大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:018『相席』

2023-02-23 07:47:52 | 時かける少女

RE・

018『相席』   

 

 

 B駅へ向かうために下りのホームへ。

 
 B駅は下りの先頭方向に改札があるので、ホームの前の方、一両目の印があるところに立つ。

 電車がやって来る上り方向を覗うと、三十年前のお母さんとお祖母ちゃんが現れた。

 同じ電車に乗るんだ。

 嬉しくなって少しだけ寄ってみる。

 
―― あの娘さんのお蔭ね ――

―― そうね、クーポン券、今日が期限。気が付かなきゃ、そのまま帰ってた ――

 お母さんがヒラヒラさせているのは令和でもB駅近くにあるBCDマートだ。昭和六十三年だったら新規開店で間もないころかな。素敵な靴が手ごろな値段で手に入るので有名。三十何年後のお母さんもちょくちょく利用しているご贔屓の量販店だ。

 ウキウキしているお母さんが新鮮で、わたしは、やってきた下り電車の一両隣の車両に乗った。

 連結部分のガラス窓を通して―― お母さん可愛い ――くすぐったく見ているうちにB駅に着いてしまった。

 
 改札の位置が違う。

 
 三十年前のB駅は改装前で、改札に続く跨道橋は中央寄りにあった。

 わたしは、お母さんとお祖母ちゃんの後姿を愛でながら改札を出た。

―― あ、クレープ屋さん! ――

 お母さんがロータリー端っこに停まっているキッチンカーに気づいた。

 女子高生らしい勢いで突進すると。十人ほどの列の最後尾について、お祖母ちゃんにオイデオイデをしている。

 なんだか可愛い。あんな無邪気なお母さんは初めてだ。

 
 おっと、ミカドを探さなきゃ。

 
 首を半分回したところで発見。ロータリーに繋がる商店街の角に、これまた新規開店のミカドが見えた。

 三十年後はたこ焼きのお店があるはずの場所だ。

 先輩に言われた時間まで一分あるかないかで窓際のシートに座る。

 わたしの後ろから入って来た学生風のお兄さんが―― おっと ――という感じで窓際の席を諦めて、奥の四人掛けに収まった。

 ミカドは流行っているようで、カウンター以外の席は埋まってしまっている。

 むろん窓際は四人掛けなので、その気になれば相席できる。満席に近いのに四人掛けを占拠していることに収まりの悪さを感じる。

 オーダーした紅茶を待っているうちに営業見習いって感じの女性が入って来た。

「すみません、ここ、いいですか?」

 わたしの四人掛けの向かいを指して笑顔を向けてきた。

「あ、ええ、どうぞ」

 斜め前に座った見習女史は、ぶっといシステム手帳とA4の書類や紙袋やメモの束を出して仕事を始めた。

 これなら四人掛けでなきゃならないはずだと納得。営業の仕事なんて分からないけど、令和だったら、スマホかタブレット一つで済むんだろうね。何の仕事だろう……紙袋から覗いているのは原稿用紙の束、色鉛筆で直しが入ってる……作家の原稿? 気が付いて「おっと」と呟いて紙袋の口を閉めた。置かれた手帳にはわたしでも知ってる作家の名前やら日程、時程が書き込まれて……出版社の編集見習い? 

 わたしも冴子も作家とかに憧れはあるけど、じっさいは出版社の編集とかに成れたら御の字とか思ってる。だけど、リアルの編集さんを目の前にすると、いや、これも大変な仕事だ……複数の作家の担当やって、やっと原稿もらって、社に帰るまでに、原稿のチェックやら仕事の段取りをつけてるんだ。

 紅茶を飲み終えたころ、見習い女史は席を立ってカウンターのピンク電話に向かった。

 ピンク電話の傍が、さっきの学生さん。

 学生さんは、チラリと女史を見る。微妙に笑顔になった。

 女子は電話が終わると「お邪魔してごめんなさい」。にこやかな笑みをコーヒー代といっしょに残して出て行った。

 
 さあ、約束の三十分が過ぎた。わたしもお勘定を済ませてミカドを出る。

 
 キキキーーーーグワッシャーーーーン!!

 
 ロータリーの方でクラッシュ音。

 セダンが歩道に乗り上げて、ベンチや花壇やらをなぎ倒し、バス停に激突して停まっている。

 交通事故!?

 愕然とした。

 セダンの前方に、捻じれたように転がっているのはお母さん! お祖母ちゃんがへたり込んで呆然としている。

  おい! 警察! 救急車! すごい血!  だめかもな!  早く救急車!

  目の前の風景が急速に色彩を失い、次に輪郭が無くなり、わたしは白い闇に投げ出されてしまった。

 

 ☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  

 

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パペッティア・007『初めてのベース』

2023-02-22 10:17:59 | トモコパラドクス

ペッティア    

007『初めてのベース』晋三 

 

 

 陸軍特務旅団のベースは首都の南にある。

 

 ベースは二十年前のヨミのファーストアクトで出来た巨大なクレーターの中に潜むように存在している。

 クレーターの直径は差し渡し三キロほどもあり、所狭しと対空兵器が並んでいる。

 中央にはベースのコアに通じる入り口があり、入り口はカメラの絞りのような構造になっていて、出入りするものの大きさに合わせて変化する。

 直径二十メートルほどに開かれた入り口を、夏子たちを乗せたオスプレイが巣に着地する猛禽類のように下りていく。

 バラバラバラバラバラバラバラバラ!

 絞りの上十メートルぐらいに差しかかると、とたんに爆音が大きくなる。元祖のオスプレイよりもプロペラの効率がいいんだろう、巻き起こした風圧は、あまり横には逃げず真下に圧を掛けている。絞りの周囲の排気ダクトからはオスプレイの爆風がいなされて直上に噴き上がっている。演出というわけじゃないんだろうけど、勇壮な雰囲気がいい。

 発着デッキまでは少しある。

 空港の手荷物検査を縦にしたみたいなところを通過して緑に光る。隔壁通過を知らせるシグナルだろう、それが三つ光って発着デッキ。

 ガクン ガチャン

 着地すると同時にギアがロックされ、前方にキャリーされる。キャリーされる間にプロペラは急速に回転速度を落とし、ハンガーが口を開けるころには風車ぐらいに落ち着いて停止。

 ブーーーー

 油圧シリンダーが唸ってハッチが開く。ベテランの添乗員みたいに開き切っていないハッチを飛び出るみなみ大尉。

 デッキボスの端末にチェックを入れ、ボスがOKサイン、それを受けてみなみ大尉がノルマンディー上陸の隊長が部下をせかすように腕を回して夏子を呼ぶ。

 スターウォーズの基地のように思えてキョロキョロする夏子。

「ウッヒョオオオオオ……」

 遠慮なく感嘆の声をあげる。ちょっと恥ずかしい。

 こういう、遠慮のない反射が良くも悪くも夏子の個性だ。どっちかっていうと、生前の俺は、妹のそういうところが苦手だったが、いまの俺には好ましく思える。過去帳を住み家として二年目、少しはホトケさんらしくなってきたか。

「さ、ここからはリフトよ。三回乗り換えるから、迷子にならないでね」

 みなみ大尉はテーマパークのベテランスタッフのようにまりあをエスコートしていく。

 

「大尉、またお腹が空いたんですか?」

 

 二つ目のリフトに向かう途中、カーネルサンダースの孫みたいな曹長に声をかけられた。

「え、CICに行くとこだけど?」

「そっちは士官食堂ですよ。CICはリフトを下りて三番通路を右です」

「わ、分かってるわよ」

 見かけの割には抜けているところがあるようだ。

「こちらは主計科の徳川曹長、ベース内での日常生活は彼が面倒見てくれるわ。こちら舵司令の娘さん、いろいろ面倒見てもらうことになるから、まず徳川君のところに連れて来たんじゃない(^_^;)」

