50年代半ばのハードバップシーンにおいてはデトロイト出身のジャズメンが多数活躍しました。ドナルド・バード、トミー・フラナガン、ケニー・バレル、カーティス・フラー、ポール・チェンバース等々。今日ご紹介するバリー・ハリスもその一人ですが、彼が本格的にリーダー作を吹き込むようになったのは既にハードバップが下火になりつつあった60年代になってから。何でも地元LOVEで大都会ニューヨークへの進出を嫌がっていたのだとか。そんなハリスが重い腰を上げてようやく名門リヴァーサイドに吹きこみを行ったのが1960年録音の本作です。サンフランシスコのナイトクラブ、ジャズ・ワークショップでのライブ収録です。
バリー・ハリスのプレイはよく“バド・パウエル直系”と形容されます。実は私はパウエルの作品をあまり聴いていないので直系と呼ばれてもピンと来ないのですが、要は正統派ビバップということですよね。サポートメンバーもリヴァーサイドが誇るサム・ジョーンズ(ベース)&ルイス・ヘイズ(ドラム)の2人とあって、まさにこれぞピアノトリオの王道と言うべき演奏が繰り広げられます。全8曲。スタンダード、バップチューン、自作曲がバランス良く配置されており、どれも水準以上の演奏ですが、中でも華麗なメロディの“Star Eyes”、バラード演奏の“Don't Blame Me”、自作曲のキャッチーな“Lolita”あたりがお薦めです。ハリスは80歳を超えた今も存命で、まだ現役で演奏活動を行っているとか。そんな生ける伝説の若かりし姿を知ることのできる充実の一枚です。