グロリアス
画・江嵜 健一郎
例の更地へご機嫌伺いに出かけた。主な目的は下草取りである。
先日は桔梗の花を描いた。彼女が描いてとウインクしていたように
思えて夢中でスケッチした。帰宅して彩色した。午前1時過ぎまで
根詰めて描いた。
翌日、友だちから「実は。。。」で始まるメールが届いた。
闘病中だった友達のお嬢様が亡くなったという悲しい知らせだった。
翌日、簡易包装だったが絵を額に入れ取るものとりあえず
お供えとして送った。ご霊前に供えていただいた様子が
写メールで届いた。
虫の知らせという言葉がある。あの夜、娘さんに描かせてもらった
絵に違いないと思っている。
人にはそれぞれ出会いがある。花ともそれぞれ出会いがある。
いつまで花づくりが続けられるか怪しい。そのことを
知ってか知らずか、今年はことのほかどの花も元気がいい。
草取りをしていると、わたしも描いてとグロリアスが声を
かけてきたような気がした。あいにく雨が降り出した。
一本鋏をいれて持ち帰り家で彩色した。
花は野に置け蓮華草ということばがある。花の本心は鋏をいれてほしく
無かったのかもしれない。なにかしら、描くほどに花がどんどん
身を固くしていくような感じがして、悲しかった。(了)