大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 80『突然の小休止』

2022-06-25 15:02:43 | ノベル2

ら 信長転生記

80『突然の小休止』信長 

 

 

 孫策とは面識がある。

 

 事の起こりは市だ。

 市が二宮忠八と紙飛行機を追って、森の向こうまで行ってしまい、強行偵察のために侵入してきた袁紹の部隊と遭遇してしまった。あわやというところを武蔵が救ってくれて事なきを得た。後日、その調査の為に、薬草探しの女子高生を装って、信玄・謙信・俺(信長)・武蔵の四人で偵察に出て、孫策の警戒隊と鉢合わせした。

 警戒隊の中に武蔵が袁紹の部隊をコテンパンにした時の兵が加わっていて、あやうく見破られそうになったのを孫策が(おそらく)見逃してくれた。

 孫策は、扶桑(転生国)への侵入には積極的ではないような気がする。

 ことを荒立てないで、三国志諸侯をなだめながら様子を見ようというのが、孫策の心づもりではないか。

「それは、どうかなあ」

 シイ少尉(市)が馬を寄せてきた。

「なんだ、俺は昼飯のことを考えていたんだぞ。成都は後の南京だ、南京料理は江南でありながら、長江沿いの肥沃な平野の農産物、魚介類や家禽などの素材を生かして、意匠を凝らしながらも穏やかな味が特徴だ。楽しみにもなるだろう」

「フフ、ニイチャンが目が無いのは甘党のスィーツだろ、妹の目はごまかせないぞ。今のその目は、敵を探っている時の目だ」

「お見通しか……確かに、長城を超えて三国志に来るまでは、俺たちの知識は長城の関門を函谷関と見誤る程度でしかなかったからな」

「家康だって、サルが死ぬまでは三河の律義者で通して、天下取りの色気は見せなかったからね」

「秀吉も家康も、俺が死んだ後の状況に合わせただけだ。無理くりの謀反を企てた光秀とは違うぞ」

「うっさい! サルも嫌いだけど、タヌキはもっと嫌いだ!」

「尖がるな。いま気にかかっているのは孫策の本音だ。今の三国志は呉の出方次第で方向が決まる」

「その呉の行き先は、大橋が握っているかもね……」

 確かに、大橋は紙飛行機にも気が付いている様子だったからな、油断はならない。

 

 小休止!

 

 軍列の前の方から小休止を伝える声が逓伝されてきた。

「え、もう小休止?」

 シイが驚くのも無理はない。成都を出て、まだ二時間もたっていない。

 騎兵師団だ。その気になれば、一気に駆けて夜明けと共に建業に着くことも出来る。まあ、そんな強行軍をやれば「奇襲攻撃をかけてくるつもりか!?」と疑いをもたれてしまうがな。

「え、河原に下りてるよ?」

 前方で、茶姫の馬印が河原に下り、それに倣って、師団全体が下りている。

「職姉妹、茶姫さまがお呼びだ、すぐに行ってくれ」

 同僚の近衛騎士が伝えると、そのまま堤上の道に出る。警戒なのだろうが、単騎に歩卒が二名。

 前方にも警戒の騎兵が上がって来るのが見えるが、同じ組み合わせが前後に一組ずつしか居ない。

「なんか、桶狭間で負けた時の今川軍みたいに緩い警戒じゃない?」

「まあ、茶姫に直接聞くさ」

 茶姫の馬印を目指していくと、焚火の用意をする者や糧秣を開く者、中にはアーマーを脱いで川で水浴びをする者もいて、とても小休止の様子ではない。

「なんか、緩んでるし」

 

 ザップーーン!

 

「ええ?」

 馬印の下では、従卒たちも寛いで、床几の上には茶姫のアーマーと衣類が乱雑に置かれている。

「いまの水音……」

「職少佐、茶姫さまなら泳いでおられますので、あちらの方へ行ってください」

 当番兵が、茶姫の抜け殻を畳みながら岸辺を指さす。

 ジャバジャバ……パシャパシャ……ザップーーン!

 パシャパシャパシャ

「おお、君たちもひと泳ぎしてはどうだ! 水着なら、わたしの予備があるから使うといい!」

 そう言うと、茶姫は再び盛大な水しぶきをあげて泳ぎだす。

「あまり泳ぎは上手くないな」

「なに考えてんだろ?」

「シイも泳ぐか?」

「茶姫のはサイズ合わないし」

「そうだな」

 瞬間立ち上がった茶姫の胸は、俺たち姉妹よりも2サイズは上だ。

 

 五分ほどギャップ萌えしそうな水泳を全軍に披露して、茶姫は岸に上がってきた。

 

「だれか、見ているのか?」

「さすがは少佐、気が付いてるのね」

「のぞき見!?」

「ハハ、のぞき見もなにも、あちこちで写真撮ってたでしょ?」

「水音に混じって、パシャパシャ音がしていただろ」

「ええ!?」

「うちの師団は、休憩中は写真撮り放題にしてるのよ……チュウボウ! そろそろ、出てらっしゃーい!」

「中坊!?」

 手をメガホンにして、茶姫が叫ぶと、シイがビックリし、師団のあちこちから笑い声が上がる。

 ガサガサ

 岸辺の薮が騒いだかと思うと、いかにも中坊な少年がデジカメを持って現れたぞ。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  •  

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・036『琥珀浄瓶・3』

2022-06-25 06:10:23 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

036『琥珀浄瓶・3』 

 

 

 

 わたしが相手をしよう!

 
 背後から声がした! 

 虚を突かれた格好になって、反射的に急降下するとともに頭上をに目をやると、群雲を突き抜け、琥珀浄瓶の眼前に躍り出る白馬の騎士が見えた。

 赤地錦の直垂に金小札緋縅の大鎧、兜は被らずに利剣の前立打った金冠を頂き、螺鈿の長刀を風車のように振う女武者……え……おきながさん!?

 日ごろのおきながさんは、生まれた時から作務衣に軍手姿で焼き芋を焼いているのではないかと思うおばさんだが、この出で立ちは、一緒に正月の記念写真を撮っていなければ気づかないほどの凛々しさだ。

「姫! なりません!」

 スクネ老人が馬腹を蹴ると、おきながさんは長刀を琥珀浄瓶の正中に擬したまま、静かに、しかし、良く通る声で命じた。

「東京には七十一の基地局がある、電源を喪失させれば機能を喪失させられる、確実で復旧も簡単。二人で手分けして片づけて。その間、こやつを足止めしておく」

「しかし、姫おひとりでは!」

「三日ほどは支えられるが、その先は分からん。三日のうちに琥珀浄瓶を倒すすべを考えよ。もしもの時は和子(わこ)を頼むぞ」

「姫!」

「ひるでさん。あなたは、こんなことの為に来たんじゃないのに、苦労を掛けるわね。これを受け取って!」

 後姿のままおきながさんが放ってよこしたのは、黒鉄の勾玉だ。

「これは……」

 セイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーッ!

 問いには応えず、おきながさんらしい吶喊の声をあげ、まっしぐらに琥珀浄瓶の真中に突っ込んだ!

「姫えっ!」

「おきながさあああああん!!」

 
 ズゴゴゴゴゴオオオオオオオン!!

 
 真ん中が閃光を発したかと思うと、数瞬身もだえして、琥珀浄瓶はその動きを停止させた。

「姫…………」

「いくぞ!」

 
 スクネ老人を促し、東京を東西から巴のように周って、数分の内に基地局の電源を落としていった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の化身
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
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