スクレラ分析のことを「スクレオロジー」とも言いますが、スクレオロジーとは、スクレラ(白目)のオロジー(科学とか学問)という意味になるので、僕の中に「果して科学と言えるのか?」という疑問があり、「スクレオロジー」という単語は使いますが、本のタイトルとしては避けたかったのです。
その考え方を知ってもらうために、少しだけ僕の話と、出版までの経緯を説明させてください。
僕は20代後半から鍼灸業界に入ってきたのですが、学生時代は学校でいつも寝ていました。
そして、期末にはいつも出席日数不足で担任の教師に呼び出されていました。
鍼灸学校卒業と同時に開業したのですが、鍼灸学校に行く前から整体や食事療法の講演活動をしていたので、卒業後はさらに精力的に地方での講演や講習活動を行いました。
そのために肝心な自分の治療院は留守が多く、患者さんは殆ど来ませんでした。
しかし、講演会場では、即効的に、その場で受講者の症状を治めなければなりません。
ですから必然的に即効的な治療を勉強することになりました。
最初は、「この病気はこのツボで治る!」みたいな本から始めましたが、すぐに飽きてしまいました。
理由は、治らない場合も多いということと、理論的に説明できないことで、治療法を暗記して治療するしかなかったわけです。
そうなると、国語や社会の勉強と一緒で、覚えるだけの能力になり、全くおもしろくありません。
というのは、小学校の時から、覚えるだけの勉強というのは好きではなかったからです。
そして理論書に目を向けるようになったのですが、その頃は、まだ中医学が盛んではなかったので、とりあえず東洋医学や経絡治療の入門書のような本を読んでいました。
そのような本を読んでいたら、「?????」というのがいくつかあり、その疑問を解く本を探してみたのですが、そのような本と出合うことはありませんでした。
そうこうしている内に、中国から送られてくる『人民日報』という月刊誌に巨鍼療法のことが載っていて、その記事をきっかけに黒龍江省斉斉哈爾(こくりゅうこうしょうちちはる)に巨鍼を習いにいきました。
その頃の中国は、「解放された」と言われていても、湾岸地域だけで、奥地の斉斉哈爾などは人民政府の許可がなければ入れない状況でした。
いろいろ困難はあったのですが、何とか巨鍼療法の技術を教えてもらい、巨鍼を日本に持ち帰ることができたのは幸せだったと思います。
そして、巨鍼療法で臨床を始めたのですが、臨床を始めて鍼灸古典の理不尽さに気が付いたのです。
最初に気付いた理不尽は、「督脈は上から下に流れる」ということでした。
鍼灸学校では今も「督脈は下から上に流れる」と教えています。
学校関係では、経絡の流れを証明したり検証したりする方法は未だに考えられてないようです。
それらの方法があるとすれば、拙著『人体惑星試論奥義書』ぐらいなものだと思います。
そこで、「督脈が上から下に流れる」ということを証明するためにはどうすればいいのか、といろいろな本を読みながら、長年考え、何度もいろいろな実験をしてきました。
最初は仮説を立てることもできなかったのですが、今までの治療経験からの勘で、「こうではないか?」と思うことがあれば、それを実験しながら考えていきました。
おもしろいことには、そのような実験をしている間には、いろいろなテクニックを発見し、理論も「枝葉」だけなら説明できるようになりました。
その枝葉の理論と即効的な治療テクニックを持って、何度も中国に出かけている間に、本に書かれてない鍼灸の診断と治療の概要がうっすらとわかってくるようになりました。
その答えは意外にも、鍼灸理論は一貫性があるように思われるのですが、実はそれぞれが独立していたのです。
そこで、「これでは現代医学を整合しようとしても無理だ!」と考え始め、一貫性のある理論を追求していきました。
そのようなことを考えているときに、虹彩学に出合い、「これなら現代医学と整合できる何かが見つかるかも知れない」と思い大急ぎで研究に没頭しました。
そして、ちょうどそのころ、医学部の助教授が主催する医学研究会の役員になることができ、その研究会での活動が始まりました。
その頃は、僕たち夫婦も含めると18人のスタッフで治療院を運営していたので、研究はなかなか進まないし、スタッフからは「鍼灸以外の研究を止めてほしい」という意見も出てきて、苦しい時代を迎えたのですが、スタッフのことを考えると、そのように意見するのは当然だろうと思い、規模を縮小することにしました。
そして規模を縮小したものの、虹彩の記事をホームページやブログに頻繁に書いていましたので、国内外からの問い合わせもあり、中には僕のホームページを使って詐欺をした人もいて、余計な時間を取られたこともありました。
