ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイヤル

2016-10-26 23:31:59 | ジャズ(ビバップ)
今年1月のブログでチャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」を取り上げ、パーカーの魅力に開眼したようなことを書きましたが、実はその後も何枚かパーカーのCDを買ってみたはものの、イマイチのめり込めませんでした。名盤と呼ばれている「スウェディッシュ・シュナップス」「バード・アンド・ディズ」はそこまで楽曲が良いとは思いませんし、晩年の「プレイズ・コール・ポーター」は演奏がヘロヘロ。「エイプリル・イン・パリ」はパーカーのソロ自体は素晴らしいものの、バックの甘ったるいストリングスがちと苦手。最後の試しということでこれまで録音の悪さを理由に敬遠していた40年代後半のダイアル・セッションを買ってみました。これがなかなか素晴らしい。音質はさすがに悪いですが、それを補ってあまりあるパーカーの素晴らしい演奏と後にスタンダードとなる名曲のオリジナル演奏が堪能できます。

ダイアルと言うのは西海岸にあったレコード会社の名前ですが、他に有名な作品はなく、パーカーの全盛期を録音するためだけに存在したレーベルと言っても過言ではないでしょう。録音は1946年2月から1947年12月にかけて計8回行われ、合計37曲が2枚のCDにわたって収録されています。パーカーの他の作品はやたら別テイクが多く閉口することがありますが、本作は全てマスターテイクのみで曲の多さのわりにはすっきりした印象です。




まずはVol.1から。こちらは5つのセッションから成り、全て西海岸録音です。まず、1つ目のセッションは1946年2月のディジー・ガレスピーとの共演で、“Diggin' Diz”1曲のみが収録されていますが、さすがに録音状態が悪すぎてまともな評価はできません。2曲目から6曲目までは翌3月のセッションで、当時まだ19歳だったマイルス・デイヴィス(トランペット)に加え、ラッキー・トンプソン(テナー)、ドド・マーマローサ(ピアノ)らかなるセプテットの演奏。このセッションからは後にパーカーの代表曲となる“Moose The Mooche”“Yardbird Suite”が生まれており、どちらも素晴らしいの一言。その他に有名な“Ornithology”も収録されています。7曲目から10曲目はハワード・マギー(トランペット)との共演ですが、こちらは正直イマイチ。アルコールで酩酊状態だったらしく、演奏もどことなく冴えません。11曲目から15曲目は1947年2月のセッションで、“Misty”の作曲者としても知られているエロール・ガーナー(ピアノ)との共演。これがなかなか充実の出来で、“Bird's Nest”ではパーカーとガーナーが目の覚めるようなソロの応酬を繰り広げます。“Cool Blues”もいいですし、アール・コールマンのヴォーカルも入った“This Is Always”“Dark Shadows”ではパーカーの珍しい歌伴演奏も聴けます。16曲目から19曲目は再びハワード・マギーとのセッションで、パーカーと同じく夭折したワーデル・グレイ(彼については3月のブログ参照)のテナーも聴けます。パーカーの演奏自体は比較的好調ですが、自作曲が“Relaxin' At Camarillo”のみで後はマギーの作品と言うのがやや不満ですね。以上、雑多な寄せ集め感もあり、演奏も全てが上質と言うわけではありませんが、マイルス入りのセッションとエロール・ガーナーとの共演は必聴ですね。



