『アルンハイムの地所』
翼を広げた鷲の形をした山、星空に南中の二十六日の月、手前には三つの卵…。
三日月と鷲の頭部と三つの卵は直線状にある。
南中の二十六日の月が見える時刻は真昼であり、星空の夜間ではない。
翼を広げた鷲は、あくまで山であり鷲に見えるだけである。
巣に入った三つの卵、鳥が人工的な煉瓦の上に巣をつくり卵を生むことなど皆無である。
この三つの虚偽をつなげた空論に答えはあるのだろうか。
《まず否定ありき》の中から見出す真実・・・非現実をあたかも現実のように描くことの作為。
決して存在することのない景色…しいて言えば神の領域であり、永遠に見ることの叶わない光景は願望ですらある。
南中の二十六日の月は《時間の否定》
翼を広げた鷲の形は《質の変換/質の否定》
三つの卵は《場所・状況の否定》
要するに、現実空間を全面拒否した架空の創造世界の現出であり、宣言、宣誓である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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