もやもや病患者さんから質問がありました。
「今後予防につながれば…と、先生の日記にありましたが『予防』とはもやもや病にならない予防なのでしょうか?それとも、もやもや病とわかってからの脳卒中にならない予防なのでしょうか?」
今回の発見がどのように現場の医療に生かされていくか考えてみましょう。
1)診断が正確になる
現在もやもや病の診断基準は、下記のように定められています
(難病情報センターホームページ:http://www.nanbyou.or.jp/pdf/115_s.pdf)
抜粋すると、脳血管撮影において
1 頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
2 その付近に異常血管網が動脈相においてみられる。
3 これらの所見が両側性にある。
の3つを満たし、かつ下記の基礎疾患に伴う類似の脳血管病変は除外する。
1動脈硬化 2自己免疫疾患 3髄膜炎 4脳腫瘍 5ダウン症候群
6レックリングハウゼン病 7頭部外傷 8頭部放射線照射 9その他
誰がみてもこの基準にきっちりと当てはまる場合もあるのですが、逆に、判断に迷う場合もあります。たとえば、
1 片側だけに典型的な所見がある場合
2 異常血管網の発達が少ない場合
3 軽度の動脈硬化や頭部外傷などは、どの程度からを基礎疾患として含めるか
などです。現在1はもやもや病とは認められません。2や3は「程度の問題」です。たとえば動脈硬化などは年齢を重ねるとすべての人が有しており、どの程度からを基礎疾患に含めるか、なかなか判定が難しいところです。こういった場合に遺伝子異常があれば、診断の大きなサポートになると考えられます。
ただし今回の遺伝子異常は「もやもや病患者さんの7割に陽性」ということですから、「基準に当てはまっても遺伝子が正常な場合」、「遺伝子異常はあるが、診断基準に当てはまらない場合」などが想定されます。今回の発見が診断基準にどのように組み込まれていくかが注目されます。
2)予防がやりやすくなる
究極的にはこの遺伝子異常を遺伝子治療によって直してしまう時代がくるかもしれません。ただし現時点ではそれは困難です。それではどのように予防に役立つのでしょうか?
たとえばもやもや病の疑いの場合にこの遺伝子異常が陽性であれば、
1 定期検査を受けて、進行しないかどうかチェックする
2 予防治療を受ける(内服薬や手術)
などが考えられます。
また、遺伝子異常があっても発症しにくい条件が見つかる可能性があります。その場合には、もやもや病の方が家族内にいる場合、この検査を受けて自分が遺伝子異常があるかどうか調べておくことが真の予防につながる可能性があるわけです。
「この遺伝子異常があった場合、何割が発症するか?」、「この遺伝子異常がある場合には、異常のない人よりも経過がいいのか悪いのか?」などがまだわかっていません。まだまだ糸口が見つかったということなのかもしれませんが、今後今回の発見を契機として急速に研究が進むことと思います。その意味でも今回の研究は大変すばらしいものだと思います。発見者の先生方に敬意を表したいと思います。
ご質問のお答えになったでしょうか?これから徐々に情報が増えてくると思います。もやもや病のみなさんの参考となれば幸いです。
「今後予防につながれば…と、先生の日記にありましたが『予防』とはもやもや病にならない予防なのでしょうか?それとも、もやもや病とわかってからの脳卒中にならない予防なのでしょうか?」
今回の発見がどのように現場の医療に生かされていくか考えてみましょう。
1)診断が正確になる
現在もやもや病の診断基準は、下記のように定められています
(難病情報センターホームページ:http://www.nanbyou.or.jp/pdf/115_s.pdf)
抜粋すると、脳血管撮影において
1 頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
2 その付近に異常血管網が動脈相においてみられる。
3 これらの所見が両側性にある。
の3つを満たし、かつ下記の基礎疾患に伴う類似の脳血管病変は除外する。
1動脈硬化 2自己免疫疾患 3髄膜炎 4脳腫瘍 5ダウン症候群
6レックリングハウゼン病 7頭部外傷 8頭部放射線照射 9その他
誰がみてもこの基準にきっちりと当てはまる場合もあるのですが、逆に、判断に迷う場合もあります。たとえば、
1 片側だけに典型的な所見がある場合
2 異常血管網の発達が少ない場合
3 軽度の動脈硬化や頭部外傷などは、どの程度からを基礎疾患として含めるか
などです。現在1はもやもや病とは認められません。2や3は「程度の問題」です。たとえば動脈硬化などは年齢を重ねるとすべての人が有しており、どの程度からを基礎疾患に含めるか、なかなか判定が難しいところです。こういった場合に遺伝子異常があれば、診断の大きなサポートになると考えられます。
ただし今回の遺伝子異常は「もやもや病患者さんの7割に陽性」ということですから、「基準に当てはまっても遺伝子が正常な場合」、「遺伝子異常はあるが、診断基準に当てはまらない場合」などが想定されます。今回の発見が診断基準にどのように組み込まれていくかが注目されます。
2)予防がやりやすくなる
究極的にはこの遺伝子異常を遺伝子治療によって直してしまう時代がくるかもしれません。ただし現時点ではそれは困難です。それではどのように予防に役立つのでしょうか?
たとえばもやもや病の疑いの場合にこの遺伝子異常が陽性であれば、
1 定期検査を受けて、進行しないかどうかチェックする
2 予防治療を受ける(内服薬や手術)
などが考えられます。
また、遺伝子異常があっても発症しにくい条件が見つかる可能性があります。その場合には、もやもや病の方が家族内にいる場合、この検査を受けて自分が遺伝子異常があるかどうか調べておくことが真の予防につながる可能性があるわけです。
「この遺伝子異常があった場合、何割が発症するか?」、「この遺伝子異常がある場合には、異常のない人よりも経過がいいのか悪いのか?」などがまだわかっていません。まだまだ糸口が見つかったということなのかもしれませんが、今後今回の発見を契機として急速に研究が進むことと思います。その意味でも今回の研究は大変すばらしいものだと思います。発見者の先生方に敬意を表したいと思います。
ご質問のお答えになったでしょうか?これから徐々に情報が増えてくると思います。もやもや病のみなさんの参考となれば幸いです。