大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・247『大連大武闘会 薫子(霧子)危機一髪!』

2021-11-28 14:40:33 | 小説

魔法少女マヂカ・247

『大連大武闘会 薫子(霧子)危機一髪!語り手:霧子 

 

 

 グオオオオオオオオオ!

 

 猛獣のように叫びながら大上段に打ちかかってきた!

 身を沈め左に避けながらラスプーチンの胴を抜こうと思った。

 なに!?

 打ちかかってきた太刀筋が傾斜したかと思うと、逆にわたしの胴を抜きにかかってきた!?

 ジャキイイイイイイン!

 からくも撃ち合わせて火花が散る。

 交差して、リングの端まで踏み込んで身を躱す。

 ビュン!

 頭上で空気を裂く音がして、自分の髪が数本目の前に散る。

 ラスプーチンが構えた時に判断したそれよりも一尺近く太刀先が前に出ている。鋼の太刀が伸びるはずもなく、それは、二メートルは超えようかという身の丈ながら、奴の動きは俊敏で、予想の外に太刀が届いてしまっているということ。

 大柄な相手には、懐に飛び込んで、太刀さばきの間に合わない至近から攻めるのが定石なんだけど、大男に似あわぬ俊敏さで構えを変えて仕掛けてくる。

 トオオオオオオオ!

 考えていては隙を突かれる。

 効果のほどなど考えずに、打ちかかり切りかかりして、ラスプーチンの構えと太刀さばきを観察する。

 ジャキイイイイイイン!

 ガシ! ガシ!

 チュリイイイイン!

 トオオオオオオオ!

 オリャアアアア!

 ジャキイイイイイイン!

 五合打ち合わせて分かった。

 奴の太刀は力任せで速いだけかと思ったら、牛若丸を思わせるほどに敏捷で変幻自在なのだ!

 あまりに速いので、目に留まるのは構えた瞬間と、構えの動作が終わった刹那だけだ。

 わたしも高坂流の免許皆伝、構えの後先を見れば、その間の動きは推測できる。

 奴の立ち合いはデタラメではない、柳生流や北辰一刀流の動きが混ざって、剣技の上でも油断がならない。

 セイ!

 オリャア!

 だめだ、総合的な腕は互角……いや、あと五分も撃ち合えば、奴の隙も見えてくるんだろうけど、こちらの体力が持たない。

「そろそろ決めるぞ……」

 こいつ、全て吞み込んでいる。

 わたしの動きも思考も、疲れた隙を狙って一気に攻め立ててくる。

 ウオオオオオオオオオ!

 ガシ! ガシ! ガシガシガシ! ガシガシガシガシガシガシガシガシガシ!

 くそ! もう持たない……!

 

 させるかアアアア!!

 

 え?

 

 懐かしい声が聞こえたかと思うと、ラスプーチンはリングの端まで跳んで行った。

 目の前の二つの背中は……

「マヂカ! ブリンダ!」

「待たせたわね、こいつの罠にひっかかって、抜け出すのに時間がかかった」

「しかし、オレとマヂカに抜けない罠なんかないのさ」

「恐れ入ったか!?」

「「ラスプーチン!」」

「ありがとう……わたしも負けてないからね!」

「ここからは、もう試合じゃない! ユーラシア大陸一番の悪党、親玉ラスプーチン退治だ!」

 ジャキン!

 三人揃って得物を構えると、ラスプーチンも口を結んで太刀を正眼に構える。

「気を付けて! なにか企んでるよ!」

 孫悟嬢の声が響いて、他の選手や観衆は水を打ったような静けさの中に息を飲んでいる。

 何を企んでいるにせよ、ここまでだ……そんなオーラが友人二人の背中から陽炎のように立ち上っている。

「「「トオオオオオオオ!!!」」」

 声が揃って、三人一斉に打ち込む!

 ラスプーチンも刹那に構えを変える!

 

 ドゲシ!!!

 

 三人の気迫と呼吸が一瞬早く、三発の打撃・斬撃・突撃が同時に炸裂した!

 

 …………ドウ

 

 数瞬の間を置いて、雷に打たれた深山の巨木ようにラスプーチンはリングに沈んだ。

 

「ありがとう、マヂカ、ブリンダ、危ないところだった(;゚Д゚)」

「ああ……」

 ブリンダの後をマヂカが続けようとして、異変が起こった。

 ええええ……《゚Д゚》(°д°)(꒪ꇴ꒪|||)(⚙♊⚙ノ)(◎o◎)(°д°)(꒪ꇴ꒪|||)(⚙♊⚙ノ)(◎o◎)!?