Vol.2の方は1947年の10月から12月にかけてニューヨークで録音されたもので、Vol.1のような寄せ集め感はなくメンバーも固定です。そのメンバーとはマイルス・デイヴィス(トランペット)、デューク・ジョーダン(ピアノ)、トミー・ポッター(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)。さらに13曲目から18曲目での6曲でJ・J・ジョンソン(トロンボーン)が追加で加わります。この一連のセッションは掛け値なしにジャズ史上に残る名演と言ってよいでしょう。若きマイルスやジョーダンも才能の片鱗をうかがわせていますが、何と言っても主役はパーカー。全盛期の彼の閃きに満ちたアドリブと彼のペンによる名曲の数々が多数収録されており、多少の録音の悪さなど吹き飛ばしてくれます。特に10月のセッションが圧倒的で、1曲目から“Dexterity”“Bongo Bop”“Dewey Square”“The Hymn”と名曲・名演のオンパレード。続いて“All The Things You Are”の変奏曲である“Bird Of Paradise”、スタンダード曲のメロディを鮮やかに再構築した“Embraceable You”とバラード演奏の素晴らしさも見せつけてくれます。翌11月のセッションも好調で、こちらも“Bird Feathers”“Klactoveedsedstene”“Scrapple From The Apple”と後に多くのジャズメンにカバーされる名曲のオリジナルが聴けます。他の3曲はスタンダードで“My Old Flame”“Out Of Nowhere”“Don't Blame Me”とロマンチックなバラード演奏が続きます。最後の12月のセッションはJ・Jのトロンボーンを加えたセクステット演奏ですが、内容的には上記2セッションには劣るものの“Drifting On A Reed”“Crazeology”は名演です。これまでパーカーと言えばジャズ史上の偉人であることは認めつつも、時代の古さもあってどこか取っつきにくさを感じていた私ですが、このダイヤル・セッションを聴いた今ではすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。「パーカーを聴かずにジャズを語るなかれ」なんて年寄り評論家のたわ言とかつては反発していた私ですが、これからは同じセリフを発してしまいそうで怖いです・・・
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ワーデル・グレイ・メモリアルVol.2

2016-03-11 23:36:48 | ジャズ(ビバップ)
本日はビバップ期に活躍した伝説のテナー奏者、ワーデル・グレイを取り上げます。デトロイト出身で、1940年代後半に西海岸をメインに活躍。特にデクスター・ゴードンとのテナーバトルで一躍有名になりました。ただ、1955年に34歳で夭折してしまいます。ジャズマンで若くして死んだ人は他にもたくさんいますが、グレイのケースはその中でも特異で、死因は撲殺。ラスヴェガス郊外で首の骨を折られた他殺体で発見され、犯人不明のまま事故死として扱われたそうです。愛人に射殺されたリー・モーガンと同じくらいショッキングな死に方ですね。ただ、グレイの本当に悲惨なところは、彼の死が当時のジャズ界でそれほど大きなニュースにならなかったことではないでしょうか?と言うのも50年代に入ってからのグレイは麻薬に溺れ、特に死ぬ前の数年間は録音も数えるほどで、プレイも精彩を欠いていたとか。殺された原因もおそらく麻薬絡みのトラブルでギャングに消された説が有力だそうです。そんなグレイだけに残された録音はあまりありませんが、代表的なのがプレスティッジに残された「ワーデル・グレイ・メモリアルVol.1」と「Vol.2」です。「Vol.1」の方には後にアニー・ロスが歌詞を付けて歌った“Twisted”が収録されていますが、アルバム全体としての出来はそれほどでもないので、「Vol.2」の方をむしろお薦めします。



全18曲、別テイクの6曲を除けば実質12曲です。録音年月も場所も違う3つのセッションの寄せ集めですが、どれも充実の出来です。まず、最初の4曲は1950年4月に出身地のデトロイトで行われたセッション。グレイのワンホーンカルテットでリズム・セクションはフィル・ヒル(ピアノ)、ジョン・リチャードソン(ベース)、アート・マーディガン(ドラム)。後にスタン・ゲッツとの共演歴もあるマーディガンを除けば無名のメンバーですがおそらく地元のミュージシャンでしょう。ただ、グレイは絶好調です。1曲目“Blue Gray”は自作曲となっていますが、実際は“Blue Moon”のコード進行を少し変えてミディアムテンポにしただけのものですが、朗々と歌うグレイのテナーが素晴らしいです。2曲目“Gray Hound”と4曲目“Treadin'”はシンプルなブルースですが、ここでは力強いブロウでぐいぐい引っ張ります。一転してスローバラード“A Sinner Kissed An Angel”では、ムードたっぷりのソロを聴かせてくれます。