 強引な強がりに、夏子も徳川曹長も吹き出しかける。

「えと、舵夏子です。お世話になります」

「こちらこそよろしく。司令からも話があるだろうけど、ここでは君は少尉待遇だ。一応士官だからベース内の大概のところには行けるよ。当面必要なものは後で届ける。ベースの詳しいことは、その時にレクチャーさせてもらうよ、みなみ大尉に任せたら日が暮れそうだ」

「ちょっとねえ!」

「はい、回れ右して二つ目を左、二番のリフトに乗って……自分が案内しましょうか?」

「大丈夫、ここへは君に会わせに来たんだからね!」

「それは恐縮です……じゃ、幸運を祈ります」

 夏子は徳川さんに付いて来てほしかったが、目を三角にしたみなみ大尉には言えなかった。

 曹長の案内が良かったのか、それからは迷うことなくCICに着いた。

 

「司令、夏子さんを連れてまいりました」

 

 レーダーやインターフェースを見ていた四人が振り返った。夏子の姿を確認すると三人は任務があるのかでCIC内のパネルやモニターをいくつか確認したあとCICを出て行き、残った老士官も夏子とみなみ大尉に笑顔を残して出ていってしまった。任務じゃなくて人払いかよ。

 で、驚いた。

 え?

 CICは俺たちだけになってしまった。

☆彡 主な登場人物

  • 舵  夏子       高校一年生 自他ともにナッツと呼ぶ。
  • 舵  晋三       夏子の兄
  • 井上 幸子       夏子のバイトともだち
  • 高安みなみ       特務旅団大尉
  • 徳川曹長        主計科の下士官
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宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]

2023-02-22 07:45:57 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

32[水の惑星アクアリンド・2] 修一  

 

 


 暗黒星団ロンリネス以上の歓待だった。

 アクアリンドは、夕刻の入港を指定してきた。

 船の入港は朝が多く、異例といえたが俺たちは素直に従った。

 二十一発の礼砲を鳴らすと、それが合図であったように、港街であり首都であるアクアリウムの各所から一斉に花火が上がり、花火には無数の金属箔が仕込んであって、それが他の花火や夕陽を反射して、ディズニーランドのエレクトリカルパレードの何倍も眩く、この世のものとは思えない美しさだった。

 三笠のクルーは正装して上甲板に並び、登舷礼の姿勢のまま美しい歓迎を喜んだりビビったり。

「悪いけど、わたしは神棚にいるわね。この星の雰囲気、どうも肌に合わない」

 で、ミカさんを除く全員で上陸し、アクアリンドの大統領以下、この星の名士やセレブの歓迎を受けた。


「いやあ、よくお越しくださいました。実に八十年ぶりの来航者で、我々も感動しております」

 大統領の言葉から始まり、各界名士の挨拶が続いた。

 歓迎レセプションには、この星一番のアイドルグループのエブザイルや、AKR48(アクアリンド48)のパフォーマンスが繰り広げられた。

「正直、退屈な民族舞踊なんか見せられると思っていたけどニャ。良い感じニャ!」

 ネコメイドたちは、ほとんど素の猫に戻って地元猫たちと楽しくやっていたが。他のクルーたちは微妙な違和感を感じていた。

 たかが水の補給にきて、この歓待はなんだ? 違和感の元は、ここにあった。


 深夜になって、クレアが憂い顔で艦長室にやって来た。

 クレアは元々はボイジャー1号で、漂流していたのを三笠で保護して、ミカさんが人間らしい義体を与えたものだ。ヘラクレアの娘さんのイメージが反映されているようだけど、並み居る敵艦隊を一手に引き受け玉砕した壮烈な軍人それではない。聡明で、でも少し引っ込み思案な……うん、トシの従姉だと言われたら、そのまま頷いてしまいそうな感じ。


「ちょっと、いいかしら……」


 と言った時には、その夜の晩さん会の素晴らしさを語り合う二人のフェイクデータをダミーに流していた。だから「今夜のおもてなしは素晴らしかったわね」とアクアリンドの諜報機関には聞こえていたが、実際は「この星、おかしいわよ」になっている。深夜になったのは、このダミーデータを作っていたかららしい。


「具体的に言ってくれ」


「レセプションでも気づいたと思うんだけど、この星には伝統芸能や、伝統技能がないの。それに、この星のコンピューター全てにアクセスしてみたけど、八十年前以前の記録がどこにもないの」

「ロンリネスのときみたいにバーチャルってことはないのかい?」

「そう思って調べたけど、全て実体よ。人口は一億八千万。惑星としては少ない人口だけど、大陸としてはほどほどの人口。ジニ係数も二十以下で、地球のどの国よりも貧富の差が少ないの」

「歴史が分からないという点を除けば、よくできた星だな」

「それから、この星は、ほとんど無宗教。アクア神というのがあるけど、信者は数百人といったところで布教している様子もないの。大陸の南端に神殿があるほかは寺院とか教会とか呼べるものが無いし、サーチした限り僧侶や神官らしき人も居ない……穏やかに見えるけど、どこかおかしいわ、この星」

「明日、名所案内をしてくれる。そのときに、ちょっと気を付けてみよう」

「それから、この音を聞いてみて」

「あ、ちょ……」

 クレアは、俺のオデコに自分のオデコを近づけて、自分の聴覚とシンクロさせてきた。見かけに似合わず大胆だ(;'∀')

「五感の99%を聴覚に集中して聞こえてきたの……目をつぶって集中して、そうでなきゃ聞こえないくらいに微かだから」

「う、うん……」

 それは、微かにサラサラと水の流れる音だった。

「えと……クレアの体の中を流れる血流?」

「違います! わたしのは……」

「ちょ!」

 頭を挟んで胸に持っていきやがる。

 ドックンドックン

 ウ!?

 意外に強い乙女の血潮に、ちょっとたじろぐ。

 俺の反応に満足すると、再びオデコに戻される。

 見かけも振舞も、ほとんど普通なんだけど、まだ人間に成り切れていないんだ。ま、いいんだけどな。俺が指摘したら、逆に変になりそうな気がする。俺も器用なほうじゃないからな(^_^;)

「ちょっと、聞いてる?」

「あ、すまん」

 横須賀港で見かけた自衛隊の……世界一と言われる静粛性を誇る潜水艦、それが限界潜行深度でたてるキャビテーションノイズを聞いたような気がした。

 うかつに目を開けると、目の前にクレアのドアップ。

(灬╹X╹灬)

「ちょっと、なにやってんの二人で!?」

 樟葉が怖い顔をして立っている。

 三笠の外にはバリアを張ってくれたクレアだが、艦長室のドアには気が回っていなかったようだ(^_^;)

 

☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  


 

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RE・かの世界この世界:017『なにかお困り?』

2023-02-22 07:06:57 | 時かける少女

RE・

017『なにかお困り?』   

 

 

 無意識にポケットをまさぐる。

 
 分からない事があると脊髄反射でスマホを探してしまう。

 今は昭和63年だから、スマホはおろか携帯も存在しない、どうしよう……どうしよう……。

 意味も無く胸を押える。

 なんとも落ち着かない。

 スマホがあれば、A駅近辺の喫茶店で検索できる。それ以上にスマホを持っていないという現実を突きつけられ、とても不安になる。

 スマホ無しで、どうやって調べたら……。

 
 人に聞くしかない……至極当たり前の解決策が湧いてくるが、これが簡単なことじゃない。

 子どものころから見知らぬ人は不審者という決めつけがある。

 小学校入学時から防犯ブザーを持たされ、見知らぬ人に気をつけましょうと注意されてきた。

 当然世間の大人たちも子どもにものを尋ねるようなことはしない。

 
 路上でものを尋ねて警戒されないのは、マイクを持ってカメラマンを従えているテレビ局とかの人間ぐらい。

 
 どうやって聞いたらいいんだろう……。

 駅前の交番が目についた。うまい具合にお巡りさんも居る。

 足を向けてためらわれた。

 わたしは別の世界の令和五年からやってきた人間だ。

 三十年以上のギャップ。数分でも会話すれば、なにかボロが出てしまうんじゃないか……こちらは日の丸が白丸になっているように、とんでもないところで違いがある。

 もし、異世界の令和五年から来たと分かったら……いや、そもそも信じてもらえない。

 変なことを言う女! 某国のスパイか工作員か! いかれたオタク女! いや、オタクって言葉も無い時代…… 

 
 次々に湧いてきて、顔が引きつるだけで身動きが取れなくなってしまう。

 
 なにかお困り?

