ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

カウント・ベイシー/ベイシー・ビッグ・バンド

2016-06-24 12:32:12 | ジャズ(ビッグバンド)
本日も「ジャズの100枚」シリーズからで、カウント・ベイシー楽団の作品をご紹介します。本ブログでもこれまで50年代後半~60年代前半のルーレット時代を中心に多くのベイシー作品をアップしてきましたが、今回取り上げるのは1975年にパブロ・レーベルから発表した作品です。1930年代から活動するベイシー楽団も結成から40年が経過し、御大ベイシーに至っては71歳の高齢。正直、彼らほどの知名度があれば昔ながらのメンバーで過去の懐メロを演奏するだけで十分に稼いでいけたでしょう。ただ、ベイシーのすごいところはマンネリを潔しとせず、常にメンバーを入れ替え、楽曲も新曲にこだわったこと。本作もサミー・ネスティコをアレンジャーに迎え、全曲彼が書き下ろしたナンバーばかり。メンバーも古参の顔ぶれに加え、若手ミュージシャンも多く起用しています。総勢18名、列挙してみましょう。トランペットがソニー・コーン、ピート・ミンガー、ボビー・ミッチェル、デイヴ・スタール、フランク・サボ、トロンボーンがアル・グレイ、カーティス・フラー、メル・ワンゾ、ビル・ヒューズ、サックスがテナーのジミー・フォレスト、エリック・ディクソン、アルトのボビー・プレイター、ダニー・ターナー、バリトンのチャーリー・フォークス。そしてリズム・セクションが御大ベイシー(ピアノ)、ジョン・デューク(ベース)、ブッチ・マイルス(ドラム)、そして“ミスター・リズム”ことフレディ・グリーン(リズム・ギター)という布陣です。コーン、グレイ、ディクソン、フォークス、グリーンあたりはお馴染みの顔ぶれですが、カーティス・フラーやジミー・フォレストがベイシー楽団に在籍していたとは知りませんでした。いずれにせよメンバーが代わろうとも、ベイシー楽団の真骨頂である重厚なアンサンブルはこのアルバムでも存分に聴くことができます。



それに加えてこの作品はとにかくサミー・ネスティコの書いた曲がどれも素晴らしい。1曲目“Front Burner”はスローなブルースで、ベースソロからベイシーのピアノが入り、ついでホーンセクションも加わって徐々に盛り上がっていきます。ソロはジミー・フォレストで、ソウルフルなテナーでアクセントを付けます。続く“Freckle Face”はバラード。ゆったりしたホーンアンサンブルの後でボビー・ミッチェルが美しいトランペット・ソロを聴かせてくれます。3曲目“Orange Sherbet”はスタンダード曲の“Just Friends”を彷彿とさせるキャッチーなメロディで、トランペット・ソロを挟みながらバンド全体が軽快にスイングします。4曲目“Soft As Velvet”はボビー・プレイターの官能的なアルトを大々的にフィーチャーしたバラード。バックのアンサンブルもため息の出る美しさです。5曲目“The Heat's On”は疾走感あふれるアップテンポの曲でこれまたフォレストが熱いソロを聴かせます。ここまでがレコードのA面ですが、文句のつけようがない素晴らしい出来です。

つづいてB面ですが、6曲目“Midnight Freight”はゆったりしたグルーヴの中、ダニー・ターナーの情熱的なアルト・ソロに続きアル・グレイがお得意のパワフルなプランジャー・ミュートで盛り上げます。続く“Give M' Time”は30年代風の懐かしい香りのする曲で、御大ベイシーの例の音数の少ないイントロの後、再びターナーのアルト・ソロ、ピート・ミンガーのミュート・トランペット・ソロと続きます。8曲目“The Wind Machine”は疾走感あふれるナンバーで、前半はジミー・フォレストが力強いテナー・ソロでぐいぐい引っ張り、後半はホーンセクションが高速テンポをものともしない一糸乱れぬアンサンブルを聴かせてくれます。ラストトラック“Tall Cotton”は何となく“Down By The River Side”を思い起こさせるゴスペル調のメロディで、トロンボーン・ソロ(おそらくアル・グレイ?)→サックス・アンサンブル→短いトランペット・ソロと続き、最後はバンド全体で締めくくります。以上、B面もA面ほどではないにせよ充実の出来で、ずばりベイシー楽団の全作品の中でも上位に入るほどのクオリティではないでしょうか?
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