大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・246『大連大武闘会 いよいよの決勝戦!』

2021-11-23 14:53:54 | 小説

魔法少女マヂカ・246

『大連大武闘会 いよいよの決勝戦!語り手:霧子 

 

 

 赤のコーナー ロシアの妖怪ヴォジャノーイ改めグリゴーリィ・イフィーマヴィチュ・ラスプーチン!

 青のコーナー 大日本帝国公爵令嬢 高坂薫子!

 なお、この二人の勝負が大連大武闘会の決勝戦であります! 勝者には賞金五千円並びに帝国海軍大演習旗艦乗艦観覧の栄誉が与えられます!

 ドーーン パチパチパチ ドーーン パチパチパチ

 アナウンスがあって、花火が打ち上げられる。

 ウオオオオオオオオオ!

 観客たちの歓声とどよめきが頂点に達して、続いて紹介された審判紹介は拡声器を使ったアナウンスの声さえ聞こえない。

 闘気というものには波がある。程度を超えた歓声は、かえって波の勢いを削がれてしまう。

 ウオオオオオオオオオ!

 くそ、いいかげんに収まってくれ、せっかく決勝に向けて解き放った闘志がしぼんでしまう。

 アナウンスもなにやら言っているようだけど、まるで伝わらない。

 こんな時にマヂカとブリンダがいれば……いや、いない者のことを言っても仕方がない。

 高坂薫子……いや、我が心の中では、きちんと本名で宣言して置こう、高坂霧子は全力を出し切ってロシアの怪物に勝利するぞ!

 ウオオオオオオオオオ!

 それにしても、うるさい……集中が続かなくなる。

 

 諸君!!

 

 拡声器も使わないのにラスプーチンの一喝が凛として会場に轟く!

 なんという大声だ!?

 いや、これは、直接頭の中に響いて……妖術を使ったのか?

「諸君のこの試合に掛ける情熱は嬉しい。しかし、妖術を使って叫ばなければならないほどの歓声は控えていただきたい」

 シーーーーン

「わたしは、元より妖術使いではあるが、この勝負に関しては、いま、諸君に伝えた『静粛』をお願いする思念をもって最後とする。対戦相手の高坂薫子嬢は掛け値なし、尋常の武技をもって勝負に挑まれる。さすがは大日本帝国天皇陛下の藩屏ではあられる。よって、このラスプーチンも妖術は封印する。審判長、これを預かって頂きたい……」

 首からロザリオを外すと、レフェリーを通じて審判長に預けた。

「これで、わたしは妖術を封印した……この木刀をもって対戦の得物としたい」

 ブン!

 驚いた、ラスプーチンは初戦で敗退した選手が残した木刀を手にした。

「それならば、わたしも……」

 準備した対戦用の得物の木刀に手を伸ばす。

「鉄剣を持って臨まれよ!」

 なに!?

「鉄剣は刃は落としてあるが、本身だ、当たれば無事ではすまない。重みもあるので、寸止めにしても相当の打撃を与えてしまう」

「構わん……わたしとお前とでは、膂力(りょうりょく)が虎と猫……いや、虎とハツカネズほどに違う……」

 クスクスクス( ^ิ艸^ิ゚) プフフフフ(灬º 艸º灬) 

 観客の間に、さざ波のように嘲笑が湧きおこる。正直ムカつく。

 こいつは、一見謙虚に譲るようなことを言いながら、挑発しにかかってるんだ。

 高坂の抜刀術を甘く見るなあ……目にものを見せてやる!

 

 がんばれ ハツカネズミ!

 

 くそ、バカな観客が調子にのせられて馬鹿を言う。他の観客もクスクスと笑いが止まらない。

「こい、ハツカネズミ」

 ブチ

 わたしの中で何かが切れた。

「キエーーー!」

 ブン!

 鍛えた跳躍は、刀のリーチと力を倍増する。

 初撃は、ラスプーチンの高い鼻の先数センチのところで空を切った。

「ウ……!?」

 仁王のようなラスプーチンの頬に赤い線が走って、二筋の血が流れる。

 わたしの剣先が空気をとがらせてカマイタチのように、頬を切り裂いたのだ。

 舐めるんじゃない、高坂霧子を!

