続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『ガラスの鍵』

2022-04-26 06:41:56 | 美術ノート

   『ガラスの鍵』

 草木も生えないあ標高の尾根に巨岩石が乗っている。どこから落下してきたのだろう。地上に重力の通用しない領域はない。
 浮上、あるいは岩石が尾根の稜線に育つなどと言うことはあり得ない。非現実、空想の域である。

 物理的に叶わないことも精神界では許容される、自由であり解放区と呼んでもいいかもしれない。その接線を解く鍵は見えないし、瞬時、打ち消されるに違いない。
 神がかり的な設定はあくまで個人的なものであり、共有はない。しかし、それを作品として提示することで共感は得られる。
 分かり得たもの同士の約束、結びつきは世界に対する慟哭にも似た叫び、高揚感である。この峡谷から見上げた恐怖は、死や終末をも呼び起こし正常さを失う激震に襲われる。
 しかし、作品は二次元の創作に過ぎず手の中にある。鑑賞は非現実に対し鷹揚に受け入れられる。
 神がかり的な世界は絵空事であり、それを身に引き受けるか否かは自由である。神への信奉、この隔たりにある時空を解く鍵の有無は見えない。

 写真は『マグリット』展・図録より


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