5曲目から10曲目は1952年1月ロサンゼルス収録のセッション。グレイ、アート・ファーマー(トランペット)、ハンプトン・ホーズ(ピアノ)、ハーパー・クロスビー(ベース)、ローレンス・マラブル(ドラム)、ロバート・コリアー(コンガ)から成るセクステットです。ジャズファン的には若き日のファーマーとホーズ(どちらも当時23歳)の参加に注目ですね。ホーズは“Jackie”、ファーマーは“Farmer's Market”と自作曲も提供していてどちらもなかなかの佳曲です。もっとも主役はあくまでグレイで、コンガの野性的なリズムに乗せて縦横無尽のアドリブを繰り広げる様が圧巻です。ファーマーとホーズもキラリと光るソロを聴かせてはくれますが、グレイの前では完全に脇役ですね。

ラスト2曲は1950年8月にロサンゼルスのクラブで行われたライブの模様を録音したもので、音質はあまり良くないですが、当時の俊英達の熱きアドリブ合戦が記録されています。まず“Scrapple From The Apple”はおなじみチャーリー・パーカーのバップ・チューン。メンバーはグレイに加え、クラーク・テリー(トランペット)、ソニー・クリス(アルト)、ジミー・バン(ピアノ)、ビリー・ハドノット(ベース)、チャック・トンプソン(ドラム)という布陣です。続く“Move”ではさらにかつての僚友デクスター・ゴードンが加わり、2テナーでソロを競います。先発はおそらくグレイで、激しいブロウでありながら決してメロディを踏み外さないのが彼の真骨頂ですね。テリーのトランペットを挟んで、次はゴードン。こちらも迫力満点のブロウですが、フレージングの滑らかさと言う点ではグレイに軍配が上がるか?というのが私の感想です。奇しくもゴードンも50年代はグレイ同様麻薬に溺れ、引退同然の生活を送りますが、その後60年代にブルーノートから華麗に復活したのは皆さんご承知のとおり。本作でのグレイを聴く限り、才能的には決してゴードンに劣っていなかっただけに、非業の死を遂げたことが本当に惜しまれますね。
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ザ・ファビュラス・ファッツ・ナヴァロVol.1

2016-01-16 23:52:02 | ジャズ(ビバップ)

先日のチャーリー・パーカーに続き、本日もビバップの作品を取り上げたいと思います。ビバップ期のトランペッターと言えば、パーカーとも共演の多いディジー・ガレスピーが有名ですが、彼以上に才能があったと言われるのがこのファッツ・ナヴァロです。本名はセオドアですが、大食漢の肥満体型だったために、太っちょを意味するFatsの愛称が付いたそうです。しかしながら、重度のヘロイン中毒だったために健康を害し、1950年にわずか26歳で世を去りました。パーカーも麻薬が原因で命を縮めましたが、それでも34歳まで生きたことを考えるとナヴァロの短命ぶりが際立ちますね。残された録音は決して多くはないですが、サヴォイ盤「ノスタルジア」とブルーノートから発表された「ザ・ファビュラス・ファッツ・ナヴァロVol.1」と「Vol.2」でその天才ぶりを知ることができます。3枚のうちサヴォイ盤は残念ながら音が悪いので、ブルーノートの2枚、特にこの「Vol.1」が音質も曲も良いのでお薦めです。



ボーナストラックも含めて全11曲、別テイクを除けば実質7曲です。核となるのは1947年9月のセッションで、チャーリー・ラウズ(テナー)、アーニー・ヘンリー(アルト)、タッド・ダメロン(ピアノ)、ネルソン・ボイド(ベース)、シャドウ・ウィルソン(ドラム)から成るセクステットです。実質のリーダーはナヴァロではなくダメロンで、4曲全てを彼が作曲しており、後にジャズ・スタンダードとなる“Our Delight”はじめ、“The Squirrel”“The Chase”“Dameronia”と名曲揃いです。ファッツ・ナヴァロのブリリアントなトランペットは確かに素晴らしく、なぜ彼が天才と呼ばれたのか十分に得心がいくものです。ただ、個人的にはタッド・ダメロンの作曲センスとアレンジの秀逸さに感心しています。ビバップ期は良くも悪くもアドリブ一発勝負的な面があったのですが、本作で聴ける3管編成での洗練されたアレンジは後のハードバップを予感させるものです。