 今まで感じたことが無いほどに獰猛な覇気が湧いてくる……。

 軽薄に囃し立てるだけであった観客が水のように息を潜めていく。

 ラスプーチンと二人、リングの上を弧を描き、互いに引き寄せられるようにして、間合いを詰めていく……。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • 孫悟嬢        中国一の魔法少女

 

 

 

  

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ライトノベルベスト・〔オレの高校の丑寅の壁〕

2021-11-23 06:20:46 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

 
オレの高校の丑寅の壁  




 三学期のこの時期に教頭が替わった。

 生徒にとっては、どーでもいいことなんだけど、わざわざ授業を短縮して全校集会を開いて着任の紹介があった。

 教頭なんて、授業もなし、ほとんど職員室の奥に座りっきりで、集会なんかでも校長の話はよく聞くので、顔ぐらいは覚えているが、教頭になると普段接することもなく、前任の教頭も憶えていない。

 紹介された新教頭は、なんか印象の薄いオッサンで、一時間目の終わりには名前を、二時間目の終わりには顔を忘れてしまった。

 ま、それはどうでもいい。ただオレが集会をサボったりしなくて、二時間後には新教頭の名前も顔も忘れてしまうという、並の注意力と生活態度の高校生であるという例えにいいと思ったから。

 大事な話は、ここから。

 オレは、身長:170、体重:65、ルックス:中の上(人に言わせると潜水艦=ナミの下) 成績:下の上。コミニケーションってか人間関係は上手くない(したがって先生たちからは愛想の悪い奴と思われてる)むろん女の子にはモテない。モテようとも思わない。

 意地じゃない。長い人生、きっかけはいくらでもあると思ってるし、他の奴らみたいに発情期でもない。そして、なによりもオレには薄い関係だけど彼女がいる。篠田樟葉っていう。

 樟葉は一年の時、空から降ってきた……てのは誇張だけど、ほんとに降ってきた。

 ゴールデンウィーク明けの昼休み、食堂で飯食って教室に戻ろうとして、渡り廊下の下を歩いていた。すると明り取りのアクリル板をぶち破って樟葉が落ちてきた。

「イッテー……!」「ご、ごめんね……」

 これが樟葉との出会い。

 樟葉は渡り廊下でボールをドリブルしながら歩いていたら、安全柵を超えてボールが明り取りの中に落ちてしまい、柵を乗り越えてボールを取ろうとしたら、アクリル板が割れて落ちてきたという話だった。運がいい良いのか悪いのか、真下を歩いていたオレの真上に落ちてきた。

 それから、オレと樟葉の薄くて濃い付き合いが始まった。

 オレは、態度はまあまあだけど成績は悪い。一年の二学期で4教科15単位も不足していて、学年でも数少ない留年候補者だった。そんなオレに、救いの手を指し延ばしてくれたのが樟葉。試験の前の日に解答付きの問題用紙をくれた。

「とにかく、答えだけ覚えるの。いいわね」

 書式はちがったけど、試験はそっくりな問題が出て、なんとか合格。

「おかげで助かった!」

「じゃ、なんかおごって!」

「おう、都合のいいときにな」

 で、六月に公開されたばかりの『君の名は』を観に行った。樟葉は大感激で泣き笑いしていた。

「この映画、ぜったいアカデミー取るわよ!」

 樟葉の予言は当たった。まあ、観ればたいていの人間は、そう思うけど。樟葉の感動ぶりに感動してしまった。

 そのあとは、廊下で会ったら挨拶する程度だった。

 夏休み明けに発見してしまった。樟葉が校庭の東北の壁の壊れたところから入ってくるのを。

「あ、バレちゃった!?」

「あんなとこに、通り道あったんだ……」

 オレには、その程度の事だったけど、樟葉は「絶対人に言っちゃダメ、お願いだから!」と真剣だった。

 で、あくる日樟葉の方からデートに誘ってきた。

 二線級のテーマパークで、たっぷり遊んだあと、樟葉はとんでもないことを言った。

「あなた、まだ童貞でしょ?」

「そ、そんなことに答えられるか!」

「ウフフ」

 気づいたら、その種のホテルに居た。気軽に誘ったわりには樟葉も初めてだった。今まで普通の女の子だと思っていたのが、この日から愛おしい存在になった。でも、特段親密さが増したわけでもなく、廊下や食堂で会ったら挨拶する程度の仲に変わりはない。

 新教頭が来てから三日目に、その工事が始まった。

「へー、こんなとこに抜け穴があったんだ」

 ベテランの生活指導の先生さえ知らなかった。むろん他の先生も生徒も。知っているのはオレと樟葉と新教頭だけ。

「ここは丑寅、裏鬼門ですからね」

 と、教頭は事務長に説明していた。

 工事は、たった一日で終わってしまった。

 

 異変に気付いたのは三日後だった。

 樟葉と会わなくなってしまったのだ。

 不思議に思って樟葉の教室に行ってみた。

「なあ、篠田樟葉って休んでんの?」

 オレは、一年のとき同級だったモンタに聞いた。

「シノダクズハ……そんなやつ居ねえぞ」

「え……」

 それ以来樟葉には合っていない。学校でも見かけない。

 ダブってもいい、樟葉に会いたい……そう思いながら、学年末試験を受けている。

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