雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

哀しくも優しい物語

2016-03-28 21:28:31 | ことの葉散歩道

 哀しくも優しい物語
                ことの葉散歩道№26

 雁風呂 (雁供養)

       ※ 伝承 伝説

 津軽半島の東側、
陸奥湾に沿って海岸線を南北に伸びる道路がある。
280号線・松前街道だ。
陸奥湾に沿って走る松前街道付近は今でも辺鄙なところだ。
蟹田川が流れ込む辺りを外ヶ浜という。
この海岸沿いの外ヶ浜地方に哀しい物語が伝えられている。


 青森県津軽の外ヶ浜地方に秋になると渡り鳥の「雁」が飛んできます。
丁度、秋分の日、早めの秋がこの地方を訪れるころ
北の国から海を早めの秋がこの地方を訪れる頃
北の国から海を渡って「雁」が飛んで来ます。
彼らは長い海上の旅を、
疲れた羽を休めるために木片を咥えて飛行します。
たゆたう波の上に木片を浮かべてひと時の休憩をする。
命を賭けた旅なのだ。
そして、海岸に着くと木片を落としていきます。

 次の年の春が訪れるころ、
丁度、春彼岸の春分の日のころ、
彼らは生まれ故郷の北の国に帰っていきます。
鳥たちの北帰行の始まりです。

 その時彼らは咥えてきた木片を再び咥えて飛び立ちます。

 彼らが飛び立った後、
例年のことながらいくつかの木片が残されています。
日本にいる間に、捕らえられたり、病気になったりして、
死んでしまって帰れなくなってしまった雁の数だけ、
木片が残されていると考えられています。

 外ヶ浜地方の人々は、
残された木片を集めて、
命を落とした雁を哀れんで、
風呂を焚き入浴しながら失われた雁の命を愛おしむ。
雁風呂と言ういわれだ。
雁供養ともいう。

外ヶ浜に住む人々の優しい心遣いが伝わる伝承だ。

 だが、雁の渡航には、こうした習性はないということです。

雁風呂や海あるる日はたかぬなり  高浜虚子

雁風呂やほの暮れ方を浪さはぐ   豊長(とよなが)みのる

 エネルギー革命は、
石油、電気と進化し、
風呂の水くみも、薪をくべて風呂を焚くこともなくなり、
スイッチ一つで事足りるようになった。
「雁風呂」の話を聞くと、失われてしまった風習が懐かしく思い出されます。
                              (2016.3.28記)

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2 コメント

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雁風呂、雁供養・・・ (みやび)
2016-03-29 06:11:55
初めて聞くことばです。
古き良き日本人の心が表れていますね・・・

雨あがりのペイブメントさんの文章は、
内容も言葉も、
静かで温かでちょっと切なくて、
いつも心地よく胸にしみます。
ありがとうございます
返信する
うつくしい日本の言葉 (雨あがりのペイブメント)
2016-03-29 11:17:12
 みやびさん、ありがとうございます。
古い日本の言葉は、社会が進歩し、
生活習慣などが変化していくにつれて、変わっていったり、滅びてしまったりしていきますね。
 死語になってしまった言葉を
無理に使用することはないけれど、
その言葉が本来持っていた、情緒的な雰囲気は大切にしたいと思っています。
 だから、「保育園落ちた 日本死ね!!!」みたいな乱暴な言葉遣いには、違和感を持ってしまいます。
 心のひだが共鳴し、感動するとき
その言葉はとても生き生きと活動していることに気づきます。

 みやびさんのコメントがとても励みになりました。
今後ともよろしくお願いします。

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