ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アーネット・コブ/パーティ・タイム

2025-02-21 19:13:18 | ジャズ(ソウルジャズ)

ジャズファンなら"テキサス・テナー"と言う言葉を聞いたことがあると思います。文字通りテキサス州出身のテナー奏者達のことで、1940年代から活躍するイリノイ・ジャケーを筆頭に、今日ご紹介するアーネット・コブ、そしてバディ・テイトが代表格ですね。少し若い世代だとレイ・チャールズのバンドに在籍していたデイヴィッド・ファットヘッド・ニューマンやアレサ・フランクリンのバックも務めたキング・カーティスらもいます。少し毛色は違いますがブッカー・アーヴィンもそうですね。彼らに共通して言えるのはブルースやR&Bの影響の強いアーシーなテナー。当時ニューヨークで主流だったレスター・ヤング系のクールなテナーとはまた違うスタイルです。本国アメリカでは一定の人気がありますが、残念ながら日本のジャズファンの間ではあまり評価が高いとは言えません。

このアーネット・コブも名門プレスティッジに8枚のリーダー作を残していますが、日本ではあまり人気がないためか唯一私がCDで入手できたのはこの「パーティ・タイム」のみです。1959年5月14日の録音でレイ・ブライアント(ピアノ)、ウェンデル・マーシャル(ベース)、アート・テイラー(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)を従えたクインテット作品です。主役はもちろんアーネット・コブのワイルドなテナーですが、レイ・ブライアントのピアノも重要な役割を果たしており、演奏の質を大いに高めています。

全7曲、歌モノスタンダードが3曲、他のジャズマンのカバーが2曲、オリジナルが2曲です。1曲目"When My Dreamboat Comes Home"はビング・クロスビーらが歌ったスタンダード曲。ゆったりしたテンポに乗ってアーネットが朗々と歌い上げます。レイ・ブライアントのゴスペルチックなピアノも良いですね。この曲はイリノイ・ジャケーもアーゴ盤「デザート・ウィンズ」で吹いていましたので、テキサス・テナーの聴き比べも面白いかも。続く”Lonesome Road"もスタンダードですが、一転してノリノリの演奏。ブライアントのドライヴ感抜群のピアノソロに続き、アーネットがワイルドなブロウを聴かせてくれます。途中で興奮したメンバーのyeah!と言う声が入るのがいいですね。3曲目”Blues In The Closet"はオスカー・ペティフォード作のバップ・スタンダード。バド・パウエルらの演奏で有名ですが、通常はアップテンポで演奏されることが多いこの曲をアーネットらはミディアムテンポでソウルフルに演奏します。4曲目”Party Time"はタイトルトラックでアーネット自作のブルース。出だしはやや地味ですが途中から盛り上がって行き、後半はアート・テイラーのドラムとアーネットの掛け合いもあります。

後半1曲目の”Flying Home"はアーネットが1940年代に所属していたライオネル・ハンプトン楽団の代表曲。ノリノリのブローイング大会で最後にヤンキードゥードゥル(日本語だと♪アルプス一万尺~)のメロディを吹くのもご愛嬌。6曲目”The Slow Poke"はアーネット自作のブルースで名前通り超スローな曲。レイ・ブライアントとアーネットの2人でどっぷりとブルースの世界に浸らせてくれます。最後の"Cocktails For Two"は再びスタンダードで陽気なコンガに乗ってアーネットが快調にブロウ。ブライアントのスインギーなソロも最高です。以上、たまにはこってりしたテキサス・テナーの世界を味わうの悪くないと思わせてくれる1枚です。


コメント    この記事についてブログを書く
« ケニー・バレル/ラウンド・... | トップ | ソニー・スティット/スティ... »

コメントを投稿