大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・315『さくら的民の竈』

2022-06-19 13:55:09 | ノベル

・315

『さくら的民の竈』さくら   

 

 

 この組み合わせは無いと思う。

 

 体育の後の数学とか英語。

 前も言うたけど、中間テストで、英語と数学が欠点やった(;'∀')。

 一学期の成績は、中間テストと期末テストの点を足して二で割る……だれでも知ってるよね。

 せやさかい、うちは、期末テストでは、数学と英語に関しては40点ではあかへんのです!

 最低でも42点くらいは取らんと、一学期の成績が欠点で確定してしまう!

 せやさかい、数学と英語は目ぇしっかり開けて見て、耳をかっぽじって聞いとかならあかんのです!

 

 それが……Z Z Z Z Z Z

 

 つい寝てしまうんです。

 今月の二週目から、体育はプール。

 終わった後は、めっちゃ眠たなってしまうんです……Z Z Z Z Z Z

 

 あ、あかん!

 

 いつもやったら、後ろの留美ちゃんがシャーペンの消しゴムのとこでツンツンしてくれんねんけど、今日は、それも無い。

 留美ちゃんは、プールの授業頑張り過ぎて、ちょっと保健室で寝てる。

 せやから、起こしてくれるもんも居らへんし……Z Z Z Z Z Z

 

 スーーーーースーーーーースーーーーー

 

 なんや、風が吹いてくる。

 教室にはエアコン入ってるけど、エアコンの風とはちがう……なんや、もっと優しい風や……

 

 がんばって目を開けると、教室のみんなも先生もおらんくて、どこかで見たことのある人が立ってる。

 歴史で習った厩戸皇子(うまやどのみこ)みたいな着物着て、腕組みして高欄の向こうの景色を見てる。

「厩戸皇子ではない、聖徳太子だよ」

「え、聖徳太子さんですか?」

「ごりょうさんだよ」

「え、ごりょうさん……仁徳天皇!?」

「そうだよ、いつだったか、お寺にお邪魔して以来かな?」

「え? あ、あ、その節は……」

 とりあえず、手を合わせて頭を下げる。

「ハハハ、わたしは阿弥陀さんじゃないから、手を合わせることはないさ」

「は、はひ、仁徳天皇さま!」

「さまは付けなくていいよ。天皇とつけるだけで、もう尊称だからね。堺のみんなが呼ぶ『ごりょうさん』でいいかな」

「は、はい、ごりょうさん!」

「さくらはいい子だ」

「あ、ありがとうございます!」

「それより、ここに来て景色を見てごらん」

「はい」

 高欄に手を添えて、下の景色を見る。

 生駒山の裾から、田んぼの間にいくつも家々が見える。みんな、将来は堺や平野や八尾やら、大阪の街に発展していく家々、村々や。

 あれ?

 見てると、あちこちの家々から、ささやかな煙が上がる。

 あ、これは、民の竈は潤いにけりや!

 前に見た時は、民の竈から上がる煙がまばらやったんで、ごりょうさんは「むこう三年、民の税を免除せよ」とかおっしゃって、宮殿の雨漏りも直さんとほっとかはった。

 三年たって、もっかい景色を見たら、民の竈は潤いにけりやったさかい、やっと税を復活しはったいう、ごりょうさん、ここ一番のエピソード。

 え?

 ところが、あちこち立ち上ってる煙は、ちょっと赤い。

 ちょっと前に、お祖父ちゃんが見てた黒澤明の『天国と地獄』いう白黒の映画を思い出した。

 誘拐犯に渡した身代金を入れたカバンに細工がしてあって、燃やしたら赤い煙が出るようにしてたんや!

 黒澤明監督は、スタッフに命じて、フィルムの一コマ一コマの煙を赤く塗って効果をだしたんや。

 めっちゃアイデアやし、めっちゃ労力かけてるし、スゴイと思た!

「よく見るんだよ、あれはね、あの竈の煙がたっているところには、中間テストで赤点をとった子たちがいるんだよ」

 え!?

