大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・25『親をなんと呼ぶか』

2022-06-06 16:32:01 | エッセー

 エッセーノベル    

25・『親をなんと呼ぶか』 

 

 

 自分の親をなんと呼んでいらっしゃったでしょうか。

 

 お父さん・お母さん  お父ちゃん・お母ちゃん  パパ・ママ  父ちゃん・母ちゃん  父上・母上  

 おっとう・おっかあ  おとっつあん・おっかさん  おでいちゃん・おもうちゃん  ムーター・ファーター

 ダディー・マミー   親一号・親二号  おとん・おかん

 

 散歩をしていると、たまに子どもが親を呼んでいるところに出くわします。たいてい、公園で遊んでいる小さな子が回らぬ下で母親を呼ぶ声です。

 たまに、スーパーとかで「おかあさん、これ買ってぇ」とか「お父さん、さき行くよ!」とかを耳にします。

 いちど、そばを通過中の車から「お父さん、ブレーキ!」という切羽詰まった呼びかけを聞いたことがあります。呼びかけたのは奥さんで、年恰好から見て旦那さんのことであったようです。

 自分の配偶者を「おとうさん」「おかあさん」と呼ぶのは日本だけではないのかと思うのですが、これは主題から外れそうなので、別の機会に触れたいと思います。

 思い返すと、友だち同士やご近所同士の会話の中で三人称として使われているのを耳にするのが大半なのだと思い至ります。

「きのう、お母さんと買い物行って……」「お父さん、会社の帰りに猫拾てきて……」「お母さん、めっちゃ怒って……」「うちのおとんも歳やからねえ……」など二人称として聞こえてくることが多いですね。

 近ごろは流行り病のこともあって、屋外や電車の中で人の話し声を聞くことも稀ですが、おおよそは、こんな具合なのではないかと思います。

 

 なぜ、名前のことを書きだしたかというと、孫の栞が、あまり「お祖父ちゃん」と言わなくなったからです。

 これまでは「お祖父ちゃん、ごはん!」とか「お祖父ちゃん、あした燃えないゴミだよ」とか「お祖父ちゃんの年賀状多いねえ」とか枕詞のように言っていました。

「ご飯だよ」「あした燃えないゴミ」「はい、年賀状」とかで済まされます。

 まあ、そういう年齢なんだろうと思っているのですが、ちょっと寂しいのかもしれません。

 

 小学三年生のとき、国語科なにかの授業で時間が余ったのか「うちで、親の事をなんと呼んでいますか?」と先生が聞いたことがあります。先生は、みんなに手を挙げさせ、学級役員選挙のように「正」の字を書いていきました。

「お父ちゃん・お母ちゃん」というのが一番多かったですね。次いで「お父さん・お母さん」。「父ちゃん・母ちゃん」はクラスで二三人、「パパ・ママ」と同じくらい少数派だったと思います。

 わたしは「父ちゃん・母ちゃん」と呼んでいました。

 近所の子たちは「お父ちゃん・お母ちゃん」がほとんどであったように記憶しています。

 近所のニイチャンが「パパ・ママ」と呼んでいて、ええしの子や! と、たじろいでしまったのを憶えています。

 上皇陛下の結婚パレードを、そのニイチャンの家で見ていました。

 白黒の14インチで、カメラが引きになって馬車全体が画面に収まるようになると、人物の目鼻立ちもはっきりしないくらいの画質でしたが、姉とニイチャンと三人で見ていてドキドキしたのを憶えています。

 馬車が何度目かのアップになった時、急に画面が歪んで上下に流れるようになりました。昔のテレビは不安定でした。

「ママー! テレビ変になったー!」

 ニイチャンが叫ぶと、エプロンで手を拭きながらママがやってきて「こうするとね……」といいながら、テレビを張り倒しました。

 パンパン!

 すると、テレビは正気に戻って、ご成婚パレードの続きを映し出します。

 ご成婚は、昭和33年ですから、リアル『三丁目の夕日』の鮮やかな記憶です。

 ニイチャンは、町内でただ一人、校区の違う小学校に行きました。

「やっぱし、ええしはちゃうなあ」

 同い年で、ひそかにニイチャンとの集団登校を楽しみにしていた姉は、残念を通り越して嘆息していました。

 

 孫の栞を引き取るにあたって、ちょっと勇気を出して聞いてみました。

「どうだ、お祖父ちゃんの事『お父さん』て呼んでみるか?」

 学校へあがると、いろいろあるだろうと思い、聞いてみたのです。

「………………………」

 栞は、沈黙をもって答えにしました。

 数秒、わたしの顔を見上げて俯いてしまいました。気が付くと、両手をグーにして目をこすっています。

「そうかそうか、むつかしいよな、むつかしいこと聞いてごめんよ。ま、いままで通りでいこうか、とりあえず」

 ひそかに『パパ』という呼び方も思っていたのですが、それは止めて正解でした。

 

 わたしは、両親の事を「父ちゃん・母ちゃん」と呼んでいましたが、両親は自分の親(わたしの祖父母)のことは「お父さん・お母さん」と呼んでいました。

 母の里は、蒲生野(いまの東近江市)の真宗寺院で、五人居た叔父叔母も母と同様「お父さん・お母さん」でした。

 おそらくは、最初に所帯を持った町のマジョリティーに合わせたものだと思います。

 小三の調査で少数派と知って少しショックでしたが。おそらく、日本人の四人に一人ぐらいは呼んでいたであろう、この呼び方は好きです。『ニ十四の瞳』だったと思うのですが、大石先生の受け持ちの子が、親の事をそう呼んでいて親近感を持ったのを思い出して、コーヒーを淹れなおしました。

   

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銀河太平記・112『沖縄植樹祭』

2022-06-06 10:13:14 | 小説4

・112

『沖縄植樹祭』心子内親王 

 

 

 パチパチさんたちが採取してきた新鉱石は『パルスギ』と名付けられました。

 

「どうぞ、殿下からお伝えください」

 市長と相談した社長は、村長さんや主席さんとも協議して、陛下への連絡を任せてくれました。

 陛下は、植樹祭のために沖縄に向かわれます。

 今年の植樹祭は、西之島の杉の苗が使われることになっているから都合がいいのです。

 苗の名前は『パル杉』

 火山灰地の西之島でも育つように食堂のお岩さんが趣味で品種改良していた杉。

「アハハ、いやあ、まぐれまぐれ(n*´0`*n)」と、頭を掻くお岩さん。

 どこからどう見ても食堂のおばちゃんなのですが、以前は大手銀行のキャリアで、趣味がバイオだという烈女さんです。

「野菜畑に防風林作りたくって、たまたまできたんだよ(^_^;)」

 育ちが早く潮風にも強いパル杉は、その道の人たちにも注目されて、海に囲まれた沖縄にも相応しいというので植樹祭に選ばれたのです。

 それに、パチパチさんたちがパルスギを発見した鉱脈の真上がお岩さんの畑で、ちょうどパル杉が植わっています。

「マスコミには、あくまでパル杉のご説明をさせていただくということになっていますから」

 社長の氷室さんは、いたずらっ子のようにウィンクしました。

 

 島から派遣されるのは、陛下といっしょに植樹する島の少年と少女。

 沖縄からも少年と少女が参加して、四人で陛下の植樹のお手伝いをします。

 わたしは、その随行者の一人として参加するのですよ。

 

「まあ、しんこだったの!?」

 

 陛下は目を剥かれました。

 子どもたちを控室で陛下に挨拶させたあと、帽子とメガネを取ったのですよ。

「はい、じつは、パル杉はパルスギの隠れ蓑なんです。しんこは、その御説明にあがりました」

「油断ならないわね、わたしは児玉元帥の変装だって見抜いたのよ」

「アハハ、島のスタッフは優秀ですから……これがパルスギですよ」

 ハンベをオフラインにして3D映像を出した。

「総理から話は聞いていたけど、ちょっと難しかった」

「はい、減衰率が0.000001%で、既存のパルス鉱の1/20でしかありません」

「ええと、そこなのよ1/20しか無くて、どうして優秀なの?」

「え、あ、アハハハ」

「わ、笑うんじゃありません(-_-;)」

「ごめん、伯母さん(^_^;)」

 睦子伯母は天皇陛下で、めっぽう頭のいい人なのですが、数学が苦手でいらっしゃいます。

 学習院の数学の授業も「微分は微かに分かる、積分は分かった積もり」で通してきた人。テストは予想問題の答えを丸暗記して、暗記力だけで評定4をキープしていたらしいのです。

「減衰率が1/20というのは……グリコのキャラメルご存知よね?」

「知ってますよ、高一の遠足で大阪に行った時、心斎橋のグリコマンと同じポーズで写真撮ろうとしたら先生に止められたもの」

「え、うちのお母さんはグリコマンで撮っていましたわよ」

「明子は次女のミソッカスでしょ、東宮とは扱いがちがうのよ」

「えと、グリコなんだけどグリコマンじゃなくてね、一粒300メートル」

「あ、うん。一粒のカロリーで300メートル走れるって意味よね」

「うん、あれをパルス鉱だとすると、パルスギは同じ大きさの一粒で6000メートルは走れるって感じです。それを減衰期の考え方で云うと、減るのが遅い。20倍もつって意味です。つまり、人に例えると、90歳で亡くなる人が1800歳まで生きられるという感じですね」

「……そうか、命の灯が消えるのが20倍遅い……ということね」

「うん、だから、これを宇宙船の動力源に使ったら、太陽系を飛び出すことが可能になる」

「うん、やっと結びついた。三百年前にガソリンエンジンで飛行機が飛んだのと同じ……それ以上の意味があるということね。やっと実感できた!」

「よし!」

「「アハハハ」」

 久々に伯母さんと笑い合えて嬉しかった。

 天皇には政策的な発言権は無い。日本国民に寄り添い励まして祈ることが三千年の伝統です。

 でも、意味を理解して寄り添うことが大事なんだ。意味も分からずに励ますのは、日本も日本人も損なってしまう。

 これを勧めたのは、越萌姉妹社のマイ社長、つまり児玉元帥その人であったらしい。

「ねえ、しんこちゃん」

「はい?」

「パルスギ、人間にも使えるといいのにね」

「伯母さん、使ってみたいんですか?」

 伯母さんだって女性だ、いつまでも綺麗でありたいんだ。

「そうじゃなくてね、わたしが1800ぐらいまで生きたら、皇位継承のややこしい問題に当分悩まなくても済むでしょ」

「伯母さん……」

「そんなわけにもいかないでしょうから……こころ子」

 う、真名で呼ばれた。

「西之島が一段落したら、火星に行きなさい。あなたのために……日本のために」

「え…………」

 言葉に困っていると、伯母さんは、こんなお話をし始めた。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源
  •  

 

 

 

 

 

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・017『転校生』

2022-06-06 06:25:47 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

017『転校生』  

 

 

 
 グ……なんでおまえが!?

 
 拍手で迎えられた転校生を見て、思わず叫びそうになった。

「じゃ、自己紹介」

 担任の京極先生に促されて正面を向いた顔は、あの猫田ねね子だ。

「今日から、皆さんと一緒に勉強します。猫田ねね子です。よろしくお願いしまぁす(o^―^o)ニコ」

 ペコリ

 頭を下げて、黒板に『猫田ねね子』と丸文字で書くと、クラスのあちこちから暖かい笑い声があがる。

「ニャハハ、マンガみたいな名前だけど、偉い人が付けてくれた名前で、自分的にはオキニです。呼び方は『猫田』でも『ねね子』でもかまいませ~ん」

 教室のあちこちから「かわいい!」「持って帰りたい!」「うふふ」「あはは」の声が上がる。

「席は、窓側の後ろから二番目。武笠さん、面倒見てあげてね」

 ゲ、なんでわたしの前なのだ!?

「武笠さん、よろ~(^▽^)/」

 笑顔で、そう言うと、トコトコとわたしの前の席に着いた。

 クラスみんなの注目が集まる。ちょ、ちょっと迷惑だぞ(-_-;)

 
 昼休み、校内を案内してやる風を装ってねね子を屋上に連れ出す。

 
「屋上は、生徒は立ち入り禁止なのニャ」

 開錠魔法で屋上のカギを開けると、イタズラっ子そうな目でわたしを見る。

「うるさい、なんで転校なんかしたことになってるんだ!?」

「名前なのニャ」

「名前だと?」

「女学生に名前つけてやったニャ?」

「ああ、あの表札泥棒か」

「安西信子ニャ」

「単なる思い付きだ」

「猫田ねね子よりはいいと思うニャ。ちゃんとした人間の名前ニャ」

「嫌なら、別の名前を付けてやる。付けてやるから、さっさと学校から消え失せろ」

「それはないニャ」

「なんでだ!?」

「……安西信子」

「単なる思い付きだ」

「あれが、あいつの本来の名前なのニャ」

「本来の名前だと?」

「ひるでには力があるのニャ」

「妖(あやかし)に人間の名前があるというのか? こないだのは、ただの三億円だったじゃないか」

「元は人間だった妖もいるニャ」

「しかし、ただの思い付きだぞ」

「だから力なのニャ、これからもそういうことがあるからニャ。ま、いいことしたんだから、お昼ご飯奢って欲しいニャア(⌒∇⌒)」

「学校に猫メシはないぞ」

「ニャハハ、人の姿の時は人のご飯食べるニャ、Aランチがいいニャ!」

「絞め殺すぞお!」

「ニャハハ、ひるで怖いニャ~!」

 絞めてやろうとしたら、元来がネコ、ニャンパラリンと空中二回転で避けられる。

 
 ねね子ぉ! 猫田さ~ん! ねね子ちゃ~ん! 武笠さんといっしょなんだ! よかったねー!

 
 地上にいる同級生たちがねね子を発見する。なんだか、楽し気にじゃれ合っているように見えてしまった感じだ。

 孤高の美少女で前生徒会長である武笠ひるでといっしょだということで、珍しくも好ましい組み合わせと歓迎されているらしい。

 しかたなく、ねね子にAランチを奢ってやる。

 ムムム……妙な展開になってきたぞ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の化身
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
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