不世出の天才トランペッターと呼ばれるクリフォード・ブラウンですが、生前に発表したリーダー作は意外と少なく、エマーシーに残した一連のマックス・ローチとの共同作と「ウィズ・ストリングス」のみ。他の作品は全て彼の早すぎる死を悼んで後から発売されたものです。ブルーノート盤「メモリアル・アルバム」、パシフィック・ジャズ盤「ジャズ・イモータル」、そして以前に紹介した「ジャム・セッション」なんかがそうですね。名門プレスティッジも例外でなく、1953年に録音していた音源をブラウンの死んだ1956年に発表しました。
演奏は2つに分かれており、前半はブラウンがライオネル・ハンプトン楽団の一員としてスウェーデンを訪問していた際に現地のミュージシャンと録音したもの。前に紹介したフランス滞在時のジャムセッション集「コンプリート・パリ・セッション」と似たような企画ですね。ハンプトン楽団の同僚だったクインシー・ジョーンズがアレンジを担当し、アート・ファーマーも参加しています。他は現地のジャズメンですが、オーケ・パーション(トロンボーン)、ラーシュ・グリン(バリトン)、ベンクト・ハルベリ(ピアノ)などは世界的な名手ですので全体のレベルも高く、安心して聴くことのできる演奏です。クインシー作の名曲“Stockholm Sweetnin'”とブラウンとファーマーの掛け合いが聴ける“'Scuse These Blues”がお薦めです。
後半はピアニスト兼アレンジャーであるタッド・ダメロン名義で録音されたもので、9人編成の小型ビッグバンドによる演奏です。残念ながら音質的にはかなり悪く、時折ノイズが耳につきますが、演奏はそれを補ってあまりあるものです。ダメロン自身のピアノソロに、ベニー・ゴルソンのテナーも随所に挟まれますが、何と言ってもブラウンのブリリアントなトランペットが最高です。ダメロン指揮によるゴージャスなアンサンブルも素晴らしいですね。全4曲全て秀逸ですが、特にドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズをフィーチャーした“Philly J.J.”とラストの“Choose Now”が痺れる出来です。