残り3曲のうち1曲“Double Talk”は、1948年10月の録音。同じくビバップ期に活躍したトランペッターのハワード・マギーとの双頭コンボによるセッションで、アーニー・ヘンリー(アルト)、ミルト・ジャクソン(ピアノ)、カーリー・ラッセル(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)の編成です。後にヴァイブの第一人者となるミルト・ジャクソンがピアノで参加しているのが珍しいですが、プレイはあくまで無難という程度。何と言ってもナヴァロとマギーの熱いトランペット・バトルが聴きモノです。あとの2曲はボーナス・トラックで、バド・パウエルの「ジ・アメイジング・バド・パウエルVol.1」に収録されている1949年8月のセッションから“Wail”“Bouncing With Bud ”の別テイクです。こちらはプライベートで仲が悪かったナヴァロとパウエルの“喧嘩セッション”としてジャズファンの間で有名ですが、もう一つ18歳のソニー・ロリンズの初レコーディングとしても歴史的価値のあるものです。結局、ナヴァロはこのセッションから1年も経たない間に麻薬による衰弱の末、肺結核で死んでしまいます。最後は太っちょ(Fats)のニックネームが嘘かのように、ガリガリに痩せていたそうです。悲劇的な人生を終えたナヴァロですが、本作のように60年以上経った今でもCD化され、多くのジャズファンに聴き継がれているのは不幸中の幸いかもしれませんね。

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チャーリー・パーカー/ナウズ・ザ・タイム

2016-01-09 23:47:34 | ジャズ(ビバップ)
本日はモダンジャズの開祖ともいえるチャーリー・パーカーの代表作の一つである「ナウズ・ザ・タイム」を取り上げます。何を今さらの超有名作ですが、なぜか今まで手を出してこなかったのです。いや、正直に言うと本作に限らずパーカーの作品は数えるほどしか聴いたことがありません。理由の一つは時代の古さ。パーカーが麻薬中毒による衰弱死で世を去ったのが1955年。ようやくハードバップの時代が始まった頃です。ちょうどこの頃は録音技術が進歩した頃でもあり、それ以前のビバップ期のレコードは音質の面でどうしてもくぐもった感じやノイズがあったりするんですよね。一般的にパーカーの全盛期とされるのが40年代半ばと言われていて、この頃の録音も色々と出回っているのですが、音の悪さがネックとなり何となく敬遠していたわけです。もちろんそれだけでなく、一部のジャズマニアが言う「パーカーの良さがわかってこそ真のジャズファン」みたいな権威主義に何となく反発する気持ちがあったのも否めません。

とは言え、モダンジャズを聴いていれば自然とパーカーの偉大さは理解していくわけで。なんせハードバップ期のアルト奏者はほぼ全員がパーカーの影響下にあると言われています。パーカーそっくりと言われたソニー・スティットはじめキャノンボール・アダレイ、ジャッキー・マクリーン、ルー・ドナルドソン、ソニー・クリス。白人でもフィル・ウッズ、ハーブ・ゲラー、チャーリー・マリアーノと主要なアルト奏者は皆自他共に認めるパーカー派です。また、作曲者としても本作に収録されている“Now's The Time”“Confirmation”はじめ、“Au Privave”“Billie's Bounce”“Moose The Mooche”“Ornithology”“Scrapple From The Apple”と後のジャズ・スタンダードを多く残しています。つまり、パーカーそのものを聴かなくても、間接的にパーカーの残した数々の遺産に親しんでいたともいえます。



前置きが長くなりました。本作「ナウズ・ザ・タイム」はそんなパーカーが1952年から1953年にヴァーヴに吹きこんだ2つのセッションから成っています。パーカー通に言わせればこの頃のパーカーは既に全盛期ではないとのことですが、素人耳にはそんなことは感じられませんし、少なくとも録音状態は40年代に比べると遥かに良いので、上に述べた音質云々の心配なく聴けるのがメリットです。曲は全てワンホーンカルテットで、リズムセクションは1952年のセッションがハンク・ジョーンズ(ピアノ)、テディ・コティック(ベース)とマックス・ローチ(ドラム)。1953年のセッションもドラムはローチで、他はアル・ヘイグ(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)という布陣です。と言っても、両セッションともピアノがちょろっとソロを取るぐらいで、どの曲もパーカーの独壇場です。

