あのコルトを狙え

TOKYO2020 子供たちに負債を(笑)

煙草と燐寸

2005-06-27 14:05:05 | Weblog
『あれ?彩雲さん、タバコ吸うんですか?』

職場などでたまに飲み会がある時言われる事がある。

「え?ああ、うん・・。たまにね。」

普段煙草を吸わない人が煙草を吸う姿は珍しく注目される。
なぜか恥ずかしくなりながらもシワだらけになったソフトパッケージから煙草を抜き出して
口に咥える。

「前は普通に吸っていたんけどね。いや、辞めたつもりはないんだ、今は飲んだ時と旅に出た時位しか吸わなくなっちゃた。滅多に吸わないからすぐボロボロになってさ。」

シワだらけに折れ曲がってしまった煙草の理由を聞かれてもいないのに説明する。
かばんからマッチを出した時、次ぎに来る反応も慣れた。

『今時、マッチですか(笑)?オッサンくさいな~(笑)でも彩雲さんらしいですね』

毎日吸っていた頃は主にZippoだった。オイルライター特有の炎の匂いも好きだ。
飲みに行く前にZippoにするかマッチにするか迷う。

「うるさいよ(笑)」と言いながらマッチを擦り板で弾く(はじく)。
擦ってしまうとカマドに火でも点けるようなのでそれこそオッサンくさくなってしまう。

パシュ!

マッチの頭が小さく明るくなり瞬時に炎が広がっていく。
硫黄のツンとくる匂いが鼻を刺激する。この時に煙草に火を着けてしまう人もいるが
燐(りん)の匂いと煙草の味が混じってしまうので一呼吸置き軸木に燃え移ってから
煙草の先端に火を移す。僅かな木の匂い、細かく刻んだ煙草の葉とそれを包む薄い紙が燃える瞬間

その瞬間がたまらないのだ。

『旨そうに吸いますね。普段、吸いたいと思わないんですか?』
私の職場では普段タバコを吸わないのは上司のマネージャーだけだ。
あれだけ吸っていたのに普段は全く吸いたいとも思わない。

それでも酒を飲んだ時の一服と旅へ出た時に吸う味は別物と思っている。
去年、北海道へ旅した時は二日で一箱を吸っていた。

私が煙草を吸う時は親指と人差し指で摘むように持つ。
『珍しい持ち方ですね(笑)』
普通は人差し指と中指で吸うようで、そのオッサン臭い吸い方も後輩には奇異に写るようだ。
「…放っといてくれ(笑)!」
深く吸い込み煙でため息を隠すようにはいた。



日曜日の日経新聞「文化」欄に作家・演出家の久世 光彦(くぜ・てるひこ)さんが
「燐寸抄」というタイトルで「マッチ」について書かれていた。
煙草をマッチで擦る思いに通ずるものがあり読んでいて深い感銘を受け自分の想いを書いてみました。
久世さんは終わりをこのように結んでおられました。


「煙草とマッチは男のいる風景には欠かせない小道具だと私は思っている。
男の憂い顔には、マッチの火がよく似合う。薄闇の中に、燐の匂いに眉根を寄せた男の顔が、
束の間ぼんやり浮かび上がるシーンを撮りたくて、私はこの商売をやっているようなものだ。
-男の色気は、煙草と燐寸である。」 日経新聞6月26日より引用

久しぶりに煙草を吸ってみたくなった。



コメント (4)
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