「わたしの祈りが足りなかったんだねぇ、これも、大君たるわたしの徳が足りないからだ。わたしは、あの赤い煙が無くなるまで……なにも食べないことにするよ」

「そんな、畏れ多いことを(;'∀')」

 見ると、ごりょうさんは、ハラハラとご落涙されてはります。

 グ~~~~

 早くも、ごりょうさんのお腹の虫が鳴き始めます。

「そんな、そんな、うち、頑張りますよって、ごはんは食べてください! お願いです、ごりょうさん!」

 グ~~~~

「せ、せめて、その空腹の満分の一でもお引き受けしますよって!」

「そうかい、さくらは優しい子だ……それなら少しだけ……」

 グ~~~~

 今度は、うちのお腹が鳴った。

 え? え? めっちゃお腹が減ってきて……あかん、飢え死にしそうになってきた!

 

「もう、バカな夢見てないで、勉強しなさいよね!」

 

 保健室から帰ってきた留美ちゃんに怒られる。窓際では、メグリンが下敷きで仰いでくれながら笑ってるし!

「アハハハ、下敷きで煽ってあげたのは逆効果だったわね」

 さくらが、アホな夢見たいう話でした。ちゃんちゃん。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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鳴かぬなら 信長転生記 79『俺たち以外の紙飛行機』

2022-06-19 10:11:58 | ノベル2

ら 信長転生記

79『俺たち以外の紙飛行機』信長 

 

 

 天下三分の計……話だけなら眉唾だ。

 

 しかし、天下の諸葛茶孔明ならば信じていい。

 人物で判断しているんじゃない、孔明の履歴だ。孔明の行動は常に『防衛』に軸を置いている。

 仕掛けてきた敵の弱点を見抜き、そこを突いて、崩れが見えてくれば策を持って、完膚なきまでに敵を打ち砕く。

『赤壁』の戦いなどがいい例だ。

 曹操が、地を轟かすような大軍と、長江の水面を覆いつくすような水軍で攻めてきたからこその戦いだった。

 気象・戦術・呪術の三つで味方の心を収れんし、火攻めによって連環の計を打ち砕き、曹操の本軍が崩れるとみるや、これを果敢に攻め立て追い詰めて、自害させる寸前まで持って行った。曹操の追撃を関羽ではなく張飛にやらせていれば曹操の首は取れていた。関羽の強さは比類のないものだが、情や自他の行動の美しさに酔って大局を見誤るところがある。光秀をマッチョにしたような奴だ。

 光秀のことは、もっと……いや、そのことはいい。

 孔明は、防戦という局面からでしか攻勢には出ない。主の劉備玄徳と同様に義を重んずる、あるいは義の体裁が整はなければ仕掛けてはこない。

 その孔明が『天下三分の計』に膝を打ったのだ。当分……十年以上は扶桑(転生国)に攻めてくることはあるまい。

「シイ、このことを直ぐ、転生に伝えろ」

「うん、分かった!」

 シイ(市)は、懐から飛行神社のお御籤用紙を取り出して、手短に書くと、渡殿(渡り廊下)の窓から投げた。

「いつ見ても、忠八の紙飛行機はきれいに飛ぶなあ……」

 俺は、物事に正確さと効率を求めるが、その条件を満たしているのであれば、美しさを大事にする。

 紙飛行機は、二度ほど風を読むように頭を振って、ちょうどよい上昇気流を掴むと、一気に空に駆け上って視界没になった。

「さて、茶姫が待っているだろ」

「うん、そろそろ出発の準備だしね」

 近衛騎士の制服をビシッと決め、渡殿に吹きこむ朝の風を楽しみながら茶姫の坊に向かった。

 

 え?

 

 驚いた、俺たちのものではない紙飛行機が、庭の上を飛んでいる……いや、すぐに墜ちた。

「あーあ、うまくいかない」

 茶妃・大橋が、可愛く口をとがらせながら、次の紙飛行機を折っている。

「コウチャン、それ……」

 シイが指差すが、後の言葉が続かない。

「あ、おはよう、ニイチャン、シイチャン!」

「なにしてんの?」

「うん、ここに来て、紙の鳥が飛んでるのを見かけてね。わたしも真似してるの」

 こいつ……!?