 ヒ(# ゚Д゚#)!!

 
 口から心臓が飛び出しそうになった!

 胸を押えながら振り返ると、買い物帰りのオバサンが穏やかな笑顔で立っていた。

「あ、はい! 困ってるんです!」

 ほとばしるような勢いで言ってしまった。

「そうなの、怖い顔して、とても思い詰めてるように見えて。お節介でなくてよかった。で、どうなさったの?」

 なんだか、とても懐かしい感じのオバサンで……というか、わたしが、そこまで途方に暮れていたということなんだ。

「この辺に、ミカドっていう喫茶店ありませんか?」

「ミカド?……ミカドね……」

 どうやらハズレ……すると、同じような買い物帰りのオバサンが寄って来た。

「どうしたの?」

「あ、おけいさん。この娘さんが……」

 どうやらお仲間の様子。

「ああ、それだったらB駅じゃなかったかな。カタカナ三つの喫茶店が開店してた。A駅前を考えていたらしいけど、借地料が合わないとかで、ここいらは駅前の再開発で地価が上がってるからねえ」

 そうか、反対だったんだ! B駅も隣だ!

「ど、どうもありがとうございました!」

 頭を下げると―― お母さーん ――という声がして、ロータリーの向こうから学校帰りの女子高生が駆けてくる。

 
 ほんの一瞬だけ見えて、逃げるように駅の構内に向かった。

 一瞬だったけど確信した。

 

 ……あの女子高生は、若いころのお母さんだ。

 

 オバサンが懐かしかったのは、三年前に亡くなったお祖母ちゃんだったからだ。お葬式に来てくれたお婆さんの一人がナントカ恵子さんだったような気がする、それがおけいさん?

 そんな疑問も思いも振り捨て、切符を買うとB駅を目指して電車に飛び乗った。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
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鳴かぬなら 信長転生記 109『天照大神との交渉』

2023-02-21 16:45:16 | ノベル2

ら 信長転生記

109『天照大神との交渉信長 

 

 

 ああ、やっと来たぁ!

 

 見かけは平手の爺が『本朝神仙図絵』で見せてくれた通りの天照大神の装束なのだが、機嫌の悪い時の濃(俺の女房)そっくりの不機嫌面で現れた。

「大相国信長である」

「ん? ダイショウコク? なにそれ?」

「死んでから天皇にもらった称号だ、知らんのか?」

「あ、官職名か、太政大臣のことだな。官職名なら上総介にしておけ」

「上総介は桶狭間までだ。それに自称だぞ」

「上総介の方がかっこいい」

「かっこいいか、まあいいだろ。『やっと来た!』と言っていたが、俺が来るの知ってたのか?」

「転生してきた者たちは大勢いるけど、この天照に会いに来たのは上総介が初めてなのじゃ。だから、そういう意味で初めてなわけさ」

「ん? あっちゃんは『簡単には会えません』的なことを言っていたぞ。今日だって、自分が草薙剣になって付いて行かなきゃダメだって」

「ああ、それは後回し。とにかく、転生者は、自意識が強いっていうか『自分こそは!』って者ばっかりだろ。神頼みしても形だけだからね」

「しかし、謙信などはなかなか信心深いぞ。他にも、高山右近とかのキリシタン大名とか物狂いしたような者もおるぞ」

「そいつらは、自分の中に作り上げた神を敬っておるだけだ。勘違い、あるいは自己愛、あるいは、欲得ずくという奴もおる」

「なるほど、よく見ておるのう」

「で、願いごととかあるんじゃろ。言え」

「ああ、それはな……」

「なるほど、三国志の茶姫の処遇なのだな」

「まだ、なにも言ってないぞ」

「あ、すまん。神さまだから、心に浮かべただけで分かってしまう(^_^;)」

「それなら話は早い、どうしたらいい?」

「茶姫は業の深い女なのじゃ。深くてこんぐらがっておる……はてさて……」

 深い憂悶でもあるのか腕組みして空を仰いでしまった。

「どうしたらいいかは分かっておる。分かってるんだけども、それは気象予報士が台風の進路を言い当てるようなものでなあ……台風そのものをどうこうすることはできん」

 その程度のものなのか天照大神とは……これではアイドル気象予報士の天気予報と変わらんだろう(-_-;)

「見くびるなよ、上総介」

「おっと、考えただけで分かってしまうんだったな」

「天照は、いま上総之介に見えている姿が全てではない。あちらこちら、この転生の扶桑だけではなく、現世や幽世、数多ある異世界のあちこちにも在って、様々な問題や困難に立ち向かっておるのじゃ。この扶桑に全力を振るうわけにはいかん。次元は違うが、本能寺直前の上総之介に似ておる」

「俺にか?」

「そなたも、日本中の敵を相手にしていっぱいいっぱいであっただろう。で、光秀のことにも想いをいたせずにな」

「……なるほど(-_-;)」

 痛い例え話だ。

「そうだ、上総之介、その困難のいくつかを背負ってはくれないか?」

「天照の代わりをやれと言うのか?」

「問題の半ば以上は、素戔嗚(すさのお)のことなのだ」

「あの『わんぱく王子のオロチ退治』の?」

「あんなに可愛いものではない。というか、例えが古いなあ、『わんぱく王子のオロチ退治』は、宮崎駿が入社する前の東映動画の作品だぞ。まあいい、実はな、あちらこちらで荒ぶる神になって皆を困らせておる。しかし、あれでも我が弟。力づくで滅ぼしてしまうのもしのびなくってな」

「俺が素戔嗚を……」

「この草薙剣を貸してやる。並の刀剣では太刀打ちできんだろうからな」

「ちょっと待て」

「それから、一回に付き一人助手を付けてやる。人選は任せてもらうがな。励め、期待しておるぞ」

「待ってくれ」

「神さまの決定事項だから、キャンセルは無しだぞぉ(`_´)」

「……そのバニラの香りはなんだ?」

「え、あ、これぇ(n*´△`*n)?」

「並みのバニラではないぞ」

「あ、カナダの神さまから飛び切りのメイプルシロップもらったもんでぇ、とっときのバニラエッセンス使ってホットケーキ作るとこなのさ」

 ゴクリ

「上総介って、甘いものに目が無かったわねえ」

「そ、それは……」

「素戔嗚を一人やっつけたら、食べさせてあげるから、しっかり頑張ってぇ! じゃね(^▽^)/」

 

 シュボン

 

 一瞬で杜は元の芝に戻って、気まぐれな風が髪のほつれをなぶっていった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

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RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

2023-02-21 07:25:13 | 時かける少女

RE・

016『喫茶みかど』   

 

 

「先輩! 先輩なんですね!?」

 女神さまの声は中臣先輩だった!


