本日は通称MJQことモダン・ジャズ・カルテットの作品をご紹介します。MJQについては4年前にも「淋しい女」を取り上げましたが、ミルト・ジャクソン(ヴァイブ)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)の4人からなるジャズ界きっての長命グループですね。特徴はジョン・ルイスの作曲する室内楽的サウンドで、代表作である「たそがれのヴェニス」「コンコルド」などヨーロッパにちなんだ曲が多いことでも知られています。そんな中で1963年発表の本作「シェリフ」はやや異色というか、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハの中の「カンティレーナ」をカバーした“Bachianas Brasileiras”を除けば、いつものクラシック風&ヨーロッパ趣味のサウンドは影をひそめ、わりとシンプルで親しみやすい曲が多いです。個人的にはMJQの音楽は高尚過ぎるきらいがあるので、「淋しい女」やこの「シェリフ」のような作品の方が好きですね。
1曲目“The Sheriff”はアルバムのタイトル曲で、ホレス・シルヴァーの“Sister Sadie”を思わせるようなイントロから始まるファンキーな曲。作曲はジョン・ルイスですが、演奏面では何と言ってもミルト・ジャクソンの縦横無尽のマレット捌きが圧巻です。ミルトは続く“In A Crowd”でも絶好調で、ルイスの軽快なソロが終わった後はまさに彼の独り舞台です。唯一クラシック風の“Bachianas Brasileiras”を挟んで、4曲目の“Mean To Me”は歌モノスタンダード。前半部分はややゆったりしたテンポですが、中盤以降はアップテンポに切り替わり、ここでもミルトがファンキーなアドリブでぐいぐい引っ張ります。5曲目の“Natural Affection”は一転してボサノヴァ調の美しいバラード。作曲はジョン・ルイスで、同年に彼がリーダーとなって結成したオーケストラUSAの「デビュー」というアルバムでも演奏されていました。6曲目“Donnie's Theme”は個人的にはイマイチ。ラストを飾る“Carnival”は映画「黒いオルフェ」のテーマで多くのジャズメンにカバーされていますが、哀調を帯びたボサノバ風の旋律がMJQの演奏と見事にマッチしています。以上、ファンキーありボサノヴァ風ありクラシック風ありとバラエティ豊かな選曲でMJQの中では気軽に楽しめる作品ではないでしょうか?