「怒りと屈辱に震えるギリシャ国民」というタイトルで、SteliosBouras記者のアテネ発レポートを、5日付けのWSJ紙日本版で紹介していた。「多大な負債を積み重ねて来た政治家は、やり方を変えていない。彼らは、自分たちのことしか考えていない」と33歳のコンサルタントをしている女性は語ったと記事を結んでいた。
多国籍ケーブル企業でマーケットディレクターを務める46歳のアポストロス・デンノリノスは外国人の同僚からギリシャ救済策が他国の増税者にどれほど多くの負担を掛けているかを聞かされる。「まるでわたしのせいであるかのように質問される。権力に飢えた素人政治家がギリシャをここまで情けない状況に追い込んだことについて、恥ずかしくもあるし、腹も立ってくる。戸惑いもある。」と紹介する。
25歳のデザイナー、ステファ二ア・フランジスタさんは「2大政党である全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と新民主主義党(ND)のいずれも信じていない。どちらの指導者も安心感を与えてくれない。」「私自身も含めてみんなキャッシュフロ―が厳しくなっている。このせいで不安感が高まっている。輸出をあてに出来る人はずっと楽。外国の顧客は支払い面で信頼できるし、期限を守るからだ。仕事で一番大切なのは、どの顧客が代金を払ってくれるかわからないことだ。」と答えていた。
6日朝放送の「ワールドWaveMorning」では、ドイツZDF,フランスF2、英BBCいずれもG20でイタリア財政を監視すること、そのために3月に一度IMFが財政状態を検査することなどが決まったと紹介していた。イタリア財政の先行き懸念からイタリア国債が急落、利払いが6%を超えた。ドイツの銀行もフランスの銀行も数千億ユーロのイタリア国債を保有している。その額はギリシャの比でない。イタリアのデフォルトを食いとめなければEFSF(欧州金融安定化基金)1兆ユーロでは簡単に底をつくことがはっきりしている。
一方、ドイツZDFは、ドイツが予想外の税収増加となり、ドイツ連邦議会で、減税案がも浮上している。ただ、レスラー財務相は「ドイツ経済の先行きは厳しい。雇用確保のために手許に資金を残しておきたい」などと語ったと紹介していた。「ドイツ政府は税収増加を期待している」と6日付けのWSJ紙電子版も伝えていた。ドイツは、ギリシャに限らず他国にお金を貸し、ギリシャに限らず欧州の多くの国はドイツから借りたお金でドイツ製品をせっせと買わせた。それらの国の国債が紙くずになればドイツに当然跳ね返ってくる。
旧聞に属するが、4日のNY株式市場は、NYダウは前日比61ドル安、11,983ドルで取引を終了した。10月米雇用統計が発表されたが、雇用が約8万増えて失業率が9.0%へ0.1ポイント減った。しかし、9%と失業率が高止まりしていることで、景気回復の緩慢さが確認されたと「ワールドWaveMorning」(経済情報)で解説していた。NY外国為替市場では、1ドル=78.23円、1ユーロ=107.91円デ取引された。NY原油(WTI)はバレル19セント高、94.26ドル、NY金先物は、トロイオンス8.90ドル安、1,755.30ドルへ3日振りに反落した。
冒頭のWSJ紙日本版記事に戻る。読んでいていずこも同じ秋の夕暮れ。政治家は自分たちのことしか考えていないことを改めて教えてくれた。手許に現金がないと不安になる。アメリカが今一つ元気が出ないのは失業率が高止まりしているからだ。日本では第一に原発不安である。自分のお孫さんや娘さんが、放射能を心配しながら子育てを強いられる生活を一度でいいから想像して欲しい。問題山積のギリシャには放射能不安はない。日本には放射能不安がある。日本の政治家は放射能不安を払拭するために全身全霊を投げ打って欲しい。(了)