被害規模は15メガトンの水爆に匹敵した。
 ただ、規模の割に被害者は一万ちょっとと少ない。未確認攻撃体が出現して攻撃が行われるまでには数日のタイムラグがあって、かなりの人たちが避難できたからであった。

 この未確認攻撃体は、三回目の攻撃を終えた後、突然分解して地上に落ちてしまった。

 荻野目監督は「まるで古事記に出てくる黄泉の国の使いのようだ」とツイッターに書きこんだので「ヨミ」というのが未確認攻撃体の名称になってしまった。
 お父さんを笑う者は居なくなった。
「これは前兆に過ぎない、ヨミは再び現れる」と予見し、政府は憲法改正によって軍になったばかりの自衛隊に招へいした。
 お父さんは、放棄された東京周辺に落下したヨミの構成物質を集め、人工ヨミと言っていいウズメを作り上げたのだ。

 ウズメがリフトから射出され高度15000メートルに達するまでの間に、まりあがヨミのライブラリーから読み取ったことが以上の事だ。

 まりあが読み取った情報は100テラバイト分あったが、その内容を理解するにはホトケさんである俺の能力を超えている。
――まりあ、オールウェポンフリーになったわ、なにをチョイスする?――
 ベースのCICからみなみ大尉が呼びかけてきた。ウズメのウェポンは旧東京の三十三か所で格納されている。射出されてから観測される最新情報によって、CICとマリアによって選択される仕組みになっている。
「このヨミには、どのウェポンも通用しないみたい。あと三十秒でヨミは再起動して手が付けられなくなります。だから突っ込みます……」
――ダメ、自爆攻撃は認めない! ウェポンを使って再起動を遅らせて!――
「それだとキリがない。突っ込みます!」

 まりあは頭をコクピットが内蔵されている頭部を両腕で庇うようにするとウズメをヨミに向かって突進させた。

――まりあ! 引き返し……――

 ドッゴーーーーーーーーン!

 みなみ大尉の指令が届ききる前に、再起動寸前のヨミに体当たりした。

 東京湾に巨大な火球が膨れ上がり、数秒後に収縮して消えたあとにはヨミもウズメの姿も消えていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポナの季節・60『オフィシャルサイト』

2020-10-11 05:47:39 | 小説6

・60
『オフィシャルサイト』
    



「みなみ、ちょっと話があるんだ」

 そろそろお風呂に入ろうと思っていたら、帰って来たばかりの父に声をかけられた。

「今すぐ?」
「あ、みなみの風呂は長いからな。よかったら風呂の前に聞いて欲しいんだが」
 風呂の長いのは余計なお世話だが、父がここまで急いた物言いをするのも初めてなのでソファーに戻った。
「すまんな。実はSEN4・8のホームページというかオフィシャルサイトなんだが……」
「あ、みんな試験中だったから、まだ……」
「そうか、余計なお世話かもしれんが、フアィブスターの連中が作っちまったのがあるんだ、ちょっと見てくれるか?」
 みなみの父は、そう言うとノートパソコンを取り電源を入れた。
「まだネットでは流れていない、みなみたちがよかったら、使ってくれないか」
 父が、立ち上がったパソコンのボタンを手際よくたたくと、まるでアイドルのそれのようにきれいなオフィシャルサイトが現れた。

「うわー、まるでアイドルだ!」

 先日のあらかわ遊園でのライブを上手く編集してあり、クリックするとライブのダイジェスト動画が現れたり、一人一人のプロフのコーナーなどが出てきたりした。
「この、持ち歌ベストテンをクリックすると……SENの持ち歌が出てくる。エンターキーでそれぞれの曲が聞ける」
「ベストテンって、あたしたちの持ち歌10曲しかないんだよ」
「これから増やせばいいさ。プロフのところは、名前を除いて空白になってる。みんながいいなら、ここに書きいれればいい。どうだい?」
「うん、いいよ。これならみんな喜ぶと思う。さっそく送ってみるよ!」
「じゃ、このUSBに同じものが入ってる。みんなに送信してあげなさい」
「うん、なんだかワクワクしちゃう!」

 みなみは完全にお風呂のことは忘れ、自分のパソコンでみんなに送信した。

――メールだよ! メールだよ!――

 風呂からあがったばかりのポナはパソコンが叫んでいるのに気付いて、メールホルダーを開くとみなみから。添付ファイルを開くと、見事なオフィシャルサイトが出てきた。
「かっこいい!」
 ポナは、さっそくプロフにいろいろ書き込み、ララランチの紹介までやった。

