今年の師走はやけに寒いです。
地球温暖化だとかで、年々暖かくなっていく傾向にあるのかと思いきや…35年前の冬は暖かったです。
私の中も…それが一体何処から来るのか、とんと自覚なんかしてなかったですけど…。
しかし、今頃アイツ(35年前の私)は寒空の中で途方に暮れていることでしょう…突然私が蒸発してしまったので…。
どうやら、いまに帰る際も全託が必要らしく、あのようなのっぴきならぬ事態が起きて、お手上げ状態になると自動的に戻ってしまうらしいのです。
彼の事が心配なので、何とか戻りたいものの…私はどうやったら全託出来るのか、思うようにいかなくて途方に暮れていました。
ゼンタクッ、ゼンタクッ、といくら意識を強めて、あくまでそれは「全託したつもり」なだけで、天には認められないようなのです。
つまりいくら頑張っても、頑張りようが無いのです。
こういう場合、又思わぬ事態とかが有ればいいのだけど…「苦難よ、困難よ我に来たれ!」なんてのは白々しいだけです…。そんな気持ちばかり空回りを繰り返して数日経ち、全く思いがけない形で35年前に戻ることが出来たのです。
ことわざにも言います。「果報は寝て待て」と…
私は寝てる間に何か素晴らしい夢でも見てたのか、私の心身はいつの間にか素敵なバイブレーションにつつまれ、全託した状態になっていたのです…。
そんな訳で何とか又彼のアパートへ行くことが出来ました。
―いやあ、元気か…
「…元気かも何もないよ!驚いたのなんの!突然工藤俊作(ドラマ”探偵物語”で松田優作が演じていた主人公)みたいに消えちゃうんだから…警官からはクスリの常習犯をどこへ隠した、なんて事情徴収されて…大体オジサンがどこの誰かも分からないんで、何聞かれても答えようが無いし…結局人違いだったという事で何とか済んだけど…オジサンは全体何者なの?オヤジ以上にオヤジみたいだよね。」
―そういう君こそ、セガレ以上だよ…君にもしもの事が有ったら、すぐに飛んでくるつもりだ。君の運命は私の運命と同じなんだからねえ…
「仮にオジサンが守護霊の応現だと聞いても今の僕は驚かないよ!この春ぐらいからずっと、何だか何者かに導かれてるような気がしてしょうがないからね。」
―守護霊でもパクられるのか? ハハハッ…
「オジサンが貧乏神でも祟り神でも何でもいいよ。こういうなんて言うか…昂揚した気分がずっと続くんなら…
―…そ、そうなんだよ…なんとかそれが自然消滅しないで済む方法は無いのかなあ…
「エッ、自然消滅しちゃうの?」
―いやあ、まだしばらくは大丈夫じゃないかなあ…まあ、ねえ…君も若いし、色恋だとかの煩悩もあるだろう…あまり、そのお…ノボセないことだよ。
「僕は今のところそっちの方はあまり興味無いね。こないだの文化祭でも「一緒にキャッチボールでもしませんか~」なんて誘われたんだけど…そんな気分にゃなれなかったんで…。」
―あ、あれか~、惜しいことをしたものだ…
「エッ、なんのこと?」
―い、いや、なんでも無い…運動神経がもっとあれば、バットを振るう事も出来ただろうに…
いや、そんなことよりだ!何時も何時も、その昂揚感とか有難い気分がどこから来るのか…そういう事を意識することだよ。
「僕は最近、こう特別な祈りとかするんで無しに、思っただけでそんな気分になる事が有るよ。」
―だろう¡…だからこそ自然消滅することなく行けば、今頃私は…(いや、よそう、それは帰ってから考えよう…)
ところで君は来年卒業だろ、就職するんだろ…
「卒業出来るかどうか分からないよ。就職のことも具体的にはまだ…」
―大阪の方へ就職してみる気は無いのか?
「ヘエ…僕は実は来年あたり、関西の方へ行ってみたいと思っていたんですよ!と言っても就職とかのことじゃなくて…播磨の方にD会という宗教でない、宗教のような…生活共同体のようなのがあって…オジサンが前に言っていた、僕と何かの因縁が有るというのは、この事じゃないかと、オジサンが行方不明の間ずっと考えてたんですよ。」
―D会…聞いただけでなにものかが身に覚える…青年よ大志を抱け!…ま、今のうちにせっせとお金を貯めておくんだな!…君はこの一、二年の間に
奇しき縁によっていくつかの出会いに導かれた。それは全く仮初のものでなく、
全てが因縁の綾によって結ばれていることが日が経つにつれて実感されていくだろう…。
「ぼ、僕はもう、話を聞いてると魂が揺すぶられているようで…。」
―ウーン…私も震えが止まらない…我々はクエーカー教徒(震える人たちの意。キリスト教の一派)か…そ、それにしても寒いではないか!隙間風は何とかならないのか!