 ほんの一時間足らずぶりなんだけど、海外のどこかで財布もスマホもパスポートも無くして知り合いに出会った感じ。

『どうやら、とても難しい世界に行ってしまったようね』

「はい、えと、わたしどうしたらいいんでしょう(;'∀')」

『あのね……ちょっと待って……』

 電話の向こうでボシャボシャと話声、どうやら志村先輩と話し合っているようだ。

『……わかった、うん……いい、みっちゃん。一つ課題を解決すれば、その世界から離脱できるの。いま、時美に探してもらってるから……うん、こっち? えと……みっちゃん』

「はい」

『駅一つ向こうに『みかど』って喫茶店があるの』

「あ、A駅の方ですね」

 リアルでっていうか元の世界のA駅前で見かけたことがある。

『その『みかど』の窓際の四人掛けシート、そこに三時半から四時までの間座っていてもらいたいの』

「座って何をするんですか?」

『意味はまだ分からない。ただ、座っていることで、そっちの世界が三十年後に大きな影響があるらしいの。お願いできるかなあ……』

 ひどく申し訳なさそうな口調、先輩にも詳しいことは分からないんだろう。

「分かりました、三時半なら余裕です!」

『じゃ、がんばってね!』

「はい、がんばります!」

 場所も分かっているので明るく応えて受話器をもどした。

『がんばってね』「がんばります」……女子の常套句。小説とか書いていたら、まず使わない月並みで上っ面な言葉。でも、とっさに出てくるのはこういう言葉なんだ。今だって先輩の『がんばってね!』を冷たいとは感じなかった。

 わたし、小説の表現なんか考えてるよ。ちょっと余裕? ううん、さっきまでは赤地に白丸とかニクソイ小学生とか変な参考書とかでアセアセになりかけて、先輩の電話でめっちゃ救われたんだ。やっぱり、先輩の人柄なんだ。

 

 自販機で切符を買うなんて久しぶり。

 

 行先ボタンとお金、どっちが先か? ちょっと悩んで、ボタンを押すけど反応なし。お金なんだと、百円と十円二枚を投入。

 すると、この駅を真ん中に上り下り二駅ずつのランプが点いてA駅を選ぶ。

 改札機ではふんだくられるように切符が吸い込まれるので、ちょっとビックリ。

 スイカとか定期はスイっと改札機を舐めるだけなので暴力的に感じてしまうんだ。

 
 寒!

 
 電車に乗ると、暴力的な冷房に震える。

 設定温度間違えてるんじゃないかと鳥肌といっしょに腹がたつけど、周囲のお客さんたちは平然としている。

「うわ!」

 進行方向の逆につんのめる。

 電車の加速が、ガックンガックンしていてびっくり。

 元の世界では、もっと滑らかに加速していたと思う。これじゃ、立っているお年寄りなんか……周囲を見ると、そのお年寄りも含め、みんな器用にショックをいなしている。

 スマホはおろか携帯を触っている人も居ない。お年寄りは三四人くらいで、乗客の平均年齢は、かなり若いように思える。

 そうか、昭和63年は、お年寄りの数は少ないんだ。

 驚いたり感心しているうちにA駅に着く。

 身構えて改札機へ……

 バシュ(;'∀')

 やっぱりふんだくられるのには慣れない。

 
 A駅の控え目な駅前を歩く。

 
 記憶では、もうちょっと賑やかなんだけど、三十年前はこんなものなのかもしれない。

 そして、『みかど』という喫茶店は見つからなかった……。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
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せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

2023-02-20 16:54:57 | ノベル

・389

『三方さんの引き継ぎ』さくら   

 

 

 夜中に目が覚めた。

 

 なんやら、ヒソヒソと話声がする。

 ひょっとすると夢?

 以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。

 十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。

 せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。

 親友の幸せは、うちの幸せ。

 このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。

 

 ニャゴニャゴ……

 

 耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。

 もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。

 誰と喋ってんねん?

 お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。

 襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!

 

「……それじゃあね」

 

 最後の一言だけが聞こえて、マリーアントワネットは口の前に人差し指を立てると、こっちに向かってニッコリ微笑んで消えていってしもた。

 ダミアは、うちの顔見て「ニャ」と一言だけいうと、そのまま留美ちゃんのベッドに潜り込んで寝てしまいよった。

 ヒソヒソヒソ……

 まだヒソヒソ声がする……これは廊下の、まだ向こう……本堂から聞こえてくるんや。

 じんべさんを羽織って本堂に向かう……話し声は外陣の真ん中へんから聞こえてくる。

 うちは、須弥壇の陰から――すんません、阿弥陀さま――とことわって、外陣の様子を見る。

 え……?

 

 なんと、二人の三方さんが向き合ってお話の真っ最中やおまへんか。

 

「……ということで、まだまだ気ぃの回れへんお方であらっしゃいますが、よろしゅうお頼申します」

「はい、縁あって三方のお役目を引き継ぎましたからには、専心誠意、お役目を務めさせていただきます」

「それでは、これを収めてもろて、引継ぎのしるしといたしましょう」

 なんや、旧三方さんが、三方に載せた和綴じのブットイ帳面を新三方さんの前に進めた。

「少し拝見してもよろしいでしょうか?」

「よろしいもなにも、これからは、こなたさんが当家の三方。しっかり目を通しておくりゃれ」

「それでは……」

 新三方さんは、捧げ持ってお辞儀をして、ハラリハラリとページをめくる。

「……なるほど、これからもご主人さまは波乱万丈の人生を歩んでいかれるのですねえ」

「うむ、それを、苦労ととらまえては、とても続くものやありまへん。気は持ちようという言葉もおますよって、どうぞ、こなたさんも気を大きゅうお持ちなさりませ。こなたさんに譲ったとは申せ、わたしは、目と鼻の先のごりょうさんにお仕えしとります。宮仕えゆえ、言われて直ぐというわけにはまいりまへんやろが、ごりょうさんも『さくらのことは気にかけてやれ』との仰せにおじゃります。そうそう、番号の交換をいたしておきまひょ」

「おお、先輩もスマホをお持ちなのですか?」

「二台持っておるぞえ。パブリックとプライベートじゃ。構えて公私混同はならぬからのう」

「そうですねえ、そういう分別は大事ですからねえ」

「ついでに、裏情報も送っておくぞ」

「それでは……」「それでは……」

 

 ピ!

 

 無事に番号の交換は終わったみたい。

「あ、これは……」

「いかがいたしゃった?」

「ご主人様は、おねしょの癖がおありなのですか?」

「ああ、それは、くれぐれも内聞にな。さくら殿も十七、人への聞こえもあるというもの、こなたが十分に気をつけておれば事なきを得るでありましょう。くれぐれも頼みましたぞえ」

「ははあ!」

「ほれ、申したしりから……」

 

 二人の三方さんがこっちを向いた!

 

 とたんに催してきて、リアルに目ぇ覚ましてトイレに行きました(^_^;)。

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

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銀河太平記・147『待ち伏せ』

2023-02-20 12:51:17 | 小説4

・147

『待ち伏せ』メグミ  

 

 

 ズッボオオオオオン!

 

 ゴジラがうがいをしている最中にキングコングか何かに腋の下をくすぐられたらこうなるどだろうという勢いで海水が噴き出す。

 ドゴゴゴゴーーーン!

 洗鉱用の海水タンクを爆破して500トンの海水を一気に放出した!

 A鉱区の崖下を北に走っていた漢明兵がまとまって隘路の岩や崖に叩きつけられる。ロボット兵だから溺れることも無ければ、岩に激突しても死ぬわけでもない。

 しかし、文字通りの鉄砲水に翻弄されて転がる様は、お岩さんの手に掛かって洗濯機改造の皮むき機で皮を剥かれる芋のようだ。

 食堂なら、そのまま大きなザルに拾い上げられ、巫女服にタスキ掛けのハナによってスライスされたりザックリ切られたりしてお惣菜の具やフライドポテトになる。

 その巫女服のハナが崖の上で目覚まし時計のネジを巻くようにスイッチを入れる。

 ドッカーーーーン!

