ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ベン・ウェブスター/ソウルヴィル

2025-02-13 19:21:49 | ジャズ(スイング~中間派)

本日はジャズテナーの大御所、ベン・ウェブスターをご紹介します。1909年生まれの大ベテランで1930年代のスイング時代からデューク・エリントン楽団を始め数々のビッグバンドで活躍し、1950年代には主にノーマン・グランツのヴァーヴ・レコードに多くの録音を残しています。1960年代以降はヨーロッパに渡り、1973年に脳卒中で急死する直前まで活発に演奏活動を行っていました。彼と同世代のジャズミュージシャン、たとえばレスター・ヤング、ロイ・エルドリッジ、テディ・ウィルソン、ライオネル・ハンプトンらは50年代以降はどうしてもハードバップ世代に押され、活動が目立たなくなって行きますが、このベン・ウェブスターとコールマン・ホーキンスの2人は若いバップ世代のジャズマン達とも積極的に共演し、第一線で活躍し続けました。本ブログでも過去にジョー・ザヴィヌルと共演したリヴァーサイド盤を取り上げています。

今日ご紹介する「ソウルヴィル」は1957年10月にヴァーヴに吹き込まれた作品で、50年代のウェブスター作品の中でも代表作に挙げられる1枚です。メンバーはヴァーヴが誇る最強リズムセクションであるオスカー・ピーターソン・トリオ、すなわちオスカー・ピーターソン(ピアノ)、ハーブ・エリス(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)に西海岸を代表するドラマーであるスタン・リーヴィが加わる布陣です。それにしてもこのジャケット、圧がすごいですよね。"獣"を意味する"The Brute"のニックネームで呼ばれたウェブスターのコワモテの顔がドーンと写ったシンプルきわまりないデザイン。まるで「俺様がベン・ウェブスターだ!」とでも言わんばかりです。

アルバムはまずウェブスター自作のタイトルトラック"Soulville"で始まります。文字通りソウルフルなブルースで、ハーブ・エリスのギターのイントロに続き、ウェブスターが貫録たっぷりのテナーソロを聴かせます。スローテンポの曲を太い音色のテナーで一音ずつ語りかけるようにじっくり歌い上げていく様は彼ならではのワン&オンリーの世界ですね。コルトレーンの”シーツ・オヴ・サウンド”とは対極に位置するようなスタイルですが、これはこれでイイ!2曲目もオリジナル曲の”Late Date"。こちらもブルースですが、ややテンポアップしており、ここでは随所でうなりを上げるような豪快なブロウを聴かせてくれます。とは言え、いわゆる”ホンカー”と呼ばれる人達とは違い、吹き過ぎで野暮ったくなるところまでは行かないですね。ピーターソンとハーブ・エリスのソロも良いアクセントになっています。

3曲目から7曲目までは全て有名スタンダード曲ですが、おススメは何と言ってもバラードですね。”Time On My Hands”"Where Are You?""Ill Wind"と言った曲で、ウェブスターがスススっと息遣いまで聴こえてくるような独特の吹き方でバラードをまるで慈しむかのようにじっくり歌い上げます。若造には出せない大人の男のダンディズムってやつですね。一方、”Lover Come Back To Me"や”Makin' Whoopee"はミディアムテンポの演奏で、ウェブスターはマイペースでソロを吹きますが、前者はピーターソンのスインギーなソロにも大いにスポットライトが当たっています。CDにはそれに加えて"Who”"Boogie Oogie""Roses Of Picardy"の3曲がボーナストラックとして入っていますが、こちらは何とベン・ウェブスターがテナーではなくブギウギ調のピアノを弾くという意表を突く演奏。ただ、正直これはレコードマニア向けのセレクトで、スキップしてもらって全く問題ないと思います。


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