本日はトランぺッターのリチャード・ウィリアムズをご紹介します。主に1960年代から70年代にかけて活躍し、参加した録音はかなりの数に上ると思うのですが、その割には地味な存在ですね。理由の一つは名前がありきたりすぎることでしょうか?日本だと高橋一郎とかそんな感じかな?同じトランペッターだとイドリース・スリーマンとかダスコ・ゴイコヴィッチとかインパクト強い名前ですもんね。
出身はテキサスで50年代半ばにニューヨークに進出。チャールズ・ミンガスに才能を見出され、1959年の「ミンガス・ダイナスティ」に起用。ミンガス作品にはその後も「ファイヴ・ミンガス」等5作品に出演します。また、ジジ・グライスからも寵愛を受け、「セイイング・サムシン」等に参加。その他にもスライド・ハンプトンのビッグバンドやオリヴァー・ネルソンにも起用されるなどまたたく間にシーンの寵児となります。そんな中、1960年11月19日にキャンディド・レコードに吹き込まれたのが本作「ニュー・ホーン・イン・タウン」です。
2管編成のクインテットでメンバーはレオ・ライト(アルトorフルート)、リチャード・ワイアンズ(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)、ボビー・トーマス(ドラム)と言う顔ぶれ。リーダーのウィリアムズに負けず劣らず地味なメンツが揃っていますが、レオ・ライトはディジー・ガレスピー楽団に所属しており、同じ年にアトランティックからリーダー作「ブルース・シャウト」を発表したばかり(同作品にはウィリアムズもサイドマンで参加)。リチャード・ワイアンズやレジー・ワークマンも上述のジジ「セイイング・サムシン」でウィリアムズと共演済みとあって、気心の知れたメンバーによるセッションと言えます。
全7曲。うち3曲がスタンダード、残りがメンバーのオリジナルです。ウィリアムズと言えば上述のミンガス・グループや、ブッカー・アーヴィン、ユセフ・ラティーフらどちらかと言うとクセ強系ジャズメンとの共演が多く、ウィリアムズ自身も何となく彼らのイメージに引きずられがちだったのですが、実際にリーダー作を聴くとわりとストレートなハードバップ志向だというのが良くわかります。オープニングトラックの”I Can Dream, Can't I?"はサミー・フェイン作曲の歌モノスタンダードで、ミディアムテンポの快適なナンバー。リチャード・ワイアンズも洒落たタッチのピアノソロを聴かせてくれます。続く”I Remember Clifford"はベニー・ゴルソンが亡きクリフォード・ブラウンに捧げたおなじみの名曲で、トランペットでは何と言ってもリー・モーガンの決定的名演で知られています。この曲を取り上げるとはなかなか勇気ありますが、ウィリアムズはモーガンに肉薄する、とまではさすがに行かないもののストレートなバラード演奏を聴かせてくれます。レオ・ライトもフルートで彩りを添えます。
3曲目から5曲目まではオリジナル曲で、”Ferris Wheel"はリチャード・ワイアンズ作の快適ハードバップ、”Raucuous Notes"”Blues In Quandary"はウィリアムズ作で、特に前者が力強いバップナンバーで本作のハイライトと言って良いと思います。ウィリアムスのパワフルなトランペットソロに終盤のボビー・トーマスのドラミングも迫力満点です。6曲目は再び歌モノで有名な”Over The Rainbow"。ここではライトはお休みでウィリアムズがワンホーンで朗々と歌い上げます。リチャード・ワイアンズの玉転がしタッチのピアノソロも意外とロマンチックです。ラストはウィリアムズ作のハードドライヴィングな”Renita's Bouce"でビシッと締めます。デビュー後2年足らずでリーダー作まで発表し、前途洋々かに見えたウィリアムズですが、結局ソロ名義の作品は本作のみ。その後もサド=メル楽団に加入するなど精力的に活動を続けるものの、表舞台でスポットライトを浴びることはありませんでした。あと5年デビューが早ければハードバップ黄金期でもう少し活躍の場も広がったかもしれませんね。
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