 五十メートルほどに渡って崖が崩れ、崖下の芋たちの上に降り注ぐ。

 ドドドドド ドドドドド ドドドドド

 初速の遅いパルス機関砲だけど、岩に挟まれたり、体がブチ切れたロボット兵を粉砕するのには十分だ。

 敵は粉砕、攪拌されて粉々になり、もう戦場の応急手当や修理では間に合わないくらいに破壊される。

 沖の工作艦も、ついさっきナバホ、フートン混成部隊によって轟沈させられたから、ボディーの換装もできない。将校なら、国防省のサーバーに残っているデータとソウルで復元されるだろうが、一般兵たちは、これでお終い。

 その将校たちも、出撃前の状態でしか復元できないだろうから、この戦闘で勝ち取った経験や知識は無駄になる。

 

「二人残ってるぞ!」

 

 お岩さんが飛び出すのに倣って、わたしも跳躍。遅れている方の将校を始末に掛かる。

 シュイン!

 横ざまに振るうパルスナイフは目くらまし。敵がのけぞった隙に後の岩で反動をつけ、背後にまわったところで勝負!

 四年前は、この動きで火星の修学旅行生からパスポートを掠め取った。

 今度はソウルを頂く。

 グシュ!

 パルスナイフを延髄に突き立て、瞬間1万パルスの波動を流しつつグキっとえぐる。

 ロボット殺しの必殺技だ。電脳とボディーのリレーを切ると同時に電脳そのものを破壊する。

 刃先がリレーをえぐり切るコンマ一秒。その間に敵のデータが少しだけ読める。

 わたしの特技は細胞レベルの擬態。天狗党にスカウトされて、その能力を増幅させるためにブースターを埋め込んだのが役に立つ。

 胡盛徳大佐

 連隊長ではあるが、任務の目的は―― 島の制圧 ――としか記憶されていない。

 実行部隊は捨て駒。敵軍は、状況次第で陽動部隊にも攻撃主力にもできるように設定しているようだ。

「ハナを!」

 お岩さんは、完全にデータを読むつもりだ。止めを刺さずに情報を読んでいる。

 読みながらも、ハナのことを心配してるんだ。

 嫌な予感。

 崖を駆け上がると、首の半分を吹き飛ばされて朱に染まったハナが転がっていた。

「ハナ!?」

 確かめるまでも無い、直撃だ。

 死んだ自覚もなかっただろう、半分残った顔は、当たりくじを引いた子供のように笑っている。

 かわいそうに……(-_-;)

 千切れた巫女服の袖を顔にかけてやる。

 南無阿弥陀仏

 天狗党で憶えた念仏を唱えてやる。こいつもココちゃん(心子内親王)といっしょに火星に逃がしてやるべきだったか……島では人の詮索はしない。

 野生児みたいな少女で、こんな戦闘ぐらいでは死なない奴だと思っていたが、やはり、リアルな戦争では何が起こるか分からないもんだ。

「……ちょ……起こして……」

 え?

 モゾモゾと身じろぎするハナ……動く方の左手が、わたしの膝にかかって力が入る。

「ハナ…………あ、あんた、ゾンビ?」

「ゾンビ?」

 袖の千切れがずり落ちて、こっちを向いた顔は半分になってしまっているけど、いつもの元気印のハナだった。

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

 

 

 

 

 

 

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宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

2023-02-20 06:31:21 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

31[水の惑星アクアリンド・1] 修一  

 

 

「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」

 Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。


「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」

「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」


 クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。

「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」

 俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。

「ごめん! ミカさんバリアーお願い!」

 天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。

「天音、冷静に。ボタンぐらい留めてからきなさいよ(#`_´#)!」

 樟葉に怒られる。

 天音は、ざっと体を拭いたあとにいきなり戦闘服を着て、第一第二ボタンが外れたままだった。俺とトシの視線が自然に天音の胸元に向く。さすがに、0・2秒で、天音はボタンを留めた。

 が、その0・2秒が命とりになった!

「敵、全艦光子砲発射。着弾まで15秒!」

「ミカさん、バリアー!」

「大丈夫、間に合うわ」

 ミカさんは冷静に言った。

「カウンター砲撃セット!」

 カウンター砲撃とは、三笠の隠し技で、敵の攻撃エネルギーを瞬時に三笠のエネルギー変換し、着弾と同時に、そのエネルギーの衝撃を和らげて、攻撃力に変えるという優れ技である。カタログスペック通りにいけば、三笠は無事で、敵は鏡に反射した光を受けるように、自分の攻撃のお返しを受けるはずだった。

「着弾まで2秒。対衝撃閃光防御!」

 クルーは、ゴーグルを下ろし、身を縮め持ち場の機器に掴まった。

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 ウワアアアアアアアア!!

 震度7ぐらいの衝撃がきた!

 天音が急場に留めたボタンが、みんな弾け飛んだ。瞬間胸が露わになった天音だったが、余裕ぶって見ている余裕はなかった。

 三笠はシールドで受け止めたエネルギーの大半を攻撃力に変換。カウンター砲撃を行った。主砲、舷側砲から、毎秒100発の斉射で光子砲が放たれた。

 しかし、両舷で100万発を超える敵弾のエネルギーは変換しきれず。舷側をつたって、シールドの無い艦の後方に着弾し、いくらかの被害が出てしまった。


「敵、6万隻を撃破。シールドを張りながら撤退していきます」

「各部、被害報告!」

「推進機、機関共に異常無し!」

「主砲、舷側砲異常なし!」

「右舷ガンルームに被弾。隔壁閉鎖」

「……後部水タンクに被弾。残水10」
 
「天音、シャワー済ましといてよかったね。飲料用に一週間もつかどうかだよ……」

 樟葉が優しくフォローするが、責任感と癇癪の強い天音は唇を噛んでいる。

「ここらへんで、水を補給できる星はないかしら?」

 ウレシコワが、真っ直ぐにレイマ姫に声を掛けた。

「右舷の2パーセクさアクアリンドがあるじゃ……」

「「「「アクアリンド……」」」」

「んだ……覚悟が必要じゃ」

 アクアリンドは、表面の90%が水という星であったが、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手を付けないだけの理由があったのだ……。


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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RE・かの世界この世界:015『中島書店』

2023-02-20 06:03:49 | 時かける少女

RE・

015『中島書店』   

 

 

 ネガを見ているようだ。

 

 むろん日の丸のネガが赤字に白丸なわけないんだけど、見事に赤白逆転なので、ネガの感じに見えてしまう。

 社務所の窓に宮司さんの後姿、一瞬足が動いたけど思いとどまる。

 日の丸以外は元の世界にソックリだけど、何が起こるか分からない。知り合いと接触するのは、ひとまず避けよう。

 

 神社を離れて駅の方に向かう。

 

 まずは自分の生活圏を見てみよう。それに、人通りの中に居た方が気が楽だし。

 途中、小学校の横を通る。そうだ、校舎の屋上に日の丸があったはず……見上げたそれは、やっぱり赤地に白丸だ。

 立ち止まっていると、下校途中の小学生に怪訝な目で見られる。

 エホン。

 軽く咳払いして、小学生とすれ違う。

 エホン。

 やつも咳払いして、ニタ~っと笑いやがる。こいつ、小悪魔かなにかか?

