ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

メンデルスゾーン/聖パウロ

2015-07-17 13:00:34 | クラシック(声楽)

オラトリオ・シリーズも第4弾まで来ました。オラトリオというジャンルに対しては最初は敷居の高さを感じていたのですが、いざ聴いてみるとなかなか味わい深い作品が多いですね。今日取り上げる「聖パウロ」はメンデルスゾーンが27歳の時に完成させたオラトリオです。円熟期の傑作とされる「エリヤ」に比べると、知名度も低く地味な存在ですが、それでも繰り返し聴くうちに徐々に魅力がわかっていきます。話は初期キリスト教の伝道者として有名な聖パウロの話です。パウロはもともとの名をサウロといい、熱心なユダヤ教徒として当時は異端だったキリスト教徒を迫害していたのですが、ある日イエス・キリストのお告げを聞いてそこから熱心な伝道者となったという話です。実はメンデルスゾーンももともとはユダヤ系の家柄で父親の代にプロテスタントに改宗したという経緯があり、自分自身をパウロに投影していたのではないかとも言われています。



全41曲。第1部は異教徒だったパウロが改宗するまで、第2部はパウロの伝道の場面が描かれていますが、音楽的には第1部の方が圧倒的にドラマチックで聴き応えありますね。お薦めは重厚な序曲、第5曲の迫力ある合唱「この人は、モーゼと神とに逆らう」、第7曲の美しいソプラノ独唱「エルサレムよ」、静謐な合唱の第11曲「見よ、私たちは耐え忍んだ人たちを心から賛美する」、感動的な第15曲の合唱「立ち上がり、光となれ」、フィナーレを飾る第22曲の合唱「おお、なんと深く豊かな神の英知とご洞察だろう」等です。それに比べて第2部は盛り上がりに欠け、あえて挙げるなら第26曲の合唱「そのお知らせのなんと好ましいこと」とフィナーレの合唱「されど彼のみならず、すべての人に」が印象に残るぐらいでしょうか?CDはディスク自体は少ないですが、クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のものが数年前にデッカから再発されているので、比較的入手しやすいです。ゲバントハウスはメンデルスゾーン自身が生前に楽長を務めたという縁もあり、メンデルスゾーン作品の録音は豊富ですね。先日のサヴァリッシュ盤「エリヤ」もそうでしたし。メンデルスゾーンは他にもう1作「キリスト」というオラトリオを作曲していましたが、38歳の若さで世を去ったため未完のままで終わっています。メンデルスゾーンは宗教音楽家として語られることはあまりありませんが、「エリヤ」といい本作と言い、彼の代表作と言ってもいい充実の出来だと思います。

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