大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・014『引っ越し荷物が届いた』

2020-10-19 06:02:47 | ボクの妹

・014
『引っ越し荷物が届いた』     



 

 俺が死んでからのまりあはずっと一人暮らしだった。

 十四歳の女子中学生が、いきなり一人になり、十七の歳まで暮らしてきたんだから、妹ながら大したものだと思う。

 でも、やっぱり無理をしているところがある。

 無理は歪になって現れる。

 予期しないアクシデントが起こると、持ち前の瞬発力でねじ伏せてしまうのがまりあの行動パターンというか性癖なんだ。
 例えば、クラスでイジメられている子がいたとする。
 見て見ぬふりをするのが普通なんだけど、まりあは出しゃばってしまう。

 授業中に回ってきたメモを見て顔色を変えた男子がいた。
「ちょっと、見せなさいよ!」とふんだくってしまう。
 手紙の内容は、その男子に対する当てつけや脅迫で、マリアは読んだ瞬間にブチギレた。
「ウザったいことすんじゃねーよ!」
 切れたまりあというのはド迫力で、イジメ犯どもは分かりやすくビビってしまう。
「テメーかああああああ!!」
 まりあはイジメ犯どものところにダイブしてボコボコにしてしまった。

 こういことが三回も続くと、良くも悪くも、まりあはクラスどころか学校から浮いた存在になってしまう。

 まりあの周囲からはイジメとか授業妨害は無くなったが、まりあ本人は孤立してしまった。
 だれもまりあに逆らったりしないが、心許せる友達もいなくなってしまった。

 もういいや、仕切り直しだ!

 まりあは親父の誘いに乗り、対ヨミ戦闘用ロボットに搭乗するために特務師団のベースにやってきたのだ。
 今度こそいい子にしていよう!

 で、新しい第二首都高でもやってしまった。自分にちょっかいを出してきた男子三人をフルボッコしてしまったのだ。

――もう、これっきりにしよう……。

 心に誓って家に帰ると、アンドロイドのマリアが汗だくになって立ち働いている。
「なに忙しそうにしてんの?」
「忙しいの! まりあはどうして始末しとかないのかなー」
 大きな段ボールを三つも抱えて、マリアはエレベーターの方へ急いでいった。
「なんなのよー!?」
 家に入って驚いた。廊下と言わずリビングと言わず自分の部屋と言わず、段ボールの引っ越し荷物で溢れかえっている。
「あ、荷物きたんだー!」
 着替えるのもそこそこに、まりあは引っ越し荷物をほどいていった。
「ちょっと、なにしてんのよー!?」
「え、荷物片づけてんだけど……」
「それは片づけているとは言わないの! 散らかしてんじゃないのよ!」
「なによ!……てか、微妙に無いものがあったりするんだけど……」
 基本的にまりあはサバサバした性格なんだけど、物を捨てられないという悪癖がある。
 なんとかしろよなーと仏壇にも入れてもらえず、ベッドの小物入れにイレッパにされた俺は思うんだけど、散らかりまくった荷物を見て気が付いた。

 まりあのガラクタは、俺たちがリアルな家族であったころのアイテムばかりだった……。 

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ポナの季節・68『はみ出た青春受け止めます』

2020-10-19 05:52:13 | 小説6

・68
『はみ出た青春受け止めます』
       



「え、このままでいいんですか?」

 思わず五人の声がそろった。
 目の前の広告代理店M企画のディレクターとスポンサーのT自動車のパブリシティーの担当さんが暖かく頷いた。


 おとつい揃って車道にはみ出し、あやうくプリウスに跳ねられそうになり、ポナ・由紀・奈菜の三人がきれいに頭を下げている動画が広告代理店の目にとまったのだ。
 M企画はT自動車から新発売の軽自動車のCMを依頼されていたが、いいアイデアが浮かばず、担当の田中ディレクターは息抜きにネットサーフィン。そこで奈菜のブログにヒットした。

――青春は時に、はみ出す――

 奈菜が自分の四か月の高校生活を振り返って気軽につけたタイトルと動画がぴったり。車道にはみ出し急停車したプリウスをT自動車の新型車に置き換えれば、そのままでいけると田中は思った。
 田中は、奈菜のブログもSEN48の動画も丹念に見た。で、アマチュアながら急速に伸びているSEN48と新型車のコラボを思いついたのだ。