 構わずに先を急ぐ。

 

 駅に通じる商店街、抜けたところに中規模書店。

 

 あれ? うぐいす書店のはずなのに、中島書店になってる。

 レイアウトに変わりはないんだけど、レジや本棚が微妙に違う。

 つい本を手に取りたくなるんだけど、我慢して参考書などのコーナーへ。

 目の端に見えた受験参考書の背表紙は1988年○○大学と書かれている。

 1988年……たしか昭和だよ……25を引けば昭和に変換できる。授業で習った変換式に代入……昭和63年だ。

 わたしって賢い……よく見ると参考書の西暦の下に(昭和63年)と書いてある。

 違う、確かめるのは……地図帳だ。

 あった……学校の地図帳と同じなのに値段は三倍くらいのそれを手に取って後ろの方を見る。

 世界の国々の情報が国旗と一緒に並んでいる……国旗を知っている国なんてニ十か国ほどしかないんだけど、ザッと見た限り首をひねるような国旗は無い。

 問題は日本……やっぱり白丸だ。

 スマホがあればググってみるんだけど、ここが昭和63年ならば、スマホはおろかパソコンだってあったかどうか。

 ましてネットカフェなんてあるはずもないだろう。

 他の本を読んだら……思ったけど、気力が湧かず、そのままうぐいす……中島書店を出る。

 
 ぼんやり駅前を歩いていると急に電話のベルが鳴った!

 
 プルルルル プルルルル プルルルル

 
 え? え?

 
 首を巡らすと久しく見たことが無い電話ボックスの中で公衆電話が鳴っている。

 道行く人たちはNPCのように歩き去っていき、電話のベルに関心を示す人はいない。

 ファイナルファンタジー13で、公衆電話が鳴って、それをとったライトニングがヒントを聞いていたのが思い出された。

 
 もしもし、光子です!

 
 受話器を取ると、女神さまの声が聞こえた……

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・008『キャリーバッグ』

2023-02-19 14:11:57 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

008『キャリーバッグ』   

 

 

 えーー! 付いて来てくれるんじゃないの!?

 

 脳みそを経由しないで文句が口を突く。

 今日は諸々の書類提出やら手続き。でもって、教科書販売と制服の受け渡し!

 荷物がハンパない! 学校でも―― 保護者同伴が望ましい ――って言ってたし、とうぜんお祖母ちゃんが付いて来てくれると思ってた!

「1970年だって特務はいるんだよ、まだまだ様子も分からないし、ウカウカ行くわけにはいかないわよ」

「ト、トクム……」

 そうなんだ。

 お祖母ちゃんは特務ってとこに務めてたベテランの魔法少女だった。

 内勤ばっかりで、アップグレードもろくにやってない型落ちだけど、みなし公務員のMS(魔法少女)だった。

 警察よりも自衛隊よりも公安よりも内閣調査室よりもベールに包まれた秘密組織で、その存在は例え総理大臣でもボンクラな奴には知らされないという危ない組織。たぶん、いまの総理大臣は知らされてない。

 単に政府や国の危ない仕事をやるだけじゃなくて、時空を超えた任務とかもあるようで、わたしが昔の宮之森に通えるのも、そういうMSの技で、大っぴらにできることじゃないんだろう。

「じゃ、式神貸してよ。離任式で酔っ払った時、お祖母ちゃん背負って送ってくれたイケメンとかさ」

「引退したMSが、そんなの使えないよ」

「ち」

「女の子が舌打ちなんかするんじゃありません」

「だってぇ」

「じゃ、わたしのキャリーバッグ貸してやろう」

「ええ……あのババキャリー(=△=)」

 

 というわけで、軽くて頑丈なだけが取り柄の婆さんキャリーを引いて学校に行くことになった。

 

 花のJK(まだ入学式もやってないけど)のババキャリーって目立つんだよ、みんなチラチラ見てるし。

 仕方がないので、駅二つ分だし、外の景色を見てる。

 やっぱ半世紀以上昔の街なんで、高い建物が少なくて、民家も、せいぜい瓦屋根の二階建て。三階建て以上はみんな鉄筋コンクリート。走ってる車は令和とあんまり変わらない。っていうか、車の事なんか分からないんだけど……え、三輪自動車? 小さいのはごくごくたまに「何年動かしてねーんだ!」的状態で放置してあるけど、いま、電車と並行の道を走ってるのは普通のトラックなのに三輪。バイクやスクーターとかも走ってるけど、原チャでなくてカブ? そんなやつ。で、違和感ありありなのが、みんなノーヘル。衝突とか転倒したら、ぜったい頭打って、血がドバドバ出て死んじゃうよ。

 女の人、ミニスカ多すぎ。それも、タイトで膝上って云うより股下何センチってしろもの。痴漢増えそう。

 え、なんだあれ?

 茶筒型の大きなタンクが檻に閉じ込められてる。檻はタンクよりも高くて、ちょっとやそっとでは逃げられません的。

 タンクのてっぺんは微妙に膨らんでいて―― 今に見ていろ、ぜったい逃げてやる! ――的な、なにか芸術のオブジェ? それとも宗教施設?

 何か足りない……あ、宮之森城が見えない! いや、無い!

 そうか、社会見学に行った時「これは復興天守と言って……」と先生が言ってたっけ……まだ復興されてないんだ。

 この時代のランドマークは宮之森城じゃなくて『囚われのタンク』なんだ。

 

 二駅だけのサイトシーングはあっという間に終わって学校へ。

 キョロキョロしていては送れるし、人目も気になるのでサッサと早歩き、前の半分くらいの時間で正門を潜る。

 

「うわあ、それってスチュワーデスのキャリーバッグじゃないですか(◎△◎)!」

 

 見覚えのある女子が突撃してきた!

  

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

 

 

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宇宙戦艦三笠30[グリンヘルドの遭難船・3]

2023-02-19 09:34:34 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

30[グリンヘルドの遭難船・3] クレア  

 

 

 エネルギーを注いであげると、エルマは話を続けた。


「……グリンヘルドの人口は200億を超えて久しいのです」

 その一言は衝撃的だった。グリンヘルドもシュトルハーヘンも地球型の惑星で、大きさも大陸の面積も地球とほぼ変わらないことが分かっている。

 ……とすれば、惑星としてのキャパは80億ほどが限界で、惑星全体として手を打たなければならないのは容易に想像がつく。

「そこまで文明が発達しているのに、どうして人口の抑制を考えなかったんだ」

 修一艦長は当たり前な質問をした。

 わたしがボイジャーとして宇宙に出たころの地球は、まだ60憶ほど。現在は80億を目前に、人口の抑制を考え始め、その成果も出始めている。

「その文明の発達が災いなんです。増えた人口は他の惑星に移住させればいい。なまじ文明が進んでいるので、古くから、そう考えられてきました」

「それで、地球に目を付けたんですか」

 樟葉が冷静に聞いた。

「ええ、皮肉ですが、地球の『宇宙戦艦ヤマト』がヒントになってしまいました」


「ヤマトが?」


「あれを受信して、地球の存在を知ると同時に、グリンヘルドとシュトルハーヘンの連合軍なら、デスラーのようなミスはしないと確信しました。上手い具合に地球人はエコ利権から、地球温暖化を信じ、数十年後に迫った寒冷化に目が向いていません。放っておいても地球の人類は100年ももちません。ところが、わがグリンヘルドもシュトルハーヘンも、もはや人口爆発に耐えられないところまできてしまいました。だから前倒しで地球人類の滅亡に乗り出したんです。もう地球には数千人の工作員を送っています。地球温暖化を信じさせるために。わたしの役割は、地球移送のための航路を開くことでした」

「あの……エルマさんは、なんで、そんな機密事項を、あたしたちに教えてくれるんですか」

 樟葉は冷静だ、エルマの話の核心をついてきた。

「わたしたちの考え方は間違っていると思うようになってきたのです。温暖化を妄信している地球も救いがたい馬鹿ですが、他の惑星の人類を滅ぼして移住しようとするのは、もっと馬鹿です、間違っています。わたしたちは、科学的に思考を共有できるところまで文明が発達しています。でも、その思考共有は惑星間戦争の戦闘時の軍人にしか許されません。そして、知ったんです。テキサスとの戦闘で……」