全13曲ありますが、別テイクが多いので実質は8曲です。うち、“The Song Is You”と“I Remember You”がいわゆる歌モノのスタンダードで後は全てパーカーのオリジナルです。歌モノにおけるメロディアスなアドリブもなかなか良いですが、やはり自作曲がいいですね。特にタイトル曲の“Now's The Time”と“Confirmation”が素晴らしいです。どちらも他のジャズメンによるバージョンを散々聴いてきましたが、やはり本家本元のバージョンは特別です。お馴染みのテーマの後に繰り広げられる自由自在のアドリブを耳にすると、こう言うプレイを皆に先んじて40年代からしていたパーカーがいかに革新的だったのかが良くわかります。他では“Chi-Chi”も負けず劣らず魅力的ですね。ただ、4テイクも収録されているのはどうかと思いますが・・・その他は“Laird Baird”“Kim”“Cosmic Rays”とあまりメジャーではない曲ですが、どれも悪くないです。パーカーに取っつきにくさを感じているジャズファンは私以外にもいると思いますが、そう言った方には入門編として最適な1枚ではないでしょうか?
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ジ・エミネント・J・J・ジョンソンVol.1

2015-12-20 22:20:19 | ジャズ(ビバップ)

本日は前々回に引き続きJ・J・ジョンソンの作品をご紹介します。J・Jのキャリアの絶頂は1950年代後半のコロンビア時代で「ファースト・プレイス」「ブルー・トロンボーン」、「ダイアル・J・J・5」等の傑作を次々と発表しました。本作はそれより少し前の1953年から54年にかけてブルーノートに録音されたもので、53年6月のセッションがクリフォード・ブラウン(トランペット)、ジミー・ヒース(テナー)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)を加えたセクステット。54年9月がウィントン・ケリー(ピアノ)、チャールズ・ミンガス(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)のリズムセクションにサブー・マルチネスのコンガを加えた変則的ワンホーン作品となっています。なお、本作には「Vol.2」があり、そちらはハンク・モブレーやホレス・シルヴァーとのクインテットだそうですが、未聴です。



メンツだけを見ると53年のセッションが天才クリフォード・ブラウンのトランペットが聴けるとあって、ついそちらに注目してしまいがちですが、主役はあくまでJ・J。“Lover Man”や“It Could Happen To You”等のバラードではソロはJ・Jのみですし、“Turnpike”“Get Happy”“Capri”等アップテンポの曲でもブラウンの切れ味鋭いソロは聴けるものの、出番も短いですし、あくまで3管編成の一員という扱いです。ブラウン目当てで聴くとやや肩透かしを食うかも。リーダーのJ・Jもどちらかというと3管のアンサンブルを重視してソロも控えめな印象を受けます。ちなみにあまり目立たないもののリズム・セクションは初代MJQのメンバーです。

個人的には1954年のセッションの方が魅力的ですね。まだメジャーになる前のウィントン・ケリーのスインギーなピアノも良いですし、サブーのコンガが絶妙のスパイスとなっています。とりわけ自作の“Jay”は本作のベストトラックでサブーの野性的なコンガに煽られるようにJ・Jが1分半にわたって超高速パッセージを一気に吹き切ります。ここでのJ・Jのソロはまさに神技とでも言うべきもので、タイトル通り彼があまたのトロンボーン奏者の中でもEminent=傑出した存在であったことを証明しています。同じく自作曲の“Coffee Pot”もアップテンポのナンバーでメンバー全員が快調に飛ばします。一方、スタンダードの“It's You Or No One”は通常アップテンポで演奏されることが多いですが、ここではスローバラードで演奏されており、J・Jの卓越したバラード演奏が堪能できます。なお、ベースを務めるのは超個性派のミンガスですが、本作の時点ではまだ“俺様”的な要素は微塵も見せず、いたってオーソドックスなプレイに徹しています。

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