さらに、僕に無断で自分のホームページや撮影器械に、僕の虹彩マップを使っている会社もあり、弁護士を頼んで削除させたこともありました。
ひどいと思ったのは中国広州の業者で、僕のホームページを、まったくそのまま、日本語のままコピーして自社のホームページに載せて、いかにも関係会社のように宣伝されていたことです。
そんなこんなもありましたが、オーストラリアから訪ねてきた方が、「スクレオロジーもおもしろいですよ!」と話してくれ、それがきっかけで、彼がオーストラリアに帰った後もメールでやり取りをしていました。
そして、いよいよオーストラリアに行くことになったのです。
オーストラリアでは、アメリカのスクレオロジーで有名な、Dr.ジャック・ディップのテキストをコピーさせてもらったり、いろいろな資料を分けてくれましたので、それから本格的にスクレオロジーの研究を始めることになりました。
そして本格的にスクレオロジーの研究に入ったのですが、これも虹彩学と一緒で、患者さんが訴える症状と、分析結果とが合わないのには面喰いました。
つまり、患者さんの訴える症状と分析マップで分析した結果が一致しないのです。
そこで、しかたなく「東洋医学理論によるスクレラマップ」を作ることにしたのですが、これもまた時間のかかる仕事でした。
時間がかかったのは、分析と同時に、即、鍼灸治療ができるようにしたからですが、それが後に有利になりました。。
この分析マップを使うと、鍼灸治療だけでなく、漢方、アロマ、栄養学、ストレッチ、カキラ、その他の徒手繚法にも応用できたからです。
治療が栄養学主体の欧米方式とは応用範囲が違ってきたわけです。
スクレオロジーの展望はと言いますと、日本で僕が開催した「スクレオロジー講習会」では、鍼灸大学の講師や鍼灸学校の専任教師が何人か入ってくれましたし、僕も鍼灸教員養成学科の授業でスクレオロジーを教えていますので、徐々に東洋医学関係に普及されていくものと考えています。
それでどうなるのか?
スクレオロジーは写真を使います。
その写真をマップに照らし合わせて臓腑の盛衰を判断するわけですから、患者さんがどこにいても、写真を送ってもらえば同じような診断ができるわけで、本書に書かれた治療法を参考にすると、遠隔治療も可能になるわけです。
これは今までの東洋医学ではできないことです。
それは、東洋医学の四診(望、聞、問、切)は、どちらかというと、主観的な診断になるからです。
つまり、誰が診断したかによって治療法が違ってくるのです。
しかしスクレラ分析は客観的診断になるので、誰が分析しても、だいたい同じような分析になりますので、分析結果に従って治療をすれば、だいたい同じような治療ができるわけです。
ここまで読むと、皆さんは疑問に思うことがあるはずです。
この本は、2年前に脱稿していたのに、なぜ? 今まで出版しなかったのかと。
第一の理由に挙げたいのは、史実を書くなら「過去」という確実な裏付けがありますが、こういう診断や治療に関しては、確実な裏付けというのがないのです。
西洋医学であれ、東洋医学であれ、です。
ですから、分析の精度を高めるためには時間が必要だったのです。
第二の理由に挙げたいのは、スクレオロジーを少しかじって、それを物品販売のスキルにされるのが嫌だと考えたことです。
スクレオロジーは使い方によって、宗教の勧誘にも、物品販売のスキルにも使えるからです。
しかも高価な器材も必要ないので、誰でもすぐにできてしまいます。
第三の理由に挙げたいのは、スクレオロジーに対する熱が冷めるのを待っていたことです。
何でも最初というのは熱があるものですが、時間とともに熱は冷めてきます。
その熱の冷めた状態でも、まだスクレオロジーを追い続ける人が本物だと考えているわけで、そういう人を探すのに時間が必要だったのです。
もうおわかりだと思いますが、この本を手にする人は、熱心にスクレオロジーを学び、スクレオロジーを後世に伝えることのできる人だと考えているわけです。
つまり、「流行りモノ」の技術にはしたくないと考えたわけです。
これを陰陽原理で説きますと、「山高ければ谷深し」で、急激に伸びるテクニックは、急激に墜落していくということです。
スクレオロジーは、そうあって欲しくないわけです。
ここまで読んでくれた皆さんへのお礼として、本書の内容を少し紹介することにします。
序章 変化する目
白目に現れた血管は、たいていの人が急には変化しないと考えています。
しかし、悲しくなったり、うれしくなったりした場合に目が赤くなるのを知っています。
序章では、実例を示しながらスクレラの変化を説明しますが、スクレラと繋がる虹彩が変化した実例も示してありますので、「目は変わるんだ」ということを実感してください。
第一章 七星論とスクレオロジー
本書での治療方法は、主に「七星論」で書いてあります。