 エルマの目が深い悲しみ色に変わった。

「いったい何を?」

「弟は、工作員として地球に送り込まれていました。温暖化のことだけに関わっていればいいはずなのに、あの子は関係のない戦争に参加して命を落としました。その情報が戦闘中の思考共有で伝わってきました。それまで、軍は弟の名でメールを送ってきていました。わたしが怪しまないために。その後暗黒星団の監視に回され、生命維持装置がもたなくなり、救難信号を発し続けましたが、グリンヘルドは無視しました」

「そこまで、グリンヘルドは無慈悲なのか……」

「グリンヘルドは、一本の大きな木なんです……そしてわたしは枯れかけた一枚の葉っぱ。枯れた葉は、そのまま散っていくのが定めです。木は、枯れ落ちていく葉っぱに愛情など持ちません。グリンヘルドの摂理です」

「そんなこと……」

「来るわ」

 不器用なわたしは、残ったもう一隻のロボット船に目を向けた。

「さような……」

 プシュ

 エルマがお別れの言葉を言い切る前に、ロボット船は一条のビームになってエルマの体を蒸発させた。直後、ロボット船は消えてなくなり、エルマの痕跡はシートに残った人型の窪み。それも、三人が驚いている数秒間で戻ってしまった。

「なんてことだ……」

 修一が呟いて、樟葉とトシは言葉も無かった。

 わたしには分かった。あのロボット船は、最後の力を振り絞ってエルマを弔ってやったんだ。

 きれいなままで残ったエルマをきれいなままで逝かせてやるために。

 わたしもボイジャーとして、ずっと宇宙を漂っていたから、機能を停止して……いわば死んだまま宇宙を漂うのは怖かったもの。

 でも、三人には話してやらない。時間をかけて、少しずつ分かっていけばいい。

 わたしは、記録と分析は得意だけども、お話するのは苦手だしね。

 

「監視船への照準完了」

「出力は50で」

「あんな船一隻なら10で十分だぞ」

 砲術長の天音が異を唱える。

「跡形も残したくないんだ」

「分かった、出力50……設定完了」


「テーッ!」

 

 三笠の光子砲は、エルマの船を完全に消滅させた。

 言わなくても、修一には通じるものがあったのかもしれない。

 


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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RE・かの世界この世界:014『あ あれ?』

2023-02-19 07:35:42 | 時かける少女

RE・

014『あ あれ?』   

 

 

 ……戻って来たのかと思った。

 

 だって、同じ鳥居の前だよ。

 時間は……たぶん昼? 

 鳥居も自分の影も真下にある。

 ……爽やか……南中したお日様に猛々しさはない、お日様を直に見ることなんてできないけど、イメージとしてはニコニコと穏やかに笑っている感じ。

 これは春か秋?

 社務所に戻って聞いてみれば、現在(いま)がいつなのか分かる……でも、なにか憚られる。

 もう少し観察してからでないと、うかつには動けないという気がする。

 

 鳥居の陰から周囲を観察。

 

 神社の前には昔からのお屋敷街、見慣れた百坪や五十坪ほどが落ち着いたたたずまいで並んでいる。

 五月か十月ごろの鳥居の前……てことは学校行かなきゃ……でも日曜で休みとか?

 スマホでカレンダーを見ようと思った……え、このポシェット?

 いつものリュックじゃなかった。肩から斜めに下げたポシェットと言っていい小ぶりのバッグ。

 一瞬ためらったけど、自分が下げているんだから自分のだろう。

 あれ?

 ざっくりワンピにちょっとルーズなカーディガン……自分のじゃない。

 ドキッとして顔を触る。

 ほんとは鏡で見た方がいいんだろうけど、とりあえず触った感触は自分だ。

 ポシェットを探ってみると、財布とハンカチとティッシュにもろもろ……スマホが無い。

 
 スマホが無いと、こんなに不安なものだとは思わなかった。

 
 落ち着け光子……家に戻ろうか? いや、もうちょっと考えた方がいい。

 チラチラと周囲に目を向ける。

 ちょっと違和感…………道路の両脇を走っている電線が頼りない…………あ、光ケーブルが無い!

 子どものころ、電線に並行して走っている黒いらせん状が気になってお父さんに聞いたことがある。

―― ああ、あれは光ケーブルだ。家のパソコンに繋がってるんだよ ――

 そう教えてもらって、ひどく感心したことがある。

 
 ひょっとして昔にもどった?

 
 財布の中を確かめる、一万円札が二枚に千円札が……あれ? 夏目漱石だったっけ?

 カードとかも変だ、なにこれ……テレホンカード?

 
 落ち着け。

 
 もう一度周囲を観察……振り返って神社の境内。

 あ、あれ?

 拝殿の脇にはポールがあって日の丸が掛かっているんだけど、その日の丸がおかしい。

 風にゆったり翻ったそれは、赤地に白丸……!?      

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
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せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』

2023-02-18 11:30:05 | ノベル

・388

『おお、これが雛人形か!』さくら   

 

 

 来週から学年末試験。せやさかい、こんなことしてる場合やないねんけど。

 

「おお、これが雛人形か!」

 本堂に入るなり、ソニーが感嘆の声を上げた。

「やっぱり、昔の人がやると飾りつけも違うわねえ!」

 留美ちゃんもカバンを下ろすのを忘れて感動。

「こんな間近で見るのは初めて!」

 先週ペコちゃんとこで巫女服着でお神楽やった時と同じくらい感動のメグリン。

 

 今年は、檀家のお婆ちゃんらが飾りつけをやってくれた。

 なんでかいうと、一昨年飾りつけをやったとき、実は、いろいろミスしてたらしい。

 それでも婦人部のお婆ちゃんらは、今どきの子ぉらがお雛さんを大事にしてるいうことだけで感動してくれた。

 去年は流行り病でお雛さんどころやなかったしね。

 うちには、詩(ことは)ちゃんのと、お母さんのと二組のお雛さんがある。

 二年前は、本堂と部室(本堂裏の座敷)に分けて飾ったんやけど、田中のお婆ちゃんの提案で二組とも本堂で飾って大勢の人に見てもらうことになった。

 

「婦人部で見本やったげるさかい、もう一つをあんたらでやってみい」

 

 ということで、テスト前や言うのに、お仲間そろって本堂に集合!

「うちは、雛祭りは、お内裏様の色紙を出すだけだった」

「軍人の家は転勤が多いから、大げさなことはできないんだろう」

「うん。でも端午の節句は鎧を出してた」

「鎧! 本物か!?」

「あ、たぶん。お祖父ちゃんが送ってきたの」

「メグリンは武士の家系か!?」

「どうだろ、熊本の農家だよ」

「熊本といえば肥後の国、肥後の国と言えば加藤清正ではないか!」

「あはは、清正公とは関係ないよ」

「謙遜するな、清正に公の尊称を付けるのは、武門の血筋であるからだろ!」

「あ、熊本じゃ誰でも清正公って云うし(^_^;)」

 なんか、マニアックなノリやけど、あっという間に雛壇を完成させるソニーとメグリン。

「うん、野戦のテント張りみたいで感嘆だったぞ」

「問題は、これからだよね……」

 箱から出したお雛さんたちと、出来あがっている雛飾りを見比べる留美ちゃん。

「キングとクィーンの並べ方は欧米と変わらんのだなあ」

 なるほど、お内裏さんはキングとクィーンか。

「明治のころまでは逆やってんでぇ、大正天皇が結婚式で西洋風にしはったんで変わったいう話やで」

「へえ、そうなんだ」

「あ、なに、その『さくらにしては』的な驚きの顔は(^_^;)」

「ん……この侍女、変だぞ?」

「さすがソニー、気ぃついたんや」

「眉毛が無いし、口の中が真っ黒だぞ……あ、こっちは侍女が一人足りんぞ」

「ああ、それは三方さんて云うて……」

 三人官女と、それにまつわる我が家の事情(125~127『お雛さん』)を説明する。

「そうか、それぞれの家にドラマがあるんだなあ」

 いや、ソニーの家ほどやないと思うよ。ソニーの家は魔法使いの家系やし。

 

「やあ、あんたら、もう来てたんやなあ(^▽^)」

 

 田中のお婆ちゃんがテイ兄ちゃんを従えてやってきた。

「あ、お婆ちゃん」

「田中さんがネットオークションで競り落としてくれはったんや、ほら、開けてみい」

「え、どれどれぇ?」

 テイ兄ちゃんが持ってきた桐の箱には三方さんが入ってた!