「遠目だから、よく分からなかったけど、なにか字が書いてあってさ、ひょっとしたら思う人に気持ちが伝わるんじゃないかと思って……」

「へ、へえ、楽しいことやってるのねぇ!」

「なんて書いてるんだ?」

「大したことじゃないわよ、沢山書いたら、あんな風には飛ばないだろうから『おはよう』とか『おやすみなさい』とか。こんな些細なことでも、孫策さまは喜んでくださると思うのよ」

「「…………」」

「どう、あなたたちもやってみる?」

 

 ちょっとまずいことになってきたぞ……。

 

「茶姫、すぐにたとう、大橋の奴、かなりの事を知ってる!」

「なに、タメ口で。その制服着てる限りは、わたしの近衛騎兵でしょ」

「言ってられないのよ、孫策に紙飛行機まで飛ばしてるしぃ!」

「……そう……よし、大橋よりも先に建業(呉の都)に行こう!」

 

 俺たちは、劉備玄徳への挨拶もそこそこに、成都を出発した。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長)弟(曹素)
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  •  

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・030『ひるでの散歩・1』

2022-06-19 05:54:18 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

030『ひるでの散歩・1』 

 

 

 
 ヘクチ!

 可愛いクシャミで目が覚めた。

 といっても、わたしのベッドに誰かが潜り込んでいたわけではない。

 目が覚めたら、横に誰かが寝ていたというのはラノベかアニメの世界だろう。

 可愛いクシャミは自分自身のだ。

 元の世界ではヴァルハラの戦士だったわたしには可愛げというものに縁が無かった。この異世界では武笠ひるでという女子高生をやっているが、今でも女子高生としての必須属性である『可愛さ』とか『可愛げ』というものがよく分からない。

 話し言葉は男だし、妖などを相手に戦ったら、この異世界の女子、いや、どの人間よりも強いだろう。

 しかし、見かけはロングの黒髪が良く似合う美少女なのだ。

 この異世界の美少女に対する期待値は絶望的に大きい。

 制服を着崩してはいけないのはもちろんのこと、私服もセンスのいいものを着用しなければならない。髪の手入れも怠ってはいけないし、外股で歩くのもご法度だ。なにより、日ごろの立ち居振る舞いから言葉遣いまで外見に相応しい美しさや可愛さが無ければならない……と、項目的には分かっている。

「先輩は、ちょっと男っぽ過ぎる」

 芳子に言われたのは、ここに来て間もないころ、立て続けに犬と猫の妖を打ちのめした時だ。

「こういう育ち方をしたのだ、いまさら可愛くとかお淑やかにはできん」

 漆黒の鎧を身にまとい、主神オーディンから預かった荒くれたちを引き連れて、辺境の邪神や蛮族と渡り合い、性別を超えた統率力や指揮能力戦闘力を発揮していると、こうなってしまう。

「でも、ひるで先輩の目力だけで、いろいろ被害が出てるんですよ」

「被害? 聞き捨てならんなあ、言ってみろ」

「ちょっと待ってくださいね……」

 芳子が開いたスマホの画面には、ここ三か月の世田谷区内の交通事故と犯罪の統計が載っている。

「おお、犯罪は減少しているではないか」

「その分、事故が増えてる」

「え? これが、わたしのせいだと言うのか?」

「はい、先輩の姿を見た者、悪党なら犯罪を思いとどまります。気の弱いドライバーはハンドルを取られたりして接触事故を起こしています」

「おまえ、話盛ってないか?」

「じゃ、試しに、あのカラス見てください」

「ん、あれか……」

 こちらに向かってくる三羽のカラスに目をやると、先頭の一羽が墜落して、残りの二羽は逃げ去ってしまった。

 
 ……それ以来気を付けている。

 
 ほら、先日も屋上で梨本明子に出くわすきっかけになった時もガッツポーズに気を使っただろ。梨本明子が直ぐに姿を現さなかったのも、芳子に言わせると「先輩をビビっていたから」ということになる。

 ま、だから、朝一番のクシャミが可愛く出たのは、ちょっと嬉しかったりする。

 嬉しさついでに散歩に出る。建国記念の祝日でもあるしな。

 門を出て表に。

 向かいの二階、一瞬だけ啓介の気配。

 あいつの引きこもりは、ひょっとしてわたしのせいか?

 瞬間思って、打ち消すと、二月とは思えない陽気の中をブラブラと散歩に出たのであった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の化身
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

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