七星論は検証のできる理論と実技で組み立てられているからですが、学びやすいという利点もあります。
そして、「このツボでダメなら、このツボ」という応用の利くのが七星論だからです。つまり、一つの理論やテクニックに捉われることがないからです。
簡単に説明しますと、七星論では身体各部が全てが七星に分けられています。
1. 七星に分けた頭部
2. 七星に分けた脊椎
3. 七星に分けた腹部
4. 七星に分けた胸腹部
5. 七星に分けた関節
6. 七星に分けた上肢・下肢
7. 七星に分けた足裏
8. 七星に分けた表情筋
9. 七星に分けた顔面
10. 七星に分けた唇
11. 七星に分けた歯
そして、七星に分けた虹彩や強膜
第二章 スクレオロジー
ここでは、スクレラの構造や機能などを説明して、どのようなことが観察できるかを説明してから、東西のスクレオロジーの歴史を解説しています。
また、スクレラの撮影方法や、スクレラマップが始めて登場してきます。
そして、おそらく皆さんも疑問に思うだろうと思われることを、スクレオロジー講習の参加者からの質問に答えるように説明していますので、ここを読むと、皆さんの疑問が一気に解決されるものと思われます。
第三章 基本的な分析
ここからは具体的な分析方法について説明していきますが、スクレオロジーでは主に以下のような点に注意しながら観ていきます。
①スクレラの色を、白、青、黄で分類
②スクレラ上にジェルや異物のようなものがないかを観る
③線の走る角度を観て角度で関連器官を想定
④線の分岐や通過点や到達点を円で分割して関連器官を想定
⑤線は一次か二次か、あるいは単一線か分岐線かを観る
⑥線の長短を観る(線の長さ)
⑦線の厚さと薄さを観る(線の厚さ)
⑧線の深浅を観る(鮮明か色あせか)
⑨線の形はカーブか直線か平行線か角度を持つのかを観る
⑩線の出発地点と方向と到達地点を観る
⑪線と虹彩との関係を観る
ここで実際のスクレラサンプルを写真で解説していきますので、この章だけでも簡単な分析ができるようになります。
第四章 反射区ごとの分析
この章は、最もページ数を割いたところで、宙(任脈・督脈)に始まり、水(腎・膀胱)、金(肺・大腸)、地(心包・三焦)、火(心・小腸)、木(肝・胆)、土(脾・胃)の順に例を示しながら分析方法を解説してあります。
また、この章は臨床でも使えるように、分析と同時に治療法の例もしめしてありますので、臨床家の方々には間違いなく「役立つ章」になります。
スクレオロジーは、なかなか難しいものですので、わかりやすいようにDVDも作りました。
この本だけで学ぶのは根気がいることなので、今回は特別にDVDでも出版したわけです。
DVDでは、スクレラ撮影の方法をビデオで説明してありますので、誰でも簡単にスクレラが撮影できるようになります。
たとえば治療院なら、スタッフにその動画を見て頂くだけで、スタッフがスクレラを撮影できるようになります。
そしてそして、スクレラを学ぶ時にぼくが苦労したのに、「スクレラを拡大して見なければ納得いかない」ということがありました。
それは、スクレオロジーを学ぶとすぐに分かると思いますが、小さな写真では納得いかないところがあるので、どうしてもパソコンで画像を拡大して見たくなるのです。
僕も最初の頃は、仕事が終わってから毎日、その日の患者さんのスクレラをパソコンで拡大して覗いていました。
このDVDは、そんな苦労を取り除いてくれます。
ビデオ動画と一緒に録画した「書籍DVD」は、写真を見ながら簡単に拡大できるからです。
また、臨床をしているときやブログの原稿を書くときには、「あれは何だったかな?」とか、「確かこんな単語があったな」というときに、その単語を検索すれば、瞬時にその単語が出てきますので、ムダな時間を省くことができます。
治療法は、一つの流れに沿って組み立てられたものを使うと、腕は上がりますが、断片的な知識やテクニックだけを使っていると、必ず行き詰ります。
この『写真で学ぶスクレラ分析』は、一つの流れに沿って組み立てられていますので、やればやるほど診断と治療の技術が伸びてきます。
そして、何よりも僕が感じたのは、スクレオロジーを学びながら想像力も伸びてきたことです。
所謂、仮説を立てるのが上手くなったということです。
ですから僕は、今までいろいろ新しい治療テクニックを発表してきました。
そして多分、今後も新しいテクニックを発見するのは止まらないでしょう。
書籍は、 7.560円+送料360円=7.920円
DVDは、10.800円+送料360円=11.160円
書籍&DVDセットは、18.720円ですが、16.560円(送料込)で販売させて頂きます。
ただし、在庫が売り切れた時点で改訂版になり、価格変更をさせていただきます。
申し訳ございません。