「カッコイイ」とか「かわいい」っていうのは主観なので 人それぞれ違いがある
たとえばアフリカフクラガエル*が「かわいい」といっても爬虫類が嫌いな人であれば「見るのもおぞましい」と感じるかも知れないし
産まれたてのシャクトリムシが「かわいい」といっても昆虫嫌いな人なら「気持ち悪い」とティッシュで潰してゴミ箱に棄ててしまうかも知れない
「かわいい」という感覚は もともとは哺乳類が子供を守ろうとする行動バイアスを持った個体種への収束進化の結果であって こうした主観的感覚というものには方向性とか目的のようなものはないので
イヌやネコを「かわいい」と思っても ヒトの生存や種の保存にとっては何の役にも立たない「無駄な情動行動」でもある
「かっこいい」という感覚も そもそもは子供が親に対して抱く感情であり これが集団組織の内部で血縁続柄を超えて転移したものが「権威」というものである
だが これもまた「かわいい」という感情と同じ様に個人それぞれ異なるものであって 極めて主観的なものに過ぎない
サメの一種のシロワニ見て「かっこいい」と思おうが イノシシの一種のバビルサ見て「かっこいい」と思おうが それは個人的な話であって 「かっこいい」と思う対象自体には普遍性は何もない
主観的に何を「かっこいい」と思っても それは個人の自由なのだが 主観的に「かっこいい」と思ったからといって絶対的なものであるかのように錯覚されるとトンチンカンな話になってしまう
「神はかっこいい」とか「偉大だ」とか思うのは勝手だが 「偉大だ」という主観が絶対化することで盲目的宗教(洗脳)になって人間としての社会性を失う結果にもなりうる
ヤクザは ヤクザの集団組織のことを「かっこいい」と思うからこそ ヤクザの組織に迎合同調し 忠誠忠実に唯々諾々と服従することで 鉄砲玉でも何でもやらかすようになるのである
ヤクザは 自分が所属している集団だけが正義になるので 他のヤクザ組織との間で抗争をするものである
アフガニスタンでの軍閥同士の紛争や 戦国時代の領地争いも同じである
戦国武将を「かっこいい」と思うのは個人の勝手だが 武力で他者を制圧する暴力者の長を「英雄」だの「偉人」だのと形容するのはバカの価値観である
ナチスの総統を「かっこいい」と思ったからこそ ドイツ政府は600万のユダヤ人を殺害したのであって 戦国武将も大量の人民を殺害しているのであり そんなものを「偉人」扱いするのはあまりにバカげている
「かわいい」にせよ「かっこいい」にせよ こうした感情は脳への快楽を促すものであり 快楽だからこそ子供を大事にしようともするし 暴君への服従統率への行動バイアスも促されるのである
育児や統率協調行動への行動バイアスを持った個体種への収束進化の結果が「かわいい」とか「かっこいい」といった主観的感情(本能習性)の原因である
勘違いしていはいけないのは こうした感情というものはヒト特有のものではなく ヒト以外の哺乳類や鳥類 はたまた昆虫や魚類においても見られるものであって
魚が子供を育てたり 昆虫が統率的協調性を発揮することもよくあることである
「社会性さえ発揮されれば人間性だ」などというのはとんでもない大嘘で 動物の先天的な社会形成習性というものは あくまで封建的なヒエラルキーや順位序列による不公平で差別的なものであり 到底人間性を伴ったものではない
生物学において「真社会性」とみなされるものは 統率のみならず役割分担までもが本能習性的に促されるものであって それはむしろヒトというよりはハダカデバネズミやアリやハチの方に強く見られるものなのである
人喰い人種が集団統率的に行動しても人間性の論証にはならないし ヤクザ集団や振り込め詐欺師集団の内部だけで利他的行動を採っても人間性の論証にもならない
戦国武将共が仲間内に対する忠誠忠実さを発揮しても人間性の論証にはならないし 太平洋戦争の特攻隊も人間性の論証にはならない
ならないのに特攻隊は「英霊」なのである
それは 特攻隊は「かっこいい」からであろう
イスラム過激派にとって 自爆テロ実行犯は「かっこいい」のである
何の迷いもなく大量に殺せば「英雄」になるのだ
だが パレスチナの女性救急隊員による自爆テロは 数人の武装警官しか殺せず テロとしては大失敗である
パレスチナの女性救急隊員は パレスチナの子どもたちを救いたかったのであり エルサレムの市街地で大きな爆弾を抱えながらもユダヤ人の子どもたちまでをも巻き込みたくないために 武装警官に追い詰められるまで爆弾を爆発させることができなかったのである
「本当の目的」を見失ってしまった愚かさはあっても そんな過酷な状況を作ったのはイスラエル政府とハマスによる対立である
「テロリスト」という分類だけでは括ることのできないものが存在することを 忘れるべきではない
イスラムの教えでは 女性が殉教しても神の祝福は受けられず地獄に落ちてでもユダヤ人の子供達までも救おうとしたのである
それを「テロリスト」の一言で片付けて良いとは到底言えないだろう
武力や懲罰報復では安全保証にはならないばかりか むしろそれこそが暴力や破壊を助長する根源的原因なのであり こうしたヒトの先天的欠陥や錯覚を論理客観的に自覚認識することこそが 本当の「人間としての叡智」だと言えるのである
そして それはイマヌエル:カントが主張するような 悟性だの純粋統覚だの現象界だの叡智界といったファンタジーで満足するようなものとは正反対のものである
現象界と叡智界 これはカントによる根拠のない「線引き」「決め付け」であって 真実ではない
こんなものを「近代哲学の最高峰」だと形容している哲学者共はA級戦犯にも等しい愚か者である
*訂正:アフリカフクラガエルという名前のカエルはいなくて ナマカフクラガエルというのはいる
Ende;