 観衆から形容の仕様のないどよめきが湧き上がり、孫悟嬢が手下たちとともに、しきりにリングを指さしている。

  

 カサ……カサカサ……ガサガサガサ

 

 ラスプーチンの体が、体の表面が瘡蓋のように儚くなったかと思うと、リングの上を流れた微かな風に吹き飛ばされ、別のものが生まれてきた。

 それは、ラスプーチンよりはわずかに低いが、その分かっちりした体に将軍のような軍服を着て、鼻の下にはブラシを思わせるような髭を蓄えている。

「ありがとう諸君。ラスプーチンの殻は自分一人では破れないものでね、おかげで無事に衣替えが済んだ……しかし、この大連大武闘会優勝は高坂霧子、いや、薫子の名乗りであったか、君の上に栄冠は輝くよ!」

「危ない!」

 マヂカとブリンダが庇ってくれ、周囲が暴力的な光に満ちた!

 気が付くと、リングの上に奴の姿は無かった。

 

 二人が教えてくれた、奴の新しい姿は、ヨシフ・スターリンという名前だった。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • 孫悟嬢        中国一の魔法少女

 

 

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ライトノベルベスト[女子高生ラノベ作家軽子]

2021-11-28 05:53:59 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

 
『女子高生ラノベ作家軽子  




 軽子はこんな子だった。

 保育所の頃から人にお話しして、笑ってもらったり、驚いてもらったり、感動してもらうことが好きだった。

 でも、そんなに笑える話や、驚ける話、感動できる話が転がっているはずはなく、無意識のうちに話を作ってしまっていた。

 これで、話が詰まらなければ、人から「ウソつき少女」「オオカミ少女」「千三つ少女」などとバカにされていたはずである。

 だが軽子の話はおもしろい。

「キリンさんてかわいそうだね……」

 動物園に行ったとき、キリンの柵の前で涙を浮かべていた。

「軽子ちゃん、どうかした?」

 先生が聞くと、こう答えた。

「キリンさんはね、ふる里に残してきたお友だちや家族が恋しいんだよ。だから、あんなに首を長くしてふる里のことを思ってるの。でも叶わない願いだから、キリンさんは、一言も口を利かないで辛抱してるんだよ。キリンさんかわいそう……」

 そう想像すると、軽子の頭の中では本当になってしまい、一人涙を流してしまうのだった。

「でもさ、アフリカにいるキリンさんだって、首が長いよ」

 先生が頭を撫でながら、そう慰めてくれると、こう答えた。

「そりゃ当り前よ。みんな動物園に送られた仲間や、子供のことを思っているんだから」

 と、こんな調子であった。

 大きくなると、少し話が変わった。

「お父さん、キリンさんね、居なくなったお父さんのこと捜してるんだよ」

「ああ、知ってるよ。だからきりんさんは首が長いんだろ?」

 お父さんは高校生になった娘が、懐かしい作り話をし始めたと、ビールを飲みながら、いい加減な返事をした。

「違うわよ。キリンさんはね、そのために、ビールのラベルにお父さんの似顔絵を貼ってるんだよ。だから、ビールってキリンさんの涙で出来てるんだよ」

 これは、父が仕事の付き合いだと言って、毎日帰りが遅くなったとき、母の気持ちから作った話。お父さんは手にした缶ビールを持て余した。

 次の日は、ネットから野生のキリンが怪我をして保護され、やっと怪我が治ってサバンナに戻って家族と再会した記事をコピーして、テーブルの上に置いておいた。

 軽子の苗字は羅野邊であった。

 子供の頃は分からなかったが、ラノベというのはライトノベルの略であることを知った。軽子は、苗字が重いので、せめて名前は軽くという思いで親が付けた「軽子」と書いて「けいこ」と読む。

 この名前も、軽子はラノベに縁があると思った。

 デビューの仕方なんか分からないので、パソコンに思いついた話を書き溜めるだけだったが、ある日ブログの形で世間に発表することを思いついた。

 話は1000を超えていたので、USBに取り込んである。

 その中から10本、飛び切り軽くて面白い話を選び出し、ライトノベルベストという叢書名でアップロードしようとした。ブログの勉強もし、きれいなデザインのブログにした。

「よーし、これでOK!」

 軽子は勇んでエンターキーを押した。するとあろうことか、画面の文字は画面を抜けてユラユラと舞い上がり、空いた窓の隙間から空に昇って行ってしまった。

「ああ、軽すぎたんだ……」

 軽子が、その後ラノベ作家になれたかは定かではない……。

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泉希ラプソディー・01〈それが始まり〉

2021-11-28 05:28:43 | 小説6

ラプソディー・01
〈それが始まり〉
        


 

