3回連続ビッグバンドが続いたので、今日はちょっと箸休め的な作品を。名ギタリスト、ケニー・バレルが残したカルテット作品です。バレルは当ブログでも何度も取り上げていますが、私の最も好きなジャズギタリストです。彼の50~60年代のリーダー作はほぼ全てが名盤と言って良いですが、今日ご紹介するのはそれより少し後の1972年にサンフランシスコを拠点とするファンタジー・レコードに吹き込んだ1枚です。
70年代と言えば電子楽器を用いたフュージョンが隆盛を極めていた頃。その影響もあってか本作でもリチャード・ワイアンズがエレクトリック・ピアノを弾いています。とは言え、それ以外は普段のバレルと変わりないですね。彼特有のソウルフルでありながら都会的な雰囲気を感じさせる洗練されたジャズギターが堪能できます。他のメンバーはベースがレジ―・ジョンソン、ドラムがレニー・マクブラウンです。
全9曲。オリジナル曲は1つもありませんが、バレルが様々なジャンルからお気に入りの曲をチョイスし、彼ならではの味付けで料理しています。1曲目は"A Streetcar Named Desire"。マーロン・ブランド主演の映画「欲望と言う名の電車」のためにアレックス・ノースと言う映画音楽専門の作曲家が書いた曲です。youtubeで聴いたオリジナルはオーケストラでの演奏でしたが、ここではバレルがエレピをバックにしっぽりと歌い上げます。2曲目は多くのジャズマンが取り上げたジュール・スタインのミュージカル曲"Make Someone Happy"。ミディアムテンポのリラックスした雰囲気で、お馴染みの名旋律をバレルが歌心たっぷりに演奏します。3曲目はセロニアス・モンクの"'Round Midnight"。タイトル曲にもなっていますが、個人的にはまずまずかな。実はこの曲だけピアノがジョー・サンプル、ドラムがポール・ハンフリーに代わっていますが別の日の録音だったのかもしれません。都会の夜のイメージにピッタリの演奏です。
4曲目はなかなか面白いチョイスで個性派シンガーソングライター、ランディ・ニューマンの"I Think It's Going To Rain Today"。この曲もオリジナルをyoutubeで聴いてみましたが、正直同じ曲とは思えないくらい違います。バレルの手にかかると一気にソウルフルなジャズに変身するのだから面白いですね。5曲目”Since I Fell For You"はバディ・ジョンソンのブルース・スタンダード。リー・モーガンやスタンリー・タレンタイン等いろいろなジャズマンが名演を残していますが、このバレルの演奏もその1つに数えて良いでしょう。6曲目”I’m Gonna Laugh You Right Out Of My Life"は余り聞かない歌モノスタンダードですが、作曲家のサイ・コールマンがナット・キング・コールのために作った曲のようです。とても魅力的な旋律を持つ楽曲で、個人的にはこのアルバムの中でも最も好きな曲です。実はこの曲はエレピが抜けたトリオ演奏なのですが、正直中途半端なエレピの音はむしろない方が良いですね。バレルのメロディアスでスインギーなソロが最高です。レジー・ジョンソンのベースソロも挟まれます。ラストの”Blues In The Night"はハロルド・アーレンのスタンダード曲ですが、ここではついにドラムもベースも休みでバレルが無伴奏ギターソロを披露します。出来はまあまあ。以上、個人的にはエレピの音はどうしても好きじゃないですが、バレルのギターはいつも通りの素晴らしさです。
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