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『真理の探究』
開口部からは海と空/水平線が見える。室内には巨大化した魚が直立している。
真理とは何だったろう。嘘のないこと、永遠不滅の真実・・・では魚が直立している図などは真っ先に否定されるものであって、自然の理を著しく外している。
有り得ない光景を指して『真理の探究』という。
そういうことなのだろうか・・・。つまり《真理は有り得ない》という結論を提示しているのかもしれない。
人、あるいは信仰の基本は『真理の探究』であって、神そのものが真理なのではないかという解答もある。
この作品において、不滅と思われる真理は、海と空の境界があるという地球物理の真理である。しかし、そのことですら・・・本当に不滅なのかといえば、超未来における地球の存在そのものが疑われる。
真理と思われる情景ですら懐疑に揺れることがある。
魚が巨大化し直立するなど考えられないということは、大いなる捏造であって虚偽である。
(逆も真なり)と言うが、この場合はもちろん当てはまるものではない。
この突飛な現象を描いて『真理の探究』と名づく。
日夜真理の探究に明け暮れているが、真理そのものが曖昧であり、探求の範疇からはみ出してしまう。マグリットはついにこの形をもって『真理の探究』の不確定さを明示したのではないか。
(写真は国立新美術館『マウリッと』展・図録より)
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