続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『アルンハイムの地所』

2018-09-25 06:58:01 | 美術ノート

   『アルンハイムの地所』

 翼を広げた鷲の形をした山、星空に南中の二十六日の月、手前には三つの卵…。
 三日月と鷲の頭部と三つの卵は直線状にある。

 南中の二十六日の月が見える時刻は真昼であり、星空の夜間ではない。
 翼を広げた鷲は、あくまで山であり鷲に見えるだけである。
 巣に入った三つの卵、鳥が人工的な煉瓦の上に巣をつくり卵を生むことなど皆無である。

 この三つの虚偽をつなげた空論に答えはあるのだろうか。

《まず否定ありき》の中から見出す真実・・・非現実をあたかも現実のように描くことの作為。
 決して存在することのない景色…しいて言えば神の領域であり、永遠に見ることの叶わない光景は願望ですらある。

 南中の二十六日の月は《時間の否定》
 翼を広げた鷲の形は《質の変換/質の否定》
 三つの卵は《場所・状況の否定》

 要するに、現実空間を全面拒否した架空の創造世界の現出であり、宣言、宣誓である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


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