大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・243『いよいよ始まる!』

2021-11-05 14:42:59 | 小説

魔法少女マヂカ・243

『いよいよ始まる!語り手:栗子(ノンコ) 

 

 

 ドーーーーン パチパチパチパチ  ドーーーーン パチパチパチパチ

 

 大連中央公園の空に昼間用の花火が打ちあがって大連大武闘大会の幕が切って落とされた。

「霧……いや、薫子、一人で大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ……」

 落ち着いて応えてるようやけど、微妙に顔が強ばってる。

 夕べから、マヂカとブリンダが行方不明。

 うちらが寝てる間に出かけた……たぶん、孫悟嬢らが言うてた悪いやつら、ラストプーチン? いや、ラスプーチンやったけ?

 爾霊山で出てきよったロシア坊主の化け物、あいつが、試合までじっとしてることはありえへんいう気はしてたけどね。

 こういう心配事は、口にしたらホンマになってしまうからね。ずっと我慢してる。

「栗子が心配しても仕方がないでしょ!」

 ドン

「あう」

 背中をドヤされて、前につんのめる。

「大丈夫、とどのつまりは人同士の格闘術なんだから、全力で闘うのみよ!」

 ドン!

 あたしの背中をドヤした倍くらいの勢いで胸を叩いて、薫子は参加選手が並ぶ雛壇に上がっていった。

 

 出場選手は、選り抜きの16人。

 

 参加申し込みの時は、もっと居ったような気がしたんやけど16人に絞り込まれてる。

 書類審査やったのか、読み飛ばした参加資格とかがあったのか、よう分からへんけど、雛壇の上を見ると強そうでも普通の人間らに見えてる。

「半分はニギヤカシとコスプレだったんだよ」

 キャ!?

 とつぜん後ろ手声がしたんでビックリした!

 振り返ると、大連高等女学校の制服を着た孫悟嬢が折り目正しく立ってる。

「ほら、右から二番目と三番目、剣旋嬢とメルケル」

「え、あ……ふつうや」

 三日前に出会った時は、禍々しい魔法少女風やったけど、雛壇の二人はコスこそ奇抜やけど、放たれるオーラは違ってる。

 そこらへんの女学校の運動部の選手いう感じや。

「なんで?」

「フフ、こういう試合はフェアでなくっちゃな」

 不敵そうに笑ってるけど、至近距離に立ってるせいやろか、孫悟嬢の思念のカケラが垣間見えてしまう。

 

 ラスプーチン……アジア号……取り巻かれ……今朝まで……戦って……

 

 そこまで読むと遮断された。

 目が合うと、孫悟嬢がニヤリと笑う、笑うけど、瞳の中に――ほんの今まで戦ってた――そういう残り火のようなもんが揺らめいた。

 どうやら、出場者が減ってることや、剣旋嬢やらが普通になってることと関係があるらしい。

「さ、トーナメントの組み合わせが発表されるよ」

 孫悟嬢が顎をしゃくった先に、トーナメント表が下りて来た。

 

 高坂薫子は二回戦、一回戦の剣旋嬢と山親爺ゴールヌィとの勝者との立ち合いからになっていた。

 山親爺ゴールヌィ?

「ロシアの中級妖怪……でも、妖術使う力は残ってない、うちの孫悟嬢もだけどね……」

 

 ドワ~~~~~ン!

 

 大陸らしく、本部席のでっかい銅鑼が鳴らされて第一回戦が始まった!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • 孫悟嬢        中国一の魔法少女
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ライトノベルベスト『星に願いを・4』

2021-11-05 05:58:12 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『星に願いを・4』  




 電車の先頭車両が目の前に迫る! 

 宏美は人生で初めて死を予感した。そのときガシっとダッフルコートごと制服の襟が掴まれた。

 パオーーーーーーーン! キキキキイイイイイイイ!

 電車はけたたましく警笛とブレーキのきしむ音をたてながら、宏美の鼻先五ミリほどのところを通過していった。鉄の焦げる臭いがした……。

 気が付くと、駅長室のソファーに寝かされていた。

「いやあ、危ないところだったよ、彼がとっさにつかまえてくれていなかったら、いまごろキミはミンチになっていたところだ」

 袖に金筋の駅長さんが暖かいココアを差し出しながら言った。

 感情は、ココアを飲み干したところでやってきた。

「ウワーン!……こわかったよ。ほんとに、ほんとにこわかったよ!」

 宏美は、幼子のように浩一の胸に飛び込んで泣きじゃくった。浩一は不器用に、左手、そして右手を添えてハグした。

 それから、宏美はショックで、二日学校を休んでしまった。

 友だちからは気遣うメールがたくさん来た。しかし、不器用な浩一からは一つも来ていなかった。

 その、明くる日であった。

 いつものように駅に向かうと、駅前のポストの横で、ポストといっしょに雪まみれになって浩一が立っていた。そして、浩一は不器用に告白した。

「オレ、オレ……一生、宏美ちゃんのこと守っていきたい!」

 頭のいい宏美は、それが真剣な告白であることがよく分かった。しかし、そのあまりに大きな愛情と唐突さに、宏美は、空いた右手を胸まで上げて、たじろいでしまう。

「あ、あの……とても嬉しい、嬉しいんだけど……」

 あとの言葉が続かない。

 自分の息で、手袋に留まった幾粒かの雪が、儚く溶けていく。

「わ、分かってる……友だちだもんな。宏美ちゃんとは、ただの友だちだもんな。ごめん、変なこと言って」

 そう言うと、浩一は、なんと駅を背にして歩き始めた。

「浩一クン、どこに行くのよ!?」
「わ、忘れ物!」

 そう背中で言うと、浩一は降りしきる雪の中を走り去っていった……。


 浩一とは、それきりであった。

 

 そして、ゆうべ十数年ぶりの同窓会で浩一と再会した。

 不器用にウーロン茶を差し出されたあと、お互いの話になった。

 宏美は大学を出た後銀行に勤め、三年後に同じ銀行の男と結婚したが、一年で離婚。それからは実家に戻り、大学の恩師のつてで、大学の事務職につき今に至っている。今ではちょっとしたお局さまである。

 浩一は、中堅どころの商社に入り、実直さが信用になり、手堅く仕事をこなし、営業課長になっていた。そして、最後に、奥さんと上手くいっていないことをポロリとこぼした。

「こぼすのは、ウーロン茶だけにしとけばよかったね」

 意外な器用さで、浩一は話を締めくくった。

 帰りの電車の中で、滲む街の灯を見ながら、宏美は爪を噛んだ。

 高三のあの日に戻れたら……。

 そう思ったとき、電車の窓越しに流れ星がよぎったことに、宏美は気づいてはいなかった。

 

 

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