「ちょうど、この三方さん一人だけ云うのんが出ててなあ。焼き芋焼きながらポチったら、他に入札してる人もおらんでなあ、まんまとゲットしたんや。まあ、教えてくれたのはテイぼんやけどなあ」

「あ、それナイショですがなあ(^0^;)」

「戦前の優月の品物らしいわ、歌おばちゃんのも優月やさかい、ピッタリやろ」

「さっそく、並べたげぇ」

「ありがとう、お婆ちゃん!」

「……おお、留美とさくらを従えたメグリンみたいだぞ!」

 ソニーが感動。

「あ、そんな、わたし……」

 三方は、他の官女よりもワンサイズ大きいみたいで、ちょっと面白い。真っ赤に照れるメグリンも可愛い。

 

「田中さん、忘れ物、忘れ物」

 

 鈴木のお婆ちゃんがレジ袋ぶら下げてやってくる。

「あ、せや。お雛さんで気ぃせいてしもて、肝心なもん忘れてた!」

 お婆ちゃんが忘れてたのは焼き芋。

 お婆ちゃんは米屋さんやけど、夏以外は焼き芋もやってて、時どきご馳走になってた。

 高校に入って、お店の前通らんようになってご無沙汰やったし。

 懐かしく、みんなで焼き芋頂きながらテイ兄ちゃんがカメラで撮って、たちまちのうちにヤマセンブルグとスカイプ。

 テイ兄ちゃんは、ハナから、その狙いでお婆ちゃんを焚きつけてたみたい。

 まあ、ええけどね。

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

 

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宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

2023-02-18 08:34:35 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

29[グリンヘルドの遭難船・2] 樟葉  

 

 


 遭難船の女性クルーは衰弱死寸前だった。

 と言って、見たは目は健康な女性がうたた寝をしているようで、とてもそうは見えない。

―― 残った生命エネルギーを、外形の維持にだけ使っていたようです ――

 スキャンした彼女のデータを送るとクレアから答えがトシといっしょに返ってきた。

「なんで、トシが来てるんだよ?」

「クレアさんの意見で、三笠から携帯エネルギーコアを持ってきました。これを船の生命維持装置に取り付けて、この女の人を助けたらってことで。オレ、一応三笠のメカニックだから」

「でも、グリンヘルドの船の中なんて、初めてでしょ。トシにできるの?」

「フィフスの力で……うん、なんとかなりそう」

 トシは目をつぶって、調査船のメインCPとコンタクトをとり、船体の構造概念を知った。

「トシ、ツールも何にも無しで、CPとコンタクトできたのかよ!?」

 俺も樟葉も驚いた。

「ナンノ・ヨーダの訓練はダテじゃないみたいだよ。それぞれが持っていた能力を何十倍にもインフレーションにしてくれたみたい。とりあえず作業に入るよ」

 トシは、自分のバイクを修理するような手馴れた様子でエネルギーコアを船の生命維持装置に取り付け、グリンヘルド人に適合するように変換した。

 やがて、ただ一人の女性クルーは昼寝から目覚めたように、小さなあくび一つして覚醒した。

「おお、大したもんだな!」

「それもそうだけど、この人のリジェネ能力がすごいんだよ」

「まずは挨拶よ。えと、こんにちは、救難信号を受けてやってきました……」

「三笠のみなさんですね。助けていただいてありがとうございました。わたし、グリンヘルド調査船隊の司令のエルマ少佐です。もっとも、この船隊の人間は、わたし一人ですけど。あとの二隻はロボット船。あの二隻が救難信号を……あの二隻は、もう回復しないところまで、エネルギーを使い果たしたようです」

「ボクが直しましょうか?」

「もう無理です。アナライズしてもらえば分かりますけど、あの二隻は、もうガランドーです。すべての装置と機能をエネルギーに変換して、わたしの船を助けてくれたようです……ほら」

 片方のロボット艦は、最後の力を振り絞るようにブルっと震えると、陽に晒された氷細工のように霧消してしまった。もう一隻も昼間の月のように頼りなくなってきた。

「なんで、ここから外が見えてるんだ?」

「シールドが組成を維持できなくなって……質量比……1/100……負担の軽いアクリルみたいなのに変換したんだ」

 アナライズしながらトシが感動する。

 三笠から照射されるサーチビームが照明に変換され、船内は懐かし色に染まっていく。

 コチ コチ コチ……

「なんの音?」

「この船も崩壊が始まってるんです、せめてもの雰囲気……あなたがたのイメージに合わせて変換……合っているかしら……」

 ああ……!

 いっぺんにイメージが湧き上がった。

 これは、小学校の音楽で聴いた『おじいさんの時計』のイメージだ。

 悲しくって、でも暖かくって―― でも いまは もう 動かない おじいさんの時計 ――のところでは、樟葉は目に一杯涙を浮かべていたっけ。

「グリンヘルドは救援にこられなかったの?」

 指の背中で目を拭って、樟葉が聞く。

「わたしは、数億個の細胞の一つみたいなものだから、救難する労力を惜しんだみたいです……」

「つまり、切り捨てられた?」

「全体の機能維持のためにはね……それがグリンヘルド。さっそくだけど、お伝えしたいことがあります」

「もう少し、休んでからでも」

 トシがパラメーターを見ながら言った。

「見かけほど、わたしの機能は万全じゃないのです。いつ停止してもおかしくない。地球人の感覚で言えば、わたしは120歳くらいの生命力しかありません。時間を無駄にしたくないのです」

 三笠の三人は、エルマの意志を尊重した。

「……地球の人類は、あと百年ほどしか持ちません。地球の寒冷化は進んでいるのに、温暖化への対策しかしていません」

「ああ、温暖化は今や世界のエコ利権になっているからな」

「だから、あたしたちが、ピレウスに寒冷化防止装置を取りにいくところ」

「グリンヘルドもシュトルハーヘンも、寒冷化で人類の力が衰えて、抵抗力が無くなったところに植民するつもりなんです」

「だいたい、そんなところだろうと、オレたちも思ってる」

「グリンヘルドの実態を、三笠のみなさんに知っていただきたいのです」


 そう言うと、エルマの姿がバグったように、若い姿と老婆の姿にカットバックした。


「すみません、エネルギーコアを、もう少しだけ充填していただけないかしら。わたしの命は間もなく切れます。今の姿のまま逝きたいんです」

「なんなら、三笠の動力から直接エネルギーが充填できるようにしようか? 接舷すれば直接送れる」

「艦長、エルマさんの体は、もうそんな大量のエネルギーを受け付けられないところまで来てるよ」

「トシさんの言う通りです。あと少しお話しが出来ればいいんです」

「それなら、三笠のCPに情報を送ってもらった方が。少しでもエルマさんが助かる努力がしたいわ!」

 樟葉らしい前向きな意見だ。

「いいえ、情報はただの記号です。直に話すこと……人の言葉で伝えることが重要なんです……」

「トシ、急いで携帯のエネルギーコアを!」


「大丈夫、あたしが持ってきました」


 クレアが、携帯エネルギーコアを持って、調査船のブリッジに現れた。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長 ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長

 

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