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くも膜下出血ー診断(3) 腰椎穿刺

2008年06月28日 | くも膜下出血
 久しぶりに本題に戻りますね(^^;)

 腰椎穿刺は脳と脊髄のまわりにある水(脳脊髄液)を注射針で吸引して、検査室で調べる方法です。
 脊髄に針が刺さってしまうのではないか?と心配ですが、針を第3腰椎と第4腰椎の間に差し込めば、まず脊髄を傷つけることはありません。その高さには脊髄はなく、そこから下に伸びる細い神経しかないからです。その神経のことを医学用語で馬尾(ばび)といいます。といっても馬のしっぽではありません。解剖学的に脊髄から出る神経があたかも馬のしっぽのように見えるのでそう名付けられているのです。
 また穿刺中は、頭蓋内圧(頭の中の圧力)を測定できます。頭の中の水と脊髄の水はつながっているからです。
 脳脊髄液の検査によって、他にも色々なことが分かりますが、くも膜下出血の場合には脳脊髄液が赤血球のために赤色になります。正常では無色透明です。
 しかし時間が経ったらどうでしょうか?CTやMRIの所で説明したように、出血からしばらく時間が経つとこれらの画像診断で出血の有無が判定出来ない場合があります。
 でも大丈夫です。この腰椎穿刺を行えば、髄液が黄色になるため(上図)、まず判定できるのです。したがってこの検査はくも膜下出血があるかないかの最終判断に使われる重要な検査と言えます。
 たまに穿刺がうまく行かず穿刺中に出血させてしまうことがあります。そうなるとくも膜下出血の有無の判定が出来なくなってしまいます。検査医は出血させないように慎重に行わなければなりません。

 また検査に伴うリスクもわずかながらあります。それは髄液に細菌が入ってしまうことです。脳脊髄液中には細菌をやっつける白血球などの細胞がないため、細菌の侵入に弱いのです。一旦細菌が入ってしまうと髄膜炎(ずいまくえん)と呼ばれる状態になります。最近は抗生物質も良くなり、髄膜炎になってもまずなおることが多いのですが、時間がかかるし発熱で苦しみます。検査医がきちんとした防御法を行ってきれいな操作で検査を行えばまずこのようなことはありません。

 以上、くも膜下出血の診断について説明しました。
 次回からは治療編ですよ!
コメント (1)
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