「もう、暮なので業者は来てくれないんだよお…」
―工藤探偵事務所より悲惨だなあ…
こうして金も無く、侘しく年は暮れて往くのでした。あの時も今も…何もないけど概ね幸福かな…。正月はどっちに居るのか分かりませんが…
年の瀬に 大都会暮れて 異邦人
〈昭和54年暮れのヒット曲にちなみ)
地球温暖化だとかで、年々暖かくなっていく傾向にあるのかと思いきや…35年前の冬は暖かったです。
私の中も…それが一体何処から来るのか、とんと自覚なんかしてなかったですけど…。
しかし、今頃アイツ(35年前の私)は寒空の中で途方に暮れていることでしょう…突然私が蒸発してしまったので…。
どうやら、いまに帰る際も全託が必要らしく、あのようなのっぴきならぬ事態が起きて、お手上げ状態になると自動的に戻ってしまうらしいのです。
彼の事が心配なので、何とか戻りたいものの…私はどうやったら全託出来るのか、思うようにいかなくて途方に暮れていました。
ゼンタクッ、ゼンタクッ、といくら意識を強めて、あくまでそれは「全託したつもり」なだけで、天には認められないようなのです。
つまりいくら頑張っても、頑張りようが無いのです。
こういう場合、又思わぬ事態とかが有ればいいのだけど…「苦難よ、困難よ我に来たれ!」なんてのは白々しいだけです…。そんな気持ちばかり空回りを繰り返して数日経ち、全く思いがけない形で35年前に戻ることが出来たのです。
ことわざにも言います。「果報は寝て待て」と…
私は寝てる間に何か素晴らしい夢でも見てたのか、私の心身はいつの間にか素敵なバイブレーションにつつまれ、全託した状態になっていたのです…。
そんな訳で何とか又彼のアパートへ行くことが出来ました。
―いやあ、元気か…
「…元気かも何もないよ!驚いたのなんの!突然工藤俊作(ドラマ”探偵物語”で松田優作が演じていた主人公)みたいに消えちゃうんだから…警官からはクスリの常習犯をどこへ隠した、なんて事情徴収されて…大体オジサンがどこの誰かも分からないんで、何聞かれても答えようが無いし…結局人違いだったという事で何とか済んだけど…オジサンは全体何者なの?オヤジ以上にオヤジみたいだよね。」
―そういう君こそ、セガレ以上だよ…君にもしもの事が有ったら、すぐに飛んでくるつもりだ。君の運命は私の運命と同じなんだからねえ…
「仮にオジサンが守護霊の応現だと聞いても今の僕は驚かないよ!この春ぐらいからずっと、何だか何者かに導かれてるような気がしてしょうがないからね。」
―守護霊でもパクられるのか? ハハハッ…
「オジサンが貧乏神でも祟り神でも何でもいいよ。こういうなんて言うか…昂揚した気分がずっと続くんなら…
―…そ、そうなんだよ…なんとかそれが自然消滅しないで済む方法は無いのかなあ…
「エッ、自然消滅しちゃうの?」
―いやあ、まだしばらくは大丈夫じゃないかなあ…まあ、ねえ…君も若いし、色恋だとかの煩悩もあるだろう…あまり、そのお…ノボセないことだよ。
「僕は今のところそっちの方はあまり興味無いね。こないだの文化祭でも「一緒にキャッチボールでもしませんか~」なんて誘われたんだけど…そんな気分にゃなれなかったんで…。」
―あ、あれか~、惜しいことをしたものだ…
「エッ、なんのこと?」
―い、いや、なんでも無い…運動神経がもっとあれば、バットを振るう事も出来ただろうに…
いや、そんなことよりだ!何時も何時も、その昂揚感とか有難い気分がどこから来るのか…そういう事を意識することだよ。
「僕は最近、こう特別な祈りとかするんで無しに、思っただけでそんな気分になる事が有るよ。」
―だろう¡…だからこそ自然消滅することなく行けば、今頃私は…(いや、よそう、それは帰ってから考えよう…)
ところで君は来年卒業だろ、就職するんだろ…
「卒業出来るかどうか分からないよ。就職のことも具体的にはまだ…」
―大阪の方へ就職してみる気は無いのか?
「ヘエ…僕は実は来年あたり、関西の方へ行ってみたいと思っていたんですよ!と言っても就職とかのことじゃなくて…播磨の方にD会という宗教でない、宗教のような…生活共同体のようなのがあって…オジサンが前に言っていた、僕と何かの因縁が有るというのは、この事じゃないかと、オジサンが行方不明の間ずっと考えてたんですよ。」
―D会…聞いただけでなにものかが身に覚える…青年よ大志を抱け!…ま、今のうちにせっせとお金を貯めておくんだな!…君はこの一、二年の間に
奇しき縁によっていくつかの出会いに導かれた。それは全く仮初のものでなく、
全てが因縁の綾によって結ばれていることが日が経つにつれて実感されていくだろう…。
「ぼ、僕はもう、話を聞いてると魂が揺すぶられているようで…。」
―ウーン…私も震えが止まらない…我々はクエーカー教徒(震える人たちの意。キリスト教の一派)か…そ、それにしても寒いではないか!隙間風は何とかならないのか!
「もう、暮なので業者は来てくれないんだよお…」
―工藤探偵事務所より悲惨だなあ…
こうして金も無く、侘しく年は暮れて往くのでした。あの時も今も…何もないけど概ね幸福かな…。正月はどっちに居るのか分かりませんが…
年の瀬に 大都会暮れて 異邦人
〈昭和54年暮れのヒット曲にちなみ)
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