 みんなに送信してから、みなみはお風呂に入った。
 頭を洗っているときに気づいた。最後に「これからのスケジュール」とあって、以下は空白だった。あらかわ遊園以後のことは未定なのだから、それでいいと言えばいいのだが、それなら未定とあるはずだ。

「お父さん、あのスケジュ-ルのとこなんだけど」

 濡れた髪をタオルで拭きながら父に聞いた。
「ああ、あそこな……そこが相談なんだけどな……」
 父が、スケジュールをクリックすると、なんと五回のライブ予定が入っていた。
「あ、これサンプルね」
「よかったら、リアルにして欲しいんだが」
「だって、これ五回とも東北だよ?」
「顎足もステージトレーラーも用意する。慰問ライブだ、ひと肌脱いでくれないか?」
「やだ、これ脱いだら、あたし裸だよ」
「茶化すな、実はな……」

 父の話は、会社の事業拡大とのタイアップだった。むろん会社は表面には出ない。マイクロバスやステージトレーラーに小さく社名が書いてあるだけだ。デコレーションは言うまでもなくSEN4・8だ。でもピュアなみなみは、どこか、してやられたような不純さを感じた。

「ひと肌脱いでくれって」

 学校が終わると、世田女に足を延ばして、他のメンバーと相談した。
「いいじゃん、ひと肌でもトップレスでもなってやるわよ」
 意外にみんな気にはしていないようだ。
「でも、いいの? これ、完全に会社のレールに乗っかってるんだよ」
「スポンサーだと思えばいいじゃん」
「うーん、レパートリー増やさなきゃね」
 幽霊の安祐美まで乗り気である。
「でも、こんなことで慰問ライブ……ちょっち抵抗感」
「みなみ、半分でも慰問の気持ちがあればいいと思うよ。世の中100%の善意なんて言ってたらなんにもできないよ」

 そう言って、ポナの中で「例外はある」という声がした。乳児院に入れられるところだったポナを引き取った両親は完全な善意だ。

 内なる声に驚きと戸惑い。そして得体のしれない予感がするポナだった。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かの世界この世界:98『伍長一人』

2020-10-11 05:32:10 | 小説5

かの世界この世界:98

『伍長一人』語り手・タングリス      

 

 

 その場は笑って済ませた。

 

 なんと言っても船出だ、不吉なことや不審なことは口すべきではない。

 それに、わたし以外のメンバーもヤコブ伍長に気を許している。ロキとケイトには良い遊び相手、姫も三人が遊んでいるのを冷やかしたりチョッカイを出したりしている。お気に召している証拠だ。テルは渋い顔をしていたが、わたしの目配せで感じてくれたのだろう、いまは四人が遊んでいるのを黙って見てくれている。

 伍長というのは下士官の最下級で実務に長けた者が多い。常に兵たちと日常を共にする兄貴分という感じだ。

 今も、自分で作った知恵の輪やルービックキューブで盛り上げている。船旅の最初に克服しなければならないのは船酔いだ。

 船酔いは船と海の揺れに三半規管が追い付かないことから起こる。防ぐには、その揺れを超えるものに意識を集中させることが肝要だ。昔から戦闘配置になると酔いが収まるのは知られたことだ。

 まさか、船酔い対策に戦争をすることもできない。知恵の輪やルービックキューブに集中させるのは効果的だと思う。それも船酔いが発症する前に集中させなければ効果が無い。巧みに惹きつけているヤコブは部隊においても有用な存在になっている。

 そうなのだ、わたしが笑って済ませたのは、軍人としての信頼感こそが基礎になっているのだ。

「今のうちに船内を把握しておこう」

 テルに声をかけて上甲板に下りた。ちなみに普通に言う露天の甲板は最上甲板と呼ばれ最上甲板のすぐ下のところを上甲板と言う。上甲板に下りたところには船内の見取り図があって、船内の配置と乗船者の部屋割りが分かる。

 テルも同じ思いだと見えて、船内配置図の前で立ち止まった。

「……これではよく分からんなあ」

「キャビンなら左舷の中甲板だが……ひょっとして、ヤコブの部隊か?」

「ああ、世話になっているからな、部隊長に挨拶はしておかなければならんだろう」

「……見あたらんなあ、歩兵部隊がほとんどで……衛生部隊が一個分隊……機甲科も乗っていないぞ」

 

 整備部隊の下士官が単独で行動することなどあり得ない話なのだ……任務によっては機甲科の移動に伴って随伴させられることもあるが、その場合でも四五人の編成にはなるはずで、伍長一人がポツンと乗っていることなどあり得ない……。

 

☆ ステータス

 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする