大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・312『これでカシコなる!』

2022-06-04 15:13:02 | ノベル

・312

『これでカシコなる!』さくら   

 

 

 オシ! これでカシコなる!

 

 頼子さん手づからお御守りを渡されてガッツポーズ!

 頼子さんの右にはソフィー! 左側には留美ちゃんとメグリン!

 頼子さんは言うまでも無くヤマセンブルグの王女さま! ソフィーは文字通りのガード! 見た目も実質も優等生の留美ちゃん! 身の丈178センチの守護神みたいなメグリン! そんで後ろの授与所(神社の売店)にはニコニコと福の神みたいな神主さん(ペコちゃん先生のお父さん)。これで酒井さくらは、もう欠点二個挽回どころか、優等生の仲間入り間違いなし!

「あ、ありがとうございます!」

 パチパチパチパチ!

 みんな拍手してくれて、みんなで拝殿の前に立ってトドメのお参り!

「さくらが、目出度く欠点を回復して賢くなりますように!」

 頼子さんが声に出してお願いしてくれて、全員で一礼。

 そんでもって、鳥居を出る時に納めの一礼。

 ゴン

 鈍い音がしたかと思うと、守護神が頭押さえてる。

「どないしたん?」

「お辞儀したら、鳥居に頭……」

「だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ、ちょっと打っただけ……」

 よう見ると、鳥居の幅は女子五人が横並びになるには、ちょっと狭い。

 それで、頭を下げた拍子に守護神メグリンは鳥居の柱に擦るようにして頭を打ったんや。

 よう見ると、鳥居は上に行くほど微妙に内側に傾いてる。というか、末広になってて、目出度さを表してるんやと思うんやけど。それで、メグリンは目測を誤って、頭を打ってしもたんや。

 よう見ると、神社の規模の割に鳥居が小さい。

 ペコちゃん先生も、神社の仕事するために近場の聖真理愛に就職した言うてたし、神社、ちょっと苦しいんちゃうやろか。

「よし、あたしがカシコなって、将来お金持ちになったら鳥居を寄進しよ!」

 ちょっと気が大きなってしもた。

「この鳥居は二の鳥居ですねんわ」

 お父さんの神主さんが寄ってきて説明してくれはる。

「え、ということは、別に一の鳥居があるんですか!?」

 一同を代表するように頼子さんが質問。

「はい、あっちの方に」

 お父さんが指差したのは、鳥居前の道をはるか東の方。

「え、あれは別の神社のじゃ?」

 鳥居の向こうには、こんもりと緑が茂ってる。

「あれは、昔からの庄屋さんのお屋敷です」

「ということは、この道全部が参道なんですか!?」

 道は、どう見ても500メートル以上はあって、途中を四車線の大きな幹線道路が横切ってる。

「参道を兼ねた馬場なんですわ。昔は、一の鳥居から二の鳥居まで馬を走らせて、奉納競馬をやってたんです」

「そ、それは知らなかったデス!」

 ソフィーが代表するように感動の声を上げた!

「うん、あの四車線からあっちは散策部でも行ったことがないからね」

「それやったら、いっかい観に行ったらよろしい、大阪市の参考文化財にも指定されてるさかいにね」

「うう……行ってみたい」

「殿下、きょうは、総領事と会食の日です。五時半までに領事館に戻らなければなりません」

 ソフィーがガードモードの小声で呟いて、頼子さんは唸った。

「よし、そろそろ散策部の活動も本格化するからね。みんなもそのつもりで!

 おお!

 みんなも調子を合わせて、うちの成績不振が、みんなのテンションをあげる結果になった(^_^;)

 めでたしめでたし。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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くノ一その一今のうち・6『百地芸能事務所・1』

2022-06-04 10:46:06 | 小説3

くノ一その一今のうち

6『百地芸能事務所・1』 

 

 

 ほう……きみが風間本家二十一代目か……

 

 たっぷり十秒ほどかけて、変態さんみたいにジロジロと社長が見る。

「あの……紹介状と履歴書……」

 視線に耐えられなくなって、二つの封筒を社長机に差し出す。

「これはご丁寧に……」

 封筒を手にすると、そのまま二秒間ほど見て、封も切らずに引き出しにしまった。

「あ、あの……」

「大事なことは、封筒の方に書いてあるんだ。忍者にしか見えない字でね」

 ほ、ほんとかなあ……。

「十七歳で覚醒……その子さんは『遅咲きではあるが、開祖に劣らぬ力を秘めている』と書いている」

「え、そうなんですか?」

「だから、よろしく鍛えてやってくれと結んでいる」

 そ、そうか……ここ何日かのニャンパラリンとか、自分でもビックリするくらいの能力だもんね。

「というのは時候の挨拶の書式みたいなもんだ」

「え?」

「あるだろう『謹賀新年』とか『新緑の候、貴兄におかれましては、益々ご清祥のことと存じます』とか、『新緑の野山に萌える今日この頃』とか『転居いたしました、ご近所にお運びの節はぜひお立ち寄りください』とか」

「え、あ、そうなんですか?」

「その行間に滲むものが本題なんだが……まあ、それを明かすわけにはいかんがな。取りあえず風魔その。今日から君は、百地芸能事務所のアルバイトだ」

「はい!」

「申し遅れた、わたしは百地芸能事務所社長の二十代目百地三太夫だ。呼び方は社長でいい」

「はい、社長!」

「うちはアクションとか殺陣とかを中心とする芸能事務所なんだがね、それだけでは食っていけないから、舞台やテレビの仕出しや着ぐるみショーとか、それに類する各種業務もやっている。そのはまだ高校生だからシフトは考慮する。考慮するにあたっては、ちょっとテストをやっておきたい」

「はい」

「これに着替えて、この地図に沿って歩いてきてくれ」

「歩いて、どうするんですか?」

「途中に課題を仕込んである、いくつこなせるか。こなし方も含めてのテストだ」

「は、はい」

 

 倉庫兼用の更衣室で着替えて事務所の外に出る。衣装は事務所のロゴが入ったジャージ。渋いダークグレーかと思ったら、元は黒だったのが色褪せてるだけで、片方の膝と肘にはツギがあたってるし、すごい石鹸のニオイするし(;'∀')。

 まあ、石鹸のニオイがするってことは、いちおう衛生には気を遣ってるんだと納得しておく。

 でもね、足もとが地下足袋。

 地下足袋ってのが世の中に存在するのは知ってたけど、見るのは初めてだし、むろん履くのは初めて。

 地下足袋って踵が無いんで、ちょっと違和感。地面に足の裏全体がペタンとくっつく感じ。

 

 地図を見ながら南へ……古本屋さんが並んでる通りに出る。

 普通のお店って、本屋さんでもエアコンとかあるからドアが閉じてるとこが多いんだけど、古本屋さんは、どこも開けっぴろげ。開けっぴろげと言っても、商店街の八百屋さんとか魚屋さんてほどじゃない。たいていガラスの向こうにいっぱい本が積んであって、表にも本棚やワゴンが出てて、その隙間みたいな入り口が開きッパになってる。

 チラ見すると、ワゴンには税込み百円均一で文庫なんか並んでる。新刊で七百円も出して買ったラノベが百円。なんか悔しい。

 いっしゅんゾワってした!

 思わず身構えると、お店の中から本が飛んできた!

 ブン!

 鼻の先五ミリくらいのとこを、ごっつい外箱の付いた本!

 すぐ横を反対方向に歩いていた人が、キャッチして、そのまま歩き去っていく。

 おっかねえ!

 気を取り直して歩き出す。

 シュッ! シュシュッ! ブン! ブン! シュシュッ!

 なんと、二三軒おきぐらいに本が飛び出してくる! 大きさはさまざまだけど、みんなケースに入ってて、当たったら気絶してしまいそう。打ちどころ悪かったら死ぬよ!

 シュッ! シュシュッ! ブン! ブン! シュシュッ! ブン! ブン!

 気が付いたら、全力ダッシュで古書店街を駆け抜けていた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生
  • 風間 その子       風間そのの祖母
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長
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漆黒のブリュンヒルデQ・015『ひるでの誕生日』

2022-06-04 06:43:14 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

015『ひるでの誕生日』  

 

 

 
 ガラにも無く余韻に浸っている。

 
 この異世界に来て三日目、祖父母が誕生日を祝ってくれたのだ。

 この三日、二人とは挨拶以上の会話はほとんどなかった。

 学校でもコワモテの前生徒会長で、話しかけてくるのは福田芳子だけだ。父オーディンが設定に手を抜いたのかと思ったりしたが、今夜の祖父母は饒舌だった。

「最初は戸惑ったのよ、生まれたって言うから、おじいちゃんと二人、矢も楯もたまらずに飛行機に乗ってベルリンまで行ったのよ。生まれたばかりのひるでは、色白の、とっても清げな赤ちゃんで、これがわたしの孫だって、最初は実感できなくてね」

「そうだったの?」

「ああ、オレもばあさんも胴長短足の平たい顔。しずく(母)も一筆書きで描いたようなうりざね顔。それが、教会のフレスコ画に描かれた赤ちゃんのように色白で彫りの深いベッピンさんだ」

「ハハ、赤ちゃんにベッピンさんもないでしょ」
「あるのよっ! ね、まるでマリアに抱かれた赤ちゃんのキリスト!」
「うんうん」
「ハンス(ドイツ人の父)に言われて、やっと抱っこしたら、ねえ……」
「おれたちの顔見て、ニッコリ笑ってくれて……なあ、婆さん」
「匂いがするのよ、赤ちゃんの匂いが。それが、赤ちゃんの時のしずくといっしょで、ああ、わたしたちの孫なんだって実感できたのよ。ほんと、ベルリンまで行って正解だったわ」
「それでも、オレはどこか気後れしたんだが、しずくが耳打ちしてくれたんだ『この子、お父さんと同じ出べそなの』ってな」

―― で、出べそ!? ――

 ひそかに狼狽えたぞ。この世界に転移して三日、風呂にも入ったが出べそには気づかなかった。いや、デフォルトなので意識しなかっただけか(;'∀')? 思わずへそのあたりをさすってしまった。

「わたしは気にしたんだけどね、しずくもハンスも平気だし、成長すれば普通になるってお医者様もおっしゃったとかで。実際、うちに来て幼稚園に上がるころにはお医者様の言うとおりになったしね」

 な、なんだ、そうだったのか(^_^;)。

 それから、写真を出したり、わたしが幼稚園や小学校だったころの作文やら図工の作品やらを出してきて、深夜まで語り明かした。

 全て、わたしが、この世界に転移するについて作られた情報ばかりだ。

 この老夫婦……お祖父ちゃんお祖母ちゃんにとって、ひるでという孫娘は生きる希望であるにちがいない。

 かりそめの祖父母と孫娘だが、この愛情には応えなければならないと思った。

 バースデイプレゼントのリュックは三日前に不可抗力で見てしまっているので、驚いてあげるのに苦労するかと思ったけど、昔話に十分感動した後だったので、素直に喜ぶことができた。

 
 ひるでぇ、もう遅いからお風呂入ってしまってぇ。 

 階下から祖母の声、時計を見ると日付が変わりそうだ。

「うん、いま入る!」

 
 湯船に浸かって、念のため確認する。よしよし、出べそじゃなかった。

 お腹を撫でながら思った。祖父母には孫娘はおろか、一人娘のしずくもいないのだ。みんな、わたしが転移するために老人夫婦の生活に割り込ませた設定だ。設定だが、孫娘のわたしを思う気持ちに嘘はない。

 あの二人には孝養を尽くさねばと思う。

 ヘクチ!

 我ながら可愛いクシャミが出た。

 ん?

 湯船の中をうかがうと、戻ってしまっていた……出べそが(;'∀')!

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の化身
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

 

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