 業者は123万円という分かりやすい値段でガラクタを引き取って行った。

「まあ、葬式代にはなったんじゃない」

 息子の亮太は気楽に言った。

「でも、なんだかガランとして寂しくもありますね……」

 嫁の佐江が、先回りして、取り持つように言った。

 亭主の亮は、終戦記念日の昼。一階の部屋でパソコンの前でこと切れていた。

 今日子は悔いていた。

「ご飯できましたよ」二階のリビングから呼んだとき「う~ん」という気のない返事が返ってきたような気がしていたから。

 一時半になって、伸び切った素麺に気づき、一階に降り、点けっぱなしのパソコンの前で突っ伏している亮に気づき救急車を呼んだが、救命隊員は死亡を確認。

 そのあと警察がやってきて、死亡推定時間を正午ぐらいであることを確認、今日子にいろいろと質問した。

 あまりにあっけない亮の死に感情が着いてこず、鑑識の質問に淡々と答えた。

「おそらく、心臓か、頭です。瞼の裏に鬱血点もありませんし、即死に近かったと思います。もし死因を確かめたいということでしたら病理解剖ということになりますが……」

「解剖するんですか?」

 父の遺体から顔を上げて亮太が言った。

 今日子の連絡で、嫁の佐江といっしょに飛んできたのだ。

「この上、お義父さんにメスをれるのは可愛そうな気がします。検死のお医者さんに診ていただくだけでいいんじゃないですか?」

 この佐江の一言で、亮は虚血性心不全ということで、その日のうちに葬儀会館に回された。母の葬儀が大変だったことを思いだし、亮の通帳とキャッシュカードを持ち出したが、葬儀会館の積み立てが先々月で終わっているのに気が付いて、どれだけ安く上がるだろうかと皮算用した。

 葬儀は簡単な家族葬で行い(積み立てが終わっていたので5%引きでやれた)、亮の意思は生前冗談半分に言っていた『蛍の光』で出棺することだけが叶えられた。

 そして、長い残暑も、ようやく収まった10月の頭に、亮の遺品を整理したのである。

 亮は三階建て一階の一室半を使っていた……今日子にすれば物置だった。

 ホコリまみれのプラモデルやフィギュア、レプリカのヨロイ、模擬刀や無可動実銃、未整理で変色した雑多な書籍、そして印税代わりに版元から送られてきていた300冊余りの亮の本。

 佐江は、初めてこの家に来た時、亮の部屋を見て「ワー、まるでハウルの部屋みたい!」と感激して見せた。同居する可能性などない他人だから、そんな能天気な乙女チックが言えるんだと、今日子は思った。

 そして、一人息子の亮太が佐江と結婚し家を出ていくと、亮と今日子は家庭内別居のようになった。

 亮は、元々は高校の教師であったが、うつ病で早期退職したあと、ほとんど部屋に籠りっきりであった。

 退職後、自称作家になった。実際に本も3冊、それ以前に共著で出したものも含めて10冊ほどの著作があるが、どれも印税が取れるほどには売れず。もっぱら著作は投稿サイトでネットに流す小説ばかりであった。

 パソコンに最後に残っていたのは、mizukiと半角で打たれた6文字。佐江の進言で、その6文字はファイルに残っていた作品といっしょにUSBにコピーされ、パソコン自体は初期化して売られてしまった。

「あ、お母さん、人形が一つ残ってるよ」

 亮が仏壇の陰からSDと呼ばれる50センチばかりの人形を見つけた。

「あら、いやだ。全部処分したと思ったのに……」

 亮は、亡くなる三か月ほど前から、人形を集め始めた。1/6から1/3の人形で、コツコツカスタマイズして10体ほどになっていた。今日子は亮のガラクタにはなんの関心もなかったが、この人形は気持ちが悪かった。

 人形そのものが、どうこうという前に還暦を過ぎたオッサンが、そういうものに夢中になることが生理的に受け付けなかったのだ。

「人の趣味やから、どうこうは……」

 そこまで言いかけた時の亮の寂しそうな顔に、それ以上は言わなかった。

 しかし、本人が亡くなってしまえばガラクタの一つに過ぎなかった。惜しげもなく捨て値で売った。

 その時、どういうわけか、一体だけが取り残されてしまったようだ。

「佐江ちゃん。よかったら持ってってくれない?」

「いいえ、お義父さんの気持ちの籠った人形です。これくらい、置いてあげたほうがいいんじゃないですか」

 佐江は口がうまい。要は気持ちが悪いのだ。

 今日子は、今度の複雑ゴミで出してやろうと思った。

 人形は清掃局の車が回収に来る前に無くなっていた。

「好きな人がいるもんだ」

 プランターの花に水をやりながら、今日子は思った。とにかく目の前から消えたんだから、結果オーライである。

 水やりが終わると、ちょうど新聞の集金がやってきたので「主人が死んじゃったんで……」と亮をネタに、結婚以来の新聞の購読をやめてセイセイした。

 

 ピンポーン

 

 そのあくる日である、インタホンに出てみると17・8の女の子がモニターに溢れんばかりのアップで映っていた。

「こんにちは。泉希っていいます、いいですか?」

 それが始まりであった。

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