 田中は徹夜で企画書と絵コンテをつくり、そのままT自動車のパブリシティーにメールで送り、T自動車も基本的に了承。

 そして今日こうしてポナ、由紀、奈菜、みなみ、安祐美の五人との面接になった。

「キャッチコピーはちょっと手を加えて『はみ出た青春受け止めます』でいこうかと……まあ、こういうのは水物なんで、その時その時の閃きで変わっていくこともあるけど、SEN48の今までとこれからを重ね合わせて作っていくコンセプトは変わりません。どうだろ、ここまでは?」
「はい、あたしたちはぜひ……で、いいんだよね?」
 ポナの問いかけに、由紀も奈菜も頷く。
「えと、みなみのお父さんの会社がスポンサーみたくなってますので、そことの関係をクリアーしなくちゃいけませんけど」
「みなみさんとこの件は、もうお父さんの了解とってます。スポーツ用品だから自動車とは被らないのでOK」
 とT自動車の担当さん。
「じゃ、SENのみなさんはOKということで。ぼくたちはラフプランを煮詰めて形のあるものにします。それができたら、保護者の方々の了解を得て本格的に製作に入ります。お盆までには仕上げたいと思うのでよろしく」
「こちらこそ」
「じゃ、そういう方向でいい仕事ができることを願ってます。今日はお暑い中、ありがとう!」
 二人の大人と握手して、五人は長く伸びた影を道連れに、ようやく日が傾いた街を駅に向かった。

「あたしたち、二か月前は普通の高校生だったんだよね……」
「そうだね、SEN48やって、こんなに人生変わるとは思わなかった」
 奈菜と由紀がシンミリと言う。
「それもこれも言いだしべえの安祐美のお蔭だね」
「ううん、みんなの力だよ。いいものになってなきゃみなみのお父さんも協力してくれなかっただろうし、今度の話も無かったと思う」
「あ……」

 ポナが歩道の真ん中で影といっしょに立ち止まった。四人の影がそれに絡まる。

「どうかした、ポナ?」
「保護者の了解って、田中さん言ってたよね。安祐美どうすんの……?」
 実体化しているとはいえ安祐美は幽霊だ、保護者なんて……と四人は思った。
「だてに二十六年も幽霊やってないわよ。ほら……」
 前方からセダンがやってきて、五人の横で停まった。
「やあ、どうも安祐美がお世話になってます」
 運転席で、オジサンが頭を下げた。
「お父さん、ぴったりのタイミング。お母さんは?」
「晩御飯作って待ってるよ。乗りなさい」
「じゃ、みんなお先に!」
 安祐美が後部座席に乗り込むと、セダンはゆっくり発車した。
「安祐美って幽霊だよね……」
 みなみがポツリと言った。

 ポナは家に帰って四月にもらったクラスの名列を見た。名列の半ばには浜崎安祐美としっかりプリントされていた……。


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

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かの世界この世界:106『25トン対5000トン・3』

2020-10-19 05:41:52 | 小説5

かの世界この世界:106

『25トン対5000トン・3』語り手:ブリュンヒルデ      

 

 

 わた……が……って!

 

 小さいけれど凛とした声が車内に響いた。

「なんか言ったか、ポチ?」

 飼い主のロキでも砲撃音で意味までは分からない。

「んっもーーー!」

 ロキの耳の中に首を突っ込むようにしてポチが怒鳴る。ロキの耳たぶから出たお尻をプリプリ振るのが可愛い……が、邪魔だ!

「次発装填急げえ!」

「ラジャー!」

 ガキコーン!

 ロキが尾栓を閉じた勢いでポチは振りとばされ、砲塔の壁にぶち当たってわたしのレシーバーに絡まった。

「テーーー!」

 75ミリ徹甲弾発射の衝撃! 

「ムグ!」

 ポチはレシーバーのマイクとわたしの口の間に挟まってしまう。

「わたしが飛んでくから、わたしに照準してええ!!」

 車内にポチのボリュームアップした声が鳴り響く!

「や、やめ! 耳がキーーーンとする!」

「わたしが敵の弱点に張り付くから、狙って!」

 ポチはシリンダーの変異体で、どういうわけか小さな妖精のような姿をしている。攻撃力はしれているがポインターの能力があって人の注意力や向かってくるものを引き付ける力がある。これは、構って欲しい気持ちが増幅されたようなのだが、要は我がままな気持ちの発露なので日ごろは禁止させている。

「当たったら死ぬぞ」

「直前に逃げるもん!」

「ポ、ポチ……」

「ロキ、泣いてないで次発装填急げ!」

「ラ、ラジャー」

 ガキコーン!

「テーーー!」

 ドゴーーーーン!

 発射の衝撃が収まるとポチの姿は無かった。

 ドッガーーーーン!! ドッガーーーーン!! ドッガーーーーン!!

 立て続けに三発喰らって、船も四号も大揺れに揺れる。

 目に見えて船足が落ちてきた。敵船との距離は4000を切ろうとしている。次を食らったら持たないだろう……。

「敵船上にポチの反応!」

 ロキが震える声で告げる。

「敵船のどこだ!?」

 ロキが神経を集中させるが、動転していて正確に把握できない。

「敵艦主砲の砲口だ……」

 砲手のテルにも分かったようだ。

「当たれば、大打撃を与えられる……」

「撃たないで! ポチも死んでしまう!」

 

――わたしを信じて撃って!――

 

 ポチの想念が、わたしの頭にも響いた。

 

☆ ステータス

 HP:7800 MP:45 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

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