スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王座戦&具体例

2022-09-15 19:11:19 | 将棋
 13日に名古屋で指された第70期王座戦五番勝負第二局。
 豊島将之九段の先手で角換わり相腰掛銀。この将棋は終盤で千日手になりました。先手としては長考の末の千日手で持ち時間が減らされましたので,何らかの誤算があったものと思います。途中は先手が優勢とAIは判断していたものの,勝ちに結び付ける手順は難しかったですから,千日手になってしまったこと自体は止むを得なかったと僕には思えました。
 永瀬拓矢王座が先手となっての指し直し局も角換わり。先手が1筋の位を取り,後手の豊島九段の棒銀という戦型になりました。
                                        
 第1図で☗7一角と打ったのですが,この手は僕には驚きの一手でした。☖7二飛とされると,飛車か角のどちらかは必ず取られてしまうからです。ただ☖7二飛には☗8五飛と回り,角は取られても飛車を成り込んで,先手も互角には戦えるようです。ただ互角なのですから後手としてもそう指さなければいけませんでした。
 実戦は☖3五銀☗8二角成の飛車交換の順に。☖2九飛と先着することができることに期待したようですが☗5八王のときに一旦は☖2四銀と銀の処置をしておかなければなりません。対して☗7九飛と打つのが好手。
                                        
 第2図となって先手の駒得が確実になり,有利になりました。
 永瀬王座が勝って1勝1敗。第三局は27日に指される予定。先手は永瀬王座です。

 それではこれらのことを,ある具体的な例を用いて説明します。
 現実的にAとBという人間が存在しているとして,AがBを洗脳しているなら,BはAの権利jusの下にあるといわなければなりません。同様にXとYとが存在して,XがYをマインドコントロールしているなら,YはXの権利の下にあるのであって,Y自身の権利の下にあるのではありません。霊感商法とか,ある種の自己啓発セミナーというのは,このような仕方で他人を自分の権利の下に置くことで,利益を獲得することを追求するのだといえるでしょう。いい換えれば,ある特定の混乱した観念idea inadaequataを十全な観念idea adaequataであると他人に信じ込ませることで,利益を獲得することを目指しているということです。
 ただし,洗脳とかマインドコントロールといった事象は,そのようにしようと思えば必ずそうすることができるという類のものではありません。上述の例でいえば,AはBを洗脳することに成功していることになりますが,だからそれ以外の人,たとえばCを洗脳することができるのかといえば,必ずできるとはいえません。AがCを洗脳しようとして,Cに混乱した観念を十全な観念であると信じ込ませようとしても,Cはそれが混乱した観念であると知っている限りではそれを十全な観念であると信じ込むことはないからです。もちろん,あるものの混乱した観念とそれと同じものの十全な観念は,Cの知性intellectusのうちに同時に存在することができるのですから,AがCを洗脳しようとする過程で,Cの知性のうちに混乱した観念が発生するということはあり得るでしょう。ですがCはそれが混乱した観念であると知っている限りではAの権利の下にあるのではなくCの権利の下にあるのです。つまりCの知性のうちに虚偽falsitasがあっても,誤謬errorを犯していない限りでは,CはAの権利の下にあるのではなく,C自身の権利も下にあると僕は考えます。
 現実的に存在する人間が自己の権利の下にあるということを,スピノザはどのように規定しているのかということ,また僕自身がそれをどのように解しているのかということは説明できました。そこで次に,こうした権利をさらに拡充していくための手段を検証します。

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