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胸郭出口症候群:治療について

2010年03月07日 | 関連疾患
大分間が空きましたが、胸郭出口症候群の後編です。
この病気は骨や筋肉で神経と血管がはさまれて症状が起きることを説明しました。
ですから治療法は下記のようになります。

5)治療
5-1. 症状を悪化させる動作を避ける
5-2. 消炎鎮痛薬
5-3. ブロックなどの注射
5-4. 手術

まず5-1です。
 避けるべき動作は
  重い物をもつ(重い手提げ、肩掛けバッグ、リュックサックなど)
  姿勢(仰向け、うつぶせ) 
  長時間のスポーツ自転車など
  長時間のコンピュータ作業
  これ以外の手がしびれる姿勢
 自分の経験からは、とにかく症状が起きるようなことをすると、数日間具合が悪いことがあります。ですからできるだけ避けることです。

 行うべき筋力トレーニング・運動
  腕立て伏せ 
  壁面を押すトレーニング
  肩を挙上するトレーニング
  スイミング
 肩をすくめるような運動を毎日行うとずいぶん良くなります。薬に走るよりもなるべく運動療法を取り入れて頑張ることが大事だと思います。

5-2. 消炎鎮痛薬
 鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレン、ロルカムなど)
  痛みはひどい時には内服薬が有効です。  
 筋弛緩剤(テルネリン、ミオナールなど)
  しびれ、痛みが強い時には有効です。ただし眠気やのどの渇きが出ることがあります。

5-3. 神経ブロック
 痛みがひどい時にはこの方法で楽になることがあります。ただし治療を受ける場合にはペインクリニック等の専門医に行ってもらう必要があります。

5-4. 手術
 この方法を行わなければならないことはかなり稀です。
 症状がひどく、以上の方法でも改善が得られず、日常生活の障害になる場合にだけ適応になります。
 a) 斜角筋切断術
  従来、胸郭出口症候群の代表的手術としてこの方法が行われてきました。
  手術は小さな傷で行うことができますが有効性に劣ることが報告され、最近はあまり行われません。
 b) 第一肋骨切断術
  腋窩からのアプローチで行う方法と鎖骨の上からのアプローチで行う方法があります。
  第一肋骨の切除に加え、斜角筋の付け根も切除することで根治性が向上するとの報告があります。
 c) 頚肋切除術
  先天的に「頚肋」というくびの骨の異常がある場合に行われることがあります。
  「頚肋」はレントゲン撮影にて容易に判明します。
 この病気に対する手術は急いで行う必要はありませんし、一般的には手術以外の治療法でほとんどの方が良くなります。もし手術を勧められてもしばらく様子を見るか、セカンドオピニオンを受けられることをお勧めします。

以上、胸郭出口症候群の治療について一通り説明しました。
要は、痛みやしびれる姿勢を避けることが一番。
症状のひどい場合には薬を継続しながらトレーニング等を行う。
これらで直らない、余程ひどい場合にだけ手術を考える。
ということです。自身の経験を踏まえて紹介しました。
胸郭出口症候群の患者さん達、参考にしてください。
コメント (5)
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