隔月に帰省して、足の不具合を案じて何かと手伝ってくれる娘が、到着した北九州空港のロビーに置いてあったからと、熊谷守一展のチラシを持って帰ってきました。
昨年秋から期待して待ち続けていた憧れのモリカズですが、開催に合わせるかのように踵骨棘の激痛で、気になりながらも寒さの中を出かけるのを躊躇っていました。
9日が九州歯科大の定期診断の日だったので、娘を保護者に、同伴での小倉行きとなりました。
会場の北九州美術館分館は複合施設のリバーウォーク北九州の5階にあります。(6階には先日狂言の会があった芸術小劇場もあります)
今回の展示作品170点は、制作年代順に90代の最晩年に至るまでの代表作や、個人に愛蔵されている作品が網羅されていて見応えのあるものでした。
東京芸術大学を首席で卒業した時の自画像から、モリカズ様式が確立してゆく道程もつぶさに目にすることができました。
仲間内では私のモリカズへの憧憬はよく知られていますが、それは「画壇の仙人」と呼ばれた守一の、私とはおよそ対極にある超俗の生き方に、強く惹かれるからです。
そして、守一の引く線は、見ることに徹しきった末の思いっきりであり、意図した単純化などとは異質の潔さで、内に籠る力は、身震いするほどの強さを秘めて揺るぎがありません。
ブログ上の心友、蛙さんにいただいた没後30年の図録で、繰り返し眺めては何度か真似てみたりしていた数々の作品群が、いま目の前に、艶やかな潤いをもって存在している事に興奮しながら時の経つのを忘れて佇んでいました。
晩年の作品と、書や日本画、水墨などは4階の展示場で、階段での移動に苦しみながらも、「へたも絵のうち」の言葉と、生き物の命に寄せる温かで熱い眼差しにやわらかく包まれて、心豊かな充足した鑑賞の時間でした。
娘は、初めて見るドクダミの白い花ビラの芯がターコイズブルーで塗られた絵の前で長く足が止まっていました。私はやはり自分がリトでもっている桜とウソの鳥を描いた油彩に目がいきました。春近い日、唯一持っている軸「山依水遠」の守一の書を床にかけ替えるるとします。
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